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彼方へ

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演出:クロード・レジ
作:フェルナンド・ペソア
出演:ジャン=カンタン・シャトラン
6月11日(金)、12日(土)、13日(日) 18時30分開演
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
上演時間:110分

スペシャル・プレトーク   無料・要予約
「巨匠クロード・レジは語る」 開催!
日時:6月11日(金)16時

作品について

御年86歳、第一線で走り続ける
フランス演劇界の重鎮、静岡に降臨!
名優ジャン=カンタン・シャトランとともにアートの臨界点を突破!

アート界のワールドシーンで燦然と輝く巨星クロード・レジ。表現意欲は衰えることを知らず、その作品はますます過激に研ぎ澄まされています。レジ作品の特徴はなんと言っても舞台の暗さ!見えるか見えないか、そのギリギリのところで勝負するのがこの演出家がこだわってきた挑戦です。レジの作品がフランスで上演されるときは即刻ソールドアウトになるのが定番、そのくせ観客の3分の1は必ず途中退場するという“伝説”もまた、観客の胸を騒がす定番になっています。気骨溢れる筋金入りのアーティスト、クロード・レジの歴史的な日本初公演を支えるのはスイスの名優ジャン=カンタン・シャトラン。渾身のパフォーマンスによって、アヴィニヨン演劇祭2009では多くの演劇人に絶賛された作品が早くも静岡に。

あらすじ

銀色の海のただ中に、波止場だけが突き出ている。そこに男が一人たたずみ、海に思いを馳せる。文明を逃れて地の果てにある野蛮を夢見る。波止場に立ちつくし、一歩も動かないまま、壮絶なインナートリップに身を任せていくのだが…

インタビュー
クロード・レジが語る

「文章の中で、最も重要なことは書かれていないことにあります」。

ドイツ軍占領時代が終わり、私はパリへ来ました。戦争捕虜となった父の期待に添いたく、政治学を専攻しましたが、シャルル・デュラン(Charles Dullin)の舞台芸術の授業を受けるために、大学を中途退学しました。そして別の演劇講習で、生徒の舞台稽古のコーチを務め始めて、演劇の中でそのことに最も興味を引かれました。1952年から演出家として仕事をしています。

ずっと以前から、フェルナンド・ペソア(Fernando Pessoa)の1909年の抒情詩「彼方へ海のオード(Ode Maritime)」を演出したいと思っていました。昨年の夏、アヴィニョン演劇祭にて実現できました。

港への船の到着が、一人の男に、残忍な感覚と優しい感情を引き起こします。一人の男はフェルナンド・ペソア自身で、想像力に富む現実派技術者アルバロ・ドゥ・カンポス(Alvaro de Campos)という独特なアイデンティティーを創造して、その人物に成り済まし詩を書きました。男は想像の旅に出て、「彼方へ海のオード」に登場するすべての人物になりたいという欲望を表現します。犯罪者と被害者、乱暴な男、強姦される女。

私は常に著者の文面を重要視してて舞台を作り上げます。文面自体が劇的要素でありますが、最も重要なことは書かれていないことにあるのだと思っています。書き記された言葉の物語れないことを発見して、それをどのように表現するかを見出す必要があります。
また私にとって、言語の基本は、音と律動によって生み出されるものであるため、俳優との作業は必要不可欠になります。俳優は文章の秘めた部分を外存化することができるのです。
ジャン=カンタン・シャトラン(Jean-Quentin Châtelain)は、この長い詩を演じることのできる、たった一人の俳優だと思います。彼は優れた感受性の持ち主で、表現力の限界まで達して、極限を突破できます。
執筆時の著者の意識状態を把握して、伝えることで、私たちは観客をより深い内面空間へ導けます。

この作品をフランス語圏以外で発表するのは、今回初めてのことになります。私は日本の観客の皆さんがどのように見てくださるか、とても楽しみにしています。

インタビュー・文 Alicia-Michiko HYUGA
Alicia-Michiko HYUGAウェブサイトhttp://www.artmichiko.com/

←左のアイコンをクリックすると、SPAC発行のパンフレット「劇場文化」掲載のエッセイをお読みいただけます。

海の讃歌(オード)、あるいは「力強い魂」の夢想
西谷修

フェルナンド・ペソアと『海の讃歌(オード)』
田之倉稔

協賛 キュルチュールフランス、
ポルトガル大使館 2010年日本ポルトガル修好通商条約150周年記念
後援 東京日仏学院、フランス大使館、スイス大使館

クロード・レジ

演出家。
1923年生まれ。特定の劇場や劇団に属することなく、独自の理念で、主に同時代の作家の作品を上演し続けている。52年から活動をはじめ、初期にはガルシア・ロルカやメーテルリンクなどを演出していたが、60年代にマルグリット・デュラスの作品と出会い、『イギリスの恋人』(1969)などを演出。さらに65年からはピンター、オズボーン、ストッパードなど英米の作品を手がけ、70年代以降はナタリー・サロート作品上演の一方でペーター・ハントケ、ボート・シュトラウス(『再会の三部作』1980)などのドイツ語圏戯曲の紹介に勤める。メーテルランクの『内部』(1986)やアンリ・メショニック訳の聖書の一部をもとにした『賢者の言葉』(1995)では言葉や声に関する徹底した探求の成果が見られた。近作ではノルウェーの現代作家ヨン・フォッセの『だれか、来る』(1999)やサラ・ケイン『4時48分サイコシス』(イザベル・ユペール主演、2002)などで話題を集めている。81年以降、パリ国立演劇学校(コンセルヴァトワール)で教鞭を執り、また著書によっても、多くの若い演出家や俳優に影響を与えている。

フェルナンド・ペソア(1888-1935)

ポルトガル出身の詩人。
リスボン生まれ。5歳のときに父親を亡くし、母親が南アフリカの領事と再婚したためダーバンへ移り住む。ダーバンで教育を受けた後、ポルトガルへ戻り大学で学ぶ。「ペソア」という名前以外にも、「カエイロ」「レイス」「カンポス」などの異名で創作し、それらの異名ごとに独自の作風をもつことで知られる。生前はわずかな理解者しか得ることができなかったが、死後、その膨大な遺稿が刊行されるにつれ、大きな注目を集めるようになった。現在は20世紀前半の代表的な詩人と評価される。邦訳に『ポルトガルの海-フェルナンド・ペソア詩選』(彩流社)、『不安の書』(新思索社)などがある。

ジャン=カンタン・シャトラン

俳優。
ジュネーヴ演劇学校、ストラスブール国立演劇学校を卒業後、フランスやスイスでクロード・レジ、ジョエル・ジョワノー、ヴァレール・ノヴァリナなど数々の演出家の作品に出演。映画俳優としてはクレール・ドゥニやアンジェイ・ワイダの映画に出演している。レジ作品は『サタンの怖ろしい声』(グレゴリー・モットン、1994)、『鶏にナイフ』(デヴィッド・ハロワー、2000)、『目的のない男』(アルネ・リグレ、2007)と三作品に出演し、「レジとの仕事はしんどいので一度やったら六年は休みをおくことにしている」と語っていたが、今回初めて二作品つづけての登場となった。