2014年11月9日

『走れメロス』俳優トーク(大内米治・大道無門優也)

中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆

中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。パンフレット裏表紙のインタビューのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。

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メロス役:
大内米治(おおうち・よねじ)

アメリカ・ニュージャージー州出身。2007年よりSPAC在籍。
 
 
 
 
 
 
 
 
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読者役:
大道無門優也(だいどうむもん・ゆうや)

長野県出身。2009年よりSPAC在籍。
 
 
 
 
 
 
  
 
<2人で進めるビリヤード>
大道無門(以下D) 以前に『走れメロス』を上演した時、この作品はビリヤードに似てると思った。最初のブレイクショットは毎回同じように始めるんだけど、その日によって球の散らばり方が全然違う。でも、ちゃんと数字の順番通り、ポケットに球を落としていかないといけない。「今日は、あの球、そこに行ったか!」と思って、「最後にあそこに辿り着くために、1つ前の球をこういう風に落して…」みたいなことに必死になってる。
大内(以下O) 『走れメロス』だけ? 他の作品ではそう感じない?
D 『走れメロス』は特にそう感じる。舞台が長方形だからかな(笑)
O きっと2人で演じてることも関係あるね。
D 互いに球を落とさないといけないから。
O 一方が変なところに球を散らかすと大変(笑)

<演出家・安田雅弘の魅力>
D 稽古の初め頃、演出の安田雅弘さんから、メロス役とその他の役にざっくりと台詞分けした原作小説を渡されて、「これをしばらく演じ分けるように」と指示があった。その内、演出家が「大道無門君が、なんでいくつも役をやっているのか、もっと考えろ!」と言われるようになって、落ち込んで帰ってたね。
O (笑)
D たくさんの役を演じることに意味づけするとすれば何だろうって一生懸命考えた結果、ぼくが読書をしているというストーリーになっていった。
O 安田さんは、皆のアイディアを見て判断するタイプだね。人のアイディアをどんどん取り入れる。
D あんなに誠実に、「お前たちのここが不満だ!」って、いつまでも言い続けてくれる人はいないね。宮城聰さん(演出家・SPACの芸術総監督)は「お前はそのままでいい。お前がおもしろく見えるポジションを俺が用意するから」って感じでしょう。
O えー、それ、人によるよ。
D ……(お腹の音)
O (爆笑)
D 今日はお酒とか入ってもよかったと思うね(笑)
O まあでも、安田さんの話はわかるよ。
D まだ俺のこの部分に見切りをつけていなかったのかと思うくらい、「お前のここは、俺にとっては不満なんだ!」って、ずーっと言ってる。それを乗り越えた時は、次の不満なところを一生懸命探して言ってくれる。
 
<漫才で“怒り”の訓練?>
D 今回は、安田さんが優しいよね?
O 前回の稽古場は悲惨だった(笑)
D 毎日、へこんでたもん(笑)
O 安田さんは「好きなことをやれ!」と言うから、俳優はアドリブで色々やるでしょ。すると「バカヤロー! おもしろくねえよ!」って反応が来て、大道無門も「バーカッ!」って…
D 心を開いて稽古をしているから、演出家が凄い憎しみをぶつけてきたら、こっちも思う様、憎めるわけだよ。だから、ちゃんとコミュニケーションがとれていたってことだよね。
O 今回、演出として新しく加わったことと言えば、映像ですね。どんな映像にするかという話になった時、ちょっとふざけて、中高生に楽しんでもらいたいと話していたよね。演出家が優しいのも、その流れがあるのかな。漫才の稽古をしたし。スタッフも巻き込んで、一緒にね。お題は「最近、腹が立ったこと」。怒りの表現を掘り下げるためにやるのかなと思ったんだけど…
D そうじゃないね。
O その場にいる人を喜ばせる方法を探っていた感じ。「バカヤロー!」って本気で言うのではなく、ちょっと笑いを誘うような感じで「バカヤロー!」って怒る。
D この公演に限らず、ちょっとずつ変えていかないと、前回と全く同じことをしようとしても、俳優が死んでしまうんだよね。わざと方向性を変えていくところはあるね。
 
<舞台は生ものですから…>
D ぼくは、本番が始まって、もしも最初に、最後の台詞を言ってしまったら…って、よく考える。ってか言おうと思ってる。
O どういうことだよ(笑)!
D その日、自分が何をしでかすかわからない。少なくとも、メロスはそういう男。そんな男の話を語るにあたって、決められたことを決められたまま、かっちりやる状態で幕を開けるのは、正しくない気がして…
O 俺は、最初の頃、毎日同じことをしようと思っていた時期があったね。それでも、お客さんの側も毎日違うから、作品が変わっていく、というのが理想と思ってた。でも今は、やっぱり毎日違うんだから、違うことを舞台の上で素直に受け取ろうと思ってる。大道無門が「どうなるかわからない」と言ったけど、まあ、そうなるよね。

<友情をどうやって描く?>
O カーテンコールで、音楽がかかるでしょう?
D エルヴィス・プレスリーが歌う、サイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』。
O それが流れて、俺と大道無門が向き合ってお辞儀する。友情を信じていたけど、もしかしたら嘘かもしれない、というところまで経験した2人が、目だけ合わせて「じゃあね」って言って別れる。哀しみまで含まれているね。いわゆる「友情、最高!」ではない。
D メロスと読者の肌と肌が触れ合うのは、実は、最後の抱き合うシーンだけ。ここで初めて接触する。それまでは、触ろうかな、触らない、触れられるかな、触れられない、って演技ばかり。この舞台には、「他者と出会う」というテーマがあると思う。それは読書によってわかることかもしれない。主役は、読者役のぼくですね。
O うん。
D 「うん」って言った(爆笑)
O いやいや、そういう話なんですよ。
D 『走れメロス』を読む男の演劇だね。読書体験を演劇にした珍しい作品だと思う。
 
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<演劇を始めたきっかけは?>
D ぼくは小学校から高校まで図工が大好きだった。高校生になって、美術部と演劇部に入って、演劇もおもしろいなと思い始めて、大学では彫刻を勉強しながら演劇も続けていた。彫刻家にもなりたかったんだけど、その時、たまたま演劇の方が楽しかったから、もう少し続けるつもりでいたら、20年くらい続いている。
O 俺は勘違いかな。自分の思っていることを表現できる場所があるかもしれないっていう。
D 勘違い?
O 勘違いっていうのは、その時に出会ったのがたまたま演劇だったってこと。もっと色んなものに出会っていたら、その中の他のものでもよかったかもしれないって意味。たまたまその時に出会って、これだ! と思って掴んだのが演劇だった。
D 確かに、色々知っている中から演劇を選んだわけではないね。たまたま近くにあったから手をかけて、ここまで生きてきただけだよね。
O 中高生向けの話じゃないと思われるかもしれないけど、俺、若い時からそんな感じあったよ。人生について考えてた。これからどういう風に生きていくんだろうって…
 
<なぜ演劇を続けている?>
D 例えばさ、落ち込んでる人がいた時、SNSだけじゃ埒(らち)があかないと思って電話する、電話だけじゃ埒があかないと思って会いに行く。それって、文字や声だけの情報より、実際に会ってやってあげられることの方が多いからだと思う。実際に会った方が、相手に対して、たくさんのことをあげられるから。これって演劇だよね。その人は、落ち込んでいる友達に対して、演劇をやっているんだって感じるのね。ぼくがお芝居に出ることも、70分間なら70分間、会いに来てくれた人たちと全力で会っているのと同じ。全力で会った結果、たまたま昨日とだいたい同じことをしたりするんだよ。人が人と会うことの全ては演劇だと思うし、会ったらできることの力を信じている。人が人と会うことがなくならない限り、演劇もなくならないと思う。演劇の素晴らしさはちっとも減らないと思ってやっているかな。
O 俺は…わからないんだと思う。なんで演劇をやっているのかわからない。色々理由づけは考えるんだけどね。なぜ今でもやっているんだろうね。最初は2年くらいしたらやめようと思っていたけど、やっていく内にわかることがものすごく増えてくるし…なぜ演劇をやるのか、ずっと探してる。年を経るごとに答えはどんどん変わっていくね。最初は作品のためにと思ってやっていたし、途中からお客さんと出会いたいと思うようになったし…そういう願いも持たずに、その場に立つ、その場に生きることをやってみたいと思ったりね。なぜ演劇を?ってきかれると、わからないな。変に理由づけするのが嫌で。わからないって答えでいいのかな?
D いいんじゃない? 大人にもわからなくてやり続けることがあるんだって思ってもらえば。
O それがうまく伝わればいいんだけどね。惰性ではやってないんだ。
 
<中高生へのメッセージ>
D 最初の2年でやめればいいと思ったのは、なぜ?
O 演劇をやる理由をがっつり掴んで帰ってやるぜ!って思ったの。でも掴めなかった。おい、まだここにも何かあるよ!って。ずっと掴み続けている。その内、掴むのも疲れちゃって、眺めて立って…
D 「朝(あした)に道を聞かば夕べに死すとも可(か)なり」って本当だなって思うね。
O どういうこと?
D 「もし朝、自分が何をすべきか悟ったら、夜には死んでもいい」。
O 答えが出ないからね。答えが出ないのが楽しいのかもしれない。中高生鑑賞事業の上演後に、中高生へメッセージを言うでしょ? どんな話が一番響くんだろうって考えた結果、そんなことより、一緒にこの芝居をつくってくれてありがとうって言った方がいいと思った。観劇してくれたことで、俺たちの心も変わる。感謝の気持ちと、君たちもいま走ってるんだよってことを伝えたい。
D うん。一緒に走ってくれてありがとうって気持ちだね。
 

(2014年9月18日 舞台芸術公園にて)

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SPACレパートリー/中高生鑑賞事業
『走れメロス』
10月29日(水)~11月28日(金)
県内各会場

*公演詳細はこちら
※『走れメロス』の中高生鑑賞事業パンフレットはこちらから読むことができます。