2014年12月30日

【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #9】 人形も劇場入りしました!

いよいよ舞台上での稽古が始まりました。
劇場での稽古風景をドドーンと、
年末特大号としてご紹介します。

『グスコーブドリの伝記』は“静岡芸術劇場”にて上演いたします。
写真1
舞台袖から見える客席はこんな感じ。

こっちは客席から見た舞台。
写真2
あ!この背中は…宮城さん!
その傍らには模型も。
稽古中は、客席から全体を見てあれこれ指示を出しています。

写真3
真っ白な装置は、
客席から見ると浮かんでいるように見えます。

写真5
この装置を、場面に合わせて
クルクルころころ動かして、形を変えていきます。
装置を動かしているのは俳優とスタッフです。

今回の俳優の衣裳は「白」
俳優衣裳写真_吉植さん
この衣裳、どこかで見たことありませんか?
(宮沢賢治ファンの方ならピンとくるかも…)

裏方スタッフも「白」の衣裳を着ます!
HI8_8350
舞台スタッフの林さん。
よく似合う!ハットがかわいい。

美加理さん演じる主人公グスコーブドリの衣裳は色付き。
写真9
胸ポケットの手帳はブドリ君の”大切なもの”

グスコーブドリ以外の登場人物は”人形”で登場します。
なんと、操っている俳優の顔と人形の顔が同じ。
写真12
↑ネリを演じる本多麻紀さんと人形
 
写真13
↑ペンネンナームを演じる阿部一徳さんと人形
 
ブログ#3で登場した俳優の顔写真を、
布にプリントして作っています。

SPAC宮城聰作品の魅力のひとつは、
俳優の生演奏による「音楽」。
俳優とともに音楽を作っていくのは、棚川寛子さんです。
写真16

棚川さんの作曲作業・指導には楽譜がありません。
「タタタンタタタンっていうリズムで叩いてみて。」
「木琴はこの音を鳴らして。」

写真17
その場で俳優たちと音を作っていきます。
山崎ナオコーラさんの言葉(ブログ#5)
棚川先生の音楽がどんな風に混ざり合っていくのか。
わくわくわくわく…♪

公演初日前に、この『グスコーブドリの伝記』の一部分を
無料でご覧いただける機会があります!

1月10日(土)13:30~16:00
稽古見学会&トーク「大澤真幸は『グスコーブドリの伝記』をこう読んだ!!」

参加無料/要予約 定員30名

劇場内での稽古の様子をご覧いただいたあと、
舞台上にあがって、舞台装置を間近に見ながら、
スタッフのレクチャーを聞くことができます。
その後は、社会学者・大澤真幸が独自の視点から捉えた
『グスコーブドリの伝記』の魅力について語ります。

定員人数がありますので参加ご希望の方は
SPACチケットセンター(Tel.054-202-3399)までお問い合わせください。
※12月29日(月)~1月4日(日)までは年末年始休業となります。

29日をもって、SPACの今年の活動は終了しました。
1月3日まで俳優・スタッフ一同しばし休憩です。

今年もたくさんの方がSPAC作品を観に来てくださいました。
本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

次はどんな”魅力”をお伝えできるでしょうか。
それでは、また。

制作部 中澤
*******************************
SPAC新作
『グスコーブドリの伝記』
2015年1月13日~2月1日
公演の詳細はこちら
*******************************


2014年12月29日

【ハムレットを愉しむための10の事柄 その1】  好評のフライヤー、それは壮絶な撮影現場から生まれた!

 

SPAC俳優・武石守正は「塗り替えられた」。

2015年2月から公演が始まる宮城聰演出『ハムレット』。(公演詳細はこちら

前売り開始を間近に控えた時期に完成したフライヤー、なかなか好評です。

その大胆なヴィジュアルには、好評の声とともに、「あれは本物?それともCG?」「どうやって撮ったの!?」という声が寄せられています。

『ハムレット』は「毎夜、世界のどこかで上演されている」とも言われるほど人気の作品。
SPAC版『ハムレット』は2008年の初演以来、およそ7年ぶりの上演。「再演だからこそ、思い切ってインパクトのあるヴィジュアルづくりを目指そう!」と、現場は動き出しました。


2008年初演時の舞台写真(撮影:原田さやか)

この作品、やはり主役は文字通りハムレットです。
「過去の舞台写真や映像を使うのではなく、生の俳優を撮りたい」
というデザイナーの要望もあって、動画も含めたヴィジュアルの撮影が急遽決定。
まだSPAC新作『変身』の稽古中だった、ハムレット役・武石守正を被写体に、撮影は開始されました。


眼光鋭くカメラと向き合うハムレット役・武石守正。

「生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ。」の名セリフでお馴染みの『ハムレット』。
今を生きる私たちにも通じる、その苦悩と孤独の姿を、インパクトのあるヴィジュアルへと昇華させるべくデザイナーが出したプランは、
「ハムレットを塗り固めていく。その過程を撮る。」
というものでした。


撮影場所は舞台芸術公園の「BOXシアター」

事前に入念な打合せを行い、実際の行程を詰め、
1枚1枚のカットをチェックしながら、撮り上げていきます。


撮っては塗り、塗っては撮りを繰り返す。


塗り重ねる毎に、顔の自由がきかなくなっていく。

写真と動画、同時並行で進められた撮影は、結果的に丸一日かかることに。
この長丁場を、俳優・武石守正は最後まで表情と身体の緊張を絶やすこなく、
塗り固められていく負荷と闘い抜きました。
この集中力には、スタッフとしても感動!

静岡演劇シーンの拠点「アトリエみるめ」管理人でもある某劇団の女優さんは、
さっそく「かっこよすぎるので、部屋に貼りました」
とTwitterで絶賛してくださいました。


二つ折りを展開して貼ると、こんな感じです。

二つ折りになっているこのフライヤー、
開いた中面は、前回公演の模様を中心に、また違った雰囲気になっています。
(フライヤーの大きい画像はこちらでご覧いただけます)

このフライヤーは、静岡芸術劇場、舞台芸術公園、東静岡駅改札前のSPACチラシラックをはじめ、
カフェや書店、公共施設など、県内各所で配布を開始しています。
(もし「このフライヤーを置いてあげる!」というお店や施設の皆様がいらっしゃいましたら、
SPACの中尾・米山までご一報ください!)

そして、フライヤーに続いて、この撮影現場であわせて収録したトレーラー(予告編)も公開されました。およそ100分に及ぶ本作を、たった15秒でどう描くのか?

ハムレットがしゃべります!武石ハムレットの、聞く者を刺すような力強い声には、この作品の世界観が込められているかのようです。ぜひ実際に観て、聞いてください。

先行公開15秒バージョンのトレーラーです。

トレーラーは更にボリュームアップした60秒バージョンも製作中です。ご期待ください!

*******************************
SPACレパートリー
『ハムレット』
2015年2月16日~3月12日
公演の詳細はこちら
*******************************


2014年12月26日

【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #8】 ドラマトゥルク取材日記4

「ドラマトゥルク取材日記」では、
『グスコーブドリの伝記』でドラマトゥルクを担当するライターの西川泰功が、
宮沢賢治にまつわるネタを紹介していきます。

第4回は、波力発電の研究を進める東海大学教授・田中博通さんのお話を伺いました!

—————————————-
 宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』は、1932年(昭和7年)に発表された。この童話の中に、潮汐発電所という言葉が出てくる。イーハトーブの学校で教鞭をとるクーボー大博士が、潮汐発電所の建設を進めようとする。

 電気事業連合会ウェブサイト上の年表「電気の歴史」によると、1927年に電灯普及率は87%。1929年に工場の電化率が69%。主要な発電方法は、水力と火力だった。

 流体工学を専門とする田中博通さんは、日本の現状を憂えている。再生可能エネルギーに積極的に取り組むドイツやオーストリアの現状を話しながら、「日本は世界に目を向けていない。哲学がない。情けない」

1 (1)
↑ 東海大学海洋学部教授・田中博通さん

 田中さんは、再生可能エネルギーである木質バイオマスガス発電に、いち早く注目してきた。昔は、三保松原でも松の枯れ葉をエネルギー利用していた。今では掃除の対象でしかない。荒廃した森林を、循環型の自然に変える試みが必要だと、田中さんは考えている。

 「三保や安倍川沿いの枯れ葉を利用することで、山に手を入れ、循環する自然をつくり出すことができます。日本の山が、針葉樹中心になったのは戦後。木材利用するつもりが使われず、鬱蒼とした山ばかりになってしまった。土壌への日光を遮るため、昆虫も鳥も少なくなり、山が荒廃します」

 暗い山のイメージは一般的だと思われるが、田中さんいわく、それは戦後の荒廃した山だ。「山は、黒々しているものではありません」。そう言って、近くにあった印刷物の鮮やかな緑色を指差した。「木々の間から日光が降りて、こういう色になります」

2 (1)
↑ 2004年4月21日静岡新聞記事。木質バイオマスガス発電の研究が紹介された

 田中さんが、今、力を注いでいるのが、波力発電の研究である。

 賢治が『グスコーブドリの伝記』で書いた潮汐発電所は、満潮と干潮の高低差を位置エネルギーに変える発電方法である。海洋エネルギーには、その他、海流・潮流発電、波力発電、海洋温度差発電、塩分濃度差発電などがある。

 それぞれの発電方法に開発競争があり、効率のよいエネルギー利用を実現するために、世界中で研究が続けられている。スコットランド自治政府は、2009年9月より、海洋エネルギー利用技術を対象とする世界公募のサルタイヤ賞を設けた。賞金は1000万ポンド(2014年12月23日現在のレートで約18億円)。ノーベル賞の10倍以上。実用性の高い海洋エネルギーへの期待のあらわれだ。

 田中さんは、波力発電の中でも、越波式波力発電の研究を手がける。斜面を流れ上がる波が、貯水槽に入り、周辺海域の水位まで落ちる。貯水槽の底にはプロペラがついていて、この回転によって発電する。

3
↑ 越波式波力発電の構造図

 賢治が1932年に潮汐発電所を取り上げたことを聞いて、田中さんは驚いた。潮汐発電所が世界で初めて実現したのは1967年、フランスのランス川河口。その後、中国や韓国でも実用化されているものの、日本にはない。

 「平均潮位差の問題だと思う。日本はあまり潮位差がないです」。潮汐発電では、潮汐の干満差があるほど、大きなエネルギーを生み出すことができる。ランス川の平均潮位差は8.5m。2011年に完成した韓国・始華湖潮汐発電所は5.6m。だが、日本の気象庁が毎月発表している潮汐概況の2014年11月版を見ると、月間の最高潮位と最低潮位の差でさえ5mもある地域はない。

 地球温暖化は、ますます緊急の課題になっている。種の絶滅や食料問題など、人類の基盤をも揺るがす。再生可能エネルギーへ期待が高まるのは必然だ。それはまた、雇用を生む大きな産業に発展する。田中さんの頭の中には、未来社会の青写真がある。

 「人間も生物ですから、自然循環の中で生きるべきだと思う」

 田中さんは、こうも語る。

 「永遠に存在するものはない。色即是空。人間がつくったものは、いつか壊れます」

 田中さんの言葉の節々に、2011年から現在も続く、福島第一原子力発電所事故の影を感じる。賢治は、童話の中に、貧欲に科学技術を取り込んだ。それは夢に溢れていたが、今の日本を生きる以上、そうとばかりも言えなくなった。

 田中さんが言うように、「自然循環」と「色即是空(物質はすなわちこれ虚無なり)」は、指針になりそうだ。賢治が、詩や童話で、念仏のように繰り返したフレーズを思い出した。

まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばらう
(宮沢賢治『農民芸術概論要綱』より)
 
 
2014年12月19日 東海大学海洋学部2号館 田中博通研究室にて
 
SONY DSC文・西川泰功
ライター。SPAC『グスコーブドリの伝記』でドラマトゥルクを担当し、原作の脚本化のサポートをはじめ、俳優や技術スタッフとディスカッションをしたり、広報用の記事を書いたりしている。SPACでは2009年より中高生鑑賞事業用のパンフレット編集に携わる。その他の仕事に、静岡の芸術活動を扱う批評誌「DARA DA MONDE(だらだもんで)」編集代表(オルタナティブスペース・スノドカフェ発行)など。
 
 
*******************************
SPAC新作
『グスコーブドリの伝記』
2015年1月13日~2月1日
公演の詳細はこちら
*******************************
 


2014年12月23日

【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #7】 多彩なトークゲスト決定!

SPACの公演では、
「舞台を観るだけではなくて、いろんな楽しみ方を提案したい!」
ということで、公演の前後に関連企画を設定しています。

終演後に、ゲストをお招きして観終わったばかりの作品について
率直な感想を伺いつつ宮城聰と語り合う「アーティストトーク」もそのひとつ。

毎回、ゲストにどなたをお呼びするのかを考えるのが楽しい時間なのですが、
スケジュール調整など思うように進められず、決定が遅れてしまって申し訳ない気持ちです。
そして・・・ようやく『グスコーブドリの伝記』のトークゲストがすべて決まりました!
 
 
1月17日(土)のゲストは・・・
人形劇俳優・演出家の平常さん
平常さんには「Shizuoka春の芸術祭2010」
『毛皮のマリー』を上演していただきました。
演出、美術、構成、操演にいたる全てをひとりで行い、
舞台上をエネルギッシュに駆け回るパフォーマンスは多くの観客を魅了。
そんな平さんのデビュー作は、
宮沢賢治の『どんぐりと山猫』。(なんと、12歳で!)
人形がたくさん登場する今回のSPAC版『グスコーブドリの伝記』を
観てどうお感じになるのでしょうか?
 [司会:横山義志(SPAC文芸部)]
 *平常氏のホームページはこちら
IMG_2490
↑「Shizuoka春の芸術祭2010」パンフレット
 
1月24日(土)のゲストは・・・
静岡大学防災総合センター教授で、火山学、地震・火山防災などがご専門の小山真人さん
小山さんのホームページを見ると、
論文やスライド、ツイッターまとめが大量に公開されていることに驚きます。
富士山、伊豆ジオパーク、火山、福島原発震災・・・
そんな中、2012年に公開された映画『グスコーブドリの伝記』についてのツイッターまとめ発見!
その名も「(ネタバレ注意)火山学者の琴線に触れない「グスコーブドリの伝記」リメイク版2012」・・・
『グスコーブドリの伝記』を知り尽くした小山さんが
SPAC版を観てどう感じるのか聞いてみたい!と思って研究室を訪ねると、
「ちょうど観に行こうかと思っていた」とのありがたいお言葉。
火山学者の目にはどのように映るのでしょうか???
 [司会:西川泰功 (ライター・DARA DA MONDE編集代表)]
IMG_2489
↑小山さん著書の一部
 
2月1日(日)のゲストは・・・
音楽評論家にして思想史研究者という二つの顔を持つ片山杜秀さん
2012年3月に上演した『グリム童話~本物のフィアンセ~』の
アーティストトークにもご登壇いただきました。

音楽、演劇、政治、社会まであらゆる方位に伸びたアンテナで、
『グスコーブドリの伝記』をどの切り口で語るのか・・・
こればっかりは、当日になってみないとわかりません。
刺激的なトークになること間違いなし!
 [司会:大岡淳 (SPAC文芸部)]
 
各回ともまったく違ったテーマで
『グスコーブドリの伝記』を語ることになりそうです。
どうぞお見逃しなく!

制作部 丹治陽
*******************************
SPAC新作
『グスコーブドリの伝記』
2015年1月13日~2月1日
公演の詳細はこちら
*******************************


2014年12月20日

【映像】『変身』アーティストトーク

『変身』公演では、
お客さまにより劇場体験をお楽しみいただくために
終演後に「アーティストトーク」を開催しており、
各回のトーク映像(全編)をウェブサイトで公開しております。

★更新状況★

2014年12月21日(日)
小野寺さんの演出作品にご出演されたこともある
ダンサー・振付家の森山開次さんをゲストにお招きし、
小野寺修二さん、宮城聰の3名でトークを行いました。

2014年12月20日(土)
演出の小野寺修二さん、演出助手の藤田桃子さん、SPAC芸術総監督の宮城聰の3名で行いました。

 
2014年12月13日(土)
今回の『変身』で音楽を担当された阿部海太郎さんをゲストにお招きし、
小野寺修二さん、宮城聰の3名でトークを行いました。

 
2014年12月7日(日)
舞台芸術公園で映画『幕が上がる』(2015年2月28日公開)の
撮影をされた映画監督の本広克行さんをゲストにお招きし、
小野寺修二さん、宮城聰の3名でトークを行いました。

2014年12月6日(土)
「水と油」のころから小野寺さんの作品を見続けてこられた
翻訳家・演劇評論家の松岡和子さんをゲストにお招きし、
小野寺修二さん、宮城聰の3名でトークを行いました。

*******************************
静岡芸術劇場<ヘンシン!>記念公演
『変身』
12月6日~12月21日
★公演の詳細はこちら
*******************************


2014年12月19日

【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #6】 ドラマトゥルク取材日記3

「ドラマトゥルク取材日記」では、
『グスコーブドリの伝記』でドラマトゥルクを担当するライターの西川泰功が、
宮沢賢治にまつわるネタを紹介していきます。

第3回は、SF映画『インターステラー』を取り上げます!

—————————————-
 『グスコーブドリの伝記』の世界は、イーハトーブという、宮沢賢治が名づけたユートピア。主人公グスコーブドリは、イーハトーブの幸せを願っている。自然の脅威に対して苦心し、被害を食い止めるよう働きかける。この童話は、人類救済モノだ。

 人類救済モノと言えば、ハリウッド映画である。『ツイスター』『アルマゲドン』『2012』など、地球環境の変動により、人類に危機が迫るとき、主人公が救済のために立ち上がる物語は、確固としたジャンルになっている。

 その最先端と言っていい映画が公開された。クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』。砂嵐によって食料危機に陥る近未来を舞台に、移住環境を求めて宇宙探索をするSF大作である。

 この映画を見て、賢治について、ひとつの疑問が解けた気がした。「なぜ宮沢賢治は、愛されるのか?」という疑問である。

1
↑ 新静岡セノバで。『インターステラー』ポスター。

 ノーラン監督と言えば、『メメント』『インソムニア』『プレステージ』『ダークナイト』『インセプション』などを手がけたヒットメーカー。複雑な物語構造を論理的につくり上げる手腕で、高い評価を得ている。

 『インターステラー』では、冒頭の、屋内までしつこく入る砂嵐の描写と、時折挿入される被災者らしき人たちのインタビュー映像を見た瞬間、『グスコーブドリの伝記』だと思って、前ノメリになった。砂嵐による凶作というモチーフは、1930年代の大恐慌時代に、実際に起こった自然災害からインスパイアされている。

 主人公クーパーは、元宇宙飛行士だが、農園で働いている。宇宙開発への社会的希望は、今や地に落ちており、かつての月面着陸は、教科書にも掲載されない「ウソ」。軍隊さえ、もはやない。科学の進歩に信頼を失った人類は、食料危機に対して、なす術を持たないかに見える。その時、宇宙から信号を受け取った主人公と、その娘は、隠れて活動を続けていたNASAの基地を発見し、宇宙コロニーの開発計画を知る…。

 エコロジー社会にナイーブなユートピア感を持つ現代人の感性に、ユートピアとディストピアが表裏一体である未来像は、じわっと来る。

 特筆すべきは、人類救済モノにありがちの、「俺が地球を救う!」というヒロイックな欲望を、巧妙に回避する工夫がなされている点。ネタバレになるので詳しく書かないが、指摘したいのは、その仕掛けに、物理学の相対性理論が用いられることである。

 相対性理論は、あの有名は物理学者アインシュタインによって提唱された。映画に特に応用されるのは、ワームホール理論や、俗に言う「時間の遅れ」である。本作は、タイムマシン理論で著名な物理学者キップ・ソーンが監修をしている。

 この世界観は、いくぶんか賢治的である。

記録や歴史 あるいは地史といふものも
それのいろいろの論料【データ】といつしよに
(因果の時空的制約のもとに)
われわれがかんじているのに過ぎません
〜〜中略〜〜
すべてこれらの命題は
心象や時間それ自身の性質として
第四次延長のなかで主張されます

(宮沢賢治『心象スケッチ 春と修羅』「序」より)

 3次元は、縦・横・高さの3つの座標軸で表される空間。ここに時間軸を追加して、4次元になる。アインシュタインは、4次元時空を想定することで、時間の相対性を導き出すことができた。物理学の発展にとって、4次元は、重要なアイディアである。

 賢治と相対性理論の関係は、度々指摘されてきた。1921年にノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは、1922年に来日し、熱狂的に迎えられる。賢治26歳の頃である。先の引用は、1924年に書かれた。

 「なぜ賢治は愛されるのか?」。それは、賢治が「第四次延長」にとどまったからである。時代の制約かな、賢治の想像力も、その先の次元へ入ることはできなかった。

 『インターステラー』では、驚くべきことに、さらに高次元時空の映像化が試みられている。映像である限り、仮想でしかありえないが、それでもそのファンタジックな想像は、ファミリー映画(映倫区分G)の真骨頂。この高次元時空が、「自分自身」と重ねられるに至っては、ほとんど悟りであった。

 「第四次延長」に拘泥した賢治は、たぶん、悟ることができなかった。時間と空間に制約される、せいぜい太陽系規模の想像力では、成仏できない。賢治は、だから愛される。

2
↑ 『インターステラー』チラシとパンフレット

 ハリウッド映画で、光と闇は、明確である。闇を駆逐するために、光が求められる。賢治は、そうではない。『グスコーブドリの伝記』は、ひとりぼっちになった子どもの遍歴譚だが、山あり谷ありの生涯は、たくましく生きるブドリの姿を光らせる。闇の中に光があり、光の中に闇がある。

 賢治の想像力は、最先端の自然科学、その光に触発された。他方で、激動の時代の現実、その闇に打ちひしがれてもいた。結局は、強い進歩主義に裏打ちされる『インターステラー』の世界を眺めながら思った――賢治のヒロイズムは、まぶしいというより、あたたかい。
 
2014年11月30日 新静岡セノバ・シネシティザートで鑑賞
 
SONY DSC文・西川泰功
ライター。SPAC『グスコーブドリの伝記』でドラマトゥルクを担当し、原作の脚本化のサポートをはじめ、俳優や技術スタッフとディスカッションをしたり、広報用の記事を書いたりしている。SPACでは2009年より中高生鑑賞事業用のパンフレット編集に携わる。その他の仕事に、静岡の芸術活動を扱う批評誌「DARA DA MONDE(だらだもんで)」編集代表(オルタナティブスペース・スノドカフェ発行)など。
 
 
*******************************
SPAC新作
『グスコーブドリの伝記』
2015年1月13日~2月1日
公演の詳細はこちら
*******************************
 


【SPAC県民劇団】 劇団MUSES、劇団壊れていくこの世界で

12月に入り、すっかり冬らしい景色&寒さとなった舞台芸術公園。
そんな寒さを吹き飛ばすくらいの熱気に満ちた、SPAC県民劇団「劇団MUSES」「劇団壊れていくこの世界で」の稽古場にお邪魔してきました!

劇団MUSESは結成2年目。
昨年の『赤鬼』に引続き、野田秀樹さんの戯曲『Right Eye』に挑みます!

ちょうど場面稽古の真っ最中!

ひとつひとつの動きを確認しながら、場面を作っています。

『Right Eye』は野田さん自身のエピソードや、今は亡き報道写真家の名前が登場し、フィクションとノンフィクションが交差する、とても手ごわい作品。長台詞もとても多いんです…。

この難しい戯曲を、劇団MUSESのメンバーはどう描くのか…、今からドキドキです!

そして、今年結成の劇団壊れていくこの世界で。
今県内で最も勢いがある、と言っても過言ではない若手演出家・木田博貴さんとメンバーが挑むのは…、
ギリシャ悲劇の傑作『オレステス』。

こちらも場面稽古が始まっています!

「母殺し」の罪により、「復讐の女神」に追い立てられるオレステス。

木田さん曰く、「ギリシャ神話と和のビジュアルとの融合」を目指すのだそう。
和のビジュアルとの融合…???
まだまだ場面稽古ではその全容がわかりませんが…、
未だかつてない『オレステス』が生まれる予感…。こちらも見逃せません!!

「劇団MUSES」の『Right Eye』
「劇団壊れていくこの世界で」の『オレステス』
全くタイプの異なる2つの劇団が体当たりで演じる現代と古典の名作戯曲、是非お楽しみに!!
今週末20日(土)から前売りスタート!!

SPAC県民劇団 劇団MUSES
『Right Eye』
日時:2015年3月7日(土)13:30/19:00開演、8日(日)13:30/17:00開演
会場:舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
http://spac.or.jp/kenmin_201503.html

SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『オレステス』
日時:2015年2月28日(土)13:30/19:00開演 3月1日(日)13:30開演
会場:舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
http://spac.or.jp/kenmin_201502.html


2014年12月18日

【トキドキ刊!『変身』】 まだまだ攻めます。

Filed under: 『変身』2014

今日は三校がご来場、
どの学校さんもみんな、中学1年生のお客様でした。
よーく台詞を聞いて、よーく見ているからこそ
作品の中に散りばめられた笑いの種を
見事にキャッチしてくださっているのが分かり
わたくし今日も、客席にいながらにして嬉しくてニヤニヤしてしまいました。
周南中学校、浜松修学舎中学校、牧之原中学校の皆さん、
ご来場ありがとうございました!

さてそんな『変身』チーム、15時過ぎに公演を終えた後
今日も夜まで稽古が続きました。
残り3ステージとなりましたが
この『変身』のメンバーたちは、
きっとあと何ステージあったとしても「守り」に入ることなく
どこまでも奥深くまで、全員で突き進んでいくのだろう、と思います。

このままずーっと作品の展開を見守っていたいような気持ちもありますが
もちろんそうは行きません。

残るは3日間!

あとはもう、日曜日までの公演を
一人でも多くのお客様にご覧いただくのみ。
お一人お一人にどれだけお伝えすることが出来るのかを考えるのみ、です。

2014.12.01-009

2014.12.01-553

ぎゅーっと凝縮された約85分、
俳優たちの身体の動きも、
身体ではないものの動き(さて何がどう動くのか、は… 劇場で!)も、
そして、言葉と動きのつながりの面白さも
どうぞたっぷりとお楽しみください!

制作部 中野三希子

*******************************
静岡芸術劇場<ヘンシン!>記念公演
『変身』
12月6日~12月21日
★公演の詳細はこちら
★12/6(土)、12/7(日)のアーティストトークの映像はこちら
*******************************


2014年12月17日

【トキドキ刊!『変身』】 「今」の『変身』

Filed under: 『変身』2014

みなさま、こんにちは。
制作部の山川祥代です。

『変身』公演ですが、
おかげ様で多くの方にご来場いただいております。
そして日々進化してゆく、作品。
最初にご覧になった方も、油断できませんよ!
場面が、台詞が、
きっと少し、いや大分違うかも?
舞台は「生もの」だということを
痛感させられる毎日です。
「あの」ときの、「あの」舞台は
「あの」ときのあなたでしか観られない。
「今」の『変身』はどうなっているでしょうか?

2014.12.01-024

2014.12.01-097

2014.12.01-222

2014.12.01-628

公演は残すところ
鑑賞事業公演2回(18日・19日)、
一般公演2回(20日・21日)。
まだご覧になっていない方も、
もう1回観てくださった方も、
「今」の『変身』を観にきてください!
劇場でお待ちしております。

*******************************
静岡芸術劇場<ヘンシン!>記念公演
『変身』
12月6日~12月21日
★公演の詳細はこちら
★12/6(土)、12/7(日)のアーティストトークの映像はこちら
*******************************


2014年12月16日

【『グスコーブドリの伝記』の魅力 #5】 「ぽうっぽうっ」?「ぷみぷみぷみぷみ」?

SPACでは、毎回作品に合わせたチラシ・ポスターを作成しています。
お客様への公演のお知らせに使ったり、お店や施設に置いてもらったりしています。
写真1
↑こちらは静岡芸術劇場のロビー

『グスコーブドリの伝記』のチラシ・ポスターはもうご覧になりましたか?
「まだ~!」という方…!こちらでございます~。
写真2
じゃーん。

今回はメインビジュアルとして、チラシのオモテ面、ポスターに
清川あさみさんのイラストを使用させていただきました。
写真3
↑絵本『グスコーブドリの伝記』リトルモア刊より

布やビーズを紙に縫い付けて作られたこのイラスト。
見るたびに「おぉ!こんな素材を使っていたのかッ!」と、
新たな発見があります。
ただいま静岡市内5か所で「宮沢賢治ブックフェア」を開催しています。
そちらで手に取ってみることができますのでぜひお立ち寄りください。

今日、稽古場を覗きに行ったら可愛い音?声?が聞こえました。

「ぽうっぽうっ」
写真4

今回山崎ナオコーラさんが執筆してくださった脚本には
かわいい”言葉”がたくさんでてきます。
制作・中澤のお気に入りはこちら。
写真5
こちらは「飛行船」を表現した”言葉”!
気付くと声に出しています。
ぷみぷみぷみぷみ…。
山崎さんの”言葉の魅力”がたっぷり詰まった脚本です。

これからどんな風に表現されていくのか、楽しみで仕方がありません。

次はどんな”魅力”をお伝えできるでしょうか。
それでは、また。

制作部 中澤

*******************************
SPAC新作
『グスコーブドリの伝記』
2015年1月13日~2月1日
公演の詳細はこちら
*******************************
 


1 / 212