2009年11月29日

役者おくぬ~日記「メロス☆ジャケット」

ジャスコの手前、狐ケ崎の南幹線沿いに行きつけのリサイクルブティックがある。
お店の2階は静岡のアートシーンを語る上ではなくてはならない噂の「スノドカフェ」…

10月のある日、ふらっとこの店に立ち寄った時、
色とりどりの衣装や可愛い小物がならぶこのお店の、
レディースの充実度に比べたら日陰の存在という感の否めないメンズコーナーに
ひときわ目をひく一品があった。

 

ジャケット2

デニム地のジャケットでかなり凝った作り、
内ポケットには「D&G made in Italy」のラベル…

ジャケット1

試着をしていると
 「いやー似合いますね~」
「こういう変わったジャケットをこれだけ着こなせる人はなかなかいないよ!」
「さすが役者さんは違うわね!」
などと、他のお客さんからの高評価は、
僕にその場でフラメンコステップを踏ませるには十分であった。

「このジャケット、2回くらいしか着てないんですけど…実は前の持ち主、僕なんですよ…」
 恥ずかしそうにオーナーさんが打ち明けてくれた。

「来月劇場のロビーで『朗読とピアノの午後』っていう朗読のコンサートがあるんですけど、その衣装にいいかも!」
 僕もその時はとっさに口をついてそんな言葉が出たのだが、
朗読会の衣装については何の構想も練ってなかったので、軽く聞き流してくれることを祈るも…

「うちのお店の服を朗読会で着てくれるなら我々も嬉しいよ」
 とオーナーさんも満面の笑顔。

他のお客さんとも朗読会の話でその場は大いに盛り上がり、
コトが大きくなりそうだったので、
ジャケットは静かに売り場に戻しこの日はお店を後にした。

しかし、次の日もその次の日も、あのジャケットが気になる。
そのかっこよさ以上に、ジャケットの前の持ち主がこのオーナーなら本当に光栄である。

それから数日がたち、もう一度お店を訪れることにした。
お目当てのジャケットは、まだ幸い売れていなかった。

ジャケットを手にとり、延々試着してしつこく鏡の前でポーズをとっていた時、
オーナーさんが笑顔でやってくると、

「それ、とっても似合ってるし、よかったら差し上げますよ」

と…社交辞令にしてはやけに具体的で太っ腹な発言。

ええっ!そんな…とんでもない。また…本気にしちゃいますよ!てか…また、ご冗談を…

と、しどろもどろになりながらお金を払おうと財布を取り出すも、

「うちの商品をSPACの朗読会で着てくれたら嬉しいな…って、あの後も話してたんですよ」

とうれしいことを言ってくださる。

僕が朗読するのは、熱い友情物語として日本文学史に残る名作「走れメロス」が原作。

この時期に、アートで静岡を盛り上げようとする同志ともいうべき
彼の着ていたこのジャケットと出会えたのは、まさに運命のようなものを感じた。

それから一月後

11月14日の「朗読とピアノの午後」本番は、この上ない緊張だったが、
落語の「寄席」のような朗読会になればと試みた
「【新釈】走れメロス」(森見登美彦作)は、終わってみれば大変楽しく、勉強になる経験だった。

DG立ち

もちろん、オーナーから譲り受けたこのジャケットは…僕に大きな力を与えてくれた。

ご来場いただいたお客様、本当にありがとうございました。
そしてスノドカフェのオーナーさん、心から感謝です。

ちなみに…
昨日からはBOXシアターで
山の手事情社の安田さん演出、太宰治の「走れメロス」の上演が始まった。

僕もとても楽しみなこの舞台、
オーナーさんとの友情を噛み締めつつ
このジャケットを着て…観に行きたいと思う。

 

 


2009年11月28日

<萌目線。vol.22>★夏から走ってます★

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SPAC秋のシーズンも後半にさしかかってきました!!

ただいま静岡県内ツアー中、そして今週末からBOXシアターでの公演も始まるお二人をご紹介しますっ。

『走れメロス』の、大内米治 先輩と
大道無門優也さんです!!
メロス

夏休みの芸術劇場での公演も大好評だったお二人。

二人の男の友情物語を、まさに男二人で演じているんですよ!!

米治先輩は、小柄で可愛い雰囲気のさわやかなお兄ちゃんっ。
大内

優也さんは、普段は東京で活動してらっしゃる仮面ライダー大好きなお兄さん。
大道無門

永遠の少年のような二人が、
本当に少年みたいな瞳と体力で、一時間ぶっ飛ばしてます!!

会場がBOXシアターになって、『メロス』の世界観はますますアップ!!

走っている二人の息遣いや迫力が、間近で感じられること間違い無しです。

携帯電話が当たり前のコミュニケーションツールになって、
車や電車で簡単に移動できちゃう現代で、

走っていってでも伝えたい思い、皆さんにはありますか?

必死に生きてる人の思いのたけを聞くことってありますか?

毎日寒くなってきましたが、二人のアツーい生き様をお届けします!!

今週末から始まるBOXシアターでの『走れメロス』
お見逃し無きよう!!

<萌目線。>とは・・・
SPAC新人俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。


2009年11月25日

三島のギャラリーでリーディング!

11月17日、ご好評いただいている出張企画リーディング・カフェを三島にあるGalleryエクリュの森で開催しました。

11月11日には三島文化会館で親子を対象にしたご招待公演『走れメロス』を上演したばかり。SPACが三島に進出中です。

リーディング・カフェははじめての三島市での開催でした。三嶋大社近くにあるGalleryエクリュの森は普段は自主企画展を開催する画廊。「エクリュ」とは生成り色のことで、気軽に立ち寄れる場所にしたいという思いでこの名前をつけたのだとか。リーディング・カフェとも相性ぴったりです。

KICX2080

この日は、太田宗平さんという画家の個展がひらかれていました。紙を溶かして絵の具にするという独特の画法で、静かで優しくそれでいてどこか怖いような絵を描かれる太田さん。太田さんの作品に囲まれた不思議と心地よい空間でのリーディング・カフェは参加者の皆さんにもご満足いただけたと思います。

舞台芸術公園BOXシアターでの『走れメロス』公演に先立ち、太宰治の『走れメロス』を読みました。

はじめは「声に出して読むのはちょっと⋯⋯」とおしゃっていた方も、読み進めるつれ、すっかり夢中に。今回も老若男女、幅広い層の方々にお集まりいただきましたが、どの方も顔が明るくなるから不思議です。

しかも、驚くなかれ、なんと4組の母娘が参加されていたんです!大人になって親子一緒に同じ物語を読むなんて、なかなかありませんよね。きっと特別な時間になったのではないかと思います。

舞台芸術公園BOXシアターでの『走れメロス』公演は11月28日(土)から。もう間もなくです。ご予約はお急ぎください!

静岡市を中心に開催してきたリーディング・カフェ、この三島開催を機に静岡市外でも開催していきたいと思っています。

次回は12月22日(火)清水文化センターでの開催が決まっています。読むのは『クリスマス・キャロル』。清水文化センターさんにお招きいただき、クリスマスを目前にひかえた特別版です。ぜひこちらもご注目ください!

新年明けて1回目は1月9日(土)静岡芸術劇場内カフェ・シンデレラで開催です。ホームグラウンドに戻っての新年一発目、こちらもぜひ。


2009年11月16日

<萌目線。vol.21>★なにわの女将★

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今年の秋のシーズンも大活躍だった、私の大好きなお姫様をご紹介します!!

たきいみき先輩です!!

たきい
『ハムレット』のガートルード様でジャジャーンと、

『ふたりの女』では六条と葵の二役でババーンと、

『ドン・ファン』のイザベラ役ではシャキーンと、

そして『夜叉ヶ池』では、ズモモモモ…ジャーンと!!

毎回見せてくれる見事な貴族オーラ!!

県内の中高生をご招待する「中高生鑑賞事業」で観に来てくれた高校生の子たちからは毎回、
「可愛いー!!」と黄色い声がとびかっていました。

そんな大人気白雪姫の楽屋での姿を特別公開ですよー。
舞台の上では高貴な感じなのですが、

生まれは大阪!!チャキチャキのなにわっ娘!!

普段は私たち後輩の面倒をよくみてくれるお姉さんなんです。
お料理がすごくお上手なんですよー!!

私はSPACにきたばっかりの頃、たきいさんにご飯を食べさせてもらっていたと言っても過言ではありません!!

慣れない生活で大変でも、たきいさんが作ってくださった温かいご飯に癒されて、生き残ったのだと思います。

お姉さんというか、お母さん?(笑)
したっぱで家事も苦手な私にとっては、憧れの先輩です!!
来年の新作では、どんな役をみせてくれるのでしょうか…?

ご期待ください!!

<萌目線。>とは・・・
SPAC新人俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。


2009年11月8日

けやき通り路上パフォーマンス!

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11月7日、『夜叉ヶ池』一般公演千秋楽を翌日にひかえたこの日、SPACがまたまた街へ繰り出しました!

秋のシーズン『ドン・ファン』に引き続き、伝馬町の皆さんのご協力のもと、109前の広場で路上パフォーマンスを行ないました。一般公演を終えた俳優たちは衣装を着たまま伝馬町けやき通りに集合。劇中で使用する太鼓を片手に、『夜叉ヶ池』のワンシーンを披露しました。

日の暮れた街頭に俳優たちが打ち鳴らす太鼓の音がコダマすると、たまたま通りかかった人たちも、けやき通りの商店の皆さんも、何がはじまったんだ?と興味をもってくださいます。『ドン・ファン』のときと同じくいつの間にか人だかりができました。

IMG_3448

見物してくださった方々のなかには、中高生鑑賞事業で『夜叉ヶ池』を観劇してくれた高校生が偶然居合わせたり!
街のド真ん中ですから、思わぬ出会いがあります。泉鏡花の『夜叉ヶ池』が好きだという方が「次はぜひ劇場で!」と言ってくださったり…

劇場で待っていては決して出会えない未来のお客様とバッタリ! というわけです。

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SPACはそんな偶然を求めてこれからも街に出ようと思います。うれしい偶然が街に溢れていることに気づかされます。それもこれも普段街を歩くだけではなかなか気づかないことです。俳優が街に出ていって、短い時間ですが、パフォーマンスをする、そうした祝祭的な雰囲気をつくることで、街に人の情が漂います。そこではじめて何かに出会える期待が立ち込めるのでしょう。期待する人の視線の先には、きっと、希望がみえるはずです。その希望をみつめる視線が街を活気づけるのだと思います。

演劇が街のためにできること、演劇が人のためにできること、どうやらまだまだありそうです。


2009年11月3日

<萌目線。vol.20>カフェで逢いましょう!!

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秋のシーズン新企画、「カフェ・シンデレラで逢いましょう」は皆様ご存知でしょうか?

終演後、衣装のままの出演者が、カフェでお客様をお待ちしています!!

『ドン・ファン』に続き、『夜叉ヶ池』も衣装やメイクに細かいこだわりがありまして…

それも間近でご覧いただけますよ!!

俳優と直接お話ししていただけるので、見終わったばかりの芝居の感想を是非聞かせてくださいませ!!

シンデレラ①
私は開演前からカウンターの中でスマイルを売ってます。

シンデレラ②
美味しいコーヒーを淹れてお待ちしてますので、
是非!!カフェ・シンデレラにお立ち寄りください!!

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SPAC新人俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。


2009年11月2日

宮城聰、秋の静大講義!

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学生の皆さんにご好評いただいているSPAC芸術総監督・宮城聰の講義。

10月28日、春に引き続きこの秋も、静岡大学で宮城聰が講義をしました。
学生の皆さんにSPACの作品を観劇してもらい、その作品やSPACについて、なにより演劇という芸術について宮城が講義をする、という芸術論の授業なんです。観劇と講義がセットになった小粋な授業です。

今回、学生の皆さんに観劇していただくのは宮城聰演出『夜叉ヶ池』。
http://spac.or.jp/09_autumn/yasha
講義を受けた学生のなかにはすでに観劇を終えた人もいたのですが、「泣きました!」という感想が飛び出すほどの好評でした。宮城の演出作品を観劇し、演出家本人の話を1時間も聞くというのは大学だからできること。
学生の皆さんにはじっくりと宮城の演劇に対する考えを聞き取っていただけたと思います。

今日の講義は、演劇史からはじまって、『夜叉ヶ池』についての宮城独自の見解まで、縦横無尽に刺激的な話題を織り交ぜながらの90分。
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「芸術ってなんでなくならないんだろう?」そんな素朴な疑問が宮城の口からポロリと出たときには学生の耳は釘付けです。ドキッとする問いには、つい耳をそばだててしまいますね。そしてそれらのドキッとする問いを解明しようとする宮城の語り口に、経験豊かなアーティストの思考の深さを感じていただけたのではないでしょうか。

これから観劇される学生の皆さん。宮城の話を頭の片隅に、『夜叉ヶ池』を見てみてください。ずっと濃密な観劇体験になることと思います。