2018年11月3日

歯車ワークス#6 “歯車”高速回転中!

Filed under: 『歯車』2018

開幕まで1か月を切りました!
序盤のスローペースから一転、稽古場では多田さん&俳優たちがギアを上げてシーン作りを進めています!
原作の要素は残しつつも、主人公の“僕”のセリフを私たちが普段使っているような口調に変えたり、芥川自身の実話エピソードを入れるなど、原作を大胆にテキレジ
この台本を手に、芝居の構造や動きといった一つ一つを確認・検討する作業を重ねています。
*テキレジ:脚本家が書いた本を、実際に上演できるように訂正や手直しすること

0W1A7123_s
▲『授業』休演日には、装置を避けつつ劇場内で稽古。

0W1A7134_s

0W1A7146_s

0W1A7174_s

0W1A7177_s

0W1A7180_s

一方、稽古場の外では、舞台美術や衣裳などの製作が着々と進んでいます!
衣裳室を覗いてみると、白い布に色付け作業をする衣裳スタッフの姿が。

IMG_2482
均一の幅でマスキングテープが貼られているところを見ると、どうやらストライプ柄の布を自作しているようです。
この布は、誰のどんな衣裳で使われるのでしょうか・・・?

IMG_2483
▲完成した衣裳と、これから作る衣裳の型紙。

そして舞台芸術公園 野外劇場「有度」の舞台上では、美術スタッフが舞台装置を製作中。

IMG_2486
▲パソコン上の図面を覗き込みながら何やら相談中。

IMG_2484
▲装置で使用する大量の平台(のようなもの)。

ここ野外劇場で装置を製作・一旦仮組みして具合を見てから、バラシて芸術劇場の舞台上に運び込み、組み上げます。

0W1A7289_s

0W1A7296_s

IMG_2566

IMG_2574
▲稽古後、野外劇場に移動し、舞台装置を見学。あの平台のようなものがあっという間に組み上がっていました!全容は・・・ぜひご自身の目で!!

演出・俳優・技術スタッフ・制作スタッフそれぞれの“歯車”がガッチリかみ合い、本番に向けて高速回転中!そんな現場の様子を垣間見ることができるイベント「おためし劇場」を11/17(土)に開催しますので、ぜひぜひご参加ください!!

=====

SPAC秋→春のシーズン #2『歯車』
構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/24(土)・25(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

チケット
発 売 日:9/23(日)会員先行予約 9/30(日)一般前売
料  金:一般4,100円 ペア割引3,600円 ゆうゆう割引3,400円
学割2,000円[大学生・専門学校生]1,000円[高校生以下] ※ほか各種割引あり
購入方法:SPACチケットセンター TEL:054-202-3399(10:00~18:00) ※公式サイト、劇場窓口でも購入可

★【開催決定!!】おためし劇場
演出家の話を聞いたり、普段は見られない舞台の裏側をのぞくことができる無料のイベントです♪
11/17(土) 13:30~15:00 [無料・要予約]
静岡芸術劇場
ご予約・お問い合わせ:SPACチケットセンター

★公演の詳細はこちら
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

★トレーラー第一弾はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=NBi9mdWKW5c

★ブログ「歯車ワークス」過去の投稿記事はこちら
http://spac.or.jp/blog/?cat=113

=====


2018年10月24日

歯車ワークス#5 “イメージ”を重ねる

Filed under: 『歯車』2018

10/9にスタートした『歯車』の稽古も早2週間ほどが経過。
今は、『歯車』の原作を1章から順に即興で演じ、そこから気付いたこと・イメージしたこと・キーワードになりうるものを挙げていく、という作業を行っています。
まずは、たっぷり2時間ほどの時間をかけて、原作の気になった言葉やシチュエーション、そこから連想されたものを挙げ、話し合い、一つ一つのシーンを丁寧に解体していきます。
0W1A7069_s

0W1A7070_s

その後、持ち寄った様々な小道具を使いながら、即興で演じてみます。
0W1A6926_s

0W1A7046_s

0W1A7051_s

俳優たちからは、
「地の文を読む人と主人公の“僕”を演じる人が、分かれると良いのでは?」
「地の文を読んでいる人も読みながら動いたり、“僕”を演じている人に迫っていくと不安感が増すね」
「マグリットやデルヴォーの絵のイメージがある」
「テクノ系の音楽って作品に合っているかも」
などなど、話し合いの場以上に様々なアイデア・イメージが挙がってきます。
0W1A6979_s

0W1A7002_s

0W1A7055_s

『歯車』原作でも、芥川自身と思しき主人公の“僕”は、乗合自動車で理髪店の主人から「レエン・コオトを着た幽霊」の話を聞いた後、レエン・コオト、モオル(英語でMole=モグラだが、仏語でla mort=死を意味する)、黄色いタクシー、ブランコのないブランコ台、黄色い飛行機…などなど、目にしたものを次々に不吉な、死の象徴として捉え、関連付けては自分を追い込んでいきます。
そんな滑稽ともいえる“僕”の妄想がどんどんどんどん重なっていく原作から、感じたイメージを取り出し、重ねていくことで、作品を自分ごととして引き寄せるとともに、芥川の精神世界を深掘りしていきます。

一方10/21(日)には、関連企画として、すぱっく新聞の取材でも訪れた芥川ゆかりの修善寺・新井旅館で、リーディングカフェ&感想コラージュ画制作ワークショップを開催!
(★関連リンク:「静岡で芥川を訪ねて1 ~伊豆・修善寺 新井旅館~」)
俳優・片岡佐知子のナビゲートの元、『歯車』を約2時間(!)かけて、全員で声に出して読んでみました。
IMG_2449

その後、伊豆を拠点に様々な芸術に関わる企画を展開するScale Laboratory(スケラボ)さんのナビゲートのもと、作品世界を表現するコラージュ画に挑戦。
コラージュとは、芥川が自殺し、『歯車』が発表された1927年頃、ヨーロッパでシュルレアリストのマックス・エルンストが始めた、カタログや挿絵を切り抜き、組み合わせ、新しいイメージを作り出す技法。
参加者は、スケラボさんがあらかじめ用意してくださった自然科学をはじめとする様々な洋書の挿絵を切り抜き、組み合わせて、自分が感じた『歯車』の世界を描いていきました。
IMG_2455
▲“蟹を食べる時”のように(笑)黙々と作業する

IMG_2460
▲完成した作品の観賞会。作者は制作イメージを発表しました。

IMG_2474
▲何の関連性もないパーツを組み合わせただけなのに、“ぼんやりとした不安”を感じる不思議な世界が。

この「イメージを重ねて新たなイメージを作る」というコラージュの技法、『歯車』原作にも、そして今稽古場で行われていることにも何だか通じる気が。
演出の多田さんと俳優たちは、多くの“イメージ”パーツをどう選択し、組み合わせ重ね合わせて、どんな『歯車』の世界を立ち上げるのでしょうか…?
どうぞご期待ください!
そしてワークショップで制作した作品は、『歯車』公演期間中、芸術劇場のロビーに展示しますので、こちらもお楽しみに♪

=====

SPAC秋→春のシーズン #2『歯車』
構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/24(土)・25(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

チケット
発 売 日:9/23(日)会員先行予約 9/30(日)一般前売
料  金:一般4,100円 ペア割引3,600円 ゆうゆう割引3,400円
学割2,000円[大学生・専門学校生]1,000円[高校生以下] ※ほか各種割引あり
購入方法:SPACチケットセンター TEL:054-202-3399(10:00~18:00) ※公式サイト、劇場窓口でも購入可

★公演の詳細はこちら
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

★トレーラー第一弾はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=NBi9mdWKW5c

★ブログ「歯車ワークス」過去の投稿記事はこちら
http://spac.or.jp/blog/?cat=113

=====


2018年10月20日

歯車ワークス#4 静岡で芥川を訪ねて2 ~静岡市清水区・新定院から江尻埠頭~

Filed under: 『歯車』2018

静岡県内で芥川の足跡をたどると、修善寺の新井旅館のほかにもう1か所、静岡市清水区北矢部にある臨済宗のお寺・新定院に行き当たります。
前回ご紹介した新井旅館は、芥川が亡くなる2年ほど前療養のために訪れた場所ですが、新定院は芥川が東京帝国大学英文学科へ進学する直前に訪れた場所。友人たちに宛てた書簡は、芥川の瑞々しいエネルギーに満ちています。(★関連リンク:「静岡で芥川を訪ねて1 ~伊豆・修善寺 新井旅館~」)

このたび、新定院をはじめ書簡から読み取れる場所を実際に訪れてみました!

=====

大正2(1913)年8月、芥川は新定院を訪れ、10日間ほど滞在。最初は清水区興津の清見寺を滞在先に選んだものの、あいにく満室(?)のため、同寺に紹介されたのが、この新定院だったそう。

IMG_2362
▲今川義元公の家臣・野呂民部丞が建立し、彼の子息が開山となった由緒あるお寺、新定院。

IMG_2363
▲徳川家康公から朱印状を与えられた徳川家にも所縁のあるお寺であることから、瓦に葵の御紋が。

IMG_2447
▲今川義元公の存命中に作られた肖像彫刻。現存しているのはこちらを含め4体だけだそう。

芥川は新定院に滞在中、午前中は読書をしたり友人宛に手紙を書いたりして過ごし、午後は連日江尻まで海水浴に行っていたようです。また、清水区村松の龍華寺(高山樗牛のお墓がある)や鉄舟寺も時折訪れていました。
またご住職のお話からは、芥川が近所の駄菓子屋に釣竿を隠して(預かってもらって?)釣りに行ったり(殺生禁止なので、釣竿は寺に持ち込めない)、近所の女の子の似顔絵を描いてあげたり(あまり似ていなかったので、もらった女の子は似顔絵を捨ててしまったそう)、という何だか微笑ましいエピソードも。

IMG_2444
▲ご住職からお話を伺う。

IMG_2445
▲静岡新聞に掲載されたことも。

IMG_2448
▲ご住職と。芥川滞在時のご住職は祖父に当たるとのこと。芥川は当時のご住職と本堂の濡縁に座ってよく話をしたそう。

そんなのんびりとした旅先の生活の中でも、芥川の無類の甘味好きは健在。
浅野三千三(化学者。府立三中の後輩。後に東大教授として細菌学の分野で活躍)や広瀬雄(府立三中の恩師)宛ての手紙には「殊にこの頃は毎日海水浴をすると田舎料理の塩からきを食ふとの為甘い物に対する需要一層甚しく東京よりはるばる持来れる甘納豆バナナケークデセールなど既に大半を平らげてしまい候。」「毎日海水をすこしづつのむのと塩からき御菜を食ふとの為、甘い物が恋しく江尻清水の菓子屋は渉猟し尽し候。」と記しています。
東京からスイーツ持参って…、しかも何種類も…相当ですよね(笑)

また芥川は、当時の清水の様子を様々書簡に記しています。

(前略)江尻の海水浴場は眼界稍〃狭く設備も不完全に候へども鵠沼逗子鎌倉などの如く紅紫染わけの水浴衣に靴をはきて水にはいる様な奴がゐないだけ心地よく候。(中略)僕のゐる寺は禅寺にて主の和尚はサイダと云ふ語をしらず候。禅僧などと云ふものはのんきなものに候。(後略)

――8月12日 浅野三千三宛書簡より

 
(前略)猶同村の某家にては数年来家内に病人の絶えざる為易者を招きて卦を考へしめ候所、家の下の土中二丈五尺(※約7.6m)にして甲冑刀剣あり家人の病むはその祟なりと申し候より早速土を掘らせ候ひしに果して二丈五尺にして甲冑一具太刀一振を得し由に候。村の人々は皆易者の断じ得て神に入るを賞し居り候へども小生は寧易断を信じて直に二丈五尺の深きを掘りたるその家の主人の純朴さ加減に感心致候。(後略)

――8月19日 広瀬雄宛書簡より

東京生まれ・東京育ちの芥川は、清水とそこに住む人々の生活を、楽しみつつも驚きやもしかしたら若干の呆れを抱きながら観察していたのかもしれません。

さて、連日海水浴を楽しんでいた芥川ですが、新定院から江尻海水浴場までの道々の様子は、8月16日付井川恭(一高の同級生で親友)宛の手紙に記されており、今もほんの少しだけ、当時の面影を残す場所が。

例えば、
不二見橋と云ふのを渡る。欄干の下を碧い水がみがいた硝子板の如く光り乍ら流れる。
と記された富士見橋。

IMG_2365
▲富士見橋

IMG_2366
▲富士見橋から巴川をのぞむ

輕便鐵道の線路を一つ横切ると・・・
と記された輕便鐵道軌道跡地。昔は道がもっと広かった!という訳ではなく、港との物資を運んだりする横に細い電車だったそうで、線路の幅は現在の路地の幅と同じ。一体どんな感じで走っていたのか、想像できません…。

IMG_2369
▲輕便鐵道軌道跡地

そして、
江尻の海岸は眼界が余り廣くない。右に長く差し出た三保の半島 左にたヽなはる愛鷹の連嶺その間には伊豆の山々が曇った日はかすかな鼠色にはれた日にはさえた桔梗色に長く連なってゐる。
と記された江尻海水浴場。
今は港になってしまい、海水浴場は影も形もありませんが、この日は秋晴れの空に富士山がくっきりと。

IMG_2371
▲江尻埠頭から富士山をのぞむ

あなたも書簡集を片手に芥川が滞在した当時を思いながら、清水を歩いてみては?

=====

SPAC秋→春のシーズン #2『歯車』
構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/24(土)・25(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

チケット
発 売 日:9/23(日)会員先行予約 9/30(日)一般前売
料  金:一般4,100円 ペア割引3,600円 ゆうゆう割引3,400円
学割2,000円[大学生・専門学校生]1,000円[高校生以下] ※ほか各種割引あり
購入方法:SPACチケットセンター TEL:054-202-3399(10:00~18:00) ※公式サイト、劇場窓口でも購入可

★公演の詳細はこちら
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

★トレーラー第一弾はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=NBi9mdWKW5c

★ブログ「歯車ワークス」過去の投稿記事はこちら
http://spac.or.jp/blog/?cat=113

=====


2018年10月15日

歯車ワークス#3 いよいよ稽古スタート!

Filed under: 『歯車』2018

10月9日、ついに『歯車』の稽古がスタートしました!

IMG_2374
 

演出の多田さんはSPACでの演出が初。また何と出演者6名の間でも「今回〇〇さんとは初共演なんです」という話がチラホラ。そこで初日は、“お互いを知る”ために自己紹介の時間をたっぷり取りました。

IMG_2380
▲ホワイトボードを使いながら、ご自身の経歴を話す多田さん。2008年~韓国でも活動されていることから、途中ハングル語講座になる場面も(笑)

★多田さんのこれまでの活動歴を知りたい方は、多田さんが主宰する劇団「東京デスロック」のサイト

その後、多田さんと俳優たちで原作の「歯車」のイメージなどをフリートーク。
この話し合いの中で、
「原作の骨組みや要素は残しつつ、外のテキストも入れていきたい」
「劇場内それ自体を“とある場所”というように作れないか」
といった今後のクリエイションに係るような発言も多田さんから飛び出しました。

稽古2日目、そして3日目は、“ぼんやりとした不安”をテーマに、俳優たちがそれぞれ即興で小作品を創作。
“私のぼんやりとした不安”をテーマにした回では、「虫歯」「スマホが不安を増大させていく」「悪夢」「家族が寝ている姿を見ていると、砂が詰まった何か別のものに見えてくる」などなど…個性あふれる題材・表現方法の小作品が発表されました。

0W1A6783_s

0W1A6791_s

0W1A6800_s

次に“社会のぼんやりとした不安”をテーマにした回では、「東日本大震災」「関東大震災」「最近の学校での道徳の授業」などなど、やはり題材も表現方法もさまざまながら、今回の作品のキーになりそうな“不安”も。

0W1A6803_s

0W1A6808_s

0W1A6809_s

これら俳優たちが取り上げた題材をホワイトボードに書き出し、ここからさらに「今の中高生は何に対して“ぼんやりとした不安”を抱いているのか?」「芥川は実際何が不安だったのだろうか?」といった感じで“ぼんやりとした不安”について議論を深めました。

IMG_2397

IMG_2399

座組みの全員が、まだまだ“ただぼんやりとした不安”の真っ只中!(笑)ですが、多様な意見が飛び交う活気あふれるこの稽古場から、現代を生きる私たちが抱える“ただぼんやりとした不安”を抉る傑作が生まれる予感が。
単に芥川の小説『歯車』そのままを舞台化するのではない、多田淳之介×SPACが贈る新たな『歯車』にどうぞご期待ください!

=====

SPAC秋→春のシーズン #2『歯車』
構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/24(土)・25(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

チケット
発 売 日:9/23(日)会員先行予約 9/30(日)一般前売
料  金:一般4,100円 ペア割引3,600円 ゆうゆう割引3,400円
学割2,000円[大学生・専門学校生]1,000円[高校生以下] ※ほか各種割引あり
購入方法:SPACチケットセンター TEL:054-202-3399(10:00~18:00) ※公式サイト、劇場窓口でも購入可

★公演の詳細はこちら
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

★トレーラー第一弾はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=NBi9mdWKW5c

★ブログ「歯車ワークス」過去の投稿記事はこちら
http://spac.or.jp/blog/?cat=113

=====


2018年9月21日

歯車ワークス#2 静岡で芥川を訪ねて ~伊豆・修善寺 新井旅館~

Filed under: 『歯車』2018

まさかの2年目!?に突入した「すぱっく新聞」。このたび『歯車』号が完成しました!!

IMG_2359

前回ご紹介した、鈴木と佐藤(by SPAC秋のシーズン2015『王国、空を飛ぶ!』)の再登場の謎、
そして白衣やカメラマンがどう『歯車』新聞に関係したのか…それは見てのお楽しみ♪
SPACの劇場はじめ、これから街中などにもガンガン配架していきますので、見かけたら是非お手に取ってくださいね。

★「紙の新聞を手にするのが待ちきれない!」という方、SPAC公式サイトの『歯車』ページからもご覧いただけます♪
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

さて、今回新聞の制作にあたり、“芥川ゆかりの場所”として修善寺・新井旅館を『歯車』に出演する俳優・河村若菜が訪問。すぱっく新聞では掲載しきれなかった芥川滞在時のエピソードや女将さんのお話をご紹介します。

=====

明治5(1872)年創業の新井旅館は、伊豆半島で最も歴史ある温泉の街・修善寺の老舗旅館。
安田靫彦、横山大観といった日本画家、芥川龍之介、泉鏡花、尾崎紅葉や岡本綺堂といった作家など、明治~昭和期の日本文化を彩った多くの文人墨客が滞在しました。

0W1A5963_s
▲新井旅館正面

これだけの錚々たる面々がこの旅館に逗留した大きな理由は、三代目のご主人・相原寛太郎氏の存在。寛太郎氏は、東京美術学校(現在の東京藝大)に学び画家を志すも、新井旅館を継ぎ、画家の道を断念。その後は、自分の夢を託すかのように若手芸術家への支援を惜しまず、そんな寛太郎氏との芸術談義を楽しみに訪れる者も多かったそうです。女将の森桂子さん曰く、「岡本綺堂さんが『修禅寺物語』を当館で執筆されていらっしゃるのですが、主人との話から創作のヒントを得ている」とのこと。

寛太郎氏と芸術家たちの交流が、今に残る多くの名作を生んだのですね。新井旅館には彼らが逗留のお礼として寛太郎氏に贈った絵画や書が数多く残され、その作品群は「沐芳コレクション」と言われています。

0W1A5876_s
▲風情ある中庭の様子

0W1A5920_s
▲女将の森桂子さんと

芥川は大正14(1924)年4月10日から約1カ月間滞在。神経衰弱・腸カタルなどを患い体調が優れなかった彼は、療養を目的で同地を訪れました。
当時も口コミと言うか、作家仲間同士の横のつながりはあったようですから、「身体が悪いんだったら良い温泉が修善寺にあるけど、どう?」みたいな紹介があったのかもしれませんね。

ただ、当時の文壇きっての売れっ子だった芥川は、折角療養に来たここでも「仕事から離れてゆっくり」はできなかったようで…月の棟3階の部屋で、仕方なく仕事をこなしていたそう。妻や友人に宛てた手紙で「ここにいても電報ばかり来やがってやり切れない」「ここにいても電報ぜめで(もう電報を十本貰っています)おまけに原稿催促人までも出張するので、・・・」などと度々愚痴をこぼしています。
そんな芥川を、同時期に滞在していた泉鏡花の奥さんは「あなた、何のために湯治にいらしったんです?」と呆れつつ、世話を焼いてくれたようです。
なお、芥川が滞在したお部屋は現存していますが、残念ながら今は使われていません。

0W1A5933_s
▲芥川が泊った月の棟3階の真下のお部屋。窓の外には芥川も眺めたであろう巨木が。

そんな芥川のここでのお気に入りは「風呂」と「食事」。
お風呂に関しては、妻と叔母宛てに絵入りの手紙まで送っています。

「…をばさん、おばあさん、ちょいと二、三日お出でなさい。ここのお湯は(手書きのスケッチが入る)言う風になっていて水族館みたいだ。これだけでも一見の価値あり。」(大正14年4月29日付)

書簡のスケッチ
▲大正14年4月29日の書簡より “水族館のような”風呂のイラストや、新井旅館の各棟の配置図が。

何だか子どものようにはしゃいでいる姿が目に浮かびますね。
芥川が「水族館みたいだ」と例えたこのお風呂、お風呂場の下方のガラス越しに池の中が覗ける造りになっていて、人の気配を感じると鯉がガラス近くまで寄ってくるそうです。

ところが、実のところ芥川は大の風呂嫌い。
作家の中野重治が、彼の死後に追悼文を書いており、そこには「この人は湯になどはいらぬのか、じつにきたない手をしていた。顔なども洗わなかったのかもしれない」とあります。
大の風呂嫌いをして人に勧めるほど、このお風呂に芥川は興奮し、また気に入ったのでしょうね。
芥川が入ったお風呂そのものはその後の改修により現存していませんが、この池が覗ける“水族館のような”お風呂は、今でもあるんです。

0W1A5950_s
▲池に泳ぐ鯉。右手の建物は「桐の棟」。昭和7、泉鏡花は1階奥の「桐三号室」で『斧琴菊』を書き上げました。

そして、もう一つの楽しみは「食事」。
芥川は書簡の中で、どんなものをいただいたのか、細かく記しています。
それを見ると…「朝 牛乳一合、玉子一つ、バナナ三本、珈琲。」とか「食後に角砂糖三つか四つ。こいつは癖になった。」とか…。
芥川の甘味好きはこれまた有名ですが、角砂糖って最早甘味を通り越してそのものですが…、
女将さん曰く当時角砂糖はごちそうだったとのこと。

また、芥川は「凍りしいたけ」なるものも食べていたそう。
「よく分からないのですが、採ってきた生しいたけを凍らせて食べるらしいです。今はそういったものをご提供することはないのですが、本当に美味しいらしくって、新鮮だからこそできるんでしょうね」とのこと。
伊豆は原木でのしいたけ栽培発祥の地と言われ、今でも名物の一つ。香りが強く肉厚で歯応えがあるしいたけを、芥川も楽しんだのでしょう。

今も日本はもちろん海外からも、文人墨客の足跡を訪ねて、多くの方が訪れる新井旅館。
中でも芥川は一番人気らしく、「こんな若い方でも興味があるんだ」って驚くこともあるそう。
また、作家や書道家、ミュージシャンが長期滞在することもあるそうで、「良い“気”がもらえる」「作品にあらわれるものが違う」と言っていただくとか。

あなたも、季節ごとに表情を変える山々や清流から良い“気”をもらいつつ、芥川の息づかいを感じてみてはいかがでしょうか?

=====

SPAC秋→春のシーズン #2『歯車』
構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/24(土)・25(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

チケット
発 売 日:9/23(日)会員先行予約 9/30(日)一般前売
料  金:一般4,100円 ペア割引3,600円 ゆうゆう割引3,400円
学割2,000円[大学生・専門学校生]1,000円[高校生以下] ※ほか各種割引あり
購入方法:SPACチケットセンター TEL:054-202-3399(10:00~18:00) ※公式サイト、劇場窓口でも購入可

★公演の詳細はこちら
http://spac.or.jp/haguruma_2018.html

★トレーラー第一弾はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=NBi9mdWKW5c

★ブログ「歯車ワークス」過去の投稿記事はこちら
http://spac.or.jp/blog/?cat=113

=====


2018年8月29日

歯車ワークス#1 奇妙な撮影大会

Filed under: 『歯車』2018

10月から始まる秋→春のシーズン。
その第二弾は文豪・芥川龍之介の遺作『歯車』です。

知人の結婚披露式のために上京した、ある男。
彼は破滅や死への不安、そして時に歯車の幻覚に襲われながらも、心を平静に保とうとひたすら執筆に向かいます。

本作を演出するのは、劇団「東京デスロック」を主宰し、古典からダンスまで幅広い作品をアクチュアルに立ち上げてきた多田淳之介さん。
劇団名のとおり、「死」というテーマに長年取り組んできた多田さんは、行き詰った「死」のイメージを、どのようにして「生きること」への希望を持った舞台へと再生するのでしょうか――?

★7/23(月)、東京・飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京で、「秋→春のシーズン」の製作発表会を開催しました。多田さんが本作についてコメントしていますので、こちらのレポートも是非ご覧ください。
http://spac.or.jp/blog/?p=24624

稽古スタートはまだまだ先なのですが…まさに今、『歯車』すぱっく新聞を絶賛製作中!
先日、静岡芸術劇場でトップ記事の写真撮影を行いました。

カメラマン(?)の三島景太と何故か白衣の春日井一平。

IMG_2326

どこかで見た二人…と思いきや何と鈴木さん(大内智美)と佐藤さん(坂東芙三次)再登場!?(by SPAC秋のシーズン2015『王国、空を飛ぶ!』

DSC_1403

多田さんにも撮影に参加いただきました(ありがとうございます)!

IMG_2331

『歯車』と白衣がどう関係するのか、そして何故鈴木と佐藤がここにいるのか…!?
それは…9月中旬のすぱっく新聞の完成をお楽しみに♪
そして、舞台『歯車』もどうぞご期待ください!

=====

SPAC秋→春のシーズン #2
『歯車』

構成・演出:多田淳之介
原作:芥川龍之介
出演:大内智美、奥野晃士、春日井一平、河村若菜、坂東芙三次、三島景太[五十音順]

一般公演
11/25(土)・26(日)・12/1(土)・2(日)・8(土)・9(日)・15(土) 各日14:00開演
静岡芸術劇場

★秋→春のシーズンラインナップ詳細はこちら
http://spac.or.jp/autumn2018-spring2019.html