有名な「ロビンソン・クルーソー」の物語からとったタイトルですが、まったく別のお話です。小さな無人島に漂着したふたりの兵士。言葉が通じない、あいつは敵?たったふたりしかいない世界で何とか生きのびるために助け合うふたり。言葉も文化も、身体もちがうふたりの男が体当たりで心を通わす。敵対から理解、そして友情へ。いま、若い世代に届けたい、出会いと信頼の物語! 韓国を代表する演出家イ・ユンテクが、SPACの俳優を演出した日韓共同制作作品。
イ・ユンテク(李潤澤)
詩人、劇作家、演出家、シナリオ作家、映画監督など様々な芸術領域を貫く芸術家。韓国の釜山において旗揚げした劇団「演戯団コリペ」を韓国最高峰の劇団にまで発展させ、「文化のゲリラ」というニックネームも付けられている。2004年には国立劇団の芸術監督を務め、韓国の大学をはじめ世界各地において独自の演技訓練メソッドを教えている。現在は韓国の密陽(ミリャン)において演劇村を造り、団員達と合宿生活をしながら活発な創作活動を続けている。代表作に『死の形-オグ』『愛の形-パボカクシ』『問題的人間ヨンサン』『ハムレット』『田舎知識人ジョ・ナムミョン』がある。SPACでは昨年「Shizuoka 春の芸術祭 2007」において、野外劇場でブレヒトの『肝っ玉おっ母とその子供たち』を上演し、好評を博した。今回、SPACの出演俳優はイ・ユンテクの演劇の拠点である密陽に1カ月滞在し、作品創造を共におこなった。
初演時のことば
本来、ロビンソンとクルーソーはひとりの人間でした。それがいつからか違う土地に住み始め、それぞれ違う国を造り上げました。そして、ロビンソンとクルーソーはふたりの人間へ分かれたのです。もともとひとりの人間だったことも忘れ、私たちは憎しみあい、争いました。
今、子どもたちにロビンソンとクルーソーはひとつの体になれるという真実を教えなければなりません。そのために、ひとつの船に乗り、太平洋を渡る夢の旅を始めるのです。彼等が到達した島で、ロビンソンとクルーソーが建てた家で、夢の旅へ眠りにつくのです。
今回の「ロビンソンとクルーソー」を本来、私たちがひとりの人間だったことを互いに理解し合い、再び出会うために作りあげていきたいと思います。
演出家 イ・ユンテク