2017年2月10日

【アーティストトーク】「シェイクスピアの『冬物語』」ゲスト:小野寺修二さん

一般公演初日2月4日(土)、終演後に行われたアーティストトークの様子をお届けします。

この日のトークは、演出家でカンパニーデラシネラ主宰の小野寺修二さんをゲストにお招きしました。

シェイクスピアの言葉の力や、その言葉と身体をどのように関係づけていくのか、出演者を一つのアンサンブルにまとめていく方法など… 演出家同士ならではの創作過程をめぐるトークとなりました。

登壇者:小野寺修二(ゲスト/演出家・カンパニーデラシネラ主宰)
    宮城聰(演出・SPAC芸術総監督)
司 会:大岡淳(SPAC文芸部)

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シェイクスピアの『冬物語』
今後のアーティストトークの開催

◆2月12日(日)14:00開演 終演後
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ゲスト:今井朋彦(文学座)& 宮城聰(演出)
司会:大澤真幸(SPAC文芸部)

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:2月11日(土)、12日(日)
★一般公演はいよいよ残り2日のみとなりました。どうかお見逃しなく!★
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年2月6日

【シェイクスピアの『冬物語』ブログ#10】二人一役をより楽しむ為に!

「シェイクスピアの『冬物語』」の醍醐味といえば!二人一役!
御覧になったお客さまも男性の役が女性の声だったりで面白い!と好評です。
二人一役をより楽しめるよう、役ごとに、
ムーバー:動き手(M)とスピーカー:語り手(S)のご紹介をします。

まず、こちらは全体の関係図をご覧ください!
舞台はシチリアとボヘミアです。

関係図

そして、シチリアの人々をご紹介します。

嫉妬に狂ってしまう主人公シチリア王リーオンティーズ
ムーバーは大高浩一、スピーカーが阿部一徳
リーオンティーズ

美しく貞淑な、
リーオンティーズの妻ハーマイオニ
ムーバーは美加理、スピーカーは布施安寿香
ハーマイオニ

将来有望だと言われていたが王に責められる母を思うあまり
亡くなってしまう王子マミリアス。
ムーバーはながいさやこ、スピーカーは山本実幸
マミリアス

赤ちゃんの時にボヘミアに捨てられ漁師に拾われて育ててもらい、
美しいと評判の娘に成長し・・・。
ムーバーは布施安寿香、スピーカーは美加理
パーディータ

リーオンティーズの臣下でポリクセネスを逃がし一緒にボヘミアへ行く。
ムーバーは牧山祐大、スピーカーは吉植荘一郎
カミロー

パーディータを連れてボヘミアへ行った先で熊と出くわし・・・。
ムーバーは吉見亮、スピーカーは武石守正
アンティゴナス

アンティゴナスの妻、王妃ハーマイオニの潔白を弁護する。
ムーバーはたきいみき、スピーカーは本多麻紀
ポーリーナ

王妃ハーマイオニの侍女
ムーバーは桜内結う、スピーカーは木内琴子
エミリア

続いてボヘミアの人々をご紹介します。

ボヘミアの王で、リーオンティーズの幼なじみ。ハーマイオニとの浮気を疑われる。
ポリクセネス

ボヘミアの王子、漁師の家で育ったパーディータと恋に落ちる。
ムーバーは大内米治、スピーカーは若菜大輔
フローリツェル

海辺でパーディータを見つけて拾い育てる。
ムーバーは小長谷勝彦、スピーカーは阿部一徳
漁師父

気のいい漁師の息子、アンティゴナスが熊に出くわしたところを目撃する。
ムーバーは横山央、スピーカーは吉植荘一郎
漁師息子

ポリクセネスと一緒にシチリアに滞在する。
ムーバーは赤松直美、スピーカーは小長谷勝彦
アーキデイマス

漁師息子に惚れられており、ダーシャと取り合う村の娘。
ムーバーは佐藤ゆず、スピーカーはながいさやこ
モニカ

漁師息子に気があり、モニカと取り合いしている村の娘。
ムーバーは桜内結う、スピーカーは赤松直美
ダーシャ

時をあやつる、無職で住所不定の詐欺師。歌が上手い。
ムーバーは武石守正、スピーカーは木内琴子
オートリカス

二人一役とは・・・!
是非今週末は静岡芸術劇場でご体感ください。
2月11日(土)15:00~
2月12日(日)14:00~

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年2月1日

【アーティストトーク】宮城聰と出演俳優が語る!~「シェイクスピアの『冬物語』」ができるまで~

一般公演初日1月21日(土)、終演後に行われたアーティストトークの様子をお届けします。

演出の宮城と出演俳優3人によるトークは、
シェイクスピアの戯曲の中から『冬物語』を選んだ意図や、
一人の人物を二人で演じるにあたって、
ムーバー(動き手)と、スピーカー(語り手)で試行錯誤したことなどなど。
裏話も含めざっくばらんなトークとなりました。

登壇者:宮城聰  (SPAC芸術総監督)
    たきいみき(出演 ポーリーナ/ムーバー)
    布施安寿香(出演 ハーマイオニ/スピーカー&パーディータ/ムーバー)
    本多麻紀 (出演 ポーリーナ/スピーカー)
司会: 大岡淳  (SPAC文芸部)

以下に、かいつまんで文字でも紹介します。
(詳しい内容は、ぜひ映像をごらんください^0^)

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Q:シェイクスピアの『冬物語』を選んだ理由は?

宮城聰:僕はSPACに来るまでは、ク・ナウカという劇団をやっていて、そこではずっと「二人一役」で作品を作っていたんです。SPACに来てからは、「二人一役」を部分的に使った作品はあるんですが、全面的に使った新作はこれまでにないんです。

SPACに来て10年経ったところで、SPACでもそろそろ二人一役の作品をやってみたい、それもシェイクスピアでやってみたいなと思いました。

シェイクスピアを二人一役で以前上演したのは1990年のク・ナウカ旗揚げ公演での『ハムレット』でした。『ハムレット』を「二人一役」でやってみようという理由はいくつかあったのですが、実際にはうまくいかなかったんです。

今回、シェイクスピアを二人一役でやるなら、どの作品が良いかいろいろ考えました。『冬物語』は彼の作品の中でも異色で、近代的な演技術では解決できないところが含まれている戯曲です。これなら、二人一役で活路が開けるのかなと思い、確信はなかったのですが、あてずっぽうというか、「これはダメかもしれないけれども、もう当たって砕けろ!」っという感じで選びました。

実のところ稽古している最中、「これは負け戦だったかな?」と思った時もありました(笑)

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Q:俳優の皆さんは、二人一役をどのように感じ、演じていたのですか?

たきいみき:私は2001年にク・ナウカに入ったんですが、2006年にはSPACに来たので、実はこれまであまり二人一役のムーバーの経験はなかったんです。ですので、今回は新鮮な気持ちでポーリーナのムーバーに取り組むことができました。スピーカーの本多さんの素敵な声(台詞)に身を任せるようにして、動きを担当していました。

ポーリーナという役は、台本を読めば読むほど、よく分からない人だと思いました。亡くなったといわれた王妃ハーマイオニを16年隠していたのかと思うと、すごくドSな人だとも思うし。「王妃の石像が動きます」と言うけれども、これは本当に石像だったのか、それともハーマイオニが石像のフリをして立っていたのかも、よく分からない…

私が好きなポーリーナの台詞に「信じる力をめざめさせて」という台詞がありますが、「王妃の石像を動かすのはお客さんですよ」という気持ちで、このシーンを立たせてもらっています。この場面は、もし私が台詞もしゃべったら過多になってしまうところが、私は身体だけでお客さんに向かい合うことで、観ている人に、私と同じように感じてもらたり、ほかの感じ方をしてもらえたりと、よりいろいろな想像をふくらませてもらえるものになっているのではないかなと。そういう意味では、謎の多いポーリーナという人物を演じるのに、二人一役の手法はすごくあっているのかなと思っています。

———

本多麻紀:私はク・ナウカ時代、スピーカーをやらせていただくことが多かったんです。泉鏡花や三島由紀夫などの「語り」の台詞が多かったです。でもシェイクスピアはそういう台詞ではないから、今回スピーカーとしてどうしたらいいのかは、難しいなと思いました。

ポーリーナという人物は、ムーバーのたきいさんと相談しながら作っていきました。たとえば「服の紐を切って」という台詞から始まる、ポーリーナが王に王妃の死を告げるシーンでは、スピーカーの私は、とにかく言葉で王をボッコボッコにするというイメージでしゃべる。それに対して、ムーバーのたきいさんは、王妃を失った悲しみでカスカスになってしまったポーリーナの状態を身体でみせる、ということをしてみました。一人の人物が持ついろいろな側面を、語りと動きで別々に表現するチャレンジができたのは面白かったと思います。

———

布施安寿香:私は、夏のワークショップでは、パーディータのムーバーだけを演じていたのですが、12月の稽古の開始直前に配役が変わり、王妃ハーマイオニのスピーカーもやることになりました。その連絡にびっくりしましたが、同時にこの2人は最後に再会するので、このキャスティングで最後のシーンはいったいどうするのだろうか!と思いました。

ハーマイオニは自分では想像もつかない役でした。いつもは言葉に向き合って、「ここはこういうふうにやろう」ということを考えていくんですが、そういうやり方では、自分の知っている世界しか作れないなと思いました。今回は宮城さんからの指摘を自分なりに消化してしゃべったり、ムーバーの美加理さんを見て、この身体からハーマイオニの声は出るんだなと思ったりすると、自分のからだも変わって、いつもとは違うこんな声が自分から出てくるんだという発見もありました。

いろいろなことを、リアリズムで最初にこうだと決めて創らない舞台だからこそ、その瞬間瞬間に生まれてくるものや、解決できないことを楽しんで演じています。

(続く)

~~~~~~~~~~~~~

一つの舞台が出来上がるまでには、こんなにも不安や、開き直り(?!)、試行錯誤が。
それぞれが悩み、そして時に楽しみながら、作品が出来上がっていく様子が語られました。

シェイクスピアの『冬物語』にもあるように「時」と、
みなさんの力(演出家・俳優・スタッフはもちろん観客の皆様も)で出来上がる舞台、
ぜひ一人でも多くの方にご覧いただければ幸いです。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シェイクスピアの『冬物語』
今後のアーティストトークの開催

◆2月4日(土)15:00開演 終演後
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ゲスト:小野寺修二(演出家)& 宮城聰(演出)
司会:大岡淳(SPAC文芸部)

 
◆2月12日(日)14:00開演 終演後
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ゲスト:今井朋彦(文学座)& 宮城聰(演出)
司会:大澤真幸(SPAC文芸部)

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月25日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#9】

今回は、大阪の人形劇団クラルテから研修にいらしていた佐藤結さんによるブログ最終回です。

いよいよ、シェイクスピアの『冬物語』が一般公演初日を迎えました!とともに、約一ヶ月に渡るわたしの研修生活にも終わりがやってきました。この期間、劇場でお会いした皆さま、ブログを読んでいただいた皆さま。お会いできてうれしく思っています。ありがとうございました。
劇場では1/16より、平日は静岡県内の中高生を劇場にお迎えしてのSPACeSHIP(スペースシップ)げきとも!(中高生鑑賞事業公演)が、週末は一般公演が行われています。SPACeSHIPげきとも!公演は、静岡県内の学校に通う中高生に、その6年間の在学中に一度はSPACを観てもらいたいという思いを込めて実施されているそうで、年間1万5千人から2万人の中高生を劇場でお迎えしています。劇団が劇場を持つ「SPAC」という存在が日本ではめずらしいことなので、他県の在住者からみると、このような劇場が県内にあり、中高生の間に一度は観劇の機会を持てるということをとてもうらやましく思います(中高生の間に、一度も芸術鑑賞の機会がない場合もあるのです)。
なお、中高生鑑賞事業公演は一般の方にもチケット販売されており、土日の公演にいらっしゃることができない方は、平日の鑑賞も可能となっています。演劇は生なので、客席の雰囲気がダイレクトに舞台に伝わります。たくさんの中高生と一緒に作品を観るというのもなかなかできない体験なので、いらしてみるとよいかもしれません(今回は特に、漁師親子のシーンが大盛り上がりです)。


<漁師親子(ムーバー左・横山央、右・小長谷勝彦)が最初に登場する場面。愛すべき親子>


<SPACeSHIPげきとも!公演時、ロビーでのお見送りの様子>

演出の宮城さんは、『冬物語』はシェイクスピア晩年の作品で、それまでのシェイクスピア戯曲にみられるような、人が人を殺すことのない作品だから選んだということと、過ちを犯した人間にも大いなる「赦し」が訪れる作品だと以前のおためし劇場でおっしゃっていました。上演を観ながら、『冬物語』というタイトルは、登場人物たちの心象風景なのかな…と思ったりもします(Winter’s Taleという英語には、「冬の夜長をやり過ごすために暖炉のそばで語られるたわいもないやりとり」という意味があるそうですが)。劇中で描かれることのない16年、その年月を、自分が招いた罪の重さに苦しみながらシチリア王・リーオンティーズはいかに過ごしてきたのか…、アポロンの神託を信じ、王妃・ハーマイオニを慕いつづけたポーリーナは…、善良な判断で結果的にリーオンティーズの命に背き、異国・ボヘミアで16年を過ごしたカミローは…。きっとそれは、大切なもの(人)をなくしたことによる冬の寒さのように凍てついた16年だったのではないでしょうか。大切なものを失った彼らに対し、これから色んなものを得て、未来をつくっていくフローリツェルとパーディータの明るい存在感。暗く悲劇的な前半から喜劇的な盛り上がりをみせる後半への飛躍には命の躍動が感じられますし、人が人を殺す話を多く描いてきたシェイクスピアが、そうではない物語を晩年に書いたということは必然だったかもしれないなと思います。そして、どうにもうまくいかないひとりの心の歯がゆさを、二人一役という手法が引き立てます。


<シチリア王・リーオンティーズ(ムーバー・大高浩一)に臆することなく相対するポーリーナ(ムーバー・たきいみき)と、妻・ポーリーナの凛とした姿勢に遅れながら、決して流されるままではないアンティゴナス(ムーバー・吉見亮)>

演劇としてみると、リーオンティーズのように急に気持ちが変わって怒り狂うなんていうことはおかしいと思われるかもしれませんが、これって、実は現実によくあることではないかな、と思います。そんなつもりはなかったのに、ふとつぶやいた一言があとから大きな事件につながってしまったり、人を傷つけ、とりかえしのない事態になることも…。ひとりの人間の中にいろいろな人格を持っていたり、言おうと思ったことと口をついて出た言葉が違っていたり、今も昔も、王様も庶民も、人間って変わらないなあ、愛すべき存在だなあとシェイクスピア劇をみて思ったりもします。ただ、『冬物語』では最後に大いなる癒しが訪れますが、普通の人生だとそうもいきません。不用意な言動には気をつけたいものです。


<豹変したリーオンティーズに愁いながら、それでもなおやさしさをみせる妻・ハーマイオニ(ムーバー・美加理)>

さて、本日をもって、わたしの研修期間は終了です。数回のブログを読んでくださった皆さま、誠にありがとうございました。公演のない日は閑散として閉ざされた空間であることも多い劇場ですが、SPACでは、公演のない日にも劇場1Fロビーは開放されており、演劇をつくるためのプロフェッショナルな各専門スタッフと俳優が所属して、日々、クリエイションが行われているので、劇場が生きていることを感じました。毎日毎日色んな人の出入りがあり、劇場もうれしそうですよ。また、劇場を使った公演だけでなく、こどもたちのためには、舞台と近い距離でたのしめる「おはなし劇場」が、劇場へ足を運びにくい方のためには「リーディング・カフェ」「アウトリーチ活動」があります。SPACは、演劇に関連する活動を多岐に渡って行っています。情報はホームページでご確認くださいね。
そして、ぜひ、劇場にいらしてみてください。劇場は、あなたが来るのを待っています!(2017年1月22日)

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月20日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#8】稽古風景写真 ヘアメイクも入りました!

『冬物語』のおためし劇場レポートでは、おためし劇場で観ていただいた冒頭からの舞台での稽古の様子をご紹介しましたが、その続きのシーンの様子も少しご紹介します。ヘアメイクも入ってきています!

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嫉妬に狂う王リーオンティーズ(左・ムーバー・大高浩一)と、彼の誤解を必至に解こうとする家臣アンティゴナス(右・ムーバー・吉見亮)

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ハーマイオニの産んだ赤ちゃんをリーオンティーズに見せる侍女たち(左・佐藤ゆず、右・赤松直美)

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ハーマイオニを裁く法廷でアポロンの神託を読み上げる役人(ムーバー:貴島豪)

シチリアが舞台の前半は、重苦しい空気が満ち、最後には悲しい出来事が折り重なるまさしく悲劇。それに対して、ボヘミアが舞台となる後半は、うってかわって、陽気な人々が登場。にぎやかな村祭りが繰り広げられます。

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ボヘミアの荒地に捨てられたシチリアのお姫様パーディータを見つけた漁師の父(右・ムーバー・小長谷勝彦)とその息子(左・ムーバー・横山央))

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漁師の息子を取り合う村の娘。左はモニカ(ムーバー・佐藤ゆず)、右はダーシャ(ムーバー・桜内結う)

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漁師の娘として育てられたシチリアのお姫様パーディータ(ムーバー・布施安寿香)とボヘミア王子フローリツェル(ムーバー・大内米治)

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そして、謎の詐欺師・オートリカス(ムーバー・武石守正)

いよいよ1月21日(土)は一般公演初日です。
どうぞ、お楽しみに。

終演後には、アーティストトークもあります。

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1月21日(土) アーティストトーク 終演後1Fロビーにて開催

宮城聰(演出)& たきいみき、布施安寿香、本多麻紀(出演)
司会:大岡淳(SPAC文芸部)
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
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2017年1月12日

おためし劇場 シェイクスピアの『冬物語』編 レポート

1月8日に今年最初の静岡芸術劇場でのイベント「おためし劇場」が開催されました。

レポーターは大阪の「人形劇団クラルテ」から研修でいらしている佐藤結(さとうゆい)さんです。

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寒さが一層増しつつある折柄、いかがお過ごしでしょうか。
先日、初日を約一週間後に控えたシェイクスピアの『冬物語』のおためし劇場が開催されました。

あいにくの雨模様でしたが、約30名のお客様に参加いただきました。お足元の悪い中お越しいただき、誠にありがとうございました。

まずは、カフェシンデレラにてSPACの新作『冬物語』がどんな作品なのか、制作部スタッフが簡単にご紹介。そしていざ劇場内へ!

初日を約一週間後に控えているとはいえ、まだまだクリエーション中の本作。
稽古は幕開けシーンからスタート。

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場所はシチリア。シチリア王・リーオンティーズのところに、幼少の頃を一緒に過ごした大親友のボヘミア王・ポリクセネスが訪問し、滞在9ヶ月が経ったある日。


シチリア王の臣下・カミロー(左・ムーバー 牧山祐大)と、ボヘミア王の臣下・アーキデイマス(右・ムーバー 赤松直美)が、シチリア王の宮廷で立ち話。奥からはシチリアの王子・マミリアス(ムーバー ながいさやこ)が。


シチリア王・リーオンティーズ(ムーバー 大高浩一)とボヘミア王・ポリクセネス(ムーバー 泉陽二)も登場。それに続くのは、ボヘミア王の臣下・アンティゴナス(ムーバー 吉見亮)とその妻ポーリーナ(ムーバー たきいみき)。一番後ろには王妃・ハーマイオニの侍女・エミリア(ムーバー 桜内結う)が。


ポリクセネスは、急に自国のことが不安になり、リーオンティーズに「明日、帰国したい!」と。リーオンティーズはもう少しいてくれと頼むが、聞いてはもらえず。


リーオンティーズは、ハーマイオニ(ムーバー 美加理)に、「お前も、説得してくれ」と。そこで、ハーマイオニが懇願すると、ポリクセネスは滞在延期を受け入れる!?


その様子を見ていたリーオンティーズは、王妃ハーマイオニとポリクセネスにあらぬ疑いをかける。彼の嫉妬からすべては始まる…


舞台後方にはスピーカー(語り手)が。山本実幸(左)はマミリアス、阿部一徳(右)はリーオンティーズのスピーカーを担当。

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ある程度の長さシーンを通すと、演出の宮城さんから、俳優の演技に対して、コメントが。緊張の一瞬…。

参加された方からは、「初めてプロの稽古を見たのでとても圧倒された」「話し方などの指導がこんなに細かくあるのかと思った。」といったご感想をいただきました。

稽古見学後は、出演者による簡単な自己紹介。総勢22名の出演者が並ぶ姿はそれだけで圧巻です。

稽古中の表情と普段の表情、その二面に接することができるのもおためし劇場の醍醐味ですね。

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その後、演出の宮城さんへのQ&A。

やはり皆さんが気になるのは、なぜ今回、二人一役の手法で作ることにしたかという点。

「(物語のきっかけとなる、リーオンティーズが前触れなく激しく嫉妬に狂う点をさして)『冬物語』という戯曲は、シェイクスピアらしくない始まりで、ヨーロッパのリアリズムの演技では、どうしてこういう状況になったのか、お客さんには納得できないところがある。だからリアリズムでやろうとした場合には、セリフに書かれていない動きを入れたり、ここに至る経緯を想定し、この嫉妬を理解できるようにする。けれども、シェイクスピアの戯曲自体には、この嫉妬はやはり突然のものとして書かれている。これをヨーロッパ的なやり方ではない、別の手法を用いたらまた面白いものができるのではと思い、二人一役を選んだ」と話されました。

そのほかにも、「出演者が22人もいるなか、練習はどのように?」といった質問や、「ムーバー(動き手)の表情や動きが、スピーカー(語り手)のセリフが作り出す表情に比べて、抑制されているのはなぜ?」といった稽古を観ての鋭い質問も。

そして「『冬物語』を通して観客に何を伝えたいか?」という質問には…
「シェイクスピアのいろいろな戯曲を読むと、ヨーロッパではこんなにも戦争をしていたのかと思う。シェイクスピア戯曲では、“人間の愚かさ”によって死が訪れるストーリーが常だったが、『冬物語』など最晩年に書かれた作品では、犯した過ち・愚かさによって人が死なない話になっている。人が人を殺さない、人への赦しがある。大きな過ち・愚かさを持つ人間がそれでも赦される話。シェイクスピア自身、あれだけ人が死んだり、殺し合う物語を書いてきたが、最晩年には、人が人を殺すことはもうやめてほしいと思って書いたのではないか。イギリスのEU離脱をはじめ、歴史が逆戻りしているかのような昨今の世界情勢を見ていて、よく知られたシェイクスピア戯曲ではなく、人が人を殺すことのない『冬物語』を選んだ」とのことでした。

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宮城さんから濃厚な話を聞いたあとは、参加者の皆さんには舞台にも上がっていただきました。

実際の上演と同じ完全暗転を体験してみたり(かすかな灯りを頼りに俳優は舞台上を移動するのです)、俳優が舞台上から見ている景色を見たりすることができました。今回の舞台美術には、「こんな素材で、こんな空間ができるとはびっくり!!」という感想をたくさんいただきました。「今までの舞台装置で最もインパクトがありました」という声も。ぜひ劇場でお確かめください。

初日まで一週間を切りました。
舞台作業もいよいよ大詰め、日々の稽古を通じて作品はぐんぐん成長しています。
ご期待ください!

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
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2017年1月9日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#7】今日の劇場はひっそりと

シェイクスピアの『冬物語』は、
年が明けて1月4日から劇場での稽古を着々と進めています。

前回のブログで紹介しました、謎のクルクルは、
不思議な模様を浮かび上がらせながら、劇場の天井近くまでそびえています。

クルクルは、小さな段差にも丁寧に貼られていきました。

それにしても、劇場の中に入り、
できあがった舞台舞台装置の全貌をみると、
もうそれだけでも圧巻です。

素材に継ぎ目があるのを見ると、
劇場に持ち込まれたミシンは、どうやらこのクルクルを、
つなぎ合わせるために使われたようですね。

さて、昨日1月8日には、作品の創作過程をご覧いただける、
「おためし劇場」が開催され、今日は新年最初の稽古休み。
(おためし劇場の様子は次回のブログで、たっぷりご紹介します。)

そんなわけで、劇場の中はひっそり。

でも、静けさの中で、今日も作業が進められています……

今日は照明作業の日。

照明デザイナー大迫さん指揮のもと、
照明スタッフが総出で作業しています。

舞台で俳優の立つべき位置にスタッフが立ち、
操作卓にいるスタッフが照明を操作し、
実際の明かりのあたり具合をみながら、
大迫さんが一つ一つのシーンの
明かりの位置や強さ、変化の仕方などを
決定していきます。

一人ではできない、現場にいる全員での協力作業です。

照明は、客席の上にも吊るされています。

暗くてわかりにくいのですが、
手前の明るみにいらっしゃるのが照明デザイナー大迫さん、
奥の明るみの操作卓にもスタッフが。

暗い劇場の中でひっそりと進められる作業は、なんだか神秘的。

作品の完成に向けて、劇場という空間に
また一つの新たな魔法がかけられていく一日です。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
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2016年12月29日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#6】年末の劇場は仕込みで大忙し!

今年も残すところあと数日ですが、劇場では舞台の建て込み真っ只中、照明や音響作業も同時に進行し、静岡芸術劇場内各所で『冬物語』の稽古や作業が着々と進んでいます。


なかなかお目にかかることのない搬入口!
舞台芸術公園で作られた舞台装置が芸術劇場に運び込まれました!    


劇場客席には、舞台装置の模型の一部が…
何やら指示が書き込まれています。


あれ?舞台上にミシン?


このクルクルしたもの、何でしょう?
お見せするのは1本だけですが、
実はびっくりするくらい大量にあります。


もくもくと作業する創作・技術部スタッフ


劇場エントランスにも
『冬物語』の大きなディスプレイが!

リハーサル室での稽古も細かな作業に入ってきているようです。

ここから先は、研修でいらしている佐藤結さんの稽古場レポート第二弾です。

宮城さんからはムーバー(動き手)の演技について、人形浄瑠璃における人形遣いと人形の関係になぞらえて説明が入るのですが、動かす対象に生身の肉体と人形の違いはあれ、人形劇にも通じる話でとても興味深く拝聴しています。

今回の舞台では二人一役ということで、人形浄瑠璃における義太夫をスピーカー(語り手)が、三味線は打楽器の生演奏が、そしてムーバーは、いわば、人形遣いと人形の役を一人で担っているのです。人形遣いが人形を操るように、ムーバーは、自らの身体を自らで操っています。スピーカーとムーバーの二人一役とは言いますが、稽古をみていると、ムーバーの俳優はさらに自身の二人一役、つまり自分の身体とそれを操る遣い手としての自分とを自らのうちに含んでいるように思えてきます。日常においても心身一致の状況が人間の常態でないとはいえ、意識的に心身を分けて捉えるというのは並大抵の作業ではありません、、、!


中央に立っているのがムーバー、両脇に座っているのがスピーカー。
(舞台芸術公園での夏の稽古の様子から)

人形劇における人形は、人形遣いが持たない状態ではただの死に体、人形遣いが意志を吹き込んでこそようやく命を持った存在として生きることができるのですが、ムーバーはこの作業をひとりで行っているというわけなのです。人形劇の人形については、「ある作品のためだけに作られ、作品の上演される間にだけ生きる存在であるからこそ役者として純粋である」と人形劇関係者はよく言うのですが、作品の上演される時間以外にも人間として生き、生活をする生身の肉体を操り動かすことのむずかしさをSPACの二人一役には感じます。

二人一役の手法を用いた作品を初めてご覧になる方には、スピーカーとムーバー、生演奏と、どの要素も気になって目まぐるしく視点が移り大変かもしれません。そんなときには、作品を構成するひとつひとつの要素を分解して観劇するのもおもしろいと思います。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2016年12月27日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#5】今回の舞台は二人一役!

SPACは舞台芸術の専門機関ということで、年間を通じて国内外から様々な方が、視察や研修にいらっしゃいます。

現在は、大阪で活動する「人形劇団クラルテ」で制作に携わる佐藤結(さとうゆい)さんが、研修でいらしています。

今回は、佐藤さんに書いていただいた稽古場レポートをご紹介いたします。

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SPACブログをご覧の皆様、初めまして。

文化庁委託事業・芸団協による国内専門家フェローシップ制度で、12/12(~1/22)よりSPACにてお世話になっております、佐藤結と申します。研修先は第3希望まで申請できるのですが、もともとSPACの作品が好きで(観始めてまだ3年ぐらいの新参者ですが)、静岡から世界へ羽ばたく作品を生み出すSPACという集団の秘密が知りたくて希望しました。普段は大阪の人形劇団クラルテというところで制作の仕事をしていますが、SPACは規模も大きく、何より静岡芸術劇場と舞台芸術公園の施設を使って活動しているということで、普段いる環境とは全く違い、驚きと発見の毎日です。

研修初日は、ちょうど1月に初日を迎える『冬物語』(シェイクスピア/作)の稽古が始まるということで、稽古を見学させていただきました。
このブログを読んでいらっしゃる方は、SPACの作品を度々ご覧になられているかと思います。SPAC芸術総監督の宮城さんの作品の特徴のひとつに、台詞を話す人(スピーカー)と動きを担う人(ムーバー)でひとつの役を演じる手法がありますが、『冬物語』はほぼ全編この形式で上演されるそうです。そして、生演奏。人形劇の世界でも、見覚えがあります… そう、大阪が誇る伝統芸能「文楽(人形浄瑠璃)」に似ているんですよね。人形劇のための戯曲を数多く執筆した近松門左衛門も、芸というものは虚(ウソ)と実(ホント)の皮膜にあることだと論じており、人形劇の虚構性を愛しました。もともと演劇にも虚構の要素がありますし、二人一役という手法にもそんな印象を受けます。

さて、『冬物語』を書いたシェイクスピアと、日本の近松。同じ劇作家ということで並べられることも多い2人ですが、宮城さんによると、その趣向は大きく違うようです。しゃべればしゃべるほど人物の個性が現れるシェイクスピア劇に対し、近松作品(および日本の伝統芸能)の登場人物は、立場・シチュエーションを体現しており、個性ではなく類型的な人物として描かれているのだそう(とは言えシェイクスピアも最晩年には個性的な人物を描くことにさほどの関心を寄せていないようで、『冬物語』に関してはそのかぎりではないとのこと)。そういう意味で、近松作品は二人一役に向いているが、シェイクスピア作品(晩年の作品を除く)は向いていないという傾向があるそうです。そのことは、文楽では作品ごとに人形を作るのではなく、登場人物の類型に合わせた首(かしら)を選び用いることからも見てとれます。よく、人形劇の世界では(人形劇作品のために書かれた戯曲が少ないため)、人形劇に向く作品とそうでない作品と戯曲を分類して話すことも多いのですが、そのことの意味をここへ来てはじめてわかったように思います。

現在、稽古場では棚川さんの指揮の下、音楽の制作も同時に進行しています。楽器の演奏、ムーバー・スピーカーの稽古、そして稽古場以外でも各スタッフが動いており、まさに圧巻の集団創作といった趣。SPACという劇団の底力と奥深さを感じる日々です。

シェイクスピア作の『冬物語』が、どんな二人一役の舞台作品になるでしょうか……? 今から楽しみです。

皆様も、どうぞお楽しみに。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2016年12月24日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#4】舞台音楽家・棚川寛子インタビュー【後編】

宮城作品を彩る数々の音楽を手掛けてきた棚川寛子さん。
その作曲の舞台裏に迫るインタビューの後編をおおくりします♪
【前編はこちら】

(本インタビューのショートver.は、12/15発行の「グランシップマガジン」に掲載されています)

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――棚川さんは、もともとは舞台で演技をする側だったと伺いました。俳優をしていたときの経験が役に立っていると感じることはありますか?

それはあると思います。練習中に俳優から、「ここは音が大きすぎる」「私の台詞が聞こえないから、音楽はもっと小さい音で演奏してくれない?」といったオーダーが入ることがあるんです。そういうときは、私自身も演技をしていましたから、「それはそうかも」と理解できます。ですが、舞台音楽の作り手として「この場面では絶対に音を入れたい」という譲れない部分はありますし、宮城が「この場面には音楽を入れて」と指示する場合もあるので、そのあたりはもうお互いせめぎ合いですね。

――舞台音楽を作る上で、棚川さんが大事にしていることを教えてください。
 
芝居全体の流れ、でしょうか。台本をもらったら、「芝居全体をどう見せるのか」「宮城はこの作品をどう着地させたいのか」といったことをまず考えます。そうやって作品を俯瞰してから、次に、じゃあ音楽はどうしようか、と全体を通しての音楽の戦略を立てて、そこから場面ごとの曲を作ることが多いです。
テンポ感も大切にしています。どんなに素晴らしい作品であっても、お客様の集中力が途切れる瞬間ってあると思うんです。それを見計らって、あえて演奏をストップしちゃうとか。無音も音楽なんですよね。急にまわりが静かになると、「ん?」とちょっと気になっちゃうみたいな、あの感じです。芝居の流れが悪くなりそうな場面でわざと曲のテンポを上げるケースもあります。お客様の期待に時に応えたり、時に裏切ったり、バランスを上手く取りながら曲を構成する、といえばいいのでしょうか。そのあたりのことを意識しながら作っています。

――舞台音楽の仕事で、どんなときに達成感を感じますか?

上演が始まる前の、「これで初日に出せるクオリティになったな」と感じたときです。ああ、よかった、とつくづく思います。

――棚川さんのお仕事について、宮城芸術総監督が何かコメントされることはありますか?

以前は具体的なオーダーがあったり、作品の稽古に入る前にミーティングをしたりもしていたんですけど、最近は、かなり任せてもらえるようになった気がします。以前は、芝居先行だったんですよ。俳優が読み合せ(俳優が台本を持って、自分の役の台詞を動きをともなわずに読む稽古のこと)をして、そのあと動作をつけて、それを見て音楽を作るという段取りだったんです。それが最近は、稽古が始まって俳優が読み合せをはじめる前に、「じゃ、音楽から行こうか」と無茶ぶりされることが増えました。そんなときは、「きたー!曲からかー!」と頭を抱えます。まあ、音があったほうが俳優が稽古しやすい、という宮城なりの配慮なのかもしれませんが。

――棚川さんから見た、「宮城芸術総監督のここがすごい!」というところがあれば教えてください。

面倒くさいことを避けないところが魅力かなと思います。
宮城は、「まあよくもこんなにいろいろな役者を揃えたな」と感心するぐらいの人数で演劇をやるんです。20~30人近い俳優が出演することもあります。俳優が多ければ多いほど制作は大変です。意見をまとめるだけで一苦労ですし、俳優によって作品に対する消化スピードも違いますから。ある面においては、少ない人数で芝居をしていたほうがラクかもしれません。それでも、わざわざそれだけ人数を集めてやるのはなぜか。宮城はよく「祝祭音楽劇」という言い方をしますが、宮城が言う祝祭性というのは、音楽や演劇そのものというよりは、年代も性別も、ときには人種も違う多様な人間がオンパレードでいる、その状態を指しているのだと思うんです。多様な人間がたくさん集まってアンサンブルな芝居をする。それ自体が、社会生活の縮図になっていて、私にはそこがすごく魅力的に映ります。同時に、恐ろしく面倒くさくもあるんですよ(笑)。でもそこを避けては面白いものは作れないと私は思いますし、宮城自身もそう感じているのではないでしょうか。面倒くささのその先にある豊かな何かを、宮城はこれまでの経験から知っていて、だから敢えて少人数の芝居はやらないのではないか、と思うんです。
誰もが避ける面倒くさいところから逃げないのが宮城の魅力だ――。そうわかっていても、いざ制作が始まるとケンカもします。怒鳴り合った末に、「もうあなたとはやりません!」と宣言したこともあるくらい(笑)。それでも、演劇を通して宮城が見たいと思っているものと、私が見たいと思っているものが似ていることもあって、「『まあこんなものでいいか』という作品を作るよりは、面倒くささの向こうにある豊かさみたいなものを少しでも形にできて、それを観てお客様が感動してくれるほうがいい。だったら、もう少し一緒にやってみようか」と自分に言い聞かせながらやっている感じです(笑)。

――今後、こんな活動をしてみたい、といった展望はありますか?

音楽だけをつくりたいとか、バンドをやりたいとか、そういったことは全然思わないんですよね。私にとって舞台音楽は、俳優の芝居と一緒になってようやく完成するもの。「こういう曲の展開は今度やってみたいな」「この楽器使えそう」と思うことはありますけど、音楽が主役になるようなものは特に望んでいません。

――最後に、2017年1月から連続上演となる、「シェイクスピアの『冬物語』」と『真夏の夜の夢』それぞれの観どころ・聴きどころを教えてください。

『真夏の夜の夢』は再再演となります。野田秀樹さんの脚本がとにかく面白く、台詞のリズムもすごくいいんです。だから、曲作りはとてもスムーズでした。そんなテンポの良さや、華やかな雰囲気を楽しんでほしいですね。恋あり、ギャグありでわかりやすいストーリーも魅力で、演劇を観たことがないという方にもおすすめです。
『冬物語』については、舞台音楽の制作はまだこれからという段階でして、どんなものになるのか現時点でまったく見えていません(笑)。今回は制作期間がタイトなので、時間との戦いになるだろうと覚悟を決めています。
観どころとしては、本作は、演技をする俳優「ムーバー」と、台詞を話す俳優「スピーカー」が2人で一役をこなす宮城の代名詞とも言うべき手法で行います。シェイクスピア作品の上演スタイルとしては、類をみないものになると思いますので、その新しいチャレンジを見てもらえたら嬉しいですね。
また、宮城はよく、「役者の動き、台詞、音楽が三位一体にならないといけない」と言っています。私も俳優も、三位一体を通してはじめて立ち現われてくる何かを探し求めていますので、ぜひ皆さんにも劇場でそれを感じていただけたらと思っています。

2016年10月 静岡芸術劇場にて

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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