2015年3月31日

<萌目線。vol.116>パクウェなび その3

Filed under: 萌目線。

今回は、早くも番外編といいますか
静岡駅から東静岡へ向かう途中、
そして東静岡駅から少し離れますが…
ぜひ食べていただきたい!SPACメンバーも中毒者続出の火鍋のお店をご紹介します!

美味しい本格中華の天国・四川京です!!

image3 (2)

鷹匠店と沓谷本店があります。
私たちがいつも頼むのは、火鍋食べ放題コース!!
90分2500円で、火鍋はもちろん中華クラゲや鴨サラダなどの前菜から、
炒飯や担々麺、ゴマ団子や杏仁豆腐まで…食べ放題なんです!

赤いほうは香辛料たっぷりの辛いスープ、白いほうは旨みが沁みる優しいお出汁のスープ。
どちらも薬膳パワーを感じます!

このお鍋に、牛肉豚肉ラム肉などのお肉類から、白菜やキャベツやもやし、
レンコンやタケノコといったたくさんのお野菜もいっしょにグツグツします。

そのまま食べても美味しいし、
ごま油のスープにつけてから食べても香り高くまろやかになって絶品です!

辛いものが大の苦手の私ですが、なぜか火鍋だけは大丈夫。
ゆずっち(猫大好きオーガニック女優)も、火鍋だけは大丈夫。
棚川さん(猫大好き音楽監督)も、夢中で食べます。

image2 (2)

というのも、この赤いスープ、唐辛子以外にも山椒や八角や生姜…いろーんな薬膳のダシが出ていて、
辛いだけではないんです。
痛覚を刺激してくるというよりも、身体にいい味がするので、どんどん食べてしまいます!

新陳代謝が上がって汗かいて、
体の中からポカポカしてくる…女優には嬉しい美容食でもあります。

お肉が沢山食べられてスタミナつくので!次の日とっても元気に。

代謝が上がるので、おなかいーっぱい食べてもなぜか次の日に体重が減っているというミラクルも!

ひとつのお鍋をつつきながら、色んなお喋りができるのも楽しいです。

観劇の前後に火鍋をつつきながら…演劇祭について盛り上がってみるのはいかがでしょうか?!

ちなみに沓谷本店さんのほうは私たちもよく火鍋会をしてますので…
お会いしてしまうかもしれません。笑。

image4

そんな私たちが何度もおかわりしちゃうオススメお鍋の具は…
うずらの卵、水餃子、エビ、イカ、中国ハムです!!

四川京
http://www.sakyo.co.jp/shisenkyo/

鷹匠店…静鉄 日吉町駅降りてすぐ。静岡駅から東静岡へ向かわれる道すがら、ぜひ。
沓谷本店…東静岡駅からタクシーがおすすめです。芸術劇場の観劇後に、ぜひ。

<萌目線。>とは・・・ SPAC俳優石井萠水の目線で稽古場や舞台裏の様子をお届けしています。
GREEでもブログ更新中。


*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(6)* 〈開催直前シンポジウム〉 抵抗と服従の狭間で ―「政治の季節」の演劇―

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015のプログラムをランダムにご紹介していきます。
日にちも迫ってきましたし、せっかくなので、4/10(金)に行われる「開催直前シンポジウム〉 抵抗と服従の狭間で ―「政治の季節」の演劇―」の話も。
宮城聰新作『メフィストと呼ばれた男』のテーマに関連しています。
*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(3)* 『メフィストと呼ばれた男』こちら
 

『メフィストと呼ばれた男』のモデルとなったドイツの名優グスタフ・グリュントゲンスは、1920年代には共産党を支持する活動をしていたにも関わらず、ナチス政権下で州立劇場の芸術監督に就任しました。実はこのあと、今回の作品では扱われていませんが、戦後の西ドイツでもグリュントゲンスは活躍をつづけ、亡くなった1963年まで、公立劇場の芸術監督を歴任しています。

グリュントゲンスがメフィスト役で有名になったように、演劇にはいわゆる「悪役」も不可欠で、俳優には、自分の信条とは異なる言葉を発しなければならないこともよくあります。そもそも劇場では、いろいろな国の、いろいろな時代の作品が上演されますが、そのなかには、今・ここの価値観ではとても肯定できないようなものがたくさん含まれていたりもします。でも、それもすべて、これまで人間が考え、生きてきたことであり、自分とは異なる考え方、生き方を知ることこそ、劇場に行く意義なのではないかとも思います。だから俳優は、どんな価値観でも、自分のものとして演じることができなければなりません。

これはもしかすると、俳優だけの話ではないかも知れません。大学の先生も、必ずしも自分の信条にそぐわないものでも、その時代ごとに必要な様々な知識を、分けへだてなく教える必要があるでしょう。今回シンポジウムに参加してくださる高田里惠子さんは、『文学部をめぐる病い 教養主義・ナチス・旧制高校』で、戦中にはファシズム文学を礼讃し、戦後には自由主義・民主主義的な文学を紹介した独文学者たちを描いています。そして片山杜秀さんは、なぜ日本が近代化し、西洋の思想や状況を知るに従って、右翼思想やファシズムが力を持ってきたのかを分析しています。

でも私たちは、こういった歴史を知ることで、何を学ぶべきなのでしょうか? 一つ見えてくるのは、「中立的な知識」というのはありえない、ということです。それは「科学」と呼ばれているものにも言えることで、あらゆる知識は誰かが知りたいと思ったから得られたものであって、誰も知りたくなかったことに関する知識というのはありえません。あらゆる知識の向こう側には、ある時代を生きた人の欲望があります。そしてその欲望は、違う時代から見ると、なかなか理解できないものだったりもします。違った欲望を持っていると、世界は違うように見えるでしょう。人間には、はっきりと見えていないものを見る能力があります。それは想像力と呼ばれています。知識の多くの部分は、この想像力でできています。

今の時代に、多くの人が受け入れている世界のあり方は、そんな知識が寄り集まってできたものです。その向こう側には欲望と想像力があります。私たちが見ている世界は想像力で出来ています。だから、想像力によって世界を変えることもできるでしょう。フランスの1968年5月革命では「想像力に権力を!」というスローガンが掲げられました。これに対して歴史学者のポール・ヴェーヌは、『ギリシア人は神話を信じたか』で、「想像力は以前からずっと権力の座についているのだ」と語っています。つまり、ギリシア人がつじつまの合わない神話に疑いをもちつつも、公の場面では「信じ」ているかのように行動したのと同様に、私たちも、ちょっと前の人々や私たち自身の想像力がつくった「神話」を必要とし、それを「信じ」ているのです。

でも、そんな神話が、自分にとって納得のできないもので、しかも自分の人生に災いとなるようなものだったときは、どうすればよいのでしょうか。多くの人が信じている「神話」に抵抗するような神話をつくることは可能なのでしょうか。あるいは、そういう神話がすでにあったとしても、他の人とそれを共有していくことは、どうすれば可能になるのでしょうか。

最近終わった20世紀は、人類が誕生して以来のどんな時代に比べても、圧倒的に多くの人々の命が戦争によって奪われた時代でした。人が知識を得たと思ったときには、同時に何か大事なものを見失っているのかも知れません。だとすればそもそも、人が賢くなることは可能なことなのでしょうか?

もしかしたら、見失ったものだって、ちょっと遠くに目をやりさえすれば見つかるのかも知れません。

『メフィストと呼ばれた男』にも言及しつつ、高田里惠子さん、片山杜秀さん、SPAC文芸部の大澤真幸さん、大岡淳さん、そしてみなさんと一緒に、そんなことを考えてみたいと思います。
 

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〈開催直前シンポジウム〉
抵抗と服従の狭間で ―「政治の季節」の演劇―
4/10(金) 19:30~21:30
スノドカフェ七間町 (静岡市葵区) 【定員30名】

http://spac.or.jp/15_symposium.html
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2015年3月30日

*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(5)* 『ベイルートでゴドーを待ちながら』

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015の演目をランダムにご紹介していきます。
第五回目は『ベイルートでゴドーを待ちながら』
中東レバノンの、これもブラックユーモアにあふれた作品です。
 

ベイルートで、中東で、ヨーロッパで

一昨年ドイツで行われていたアラブ演劇のフェスティバルで、一番客席が沸いていた作品でした。アラビア語上演でところどころドイツ語の字幕が出ている、という感じなのに、たたみかけるような対話と絶妙の間で、客席はすっかりイサームとファーディーの二人に魅了されていました。聞けば、この作品をベイルートでやるときは、48時間前に告知しても劇場がいっぱいになる、というくらい評判になった作品だそうです。二人とも、映画やテレビドラマなどで、レバノンだけでなく中東全域で活躍し、フランス映画にも出ていたりします。
 

中東の不条理的日常

浮浪者風の男が二人。なぜか新聞の訃報欄を読んでいます。「この若者は自動車事故で死んだらしいぞ」「こっちは医者だ」「じゃあ俺の背中を治してくれるかな」「何言ってんだ、死んでるんだぞ」等々・・・。どっちの葬式に行った方がいいものが食べられるか?些細なきっかけではじまった言い争いは罵りあいへとエスカレートしていきます・・・。

邦題のとおり、不条理劇の代表的作品であるベケットの『ゴドーを待ちながら』をモデルにして、現代のレバノンを描く作品。レバノンは「宗教の博物館」ともいわれ、国会の議員数が主にイスラム教とキリスト教の公認18宗派ごとに割り当てられています。この宗派同士の対立に、さらに国家主義、社会主義、共産主義等々の党派も加わって、レバノン政治はかなり複雑な状況を呈しています。そのうえ、隣国シリアやイスラエル・パレスティナ(かつては同じ地域圏でした)、さらには最大宗派のシーア派を通じてイランからの影響も大きく、1975年から15年にわたって内戦状態にありました。レバノンの演劇人が不条理劇を好むのは、日常そのものがあまりに不条理だからでしょう。
 

レバノンを代表する演劇人

イサーム・ブーハーレドは演出家・劇作家として、今日のレバノン演劇を代表する存在の一人です。レバノンの首都ベイルートは中東でも有数の文化都市で、多くの演劇人を輩出してきました。これまでSPACでは、レバノン出身のアーティストとして、ラビァ・ムルエとワジディ・ムアワッドを紹介してきました。

*ラビァ・ムルエ『消えた官僚を探して』(Shizuoka春の芸術祭2008)
http://spac.or.jp/08_spring/disappear.html

*ワジディ・ムアワッド『頼むから静かに死んでくれ』(Shizuoka春の芸術祭2010)
http://spac.or.jp/10_spring/littoral.html

イサームはラビァと同世代ですが、様々なメディアを使いこなし、世界中のフェスティバルで紹介されているラビァに比べると、より演劇にこだわり、ベイルートにこだわってきたアーティストです。ベイルートの中心部でレバノンの演劇文化を支えてきた「ベイルート劇場」の芸術監督を務めていましたが、立地がよいので投機の対象となり、売却されてホテルになることが決まったといいます。ベイルートでは演劇教育が盛んで、二人ともベイルートの大学で演劇を学び、今では演劇の授業を担当したりもしていますが、演劇活動に対する公的補助はほとんどなく、舞台自体を職業にするのは極めて難しい状況です。イサームがあまり外国に行かないのは「飛行機が嫌いだから」、とも言っていましたが(ドイツで会ったときもさんざん「日本?飛行機だよなあ・・・何時間かかるのかなあ・・・」などとぼやいていました)、近年はヨーロッパにもたびたび招聘されるようになってきました。

多才なコメディアン二人による、不思議にリアルな不条理劇をお楽しみください。
 

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日本初演 演劇/レバノン
『ベイルートでゴドーを待ちながら』
 作・演出: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー (サルマド・ルイの協力による)
 出演: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー
5/2(土)17:00、3(日)12:00、4(月・祝)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
http://spac.or.jp/15_page-7.html
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2015年3月29日

*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(4)* 『聖★腹話術学園』

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015の演目をランダムにご紹介していきます。
第四回目は『聖★腹話術学園』
シュールでブラックユーモアたっぷりの人形劇(?)です。
 

塀の外の方が自由だぞ

主人公のセレストは、なぜか追われる身となって逃げ回るうちに、塀をよじのぼって、奇妙な建物の中庭にたどりつきます。そこに等身大の人形を操る男が登場。(男ではなく)人形はドン・クリスパンと名乗り、セレストに銃を突きつけます。操っている(はずの)男によれば、
「おとなしく言うことを聞いた方がいいですよ。銃の中身は本物ですから・・・。」
セレストに迫るドン・クリスパン。
「塀の外にいた方がよっぽど自由だったのにな。ここは豚箱よりしんどいところだ。学校なんだぞ。さあもう一度塀を登るか、入学するか、どっちにする?」
そしてセレストは、どう見てもヤバそうなこの「腹話術学園」に入学することを決めてしまいます。
 

おまえの人形に魂を譲り渡すんだ

入学すると、まずは自分の人形を作らされます。その人形に自分の魂まで譲り渡してしまって、あとはひたすら人形に奉仕する、というのが学園の方針だといいます。つまりこの学園では人形の方が人間を支配しているわけです。教育係となった尼僧の人形がセレストに、自分の人形にしたい「秘められた欲望」をたずねます。
「ロリコンがいいか?それともサドマゾ系か?」
ところが、これに対するセレストの意表を突いた答えから、徐々に学園の「秩序」がかき乱されていきます・・・。

 

演劇人ホドロフスキー

この作品を書いたのは、奇想の映画作家として知られるアレハンドロ・ホドロフスキー。日本では『エル・トポ』や、最近公開された『リアリティのダンス』といった映画作品が知られていますが、実はこの人、もともと演劇をやりたかった人なのです。チリに生まれ、学生時代から実験的な演劇作品を発表し、24歳で渡仏。人形劇をやりながら放浪生活を送っていたところで、パントマイムで有名なマルセル・マルソーに出会って弟子入りし、百本以上の舞台を演出しています。『聖★腹話術学園 L’Ecole des Ventriloques』は、このベルギーの劇団ポワン・ゼロのために書き下ろされた作品。日本でホドロフスキーの戯曲が上演されるのは、おそらくはじめてです。ホドロフスキーの作品においては、一見すると奇妙で猥雑な仕掛けが、同時に高度な精神世界へのいざないともなっています。


ジャン=ミシェル・ドープ(写真左)とアレハンドロ・ホドロフスキー(写真右)
 

ベルギーの奇想とリアル

劇団ポワン・ゼロも、今回が初来日となります。ベルギーの舞台芸術といえば、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルやヤン・ファーブルなど、フラマン語(オランダ語)圏のアーティストたちは日本でもよく知られていますが、フランス語圏のアーティストはほとんど紹介されていません。ですがベルギーのフランス語圏からは、ルネ・マグリットやアンソール、ポール・デルヴォーといった数々の奇想の画家たちが輩出されています。そして、フランス語で書いたベルギー出身の偉大な作家として、『青い鳥』や『群盲(盲点たち)』の作者メーテルリンクがいます。ここには、理知的なものを尊重してきたフランスとは大きく異なる、グロテスクなブラックユーモアが神秘的思想へと至る鍵になるような、独特の世界があります。ポワン・ゼロも、リアルな世界と夢幻的な世界が地つづきでつながっているような、上演の難しい作品を好んで舞台化してきた劇団です。


「ポワン・ゼロ」のメンバー(含む、人形)
 

ポワン・ゼロとの出会い

ポワン・ゼロは上演する作品に合わせてスタイルを大きく変えています。このホドロフスキーの作品を上演するにあたって、ポワン・ゼロは人形劇の専門家に指導を仰ぎ、古典的な技術を学びつつも極めて独創的な人形を作り上げ、人形に支配される特異な世界をみごとに表現しています。この作品は2014年のアヴィニョン演劇祭のオフで上演され、話題を呼んでいました。SPACからも『マハーバーラタ』や『室内』の公演に参加していた多くの俳優やスタッフが観に行き、アヴィニョン滞在中に観たなかで一番面白かった作品として挙げていました。

というわけで、内に秘めた欲望がある方もそうでない方も、ぜひ学園の門を叩いてみてください。きっと不思議な顔をした人形たちが、訪れたことのない世界へと連れて行ってくれます。

 

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日本初演 演劇/ベルギー
『聖★腹話術学園』
 演出: ジャン=ミシェル・ドープ
 作: アレハンドロ・ホドロフスキー
 出演: ポワン・ゼロ
5/5(火・祝)16:00、6(水・祝)12:00
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_the-ventriloquists-school.html
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2015年3月28日

『メフィストと呼ばれた男』稽古場ブログ1

3月も残すところわずか、あたたかい季節になってきましたね。
ということは、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」まであと1月。

宮城聰演出×SPAC出演の新作『メフィストと呼ばれた男』も、
地道に稽古が進められています。

これから、『メフィストと呼ばれた男』を、ご紹介していきます。

◆2月下旬 稽古初日 顔合わせ

芸術劇場で『ハムレット』の公演が終わった週末の夜、
劇場最上階のリハーサル室に
『メフィストと呼ばれた男』出演俳優とスタッフが
一堂に会しての顔合わせ。

メンバー全員の紹介が終わったら、
早速、空間構成を担当する木津潤平さんから、
今回の舞台空間について説明します。

木津さんといえば、2013年の演劇祭では、
野外劇場に舞台と客席エリアを反転させた空間を
そして昨年はアヴィニョン演劇祭のブルボン石切り場に、
1000の客席を取り囲むリング状の
舞台を出現させたあの木津氏。


『黄金の馬車』2013年 野外劇場「有度」にて


石切り場の『マハーバーラタ』舞台

でも、今作は普通の劇場の中での公演。
さすがに今回は、普通に劇場を使うのだろう…
と思いきや、ここで驚きの空間プランが!

そして、続いては、宮城が演出プランを発表。
今回はこの驚きの空間で、
1930年代のドイツの公共劇場に生きる人々の姿を、
<リアリズム>で上演してしてみたいと。

宮城演出のSPAC作品でリアリズム?

今年1月の宮城の新作『グスコーブドリの伝記』では、
等身大の人形を使うという新たな挑戦をした俳優たちですが、
ここでまた思わぬ新たな挑戦が待っているとは。

俳優やスタッフからは、次々と質問が…。

宮城聰&SPACの新たな挑戦。
一体、どうなっていくのでしょうか?

どうぞ、お楽しみに。

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SPAC新作『メフィストと呼ばれた男』
4/24(金)・4/25(土)・4/26(日)
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html
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*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(3)* 『メフィストと呼ばれた男』

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015の演目をランダムにご紹介していきます。
第三回目は、宮城聰演出によるSPAC新作『メフィストと呼ばれた男』
ナチス時代に国立劇場の芸術監督となった俳優をめぐる物語です。
 

クラウス・マンと『メフィスト』

この作品はドイツの作家クラウス・マンの小説『メフィスト 出世物語』にもとづいています。ドイツ語圏の劇場ではよくレパートリーに入っているようですが、日本で舞台化されるのはかなり稀なようです。ハンガリーの映画監督サボー・イシュトヴァーンによる『メフィスト』(1981年)はアカデミー賞で外国語映画賞を受賞したこともあり、日本でも公開されて話題になりました。

クラウス・マンは、『ヴェニスに死す』などで有名な小説家トーマス・マンの息子で、姉のエリカが女優だったこともあり、演劇界ともつながりがありました。クラウスとエリカはナチスの台頭に対抗するため、1933年に政治的キャバレー劇団「ペッパーミルシアター」を立ち上げ、人気を集めました。ところがその直後、ヒトラーが首相に任命され、ナチスが政権を掌握。二人は同年中にドイツを脱出しています。『メフィスト』は亡命中の1936年に、オランダのアムステルダムで出版されました。この年はベルリンでオリンピックが行われ、ナチス政権がその威光を見せつけた年でもあります。『メフィスト』がはじめてドイツで出版されたのは、これから二十年後のことでした。
 

本物の「メフィスト」

『メフィスト』の主人公ヘンドリック・ヘーフゲンのモデルとなったのは実在の俳優グスタフ・グリュントゲンス(1899-1963)。ゲーテ『ファウスト』に出てくる悪魔メフィストフェレスの役で有名になった名優です。この小説には「出世物語」という副題がついていますが、このグリュントゲンスは実際、ナチス政権下でベルリンにあるプロイセン州立劇場の芸術監督に就任し、当時のドイツ演劇界において大きな影響力をもつ存在でした。

でも、このグリュントゲンスはナチス党が政権を獲得する前からナチスを支持していたわけではありませんでした。むしろ、当初はナチスと対立する共産党に賛同し、「革命的演劇」を目指していました。グリュントゲンスはエリカ・マンとともにクラウス・マンの作品を1925年に上演しています。そしてその後1926年にはエリカと結婚したので(29年に離婚)、クラウス・マンの義兄でもありました。
 

このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ

映画『メフィスト』では、1932年の総選挙でナチスが第一党になったのを知り、主人公ヘンドリックの妻や友人たちが次々とフランスやアメリカへと脱出していきます。それでもヘンドリックは「議会もあるし、まだ社会党も共産党もあるじゃないか。ナチスが好き放題にできるわけはないだろう。私には外国語で演技などできないし」と言って、ドイツに留まります。そしてメフィストを演じて名声を得ているヘンドリックに、次期政権で州首相になるという人物(プロイセン州首相となったゲーリングがモデル、今回の翻案では「文化大臣」)が声をかけてきて、ベルリンの州立劇場の芸術監督への就任を要請されます。ヘンドリックは、自分の友人たちを守ることができるのではないかと考えて、この要請を受け入れます。ところが、ヘンドリックはナチスの民族主義的芸術政策に適った発言を身につけていき、時流に抗うことができなくなっていきます・・・。

ドイツでも日本でも、1930年代初頭までは自由な雰囲気があり、ほとんどの人は、わずか数年のあいだにファシズム的な体制ができあがってしまうことを想像してはいませんでした。今こんな映画を観てみると、「ここで逃げればよかったのに」などと思ってしまいますが、実際に今、ここで生きている自分のこととして考えてみれば、自分のこれまでの生活を捨てていく、という選択はそれほど容易なものではないでしょうし、「ここで何か自分にできることがあるのではないか」という気持ちも当然あるでしょう。こういう状況に実際に自分の身を置いてみて考えることができるように、今回の演出ではリアリズムの演技を使う、と宮城聰は言っています(かなり珍しいです)。

今回上演されるのは、現代ベルギーを代表する作家の一人であるトム・ラノワによる、けっこう大胆な翻案で、主人公の名前はクルト・ケプラーとなっています(憶えやすくなってます)。クラウス・マンの原作は当然1936年までの話で終わっていますが、この翻案ではクルトの軌跡を1945年まで追っています。そして『ファウスト』だけでなく、シェイクスピア『ハムレット』、『リチャード三世』、チェーホフ『かもめ』など、数々の古典の名作を劇中劇として取り込み、その台詞が時代背景と絶妙に響き合うものになっています。こうすることで逆に、古典の台詞がもつ射程の深さも浮かび上がっていきます。

こんな状況になったらどうすべきなのか、一緒に考えてみたい方、そして古典劇が時代と響き合うのを見てみたい方にお勧めできる作品です。
 

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SPAC新作 演劇/日本(静岡)
『メフィストと呼ばれた男』
 演出: 宮城聰
 作: トム・ラノワ (クラウス・マンの小説に基づく)
 音楽: 棚川寛子
 空間構成: 木津潤平
 翻訳: 庭山由佳
 翻訳協力: 大西彩香
4/24(金)18:30、4/25(土)13:00、4/26(日)18:00
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html
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2015年3月27日

*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(2)* 『觀 ~すべてのものに捧げるおどり~』

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015の演目をランダムにご紹介していきます。
第二回目は、無垢舞蹈劇場による『觀』
アジアのコンテンポラリーダンスでは最も世界的に評価されているカンパニーの一つですが、日本では今回が初めての紹介となります。
 

 

圧倒的な身体性

これほど身体性に圧倒された作品は近年なかった気がします。二年ほど前、台北の稽古場にお邪魔させていただいたのですが、非常にゆっくりとした動きなのに、一挙手一投足に緊迫感があり、丹念に彫り込まれた彫刻作品のようでもありました。
 

時間をかけて作品を生み、育てていく

それもそのはずで、この作品、なんと9年もかかって作られたのだそうです。無垢舞蹈劇場は創立から20年くらい経っているのに、そのあいだにまだ三作品しか発表していません。この『觀』は「天地人三部作」の完結編と位置づけられています。

一つの作品を、ゆっくりと時間をかけて生み、育てていく林麗珍さんのやり方は、この無垢舞蹈劇場自体が生まれた過程とも結びついています。

林麗珍(リン・リーチェン)さんは台湾南部の基隆市の生まれで、台湾の大学で舞踊を学んだのち、ダンサー・振付家として活躍してきました。その後、出産を契機に約7年振付活動を休止し、育児をしながら、台湾の民衆文化や、特に南部に色濃く残っている原住民文化のフィールドワークをしていました。「原住民」というのは、漢民族が来る前から台湾に住んでいた人々の子孫を指す言葉で、他の太平洋の島々とも文化的な共通点が見られます。こうして台湾の風土のなかで長年かけて培われた文化を見つめなおしたのちに、無垢舞蹈劇場の活動がはじまりました。
 

生活者の命が宿る衣裳と小道具

歌や踊りを採集すると同時に、衣服や工芸品の蒐集にも力を入れています。林麗珍さんは服飾デザインでも知られていますが、無垢舞蹈劇場の作品では、こうして蒐集した本物のアンティークの生地や民芸品にこだわっています。そこにはそれを長年使ってきた人たちの人生が込められているから、と林さんはおっしゃっていました。林さんはこれを素材にして、豊かなイマジネーションで、新たな命を吹き込んでいます。
 

世界的評価

これほどのスローペースで作品を発表しながら、これほどの規模の舞踊団(今回は30名以上メンバーが来日の予定です)を運営することができているのは、作品が世界的に評価されてきたからでもあります。アヴィニョン演劇祭やリヨン・ダンス・ビエンナーレ(フランス)、チェーホフ国際演劇祭(ロシア)、セルバンティーノ国際フェスティバル(メキシコ)、北京五輪芸術祭など、数々の国際的なフェスティバルにメイン演目の一つとして招聘されることで名声を得て、台湾の国立劇場の全面的なバックアップのもとに作品を作ることが可能になっているのです。
 

人類と自然をめぐる壮大な物語

『觀』は文字通り、壮大なヴィジョンを提示する作品です。原住民の神話にもとづいていて、悠久の時を生きてきたタカの一族に、一羽の美しい白い鳥が迷いこむところから物語がはじまります。欲望から嫉妬が生まれ、破壊の衝動が生まれ、気がついたときにはもう取り返しのつかない道へと踏み込んでいます。鍛え上げられたダンサーたちの身体がきわめて繊細かつ強靱に欲望の道行きを表現する一方で、この作品には、人類の歩んできた道を鳥瞰するような視点が与えられています。

この強烈な緊迫感を放つ舞台を見せてくれたあと、林麗珍さんがおいしい台湾高山茶をごちそうしてくれたのをよく憶えています。一歩稽古場を出ると、ほがらかで気さくな方で、ちょっとほっとしました。
 



 

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日本初演 ダンス/台湾
無垢舞蹈劇場 『觀 ~すべてのものに捧げるおどり~』
 芸術総監督・振付: 林麗珍 (リン・リーチェン)
 製作: 無垢舞蹈劇場
5/2(土)13:30、3(日)14:30 
静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/15_song-of-pensive-beholding.html
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2015年3月26日

「SPAC1日演劇学校」開催いたしました!

2015年3月14日(土)「SPAC1日演劇学校」を無事、開催いたしました。
静岡芸術劇場の舞台上で講師 大岡淳(SPAC演出家)の指導の下、アシスタント 永井健二(SPAC俳優)・木内琴子(SPAC俳優)も加わり、県内の東部・西部・中部の高校演劇部の学生たちが参加しました。今年の課題はシェイクスピア『ハムレット』の有名な場面、「尼寺へ行け」というハムレットの台詞があるシーン。グループごとに、ハムレット役・オフィーリア役・演出担当に役割分担し、課題に取り組み発表してもらいました。それぞれ個性的な演出!で仕上がっていて、短時間にもかかわらず、参加者同士お互いに勉強しあう姿が印象的でした。

SPAC創作技術部の村松厚志によるバックステージツアーでは、静岡芸術劇場の機構、奈落、衣装室などを見学。およそ7メートルの深さがある奈落には、参加者のみなさんがとくに驚いていました。

最後に1日を振り返ってみんなで意見交換。ゲストとしてSPAC『ハムレット』ハムレット役の武石守正(SPAC俳優)も加わり、参加者からたくさんの質問が寄せられました。

「1日演劇学校」へのたくさんの応募、ご参加ありがとうございました!
皆さん、演出の面白さ、舞台作品へ向き合う際のいつもとちがうアプローチの仕方、等々あたらしいステップアップとして何かをつかめた様子でした。これを機会にまた演劇への興味が深まったら嬉しい限りです。またぜひSPACへ遊びに来て下さい!


【SPACこども大会】卒業生は今!?

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3/28(土)に、「SPACこども大会」を開催いたします。
県内の小学生に、自分の特技を思いっきり披露してもらうこのイベント、
今年も個性豊かでにぎやかなこども大会になりそうです。
詳細はこちらをご覧ください。

2001年からスタートし、今年でなんと16回を迎えます!!
これまでの15回の大会には、県内の幅広い地域から553組1182名の小学生が参加してくださいました。
中には、その特技を磨き続けて活躍されている方々もいらっしゃいます。


▲ 笠原江梨香さん

第2回大会に「空手演武」でご出演いただいた笠原江梨香さんは、
ロンドンで開催された「第30回オリンピック競技大会」テコンドーで、7位入賞を果たしています。

ほかにも様々な分野で活躍している方が大勢いらっしゃいます。
「SPACこども大会」が少しでもその背中を押す手助けになっていたら、
こんなに嬉しいことはありません。
今年も、きらきらした子どもたちの魅力を最大限に引き出せるよう、SPAC一同精一杯努めます。


2015年3月25日

*ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 見どころ紹介(1)* 『盲点たち』

文芸部 横山義志(海外招聘担当)

ふじのくに⇄せかい演劇祭2015の演目を、いくつかランダムにご紹介していきます。まずは、ちょうど稽古を見に行ったところなので、『盲点たち』から。(翻訳チェックを担当しています。)
 

戻ってこない人

北方の島にある盲人のための療養所。冬がやってこようとする前に、そこに住む12人の盲人が、療養所を運営する年老いた神父さんに連れられて、森に遠足に行きます。森で一休みすることになり、神父さんはどこかに出かけたようです。でも、いくら待っても、神父さんは戻ってきません。あたりはすっかり暗くなっているようです。

この話を書いたのは『青い鳥』で有名なメーテルリンクですが、これは文字通り、かなり「暗い」話です。原作『群盲』(あるいは『盲人たち』、Les Aveugles)では、観客には、木に寄りかかって亡くなっている神父さんの姿が見えることになっています。だから、お客さんにははじめから、神父さんが戻ってこないことは分かっています。そして、お客さんには、それから何が起きるのかがある程度想像できるでしょう。というか、少なくとも「何が起きないか」はだいたい分かっているわけです。そして、その結果どうなるか、ということも・・・。
 

「何も起きない」ことで何かが起きる

この作品がすごいのは、「何も起きない」ことこそが事件になっているということかも知れません。ふつうお芝居というのは、何か重大な事件が起きて、それで登場人物がどうしていいか悩んで右往左往する、というものでしょうが、この作品では、重要な事件はすでに起きているのに、誰もそれに気づきません。でも、「何も起きない」ことこそが最も恐ろしい事態だということには、徐々に気づいていくでしょう。

もちろんこれは劇場での上演を前提としているわけですが、今回は日本平の森のなかで上演してみることにしました。これが本物の夜の森で上演されるのははじめてかも知れません。真っ暗なので、お客さんにも、何が起きているのかはよく分かりません。登場人物だけでなく、お客さんも含めて、誰にも見えないので、今回は『盲点たち』という題名にしました。

とはいっても、暗闇のなかに身を置いてみると、いつもとは違う感覚が研ぎ澄まされていきます。『青い鳥』も、ふだん目に入っているのに「見えて」いないものに気づいていく、という話でしたね。この作品もきっと、何か大事なことに気づかせてくれるものになるんじゃないかと思います。演出のダニエル・ジャンヌトーさん(フランス)は、もともと舞台美術家だったのですが、はじめて全く「舞台装置」のない作品に挑むことになりました。そのかわり、いろいろな音で空間を作っていくことになりそうです。「むしろ見えないことで、豊かなヴィジョンを持って帰ってもらえるような作品にしたい」と言っていました。

もっといろいろ書きたい気もしますが、とりあえずこのあたりで。

「寒くなってきたね」という台詞がありますけど、春とはいえ、たぶんかなり実感できると思います。くれぐれも暖かい格好でいらしてくださいね。
 

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SPAC新作『盲点たち』
日時:4/25(土)、5/2(土)、5/4(月・祝)、5/5(火・祝) 各19時(集合時間) 
会場:日本平の森
http://spac.or.jp/15_the-blind.html
【新人は見た!/『盲点たち』稽古場日記】

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