2015年11月20日

【王国、空を飛ぶ!】脚本・演出 大岡淳ロングインタビュー

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆

中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。パンフレット裏表紙のインタビューのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。


脚本・演出 大岡淳(おおおか・じゅん)
演出家・劇作家・批評家。批判的エンタテインメントの創造を目指し、静岡県内外で演劇・人形劇・オペラ・ミュージカル・コンサート等を幅広く手がける。演出近作として『此処か彼方処か、はたまた何処か?』(2014)が好評を博した。編著に『21世紀のマダム・エドワルダ』(光文社)。現在、SPAC文芸部スタッフ、ふじのくに芸術祭企画委員、静岡文化芸術大学非常勤講師を務める。

――アリストパネスの『鳥』を上演作品に選んだ理由を教えてください。
以前から、アリストパネスという劇作家は必ず演出しようと思っていました。演劇史を考えると、最重要の作家はアリストパネスではないかとつねづね思っています。昔、演劇誌『テアトロ』の「夢の劇場」という特集に寄稿したことがあるのですが、そこでアリストパネスに新作を書かせたいと書いたことがあるくらいです。喜劇は演出家として経験を重ねないとつくれません。さめざめと哀しみを喚起して感情同化を巻き起こすよりも、単純に人を笑わせるほうが難しいのではないかと思います。笑いは、批評・批判・風刺精神の表れですが、それで上演時間を保つのは難しい。喜劇に手が出せるとしたら経験を重ねてからだろうと思っていまして、私は30代の後半から、少しずつ喜劇的な題材を扱うようになりました。そういえば、今回の『王国、空を飛ぶ!』で音楽監督をお願いした渡会美帆さんと初めて組んだのは、2009年に袋井市・月見の里学遊館で上演した、モリエールの『喜劇ゴリ押し結婚』でした。SPACでは、俳優の奥野晃士さんとつくってきた「動読」シリーズ。これは奥野さんのパーソナリティの賜物ですが、コミカルな作風のものも多かったです。それらの蓄積を踏まえて、いよいよSPACから静岡芸術劇場で演出を任されるという名誉な仕事をもらい、宮城聰SPAC芸術総監督から提示された候補作はいくつかありましたが、悲劇ではなく喜劇、他の作家ではなくアリストパネスを選びたいと思いました。

――なぜ古代ギリシアの喜劇を現代の物語におきかえたのですか?
古代ギリシアの演劇が、なぜ演劇史で重要かと言えば、そこでだけは言論の自由が保障されていたからです。原作者のアリストパネスは、ペロポネソス戦争に反対した作家で、戯曲のなかで、戦争推進派の同時代人を名指しで揶揄し、嘲笑し、挑発しました。「あんな連中が勇ましいことを言うのは気に食わない」と主張していたわけです。裏返せば、2500年後に自分の戯曲が読まれるかどうかなんて想定していなかったはず。ですから、そのままの形で上演しても文脈がわかりにくいですね。そこで『王国、空を飛ぶ!』は、主人公が人から鳥へ、そして鳥から神になるという、原作の骨格をふまえつつ、現代人に対する風刺を試みました。でも、本質は変えていないつもりです。

――アリストパネスのように演劇で個人批判をしてもいいのですか?
確かに個人攻撃は抵抗がありますよね。問題をゆがめかねないと思います。それでもアリストパネスがおもしろいのは、批判の矢を誰に向けるかについて、明確な方針があるわけではないこと。誰の味方でもなく、誰に対しても敵である。なぜなら、それが喜劇だから。「こういう人っているよね」という、ものまねのおもしろさを追求しています。あらゆる人間をやり玉にあげて、いくつかのパターンに押しこめて、この世の縮図をつくりあげる。それがたぶん喜劇の愉快な暴力性です。

――『王国、空を飛ぶ!』は、JR山手線の電車内の場面から始まります。静岡県の中高生にとっては、ちょっと距離感のある設定かもしれないという気がしました。中高生にどういう風に眺めてほしいですか?
日本社会全体の典型を描くために、サラリーマンを置いてみました。場面もまた典型的な光景として、朝の山手線から始まります。静岡県内の中高生は、山手線なんか乗ったことがない人のほうが多いでしょう。中には、単身赴任か何かで東京に勤務しているお父さんをお持ちの生徒さんもいると思いますが、ともかく、大人になって就職し、静岡を離れたらこんな生活が待っているのかもしれないという、10年後の自分自身を想像して見てもらいたいですね。サラリーマンは、今やあまり普遍性はなくなっていますが、一般的な大人を表象するのに便利な類型であることに間違いはない。

――確かに、10年後、中高生は『王国、空を飛ぶ!』に登場するサラリーマンのような生活をしているかもしれません。
公共劇場としては学習効果も考えなければいけません。中高生が等身大で理解できる範囲内で話をおさめてしまうと、テレビのお笑い番組と変わりませんよね。お笑いではそれをやるわけです。学校生活に設定を求めるコントが多いのはそのためでしょう。部活とか教室とかね。学園ものにしておけば、見る人の了解の範囲を設定しやすい。そんなふうに中高生におもねってしまうと、共感はできるけれど、何ら発見はないということになってしまう。古代ギリシアでは、アリストパネスの後にメナンドロスという作家が登場します。そのあたりからギリシア喜劇は新喜劇の時代に入り、これが後世のローマの演劇に受け継がれていきました。メナンドロスの作品は、ほぼホームドラマです。今上演してもそのままで伝わる。しかしアリストパネスの作品のほうが普遍性があると思うのは、社会の縮図を描こうとしているから。喜劇は、人間を類型化して描くところに特徴があります。固有名があまり必要のない世界です。『鳥』でも「詩人」とか「父殺しの若者」とかいう具合に固有名を持たない登場人物が出てきます。血液型占いではA、B、AB、Oで人間を網羅しますし、13星座であれば13種類の人間に区別しますよね。喜劇でも、人間を類型化しパターンをつくるわけです。全体性を仮構すると言えばいいでしょうか。そうすると、おのずから喜劇においては、中高生が無条件に共感できる話は、物語の一部分にすぎないということになります。ついでに言うと、悲劇は、固有名を持つ個人を描きます。例えば、シェイクスピアの『ハムレット』。王子一般が、ハムレットみたいに、父の復讐を課題としているわけでもなければ、それに躊躇をおぼえる日々を過ごしているわけでもない。ほかでもないハムレットだからこそ、復讐をためらい続けて、気が狂ったふりをする。『ハムレット』の悲劇は、ハムレットという固有名と切り離せません。

――原作に出てくる鳥人間ヤツガシラは、『王国、空を飛ぶ!』では学生運動の元闘士になっています。この設定にはどんな考えが込められていますか?
アリストパネスの原作『鳥』は、古代ギリシアのアテナイ市民が、日常生活から脱出し、架空の国家をつくり、そこへ逃げる話です。『鳥』に登場するヤツガシラの意味合いには重いものがあります。テ―レウスという王様が、ヤツガシラに化けたという設定になっている。テ―レウスは、妻プロクネーの妹を強姦し、その復讐で子どもを殺されます。この喜劇の背景に踏まえられているのは、こういう陰々滅々とした悲劇です。伝説によれば陰惨な復讐劇で憎しみあっていたテ―レウスとプロクネーが、『鳥』では仲睦まじいヤツガシラとナイチンゲールの夫婦として出てくるんです。憎しみあっているはずの2人が平和に共存しているという設定は、アリストパネスが一工夫したところです。その趣向は、今回は活かせないので、なぜ人間が鳥になる設定が必要なのか考えました。

――ヤツガシラは原作では神話上の王様だったんですね。その設定を変える必要があったということですか?
アリストパネスは、もともと人間だったけど鳥になったというキャラクターを入口として、人間と鳥が言葉によって対話できるという説明づけをおこなっています。では、今の日本社会で、その役割が果たせるのは誰か。人間社会を捨てて鳥社会に染まる人がいるとすればどんな人物か。普通に考えればヒッピーかなと思います。1960年代に政治運動の花が開いて、それが急速に潰されていくと、70年代にコミューン志向が登場し、80年代も持続して、資本主義に対する後退戦を闘っていくというスタイルが残りました。自給自足のコミューンをつくる人も、少数ながら存在したわけです。コミューンによって市民社会から逃避をはかる。こういうものが鳥の国のモデルになるのではないかと思いました。ただしヒッピーはもはやほとんど共有できない記号です。その他に市民社会から離脱するモチベーションを持っていた人は誰かと考えると、いわゆる団塊の世代に当たる、全共闘の闘士ではないかと考えました。1969年1月19日の東大安田講堂事件では、東大生はほとんどバリケードのなかに残っておらず、最後の最後まで戦っていたのは、よその大学から駆けつけてきた新左翼党派の連中でした。つまり、逃げた人もいれば、逃げ遅れた人もいたし、逃げずに戦った人もいた。警察官僚の佐々淳行が機動隊を指揮して安田講堂に突入した時、最後までバリケードに立てこもっていた人たちは、何を考えていたのかなと想像しました。屋上に追いつめられて、「この空を飛べたら…」と思った人がいたらおもしろいんじゃないか。69年の安田講堂事件を契機に、学生運動は急速に衰退します。運動を経験した後、普通に就職した人が多かったわけです。思想的には小市民へ転向したということになりますが、そんななかで、鳥の仲間入りをして志を貫いた人がいたらどうか。企業社会・市民社会から飛び出てしまって、何十年かを過ごしていたら……荒唐無稽な設定ですが、そのような人物が再び、鳥の国の建設に力を貸し、一度は捨てた夢を取り戻そうとする。その結果として何が生まれるか、を考えてみたわけです。ちなみに、大手予備校の講師にはこういう感じの人、たくさんいますけどね。

――鳥の国のイメージは、コミューンなんですね。大岡さんの脚本を拝見すると、鳥の国は、鳥たちの直接民主制のような形で成立しています。一方で、「ウンチョ国(雲鳥国)」と言われて揶揄されてもいます。大岡さんのコミューンへの評価は両義的なんでしょうか?
そうですね。このお芝居では、コミューンがひとつの国家へと発展していきます。人間の集団をどう運営していくのかを考えると、意思決定の方法は、3通りくらいしかありません。一人の代表者が全体のことを決めるか、複数の代表者にゆだねるか、みんなで決めるか。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが『政治学』のなかで言っていることでもあるし、近代政治学の祖マキャヴェリもこの3パターンを状況に応じて組み合わせて使っていくしかないというようなことを言っています。「王様が決める」「貴族が決める」「みんなで決める」のうち、最後の「みんなで決める」が民主制です。現在では民主制が一番いいということになっているわけですね。鳥の国は小さなコミューンから出発しますが、民主制を採用している点で、本質的には現代の国家と変わりません。とすると、『王国、空を飛ぶ!』は、ミイラとりがミイラになる話といえるかもしれない。国家から逃れようとした人たちが、もうひとつの国家をつくる話ですから。評価が両義的になるのは、そのためだと思います。

――近年、民主主義へのポジティブな見方は高まっているような気がしますが、この劇では、民主主義のポジティブではない側面への目配りがあるように思いました。そのあたりはいかがですか?
古代ギリシアの哲学者プラトンは哲人政治を求めていて、少数のエリートが全体のことを決めたほうがいいと考えていますね。アリストテレスも民主制が衆愚制になるのを警戒しています。現在でもよくポピュリズムという言葉によって衆愚が批判の対象になりますが、民主制が衆愚制に陥るのは、どういう時なのか。あるいは、衆愚制ではない民主制とはどういう状態なのか、よくわからないんです。みんなが賢くなって、それで物事を決めればうまくいくはずだというのは、理想論としてはわかりますが、でもただの理想論ですよね。そもそも「民主主義」という言葉の問題があります。本来は物事の決め方を表現しているだけの言葉である「democracy(デモクラシー)」を、日本人は「ism(イズム/主義)」だと勘違いしているんじゃないですか。戦後長らく「民主主義」は主義だという風に捉えられてきた。しかし率直に言って、「民主主義」に、主義としてのポジティブな価値を置くことに、私は違和感を持っています。

――民主主義は思想ではなく、集団の意思決定の仕組みにすぎないということでしょうか?
そうです。政治学者の福田歓一に、『近代民主主義とその展望』(岩波新書)というよく読まれた本があります。その本にも、20世紀の民主主義には民衆が自分自身を解放していく理念が込められていると書かれています。でも、本来はそんな理念ではなく、人間集団における意思決定の方法のひとつにすぎないのではないでしょうか。平時はそれこそ民主的に話しあえばいいんですが、問題は、集団が危機に陥った時です。こういう場合、スピードが重要です。みんなで相談している時間がないとなった時、どう意思決定するか、誰の意思を優先するかが問題となる。ここに人間集団の持っている難しさがあります。敵が攻めてきた、災害に襲われた、リーダーが死んだ、とかね。マキャヴェリもリアリストですから、うまくいけば何だっていいと言っている。アリストテレス以来の伝統をくんで、やり方は色々あるけど、その時その時で、うまくいく方法を選べばいいとしか言っていない。それがいつのまにか、民主主義は常に素晴らしいという話になっていて、民主制に主義(イズム)が含まれているかのような幻想が生まれました。みんなで決めることが、みんなではない誰かに決定をゆだねることよりも、マシな方法だと言われていますが、みんなが間違ったらどうするのかという難問が残されているわけです。みんなが間違って、戦争や大量虐殺へ突き進んだことはいくらでもあるじゃないですか。その問題を考えたほうがいいと思います。みんなが間違った時に解決する装置を、私たちは本当に持っているのか。『王国、空を飛ぶ!』では、そのことについて問題提起しているつもりです。今起きている民主主義への期待が、もっと民主化されれば日本は戦争から遠ざかるというメッセージを含んでいるとしたら、私にはそうは思えない、ということです。

――なるほど。今のお話を中高生向けにわかりやすくお願いできますか?
学校では、民主主義が大事で、多数決で決めるのがいいと教わっていますよね。で、みんなが間違ってしまって、おかしな決定をしても、教室には先生がいますから、「みんな間違ってるぞ!」と教えてくれます。でも、大人になったら先生はいません。先生抜きの学級会が間違ったことを決めた時、どうしたらいいのか。この作品は、そんな問題を投げかけています。

――今回は音楽劇になっているようですね?
演出するにあたって、私自身が演劇人として大きな影響を受けた劇作家ベルトルト・ブレヒトを参考にしています。ブレヒトは、感情同化とカタルシスを観客に強いる演劇に対して批判的です。そのような感情同化を撹乱する行為を「異化」と呼んでいます。ブレヒトは音楽劇をたくさんつくっていて、クルト・ワイルやハンス・アイスラーといった作曲家と組んでいました。単に人を感動させる道具として音楽を添えるのではなく、人々の理性を喚起するような、感動という心の働きを突き放すこともできるような、乾いた部分を持った曲調を、ブレヒトはワイルやアイスラーに工夫させました。お祭り騒ぎ、どんちゃん騒ぎ、トランス状態に入るような祝祭的なにぎやかさを極めながらも、観客が自分自身のなかでそれらを突き放して、ものを考える余地をつくりだす。そういう方法論をブレヒトはとりました。『王国、空を飛ぶ!』は、私がこれまで手がけてきたブレヒト的な音楽劇の方法論が、演出の主軸になっていると思います。

――作曲家の渡会美帆さんが手がける音楽はいかがですか?
渡会さんは、美しい旋律を書ける方で、静岡でずっと頑張っていらっしゃる作曲家ですけれども、今回は、彼女にしてみれば旋律をつけにくいんじゃないかという歌詞をたくさん書きました。どこまで本気でどこまで冗談かわからないような……音楽家はそんな歌詞をどう扱えばいいのかという難題を渡会さんに強いています。渡会さんは、古典的な作曲技法を身につけている作曲家ですし、現代音楽のような、あえて感動させない音楽を主に作曲しているわけではありません。非常に繊細な曲づくりをされる方ですから、あえてワイルやアイスラ―と同じような課題を背負って作曲してもらったほうがおもしろいのではないかと思いました。たぶん渡会さんもそれを想定して、パーカッショニストの永井朋生さんや私の仲間であるフルーティストの渡部寿珠さんといった、引き出しの多い人たちを楽隊に招いてくれました。随所に茶化しを混ぜながら、楽しませ感動させるだけでなく、批判的に考えさせる音楽をつくってもらっているつもりです。

――朝比奈尚行さんをキャスティングした狙いを教えてください。
朝比奈さんは、時々自動というパフォーマンス集団の主宰者です。時々自動は、歌、ダンス、映像、演劇など、色んな要素をごった煮にしてパフォーマンスをつくる集団です。80年代から継続的に活動されており、私もファンです。私が見始めたのは90年代でした。そのころは大変な活躍ぶりで、世田谷パブリックシアターで何ステージも上演し、毎回席が埋まるほどの人気でした。批評家の柳澤望さんが「90年代は、時々自動とダムタイプと大岡淳の商品劇場という、3つのカンパニーの時代だった」とおっしゃっていました。一般的には全然そんなことは言われておらず、「静かな演劇」が登場した時代ということになるんでしょうが。私からすると、90年代の時々自動は、手本でありライバルでもありました。

――時々自動は、世代的には大岡さんより上ですよね?
時々自動には色んな世代の人がいますが、朝比奈さん自身は、どんぴしゃり団塊の世代ですね。それが驚かされるところで、彼らのパフォーマンスはポップで、感覚的に見れば、バブル世代が中心なのかなと思えます。朝比奈さんの現在67歳だそうですが、初めて年齢を知ったとき、そんなに年上の人なのかと驚きました。演劇界で色々と伝説となっている人でもあります。昔の桐朋学園で演出家・千田是也の薫陶を受けて…というところから始まり、黒テント界隈に身を置いたあと、独立して時々自動の前身にあたる自動座というカンパニーを立ち上げた。その後、時々自動で活躍を始められてからは、オンシアター自由劇場の串田和美さんや、蜷川幸雄さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、長塚圭史さんや亡くなった中村勘三郎さんと仕事をされたり、テレビの仕事もされてます。時々自動を商業ベースに乗せるかどうかが問題になった際には、「時々自動を生活の手段にしない」と、カンパニーとして決定したと聞きました。あえてメジャー化していくことを拒んだ、ということなんでしょう。団塊の世代の演劇人は、70年代以降、政治的テーマを出しづらい状況になりました。80年代のバブル時代がやってきて、消費社会が肥大し、演劇もポップでライトなものが流行るようになった時、次の一手を打ったことが、時々自動という集団の先駆性でありおもしろさだと思います。

――そんな集団を率いている朝比奈さんに、どんな役割を期待していますか?
SPACの俳優はスズキメソッドを重視しますが、このメソッドは、現代演劇のなかに様式性を持ち込む志向の強い方法論です。表面的な言い方になりますが、SPACの俳優は、細部に至るまでコントロールされたものをつくるのに情熱を傾ける人たちだと思います。しかし『王国、空を飛ぶ!』は、それに加えて、俳優の自発性や内発性をうまく表に引き出さなければ成立しないと思います。喜劇ですから、単に演出家が指示したことを俳優にやってもらって、それでお客さんが笑うかと言うと、とてもそうは思えない。コメディは、俳優自身のアイデアを取り入れることが多いでしょうし、即興性も必要です。井上ひさしや三谷幸喜のように完全に脚本の力だけで成立させるコメディはべつかもしれませんが、例えば、三宅裕司のスーパー・エキセントリック・シアター(私が初めて憧れた劇団ですが)は、俳優たちがどんどんアイデアを持ち込んで、演出家が修正していくという作業をしていたようです。もちろんそのような方法論も万能ではなく、いいほうに転ぶ場合も悪いほうに転ぶ場合もあると思いますが、ともかく今回は、演出家の指示通りにやってもらうというつくり方はしていません。この場合、アイデアを引き出す媒介になる何かが必要です。朝比奈さんのように、パフォーマーとして引き出しがあって、アイデアやコンセプトをぽんぽん出してくれて、かつ、演じることや歌うことを、自分がやりたいこととしてやってくれる人がいると、他の俳優のガイド役になるだろうと思いました。その役割を見事に果たしてくださっています。

――美術の深川信也さんもSPAC初参加になりますね。
深川さんは、発見の会という劇団のメンバーです。私は、発見の会が1967年に初演した『此処か彼方処か、はたまた何処か?』を2014年に演出しました。60年代演劇で目立っているのは、鈴木忠志、唐十郎、寺山修司などですが、思想運動としてのアンダーグラウンドを捉え返した時、瓜生良介の発見の会は重要です。そこで劇作家・上杉清文さんの業績に注目して上演したわけです。私が過去、批評家として評価した作品に『ふるふる――山頭火の褥』があります。翠羅臼さんの作・演出ですが、これも深川さんが美術を担当されていたようです。御覧いただければわかる通り、大変ダイナミックな美術を作って下さいました。今回は、朝比奈さんと深川さんという、大きな意味でアンダーグラウンド演劇運動の流れをどこかで意識しながら活動してこられた人たちの胸を借りて、音楽喜劇をつくろうとしています。このような文脈は観客にとってあまり意味のない話かもしれませんが、公立の劇場の企画なのだから、単にやりたいことをやるのではなく、戦後演劇の歴史を具体的に踏まえる作業をやったほうがいいような気がしています。そんな思いもあり、今回は、お二人に御助力いただいています。

――最後に中学生と高校生へメッセージをお願いします。
中学生には、この馬鹿馬鹿しい話を体で受けとめてほしい。この芝居のスピード感に素直に乗っかってくれると嬉しいです。高校生には「大人の社会はこうやって動いているのか…」と背のびをして楽しんでもらえれば嬉しいです。世の中を高みから見下ろし、「馬鹿だね」とケラケラ笑える、そんな時期は、人生のなかで10代にしか訪れません。中高生にのみ許された特権的な感覚で、楽しんでもらえれば幸いです。

2015年9月6日 静岡芸術劇場にて


2015年11月14日

【王国、空を飛ぶ!】いよいよ千秋楽!

『王国、空を飛ぶ! ~アリストパネスの「鳥」~』、いよいよ明日が千秋楽となりました。
本日は雨の中、当日券をお求めのお客様もたくさんお越しくださいました。
皆様、ご来場いただきましてありがとうございました!

本日のバックステージツアーでは、
深川信也さんに舞台美術について詳しくお話しいただきましたが
明日は、音楽監督の渡会美帆さんがアーティストトークに登場します!

ゲストは​音楽評論家、思想史研究者の片山杜秀氏。
これまでの公演のアンケートでも、多くのお客様がコメントを残してくださり、
バックステージツアーでも演奏ブース周りが大いに盛り上がっておりましたが
明日のトークでは、さらにさらに深くご紹介できることと思います。

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△鳥の目線から押さえた演奏ブースの様子。
グランドピアノから、打楽器に変身した空きカンまで。これぞまさに渡会マジック。

永井朋生さんの、自作のものを含めた数々の楽器から生まれる音も
渡部寿珠さんの、美しく、ときにチャーミングで大胆なフルートの音も、

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本当に豊かな音を生み出してきたこの3人のコンビネーションは、

…明日までしか聴けません………!!!! うわあああああ!

明日もたくさんのお客様にお楽しみいただけることを、願うばかりです。

『王国、空を飛ぶ!』、皆様どうかお見逃しなく、そしてお聴き逃しなく。

ご来場お待ちしております!

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​SPAC新作『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆11月15日(日)14時開演
◇公演の詳細はこちら
◇『王国、空を飛ぶ!』舞台写真はこちら: http://uncho-koku.com/
※まずは舞台を楽しみに観たい!という方はまだクリックしないでくださいね…!
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2015年11月13日

【王国、空を飛ぶ!】 残り2ステージ!鳥たちの国へ急げ!

『王国、空を飛ぶ! ~アリストパネスの「鳥」~』、本日で中高生鑑賞事業公演が終了し
いよいよ残るは週末の2ステージのみとなりました…!
全22校、3000人を超える生徒さんたちにご覧いただき
時には熱狂的ともいえる歓声や笑いを巻き起こしてきた、12名の出演者たち。
強烈なキャラクター、最高の表情を見せてくれる舞台上の俳優たちを、
本日は一気にご紹介します!

asahina
朝比奈尚行。
朝比奈さんからは毎公演違ったネタが飛び出してきます。全くもって目が離せません。
既に二度ご覧くださった方も、まだまだ油断できませんよ…!
 
 
DSC03704
大内智美。
おじさんに化けるには勿体ない素敵な女性ですが、
ガハガハ笑うサラリーマンになっています。
上演時間中ほとんど出ずっぱりの主人公、「鈴木」役。
物語の結末で鈴木がどうなっていくのか、その変容をしかとご覧ください。
 
 
yoneji
大内米治。
中高生に絶大な人気を誇る某役で登場。
これは、いくら残り2ステージであってもまだ詳しくお伝えできません。ぜひ劇場へ!
 
 
sakakibara
榊原有美。
彼女の台詞も歌も、頭から離れなくなる可能性大です。
今回の濃いメンバーの中にあってもなお、…濃い人です。
 
 
mari
鈴木麻里。
こちらもサラリーマン役、主人公「鈴木」の相棒です。
「鈴木」と絶妙なコンビネーションを誇る、天然に見えて冷静、冷静に見えて壊れたキャラ。
一介のサラリーマンだったはずなのに
歌う鳥たちの後ろでやたらいい動きで踊っている不思議。
 
 
tateno
舘野百代。
実際にはちょこんと小さい鳥の「ナイチンゲール」役。
舞台の上ではエレガント、かつ、どの鳥よりもパワフル!
熱さにあふれる一方で、ちょっととぼけたキャラが垣間見えた時のギャップがたまりません。
 
 
nagai
永井健二。
真面目な顔でとんでもないネタを出してきます。
大騒ぎする鳥たちの中でも冷静沈着。…そこが変。
 
 
fuse2
布施安寿香。
まっ黒い衣裳を着てぎゃあぎゃあと喧嘩を仕掛ける布施さん…
ほかの作品ではなかなか観られない姿です。新鮮!
 
 
mishima
三島景太。
全力投球という言葉が最もふさわしい三島さん。
中高生にはなじみのないはずの話題を滔々と語るシーンも、
その勢いに誰もが引き込まれます。
 
 
yamamoto2
山本実幸。
真っ赤でキュートな衣裳の「アカショウビン」から、
後半は一転、人間の「女の子」役へ。
ラストシーンの彼女の姿を、皆さんはどのようにお考えになるでしょうか。
 
 
yokoyama
横山央。
お調子者っぷりに総ツッコミを受けていたかと思えば
後半は、ともに鳥の国を訪れた面々のボケっぷりに翻弄されるツッコミ役へ…。
クジャクの羽の仕掛けはぜひ終演後、カフェ・シンデレラで間近でご覧ください。
 
 
yoshiue
吉植荘一郎。
どっしりと構える「シロフクロウ」、そして力の神「ヘラクレス」。
でもなんだか常に食べものの話をしているような。
愛すべき食いしん坊さんです。…神様なのに。

 
『王国、空を飛ぶ!』、ほかの作品ではなかなか見えない、それぞれの俳優の持ち味を
たっぷりと味わっていただける作品になっています。
ハイテンションで舞台を駆け抜ける俳優たちに、ぜひ会いにいらしてくださいね!

そして、終演後はぜひカフェ・シンデレラへ!
出演者たちが舞台衣裳で登場します。どうぞお気軽にお声掛けください。

お待ちしております!

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​SPAC新作『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆11月14日(土)16時開演、11月15日(日)14時開演
◇公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
◇『王国、空を飛ぶ!』舞台写真はこちら: http://uncho-koku.com/
※まずは舞台を楽しみに観たい!という方はまだクリックしないでくださいね…!
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2015年11月11日

【王国、空を飛ぶ!】勝山康晴氏トーク映像公開/11/14(土)、バックステージ“ディープ”ツアーのススメ!!

11月8日の終演後、
ゲストに勝山康晴氏をお招きして開催したアーティストトークの映像を公開いたしました!

勝山氏:
「興味深かったのは主人公。
てっきり僕は凡庸な悪を描く作品なのかなと思っていました。
主人公が流されるまま同調圧力に負けて、
悪になっていくのだろうと思って観ていたら…… 」

さあ、主人公・鈴木はいったいどうなっていくのか――?

(笑いが絶えず、大盛り上がりになったこの日のトークですが
ストーリーや演出に触れる内容も…大いに…含まれています。ご注意ください。)

さて、この日も話題になったように、
お子さんから、会社で働いている30~40代の方々、そして60歳以上の世代の方々まで、
様々な世代が楽しめる作品になっている本作。
そして、観客だけでなく、創り手の方も世代を貫いており、
朝比奈尚行さんの出演、そして深川信也さんの美術によって
戦後の小劇場運動の歴史を再構成している――ともトーク中で触れられました。

その、今回の作品の要ともなっている舞台美術を手掛けられた深川信也氏に
11月14日のバックステージツアーにご登場いただきます。

小劇場運動の雄「発見の会」の舞台美術家である深川さん。
「発見の会」のほか、「劇団渋さ知らズ」や演劇集団「風煉ダンス」などでも
圧倒的な美術をお創りになっています。
今回、『王国、空を飛ぶ!』では、
SPACでも珍しい、大きなパーツを建て込んだ華やかな舞台装置が登場。
そのコンセプト、制作過程での裏話(?)等、
深川さんが、そして演出・大岡淳が、たっぷりとご紹介します!
SPAC創作・技術部によるバックステージ紹介に加え、
さらにディープに「鳥の国」を楽しむチャンスです。

◇『王国、空を飛ぶ!』バックステージツアー
11月14日(土) 終演後
ゲスト:深川信也氏(美術・舞台美術家/発見の会所属)
所要時間:約30分(Q&Aコーナーを延長する場合がございます)
参加無料/要予約 (SPACチケットセンター:TEL.054-202-3399)

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△深川氏による『王国、空を飛ぶ!』舞台美術ラフスケッチ

***深川信也氏プロフィール*****
1983年、演劇集団「発見の会」韓国ソウル公演『十二夜』(W.シェイクスピア作・瓜生良介演出)で舞台美術家として初めて演劇の現場に立つ。以降、発見の会を中心に多数の舞台美術を手懸け、近年他劇団にも積極的に参加し活動の場を広げている。

◎近作舞台作品
・2014年 発見の会創立50周年記念公演『新版 二重瞼の母』(上杉清文 作、有馬則純 演出)
・2014年 劇団渋さ知らズ(不破大輔主催)公演『十二夜より十三夜』(上杉清文 作、青山健一 演出)
・2015年 風煉ダンス野外公演『泥リア』(林周一 作・演出)
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『王国、空を飛ぶ!』残るは4ステージのみ
(11/12, 13の中高生鑑賞事業公演も一般のお客様にご覧いただけます。)

皆様どうかどうかお見逃しなく、
鳥たちの王国「雲鳥国」へ、カモンです!!! お待ちしております。

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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
◆『王国、空を飛ぶ!』舞台写真はこちら: http://uncho-koku.com/
※まずは舞台を楽しみに観たい!という方はまだクリックしないでくださいね…!
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2015年11月9日

【王国、空を飛ぶ!】コメント続々! 上杉清文氏のトーク映像も公開!

いよいよ公演最終週に入った『王国、空を飛ぶ!』。

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ご観劇くださった漫画家の武富健治さん、演劇集団「風煉ダンス」主宰の林周一さんから
推薦のコメントをいただきました!

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大岡氏率いる“裏SPAC”、裏側から「何か」に到達す(笑)!その「何か」はアリストパネスの真意かも。
冗談抜きで(も)貴重な瞬間を見逃すな!
裏SPAC!裏SPAC!!裏SPACを観よう!!!!

/武富 健治 氏(漫画家)

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SPAC「王国、空を飛ぶ!」ぶっ飛んだ音楽劇だった!恥ずかしながら観終わってから知ったんですがこれ中高生鑑賞事業だったんですね。どおりで中学生と一緒の観劇は実に楽しかった!
だって作演出の大岡淳さんはきっと中二病の脳味噌覚醒させてこのお芝居作られてるから、そりゃもう中学生の反応たるやクスクスがやがてキャアキャアに変わって大盛り上がり!
いやあ彼らのはじけるようなリアクションの中でこっちの心も踊る!なんかうれしかったなあ。きっと大人のお客さんも14歳の気分になって見るといいんだ。世の中の理不尽とか、人生とか、民主主義とか、人間ならではの古代からの繰り返される面倒くさいテーマも、とにかく面白かったり心躍ったら大笑いして手をたたいて、最後はなんだこりゃ?!って驚けばいい!それがこの芝居の楽しみ方!

/林 周一 氏(風煉ダンス主宰)

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さらに、
11月7日(土)の終演後、
上杉清文氏((富士市本國寺住職/劇作家/福神研究所所長)をゲストにお迎えして開催した
アーティストトークの模様をご紹介します。

トークご登壇当日に加え、
既に中高生鑑賞事業公演もご覧になっていた上杉氏。
中高生鑑賞事業公演でのエピソードも交えながら、
上杉氏のコメントを受けて大岡が語る今回の演出の背景、
佐々木治己が語るギリシア喜劇の制度やアリストパネスの作品の性格、
笑うことは抵抗になるのか?笑うことはどういう意味で有効なのか?という宮城の問い、
等々…、濃く深く進んでいった4人のトークですが
最後にまとめを求められた上杉氏の一言は
「もう一回くらい観たいな…」
というシンプルなお言葉でした!

トークの映像は下記からご覧いただけます。

そして最後に、宮城聰のひとこと。

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いまのニッポンを思うと、怒りたくなるかたもいれば、泣きたくなるかたもいるでしょう。もし、笑い飛ばしたくなるかたがいるなら、そのかたには『王国、空を飛ぶ』、必見です。そう、笑うことは、「気分に流されない」こと。なお、いまのニッポンを思うと嬉しくなるかたには、本作はオススメしません。
/宮城聰(SPAC芸術総監督)

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『王国、空を飛ぶ! ~アリストパネスの「鳥」~』、
残る一般公演は今週末、11月14日(土)、15日(日)。
11月14日の公演後のバックステージツアーには、
今回舞台美術を手掛けられた深川信也氏にもご登場いただき
より“ディープ”なツアーをお届けします。

平日の中高生鑑賞事業では、鑑賞校さんの人数変更により
11月12日(木)、13日(金)も一般のお客様のご予約が可能となりました!

空に浮かぶ鳥の国が劇場に現れるのもあと6回。
ご来場、心よりお待ちしております!

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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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『王国、空を飛ぶ!』観劇レポート(清野至)

 王国、空を飛んでどこへ行く!?

 10月28日、『王国、空を飛ぶ!』を観ました。
 古代ギリシア喜劇の名作、アリストパネスの「鳥」を現代日本社会に置き換えた本作は、見事に現代を風刺する喜劇となっていました。SPACの上演作品で、ここまで喜劇性を前面に出した作品も珍しいように思います。
 粗筋は荒唐無稽なファンタジーで、山手線の通勤地獄をはじめとする現代社会に嫌気がさした二人のサラリーマンが鳥になることを決意する(!?)ところから物語は始まります。人語をしゃべるカラスの夫婦の導きで、鳥人間と出会った二人は、自分たちも鳥に受け入れてもらうために、鳥たちに独立国家の建設を提案します。
 面白い喜劇は、ついつい「なんでやねん」と突っ込みながら観てしまいます。本作は、もともとが荒唐無稽なファンタジーということもあるのでしょうが、とても突っ込みどころが多かったです。しかし、その「なんでやねん」は実は鋭い社会風刺でした。(※ちなみに筆者は関西人ではありません。)
 鳥になると決意し、理想郷の建設を目指す二人のサラリーマンはいつまでもスーツとネクタイでサラリーマン体質丸出しのままであること点や、神々の起源は鳥であり、人間より鳥の方が偉いという理屈や、多数決で決めるか全員一致で決めるかをどのように決めるか等々、少し思い返しただけでも、いろいろな「なんでやねん」が出てきます。こういった場面はそれ自体が単純に面白い場面でした。劇場で僕はただ笑っていたのです。ところが、今こうして思い返してみると、意外に考え込んでしまいます。さて、理想郷を求めて行った先は本当に理想郷なのか?皇室の起源だって神代まで遡れます。今ある憲法を決めたときはどのようなルールで決めたのか?(※筆者の個人的な感想です。本作はこれらの具体的な諸問題を話題にはしていません。)
 一見すると馬鹿馬鹿しい喜劇で、劇場では大笑いをしました。それだけで終わることも出来る作品だと思います。でもそれだけじゃ、もったない。観劇後、どこで突っ込んだのか、是非考えてみてください。社会を笑いとばす喜劇の暴力性を楽しんでいましたが、私もその社会の一員です。「なんでやねん」はそのまま自分自身にも返ってくる言葉でした。
 さて、劇の結末は鳥の王国の行く末です。重大なネタバレになるので、ここでは書きません。でも、恐らく貴方は言うでしょう。なんでやねん。

IMAG0013_2清野至(きよの・いたる)
1988.2.9生 静岡県浜松市出身
劇団静火所属/演劇ユニット寝る子は育つ主宰
2013年より、劇団静火に所属し第6回公演『三人姉妹』より同劇団で役者として活動中。次回、第8回公演『マクベス』出演予定。



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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年11月8日

『王国、空を飛ぶ!』観劇レポート(泰井良)

「王国、空を飛ぶ! ~アリストパネスの『鳥』~」

この作品の演出家・大岡淳氏は、兵庫県西宮市の出身で、私と同郷人である。関西を一くくりにはできないが、いわゆる「上方の笑い」に通じるテイストがある。吉本新喜劇、松竹新喜劇、上方落語に上方漫才と、関西はまさに「笑いの聖地」である。私も子供の頃から、こうした笑いにふれてきたし、笑いは日常生活そのものだったと言ってもよい。こうした笑いが、「王国、空を飛ぶ」には、ふんだんに散りばめられている。 
とにかく、面白い。理屈なしで笑えるのが、この作品である。しかしこの作品は、単なるドタバタ喜劇ではない。そこには、ギリシア時代から現代日本に至る様々な社会の矛盾が直接的あるいは婉曲的に風刺されている。また、日常生活に嫌気がさし満員電車を急停止させ、二人の男が鳥の世界を訪ねて行く発想は、人間と鳥の世界が同じ地平にあることを意味しており、これはギリシアの多神教や日本古代よりの「アニミズム」の思想にも通じる。
観者は、笑いの中に、一つの哲学を見る。つまり、笑いながら、深く考えさせてくれる作品なのである。
さて、アリストパネスについては、「劇場文化」の中でも詳しく述べられているので、ここではあえてふれない。ここでは、「自由」について述べてみようと思う。「自由」と「放埓」を履き違えているのが、まさに現代社会の問題であると私は考えている。「自由」とは、本来、個人の全くの趣味嗜好を押し通し、勝手気ままに振舞うという意味ではない。そこには、「責任」という表裏一体の倫理がある。「自由」とは、個人が「責任」をしっかりと果たす限りにおいて、許される権利なのであり、勝手気ままに振舞うことを意味する「放埓」とは違う。例えば、スーツ着用の社交場で、Tシャツを着てくるのは個人の勝手ではあるが、そのことによって、制裁を受けるのは、個人の「責任」ということになる。
ひるがえって、この作品のテーマである「民主主義」も、とりわけ現代社会において、「自由」と「放埓」の履き違えが著しいのではないだろうか。国民は、選挙によって自らの代表者である代議員を選ぶ。その代議員による議決は、民主主義における大きな拘束力を持つわけである。しかし、その議決が民意を反映していない場合があり、ここに間接民主制の矛盾が潜んでいる。私は何も民主主義や間接民主制、ひいては体制を批判したいわけではない。少なくとも、我々が選択した方法によって決定された結論に責任を持とうということを言いたいだけである。選挙にも行かず、政治に無関心でありながら、決定された結論にだけ不平を述べるというのは、「自由」の放棄であり、「放埓」としかいいようがない。そうした無責任な体質を改めない限り、真の「自由」や「民主主義」は手に入らないのではないかというのが私の持論である。
この作品には、政治や社会を批判したり揶揄したりする場面がある。しかし、本当に作者が伝えたいのは、「民主主義」の主である国民一人一人が、その責任を自覚することなのではないだろうか。最後のシーンでは、「努力をしよう、努力をしよう!」というスローガンが俳優全員によって合唱される。「自由」と「民主主義」を手に入れるのに必要なのは、神や鳥といった超越した存在ではなく、一人一人の日々の「努力」なのだと強く感じ、私は劇場を後にした。

執筆クルー 泰井良プロフィール写真泰井良(たいい・りょう)
1972.9.5、神戸市生まれ
関西大学美学美術史専攻を経て、静岡県立美術館学芸員。
現在、静岡県立美術館上席学芸員、俳優。
(一財)地域創造公立美術館活性化事業企画検討委員、全国美術館会議地域美術研究部会幹事など。展覧会企画のほか、市内劇団でも活動中。




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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年11月5日

【王国、空を飛ぶ!】満を持して後半戦へ!

『王国、空を飛ぶ!』、中高生鑑賞事業公演の幕開け、一般公演の開幕、からの、
大道芸ワールドカップでのパフォーマンス出演を経て
公演第一週の間だけでもたくさんのたくさんのお客様にお会いすることができました。

10月31日の一般公演初日は、
それまでの7ステージで既に出会っていた中高生のお客様とはまた、
客席から笑いが湧き起こるシーンが異なっていたりして
私たちにとっても新鮮で、嬉しい上演となりました。

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お客様からいただいた感想の一部をご紹介します。

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皆さんがほんとに生き生きと演じて素晴しかったです。脚本もユニークで良かったです。

歌とおどりがたくさんで楽しかったです。

とてもPOPで、今までにない感じで、新鮮でした。

笑いました!テーマソングが良かったです。

とても楽しく、また、その背景にあるいろいろなことを考えさせられる舞台でした。

風刺がきいて、迫力もあり、みごたえがありました。

タイムリーで考えなければならない問題を面白おかしく、心に留めさせてもらいました。

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ご来場いただいた皆様、アンケートにご記入くださったたくさんの皆様、
ありがとうございました!

休演日の本日は、この後の10ステージに向けての稽古でした。
改めて全体を通しながら作品をブラッシュアップしていきます。
この作品、8月の第一期稽古からずっと
演出家、ミュージシャン、俳優たち、スタッフたちが「話し合う」時間がとても多いのです。
幕が上がった今にいたるまでずーっと、
全力で身体を使い、その延長線上として、全員で・全力で、言葉でも探る。
破天荒な作品にも見えるかもしれませんが、
熱い熱い話し合いをも経て生まれた舞台上の一体感を
たっぷりと楽しんでいただければなあと思います。

そして…
わたしは普段、自分が観劇をするときには
どちらかというと一人で行くのが好きなのですが、
そんなわたしでも申し上げましょう。
この作品に関しては! 
誰かと一緒にご覧になるのがオススメです。
一度見たら頭から離れないあれやこれやを、
ついつい歌ってしまいたくなるあの歌を、
そしてついつい思い出してしまうあの映像を
一人で胸に留めておくのは、きっとツラい。
うっかり思い出し笑いをして周りの誰にも分かってもらえないのは、
たぶんちょっと寂しいです。

中高生の皆様から大人のお客様まで、
中高生どころか、小学生の方にも笑いどころがたくさんあるはず!
ぜひぜひ、ご家族、ご友人、お知り合いの皆様と
劇場に足をお運びくださいませ。

お待ちしております!

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★☆★作品中、某シーンに出てくる某URL、
ページが実在することに気付いてくださった方はいらっしゃるでしょうか?
気になる方はこちら。 
(まずは舞台を楽しみに観たい!という方はまだクリックしないでくださいね。)

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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2015年10月30日

【王国、空を飛ぶ!】 いよいよ開幕!

『王国、空を飛ぶ!』、10月26日(月)に
中高生鑑賞事業公演の幕が上がりました!

初日のあとは怒涛の2ステージ上演の日が続き、
中高生の皆さんの、連日の大笑い大盛り上がりを嬉しく思いながらも

バサバサバサーーーーーッ

と、鳥たちが飛び去るかのような早さで過ぎていく毎日。
あっという間に週末を迎え、明日はいよいよ一般公演の初日を迎えます。

舞台を早く劇場でご覧いただきたいところではありますが、
わたくし、もう我慢できません。
「発見の会」の深川信也さんによる舞台美術のラフスケッチ をここでご紹介します!
このデザイン画がどのように実際に舞台上に現れているのか、
どうぞ楽しみに劇場にお越しくださいませ。
*舞台美術の制作風景レポートはこちら

さあ、まずは
人間社会を逃げ出したサラリーマン2人が
元は人間だった一羽の鳥「ヤツガシラ」に導かれてやってくる森のシーン。

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ヤツガシラの呼びかけで鳥たちが大集合し、
この舞台の中に勢ぞろいするシーンはまさにファンタジー。
でもこの鳥たち、見た目は可愛くても中身はけっこう ○☆#×*■ です。
そんな鳥たちを包み込む森の風景… 皆さんにはどう見えるでしょうか?

さらに、

鳥の国のシーン!

地上の人間界と、天上の神々の国との間に
主人公のサラリーマンたちと鳥たちとが建国した、
空に浮かぶ「理想郷」です。

ここに人間界からの移住を希望する人々が次々と現れ
天上界からは使者である神々がやってきて、

……。

いろいろ起きます。

ネタバレになるのであまり言えません。すみません。

実際の舞台美術は、デザイン画の時点からさらに進化し
迫力と魅力を増した姿で皆さんの前に登場します。
その舞台美術の中でひたすらに炸裂する俳優たちのエネルギー、
そして響き渡る歌や音楽とあわせて、たっぷりと味わっていただければ幸いです。

さあ、
鳥たちによる民主主義国家の行方はどうなる、
満員電車での通勤生活から抜け出した鈴木(主人公)はどうなる、
ギリシア喜劇が原作の作品の主人公のわりにかなり親しみやすい名字だぞ主人公、
ていうか誰が演るんだ鈴木、
そしてもう一人のサラリーマンの名前は何なんだ、
あなたが好きなあの俳優さんはどんな鳥を演じるのか、
ミュージシャンチームはいったい全部でいくつの楽器を演奏しているのか、

その答えは全て、劇場にあるの、だ ――――――!!!!

……皆様、ご来場お待ちしております!!!

(楽器の数は、ご来場いただいただけではきっと分かりません。すみません。
ぜひ終演後にカフェ・シンデレラでミュージシャンたちに話しかけてみてくださいね!)

制作部・中野三希子

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​10~11月 SPAC新作
『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』
脚本・演出:大岡淳  原作:アリストパネス
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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大道芸ワールドカップ in 静岡 2015 出演の『王国、空を飛ぶ!』チームの稽古とは

風刺が効ききながらもおかしくて笑いがとまらない!
SPAC新作『王国、空を飛ぶ! ~アリストパネスの「鳥」~』より
現在、【大道芸ワールドカップin静岡2015】で披露する
特別パフォーマンスを準備しています。

演出家・大岡淳をはじめ、ミュージシャン、俳優と豪華なメンバーが日替わりで
10月31日(土)、11月1日(日)、2日(月)と静岡市内の駿府城公園のメイン広場2
に登場します!

その稽古を10月28日(水)上演後に『王国、空を飛ぶ!』チームで行いました。

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演出・出演の大岡淳の発する声の即興パフォーマンスは驚きと懐かしいメロディ?など、、、
何が飛び出すか(羽ばたくか)わからないドキドキ感。
声と、ミュージシャンによるセッションと「鳥」たちのダンスをみていると、
秋の肌寒さもふいとどこかへ飛んでいき、笑いで体が温まることまちがいなし!

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明日より開催の【大道芸ワールドカップin静岡2015】
で、その日、その時間、その一瞬にしかみられない
アバンギャルドで特別なパフォーマンスを是非、ご覧ください!!

SPACパフォーマンス開演時間
10月31日(土)17:30
11月1日(日)14:30/17:00 (※スパカンファン・プロジェクト『ANGELS』も出演)
11月2日(月)17:30

会場:駿府城公園メイン広場(静岡市葵区駿府城公園1)
料金:入場無料(投げ銭形式)

ご来場お待ちしております!

制作部・林


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