2016年2月27日

『イナバとナバホの白兎』~新作誕生までの道のり~vol.1

本日いよいよ「ふじのくに⇄せかい演劇祭2016」のチケットが一般発売開始となりました!
このせかい演劇祭の目玉作品の1つが宮城聰演出SPAC新作『イナバとナバホの白兎』です。

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昨年の『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』に引き続き、駿府城公園での野外劇として上演いたします。

駿府城
↑ 『マハーバーラタ』2015年公演の様子

実は『イナバとナバホの白兎』は1月中旬から稽古がはじまっており、ただいま作品制作真っ最中でございます。
今作品の特徴の一つが台本作りに俳優も加わって1から作っているところです。そのため稽古場には古事記やナバホ神話、クロード・レヴィ=ストロース(フランスの人類学者)、民俗芸能に関する資料がずらりと並んでいます。

「クロード・レヴィ=ストロースはどんなことを考えていたのか?」
「白兎は何者だ?」
「兄弟ってなんだろう?」「水は?火は?」

古事記やナバホ神話に出てくるエピソードやキーワードをもとに、
時にはそのものの根源までつきつめていくような話し合いを繰り返し、
具体的に台詞や身体表現にしてみて試行錯誤を重ねに重ね、ようやく少しずつ台本が出来上がっていきます。

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今週は<アメンボチーム>と<蒸し風呂チーム>に分かれてそれぞれシーンを作り発表しました。
アメンボ?蒸し風呂?と気になるところですが、今日はここまで。

まだまだ、形のみえない作品ですが、このブログで壮大な祝祭音楽劇が誕生するまでをご紹介していきたいと思います。

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(文:仲村悠希)

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ふじのくに野外芸術フェスタ2016
フランス国立ケ・ブランリー美術館開館10周年記念委嘱作品
『イナバとナバホの白兎』
5/2(月)~5(木・祝)
駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
◆公演の詳細はこちら
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2016年2月26日

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆ 『ロミオとジュリエット』出演俳優トーク

◆中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆

中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。
パンフレット裏表紙のインタビューのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。

ロングバージョン写真

キャピュレット役
貴島豪(きじま・つよし)
1998年よりSPAC所属。出演作に『真夏の夜の夢』、『ハムレット』(演出:宮城聰)、『変身』(演出:小野寺修二)他。

ベンヴォーリオ役
舘野百代(たての・ももよ)
1997年よりSPAC所属。出演作に『王国、空を飛ぶ!~アリストパネスの「鳥」~』(演出:大岡淳)、『変身』(演出:小野寺修二)、『天守物語』(演出:宮城聰)他。

<台本にあるセリフは全部覚える!?>
──オマール・ポラス演出の『ロミオとジュリエット』は2012年に初演されましたが、当時、配役はどのように決まったのでしょうか?

舘野: 最初は出演者が全部の役を順番に、男女も関係無しにやってみて、その中でひとりひとりの特質を見極めながら決めていくのがオマールのスタイル。だから台本にあるセリフは全部覚えてこいって言われる(笑)。『ロミジュリ』(注:『ロミオとジュリエット』のこと)は最初特に男女逆にやるっていうつもりはなかったんだけれど、ロミオを男優で試し続けていて、何か足りないって思っていたんじゃないかな。そこで実幸(みゆき)(山本)にやらせたら空気が変わって…結果としてオマールは今の形に一番可能性を感じたみたい。
貴島: いろんな役をやることで、その俳優が自分でも気づいていなかった特質が出たりするんだよね。それを、オマールが思い描く登場人物たちのイメージとすり合わせて配役が決まる。
舘野: そういうやり方だから、こちらが事前にこう演じようと思って準備していったものは全部潰されちゃうんだよ。オマールは俳優がその場で何かを生み出すのを待っている。俳優自身も知らない個性が出てくるのを。俳優は全部「さらされる」から、嘘もつけないし、本気でやらないとオマールとは戦えない。

<本当の自分>
──「さらされる」とは何を通じてそう感じるのですか?

舘野: 『ドンファン』(※)のキャスティングでもやったのは、俳優が仮面をつけてやる即興パフォーマンス。まず俳優はオマールの持ってきた仮面をつけて、鏡の前で自分の姿と向き会う。そして、平台を数枚敷いたくらいの小さな空間で、その場で考えて即興的にパフォーマンスをする。もちろん、オマールや他の俳優の観ている前で。何をやってもいいんだけど、もし何もできなければ自ら退場するか、何も生み出せない状態のままじっと観られ続ける。そこで何か面白いことができたとしても、観ている人は笑ったりしてはいけない。そうすると俳優はその反応によりかかってしまうから、という…。
貴島: とりあえず舞台に出されて、「何かやってくれ」って(笑)。何もできない人がいたり、役者の性として「何かやらなきゃ」って思うから結局ドツボにはまってずっと舞台から降りられない人がいたり…。観てるほうも辛いよ。
舘野: どうしようもない状況になればオマールはヒントをくれるんだけどね。「あなたの名前は?」とか。でもそこで本名を答えると、「違う」と言われる。なぜなら仮面をつけているから。その場でキャラクターを作り上げなくてはいけないということ。
貴島: ふつうは仮面をつけたら「他の人を演じる」という感覚なんだろうけど、オマールは仮面をつけることでその人の奥底に隠れている本質的な部分を引き出させようとする。

※SPACスプリングシーズン2011『ドンファン』(2009年初演)
http://www.spac.or.jp/11_spring/donjuan.html

<「慣れ」との戦い>
──配役が決まった後の稽古はどんな様子ですか?

舘野: 稽古を繰り返していると、慣れてきて、だんだん自分のクセが出てきたりするよね。そうするとオマールはシチュエーションを変えたり、出る順番を変えたりして揺さぶってくる。常に新しいもの、前に進むことを追求しないと役は活きてこないから。稽古というと何度も同じことを繰り返してそれを確実にしていくことが多いんだけど、そうやってどんどん変更を加えるオマールとの作品作りが、自分の幅を広げるターニングポイントになった気がする。
貴島: 俳優が慣れてきたときに、オマールはそれを「メカニック(機械的)」と表現するんだけど、それを絶対に許さないから、俳優を自分の範囲から引っ張りだして、外に向かわせるように新しい要素を入れて活性化させる。演技に慣れてくると自分の箱の中でうまくやっているつもりになりがちだから。それにしてもオマールはそういうとき本当に察知するのが早い。もしかしたら、自身が若いころから俳優を志して母国を出て、言葉の通じない国で路上パフォーマンスをして見知らぬ人にさらされながら、学費を稼いで芝居の勉強をしていた経験も影響しているのかな。

<日本語の音を考える>
──上演台本は日本語ですが、オマールさんは日本語のセリフにどうアプローチするんでしょうか?

貴島: オマールは日本語の響きやリズム感にも敏感。俳優が日本語として自然な、話しやすいトーンでセリフを言うと、「ここで欲しいのはそういう音じゃない」と言われるときがある。それでオマールは求めているアクセントを「タ、タ、タ、タ、タ」とか言って実践してみせるんだけど、もちろん彼は日本語の母語話者じゃないから、日本語的にはありえないアクセントだと最初は思う。でも実際にやってみると、意外と日本語っていろんな話し方ができるんだなっていう発見があったりする。このすり合わせ作業は大変だったけど、目からウロコの連続でもあった。
 『ドンファン』では仮面をかぶって大きな身振り手振りをするような演技をした。でも、日本人の俳優は大きなジェスチャーの演技はちょっと大げさに感じるから、最初は違和感があった。オマールは能や歌舞伎も勉強してきているから、日本に特有の動きの様式があるということも知っている。それを、オマールの持っている様式をすり合わせて自然にできるようにしていく。そういう違和感から始まるすり合わせが、演技に深みをもたらしたと思う。
舘野: 身振り手振りも、適当にやってるんじゃなくてちゃんとコードがあるんだよね。慣れてない日本人からするとはじめは表面的に真似することしかできないんだけど、だんだんその意味も考えるようになってきた。

<世界レベル>
──稽古場でのオマールさんはどういう人ですか?

貴島: 厳しい人だね。求めているものが出てくるまで何時間でも待つ。反面、ものすごく気が早いときもある。パッとインスピレーションがわいたら、相手が悩んでいても「あれやって、これやってみて」とどんどん要求してくる。そうなると休憩も全然とらないし。とにかく極端で、中庸というものがない。何かを妥協したりは絶対にしない(※)。
舘野: 演劇に限らず、そういう人たちが世界をリードするんだろうね。その肌に触れられるのはとてもありがたいこと。

※貴島豪による、『ふじのくに⇄せかい演劇祭2012』で上演されたテアトロ・マランドロ『春のめざめ』でのオマール・ポラスについてのコラム
http://spac.or.jp/blog/?p=11313

<「ぶっ飛んだ演出家」オマールとの出会い>
──SPACの俳優の中でも特にオマールさんとの付き合いが長いお二人ですが、そもそもの出会いはどんな形だったのでしょう?

舘野: 最初にオマールに出会ったのは鈴木忠志さんが芸術総監督だった頃、1999年の『血の婚礼』。ヨーロッパでこの芝居を観て、呼ぼうと思ったらしい。で、実際に観てみたらものすごくぶっ飛んでいて、夢の世界に連れていってもらえた。でも滅茶苦茶ではなく、きちんとした枠があるという印象を受けた。その当時の俳優トレーニングに取り入れてみたりしたよね(笑)。
嬉しかったのは、『ロミジュリ』でヨーロッパ公演をしたときに、オマールの劇場(シテ・ブルー)で、「やっと夢が叶った」って言われたこと。オマールは『血の婚礼』のときから、SPACの人と仕事をして、自分の劇場に連れてくるのが夢だったんだって。
貴島: 芝居もぶっ飛んでいたけど、当時のテアトロ・マランドロ(オマールの劇団)のメンバーは…(笑)。普段の格好からアナーキーだったよね。
舘野: そうそうそう、鼻ピアスに、紫の髪とかで…(笑)。
貴島: でも演劇の話になると、とにかく真摯だし、作品からもそれが痛いほど伝わってくる。鈴木さんはそういうところを気に入ったのかもしれないね。

<ハードなツアー経験>
『ロミオとジュリエット』は2013年にヨーロッパツアーを行いましたね(※)。いかがでしたか?

貴島: ヨーロッパツアーではジュネーヴを拠点にして10都市まわったよ。ハードなスケジュールだったけど、行くところすべてが新鮮(笑)。新しい劇場に入って1日や2日で本番ということもあったけど。
舘野: 劇場入りして、通し稽古して、本番やって、夜に帰る、みたいなことで鍛えられたね。
面白かったのは、長期滞在だから俳優がそれぞれ違うアパートに泊まっていたこと。普段の海外公演みたいにみんなで同じホテルに泊まって、集まって劇場に行って…じゃなかったこと。同じチームなのに劇場で集まるまではお互いの生活にノータッチで、大人な感じだった。
貴島: 生活能力も問われたね。自炊能力、買い物能力…(笑)。体調管理は本当に大事。それでも長くいるとだんだん普段日本にいるときと同じような感じで、リズムができてくる。ジュネーヴを拠点にして、TGV(フランスの高速鉄道)でいろいろなところに行って。4カ月近くいたのかな。フランス語はなかなか覚えなかったけど(笑)。
舘野: 生活していくうちに現地の人たちといろいろな出会いや交流もできたしね。
貴島: CERN(セルン・欧州原子核研究機構)見学とか、MMAジムに通ったり(笑)。

※出演者による、2013年『ロミオとジュリエット』ヨーロッパツアーのブログ
http://spac.or.jp/blog/?cat=74

<外国人出演者たちから学んだこと>
──演出家のオマールさんだけでなく、出演者にも外国人の方々がいますね。一緒に作品をつくった印象はどうでしたか?

貴島: 一緒にトレーニングをやったりするとわかるんだけど、身体について何を大事にしなきゃいけないかっていうことは同じ。俳優それぞれいろんなプロセスを通ってきたとしても、お互い共通の肉体言語を持っているんだよね。
舘野: もうひとつ、印象的だったのは、例えば稽古に遅刻してしまったときとか、日本人だとまず「なんで?」から入っちゃうんだけど、オマールは「来てくれてありがとう」と言う。そういう風にポジティブから入るのはいいなあと思った。あとフランスやスイスで、スーパーで買い物してたら、現地の人はレジでまず「ボンジュール」って言うんだよね。自分も取り入れようと思って、日本でもレジで「こんにちは」って挨拶してるうちに店員さんと仲良くなったりした。そういう風に、芝居の外でもいろいろ取り入れたことで、自分が豊かになった気がする。
貴島: そういえば、フランスとかスイスでは文化として劇場に行くことが生活の一部になっているんだよね。スポーツ観戦とかと同じ感覚で。日本だとまだそこまではいっていない。これから特に若い人たちの間でそういう風になっていったらいいな、と思う。

<喜劇としての『ロミオとジュリエット』>
──SPAC版『ロミオとジュリエット』の見どころを教えてください。

舘野: 400年前に『ロミジュリ』が書かれたころ、当時のシェイクスピア演劇は男性だけで上演されていたんだって。きっと劇団には長老みたいな人がいて、ベテラン看板俳優がいて…。もしかしたらシェイクスピアは、若い人を主役にした『ロミジュリ』を書くことで、そういう状況に対してオマールと同じで「揺さぶり」をかけたのかも(笑)。SPACでも、若い役者をベテランが支えるっていう形で見せられたらいいな。
貴島: それから『ロミジュリ』って、たった5日間の恋愛劇なんだよね。オマールの演出はその疾走感をとても大事にしている。二人の悲恋が注目されがちだけど、実はメインは前半の喜劇的な部分じゃないかと思う。オマールは『ロミジュリ』の喜劇的要素を拾い上げて、スピード感・リズム感にあふれた作品に仕上げた。これは他の『ロミジュリ』にはない時間感覚じゃないかな。
あとはオマールの日本観が表れた舞台も見どころだよ。日本人が観るとまるでB級の忍者映画みたいなところが無きにしもあらずなんだけど(笑)、オマールなりに「日本とはなにか」ということがよく考えられていると思う。
舘野: 台本の解釈が深いから、いろんな要素を取り入れても踏み外さないんだろうね。

2016年1月11日 静岡芸術劇場にて
(構成・塚本広俊)


2016年2月20日

<『ロミオとジュリエット』>おためし劇場レポート!

2月13日(土)には『ロミオとジュリエット』の「おためし劇場」が開催されました!
小雨もふって、しっとりと冷えた天気のなか、50名近くのお客さまに来ていただきました。

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【「おためし劇場」会場の、舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」】

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【演出助手のファビアナ・メディナさんからご挨拶】

舞台と客席がとっても近く、和やかな雰囲気のなか「おためし劇場」がスタート。

今回は、SPAC俳優が日々稽古前に取り組んでいる
スズキ・トレーニング・メソッドをご覧いただきました。

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【バランスを取りながらセリフを発しています】

お客さまからの「迫力がすごかった!」という声もたくさん。
俳優の集中が客席にも伝わって、よい緊張感が生まれていました。

稽古見学では、普段はめったに見られない演出風景をご覧いただきました。
演出助手のファビアナさんが俳優たちに細かく演技の指導をして、
各シーンのイメージを共有していきます。

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【マキューシオが歌うシーン】

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【宴会のシーン】

参加者の皆さまからいただいた嬉しいお言葉をご紹介。(アンケートより抜粋)

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・めっちゃかわいくて、めっちゃかっこよくて、
めっちゃおもしろくて、めっちゃせつないよ。(涙) 見るべし! (女性、40代)


・乳母を見てー!ケラケラの所が面白いの! (女性、20代)

・密度の濃い文化的な時間の使い方として最上級のたぐいでしょうね。
楽しかったです。どうもありがとう! (男性、60代)


・今まで観たことのない、けもの達の『ロミオとジュリエット』。 (女性、40代)
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ここでご紹介できたのは、ほんの一部。
気になった方は、ぜひ本公演にお越しください。

開幕まであとわずか!

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2~3月 SPACレパートリー
『ロミオとジュリエット』
構成・演出:オマール・ポラス/原作:ウィリアム・シェイクスピア/日本語訳:河合祥一郎
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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昨年の秋からシリーズ企画として始まった「おためし劇場」
劇場にはじめて来たというお客さまも沢山いらっしゃいました。
お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。
次はどの作品でお会いできるでしょうか!?
これからも「おためし劇場」をヨロシクお願いいたします!


2016年2月19日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で『血の婚礼』ブログ#5 

公演まで1週間となった13日(土)、
県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」が小屋入りしました!

稽古場を覗くと…、照明の仕込みの真っ最中!
昨年の『オレステス』、そして劇団MUSES『Right Eye』の照明を手掛けた伊東さんが、
今年も引き続き担当します。そして今回、静岡文化芸術大学の「音響照明技術研究会 p@tchcode(パッチコード)」のメンバー二名もお手伝いに来てくれました。

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週末二日間を割いた照明や舞台美術の仕込みが終わると、場当たりがスタート。
ひとつひとつ、きっかけや立ち位置、道具を含む出ハケを確認していきます。

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本番まであとわずか、稽古にも熱が入ります。

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明解なストーリーだからこそ光るガルシア・ロルカの詩的な台詞の数々と、
仮面や映像を用いた個性的な演出にどうぞご期待ください!

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SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『血の婚礼』
2016年2月20日(土)13:30/19:00、21日(日)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
*詳細はこちら
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2016年2月15日

<『ロミオとジュリエット』>稽古順調!衣裳・メイク付きの写真を公開!

稽古が始まってから一週間。
演出助手のファビアナさんのリードの下で順調に進んでいます!

1
 【2月7日、稽古の様子】
写真は、キャピュレット家の宴のシーン。
ロミオが友人のマキューシオ、ベンヴォーリオと一緒に忍びこんでいます。
うまく紛れこんだロミオたちはどこにいるでしょうか・・・?

2
2月8日には衣裳もメイクもバッチリ決めて、通し稽古がおこなわれました。
衣裳を着てメイクをすると、宴もより一層にぎやかな仕上がりに!
 【2月8日、通し稽古の様子】

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 【2月8日、通し稽古の様子】
音楽に合わせて行進するキャラクターたちの最後尾には
ジュリエットのお世話役・乳母の姿も!!

物語前半のユーモラスで若い男女の恋にどこか浮かれた雰囲気もここまで。

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 【上:ロミオ役・山本実幸、下:マキューシオ役・吉見亮】

ロミオの友人マキューシオに起こる ”ある事件” をきっかけに、
歯車が狂い、少しずつ悲劇的な方向へ傾いていき・・・。
そのまま失速することなく衝撃のラストへと向かいます。

物語の展開にもぜひご注目ください!
 
 
≪おまけ≫

5
 【ジュリエットの部屋のワンシーン】
衣裳をまとった清新なジュリエットの姿はぜひ劇場で!❤

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2~3月 SPACレパートリー
『ロミオとジュリエット』
構成・演出:オマール・ポラス/原作:ウィリアム・シェイクスピア/日本語訳:河合祥一郎
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2016年2月11日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で『血の婚礼』ブログ#4

木田博貴インタビュー【後編】 *前編はこちら

――Z・Aでは俳優としてほぼ全作品に出演している木田さんですが、昨年の『オレステス』では演出に徹していましたよね。それが一転今回レオナルド役で出演する理由を教えてください。

 昨年出演しなかったのは、今までの県民劇団の演出家が出演していなかったから。僕が演出してさらに出演すると、何か言われるだろうなって思っていました(笑)。それに、『オレステス』だったら、オレステス役がやりたいじゃないですか。オレステス役をやらないのだったら、絶対に出演しないほうが良いな、と思ってやめました。それに昨年は演出に専念したい気持ちが強かった。それが一番大きな理由ですね。でも、『オレステス』が終わった後、お客様が「今回出なかったね、観たかったのに」と言ってくれたんです。「俳優・木田博貴」待っているお客様がいるんだなってその時改めて実感したので、じゃあ今年は出て良いですか?みたいな。今回の『血の婚礼』は人数的にもちょうど良かったし(笑)。
 あとは、役者を育てるのに、実際に自分が役者をやった方が早いって思うからです。実際に自分の演技を見せられるし、空気を感じてもらうことができる。それが大事だと考えているので。若い子たちには、「こんなセリフでもここまで真剣にやらなきゃいけないんだ」っていう空気感を舞台に立ちながら教えていきたい。口で言ってもなかなかわかってもらえないけれど、一緒に舞台に立っていると感じてくれたりするので。
 さらに言ってしまえば、昨年出演しなかったら、ストレスが溜まってしまって(笑)。

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――俳優と演出だったら、俳優の方がやっぱり好きなんですか?

 難しいんですよね、それが。全部やりたいんですよ、本当は。自分の時間とか意欲とかMAXならば、本当に全部やりたい。演出、脚本、俳優から音響、照明、衣裳やセット、チラシも実際に作るのは別にして、デザインからプランから考えたい。フルプロデュースとかやりたいです。でも、それは現実問題できないし、やったらつまらないのもわかっているので、プランというか方向性だけ定めて、やってもらうところは他の人にやってもらって、というスタイルで今はいます。それでも、脚本・演出は、Z・Aではやりたい。俳優は別にそんなでもないです。
俳優は、鏡のある密室でずっと一人で演じている、それだけで結構満足できます。ストレス発散したいだけなんです。カラオケみたいなものです(笑)。「こんな演技もできるようになったんだ」とか、「今こんな気持ちになれたんだ」とか。人に褒められたいとかあまりないですし、俳優は自己満足です、本当は。
でも、俳優として舞台に立つからには、お客様に伝えたいことが伝わるように頑張る。それはそれですごく好きなことだし。でも欲を言うなら、俳優としては好き放題やりたい。誰にも怒られず。それが多分自分がソロでやっている「独行」っていうプロジェクトになるのかなって思っています。

――木田さんは、ご自分の劇団Z・Aの他、ソロでの活動やキッズ劇団を立ち上げるなど、幅広く活動していますよね。昨年は、Z・Aの『八月のシャハラザード』がふじのくに芸術祭の演劇コンクール部門で「静岡県芸術祭賞」を受賞し、『隻眼の紅蓮丸』は「はままつ演劇・人形劇フェスティバル演劇部門」で最優秀賞を受賞、木田さんご自身も同フェスティバルで最優秀男優賞を受賞するなど、活動に対して一定の評価がなされてきた実感があるのではないでしょうか。その中で、県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」は、SPACの助成としては2年が経過するので、この公演をもって卒業ということになりますが、今後この劇団をこうしていきたい、といったプランはありますか?

 ありますよ。年一回は小さな場所で良いので公演をやりたいなって思っています。やりたいことはいっぱいあるので。
劇団壊れていくこの世界でってまだ自由だと思っているんです。若い劇団だからこそ、色々なことに挑戦できる。僕の中での定義付けですが、Z・Aはエンターテイメントを押し出していく、でも壊れていくこの世界では、Z・Aではできない、演劇っぽいことや、僕とは縁のない言葉ですけれど、僕の中にもかすかにある「芸術性」とか(笑)、アーティスティックな部分とか、僕なりのそういった部分にチャレンジしたいと思っています。だから続けてはいきたいですね、ずっと。
 ほら、和食好きな人も、ラーメンを食べたりもするし、パスタも食べるじゃないですか。食べたいから食べるわけでしょ。最近こればっかりだったから、たまにはパスタでも食べてみようかな、みたいな感じです、僕にとって劇団って。最近観たものからインスピレーションを得て、「僕もああいうのをやりたいな」って思ったらチャレンジする、その一環として「劇団壊れていくこの世界で」を続けたいですね、僕個人としては。

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 あとは、海外の戯曲を自分なりの解釈で自由にやってみたいなっていうのはすごくありますね。またギリシャ神話をやってみたいっていうのもあるし、ガルシア・ロルカの他の作品もやってみたい。僕基本的には今まで観たことがある作品をやっているんですよ。『オレステス』も蜷川幸雄さん演出のものを観ていますし、『血の婚礼』も森山未來さんが出演していた舞台を観ています。他人が何らか解釈をして演出した作品を観て、理解して、影響を受けつつ、自分でもやってみる、みたいな。だから今まで他の誰かが上演しているのを観たことがない作品に挑戦してみたいですね。どうなるのかなっていう楽しみもあるし、先入観なく創れそう。
 さらに、今回もそうですけれど、例えば舞台美術を作ってみたいっていう人が集まって、僕ではなくその人たちがプランして作った舞台美術の中でお芝居をやってみたり…、そういった色々なチャレンジができる団体として続けていきたいと思っています。演出家ありきではなくて、劇団員ありきの劇団になっていけたらなぁ、って。集まった人たちによって変わっていく、というか、劇団員がやりたいって思うことにチャレンジしてみて、僕はそこにスパイスを加える、というか。例えば「和のビジュアルで今回やってみたいけど、どう?」って言ったときに、「じゃあこういうことをやってみましょうよ」とか、僕の発想にない、「和」というキーワードを与えただけで、何か創り出してくれる、そういう人たちが集まって、ずっと活動していけたら嬉しいです。今年集まったメンバーはまさにそういう人たちだと思う。だからこの公演が終わっても、一緒にやっていきたいし、また新たにクリエイティブなメンバーが加わってくれると、とってもありがたいですね。

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『血の婚礼』にかける想い、俳優としての自分、その後の劇団の展望など、熱く語ってくれた木田さん。
レオナルド役での出演も楽しみですね。
若いからこそ、色々なことに挑戦できる――
結成2年目の今、このメンバーだからこそできる、
劇団壊れていくこの世界での挑戦に、どうぞご期待ください!

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SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『血の婚礼』
2016年2月20日(土)13:30/19:00、21日(日)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
*詳細はこちら
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2016年2月9日

<再演!『ロミオとジュリエット』> 稽古が始まりました!

2月1日、舞台芸術公園の楕円堂にて、
『ロミオとジュリエット』の稽古がスタートしました!
と思ったのも束の間、実は2月24日には初日の幕が明けます。

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稽古初日の顔合わせのあとは、台本の読み合わせがおこなわれました。
新たなキャスト三名を迎え、どのような作品に生まれ変わるのか
出演者もスタッフもワクワクしながら、創っています。

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この作品を最後に上演したのは2013年のフランス公演。
当時の上演映像を確認して、立ち位置などを思い出しながら、
稽古が進んでいきます。

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登場シーン。正面からみると、シンメトリーに並んだシルエットが美しく、
神聖な空気が漂います!

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殺陣の稽古では、空気もガラリと変わり、迫力満点!!

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赤いパーカーを着ているの方は、おちゃめで頼れる演出助手のファビアナ・メディナさん。
演出家のオマール・ポラスさんが合流するまで、チームを引っぱっていきます。
コミカルな動きとダンスをSPAC俳優に伝授している最中です。

初演時よりもよりいっそうコメディーの色味がまして、
ついつい吹き出して笑ってしまうシーンもたっぷりあります。ご期待ください!

新生『ロミオとジュリエット』。
出演者・スタッフ一同、初日にむかって残りの稽古を走り抜けます!

気になる稽古の様子は、今週末、2/13(土)に開催される「おためし劇場」でどうぞ。

チケットは絶賛販売中です!
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2~3月 SPACレパートリー
『ロミオとジュリエット』
構成・演出:オマール・ポラス/原作:ウィリアム・シェイクスピア/日本語訳:河合祥一郎
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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<潜入!『黒蜥蜴』の世界(17)>いよいよ明日千穐楽!!

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

SPAC『黒蜥蜴』は、いよいよ明日千穐楽を迎えます!

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感想ツイートをこちらにまとめさせていただきました。
貴重なご感想本当にありがとうございます!
http://togetter.com/li/931208

最終日となる明日2月10日(水)は中高生鑑賞事業公演ではございますが、
一般のお客様にもご観劇いただけるお席をご用意しております。
ラストチャンス、ご来場お待ちしております!

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緊張感ただよう緑川夫人(右・たきいみき)と岩瀬早苗(左・布施安寿香)のやりとり。

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宝石について朗々と語る岩瀬庄兵衛(阿部一徳)。

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黒蜥蜴を想う明智小五郎(大高浩一)。二人の対決が始まります!

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中高生に大人気!岩瀬家の用心棒たち、左から富山(小長谷勝彦)、原口(牧山祐大)、大川(吉植荘一郎)。

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にぎやかな岩瀬家の台所より。噂話に花が咲きます。
左から、女中の愛子(佐藤ゆず)、ひな(榊原有美)、夢子(石井萠水)、色江(赤松直美)。

黒蜥蜴稽古236
黒蜥蜴の脅迫状におびえる岩瀬家を訪れる、洗濯屋(左・横山央)、御用聞き・五郎(右・若宮羊市)。
コミカルなやり取りにホッとする場面です。

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黒蜥蜴のアジト。ひなの正体は一体?

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こちらは明知探偵事務所。きびきびした動きに注目。
左上から時計回りに、明智小五郎(大高浩一)、部下の岐阜(春日井一平)、堺(泉陽二)、木津(加藤幸夫)。

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東京タワーで、巨大なダイヤ「エジプトの星」の受け渡しが行われます。
売店のおかみさん(桜内結う)を替え玉にして、黒蜥蜴は…。

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黒蜥蜴(たきいみき)の明智への恋心は募り…。

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檻に閉じ込められた雨宮潤一(若菜大輔)、岩瀬早苗(布施安寿香)。それぞれが心に秘めた、ある「告白」とは…?

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息のあった動きは必見!黒蜥蜴の侍女。(左から、鈴木真理子、永井彩子)

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カーテンコールの様子。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
◆公演の詳細、アーティストトークなど関連企画の詳細はこちら
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2016年2月7日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で『血の婚礼』ブログ#3

木田博貴インタビュー【前編】

節分も過ぎ、暦の上での季節は春になりましたが…、まだまだ寒さの厳しい舞台芸術公園。
公演までついについに3週間を切ったSPAC県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」の稽古が、行われています!

そんな稽古の合間を縫って、演出の木田博貴さんにインタビューを敢行!!
結成2年目の今年にかける想いや、演出のコンセプトなど、
じっくりお話を伺いました。

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――結成2年目の「劇団壊れていくこの世界で」。「2年目」を意識したり、2年目だからこそ挑戦してみたことなどありますか?

 最初はすごく意識していました。でも、昨年の延長線上でやるわけではないので。昨年は「ギリシャ神話と和の融合」というテーマがありましたが、僕はすごく移り気が激しくて(笑)。どんどん別のことをやりたくなっちゃう。だから今年は「和」はそんなに押し出さなくても良いか、って。去年一年は、自分の劇団Z・Aでも『隻眼の紅蓮丸』や『八月のシャハラザード』で「和」をドーンって押し込んでいったので、逆に自分の中で「これしかないの?」って思ってしまって。厭きちゃうんです、やり続けると。

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――木田さんの中でブームは去った、ということですか?

 「去った」というか、「和」は好きだし、常に自分の中にあると思いますよ。昨年まではそれを極端に入れていたけれど、今は匂わせるくらいで良くて。だったらむしろ何か違うことをやりたいなって思う。今年は、昨年と集まったメンバーも違うし、『血の婚礼』を「和」で演出するって考えた時、自分の中で「何か違う」って思った。「ギリシャ神話」と「和」のテイストはすごくマッチしたんだけれど。この戯曲を「和」でやるんだったら、完全に別作品にしちゃった方が早いなって思った時に、「あ、これはまた別の演出・コンセプトでやろう!」って。
 最近僕アニメにはまってまして(笑)。子どもの頃はアニメとか漫画とか観て育ったけれど、大人になってからは音楽の方が好きだったから、アニメってほとんど観ていなくて。テレビでたまに映像が流れても、どれもこれも似ているなって思っていたんです。でも、ある時「化物語」っていうアニメを勧められたんです。全然知らなかったし、最初はわからなかった!女の子が可愛ければ良いと思ってるんじゃないよ!こんな女の子現実にいない!みたいな。よくこれにハマれるなーとか思っていたんです。でも観ていくうちに、「これは今まで僕が知っていたアニメではないな、演出の仕方が。スゴイしオシャレだな」って思って。そこから色々調べてみたら、アニメの中では結構有名な作品で、先日映画が公開されたんですけれど(※2016年1月8日公開の「傷物語<I 鉄血篇>」)、興行通信社発表の週末興行ランキングで3位に入っているみたいなんです。つくり方というか演出がすごく自分好み。こういうことを舞台でやってみたら面白いかもなって考えました。映像だからもちろん舞台とは違うけれど、その要素を今回は取り入れたいです。映像の演出をどれだけ3次元にできるか、というのが今回チャレンジしていること。「2年目だから」というよりは、「2015~16年だから」という感じですね、僕からすると(笑)だから役者に求めていることも去年と全然違う。役者にしたらやりづらい演出だと思いますよ。
 あとは、去年失敗したこととか、上手くいかなかったことは、すごく意識して芝居創りにはあたっています。でも、表面的にはそれほど押し出してはいないですね、2年目だからっていうのは。

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――『血の婚礼』は、2014年にZ・Aで上演していますよね。どうしてもう一度この戯曲に取り組んでみようと思ったのですか?また、その時と今回で、演出面や技術面、気持ちの上での違いなどありますか?

多分この戯曲が好きなんですよ!前回消化しきれなかったし、今回も多分消化しきれない。だからきっとこれから先もまたやるのだと思う。古典ではないけれど、海外の戯曲だし、現代とは文化も違うし、難しいイメージが最初はあったんです。でも、意外と僕たち寄りというか。古典に比べたら日常に近い、でも現代劇ではない。その中途半端なところが、僕にとってはいじりやすいんでしょうね。シンプル過ぎるんですよ、お話が。だからストーリーを伝えよう、というところに意識を持っていかなくて良い。ストーリーの合間に入っているロルカの個性や、彼がやりたかったことを自分たちがどう表現するのか、そこがすごく自由度が広いなって思っていて。自分たちが生きている時代とは文化も違うし近代的ではない生活をしているし、すごく…こう田舎というか、今の僕たちからすると遅れている。噂話もすぐに村中に広まってしまうし。でも、よくよく考えると、僕たちの時代も情報化社会になって、ネットで何でも検索できるし、ご近所の噂もネットとかLINEで入ってくる、Facebookでのぞき見が出来る。実は普遍的な作品なのかもしれない。少なくとも今の時代にはマッチしていると思う。状況や技術、文化は違っていても、すごく似ている部分もあるし、だから共感できるんだろうな。

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――どんなに技術が進歩しても、人間の感情は変わらない、共通するところがあるんでしょうね。

そうそう。だから2014年にZ・Aでやった時は消化しきれなかった。多分今回も消化しきれないと思う。それは、僕自身が色々なものを見たり聞いたり、人の気持ちを感じたり、明日はまた新しいことを知るだろうし、そういうものを詰め込みたいし、詰め込みやすい作品だからじゃないかな。
でも、どの作品にも言えることですけれど、やっぱりまずはこの作品が好きなんでしょうね、単純に。
また、今回僕はレオナルド役をやりますけれど、本当は花婿と父親の役もやりたいんですよ。父親は前回やったので、少なくともあと花婿をやるまでは、『血の婚礼』は僕の中では終わらない、またいつかやるでしょうね。

【後編に続く】

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SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『血の婚礼』
2016年2月20日(土)13:30/19:00、21日(日)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
*詳細はこちら
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2016年2月6日

<潜入!『黒蜥蜴』の世界(16)>舞台美術デザイン 高田一郎さんインタビュ―

Filed under: 『黒蜥蜴』2015

『黒蜥蜴』ブログ第16回は、舞台美術デザインを担当していただいた高田一郎さんへのインタビューです。『黒蜥蜴』が書かれた頃から舞台美術家として活躍されている高田さんに、当時の社会や演劇の状況、また三島由紀夫さんとの交流など、お聞きしました。

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高田一郎(たかだ・いちろう) プロフィール
1929年、東京生まれ。1952年、東京美術学校(現・東京藝術大学)卒。舞台美術家。武蔵野美術大学名誉教授。日本及び海外で、主に抽象的な舞台空間を展開する。紫綬褒章、芸術祭優秀賞、伊藤熹朔賞、紀伊國屋演劇賞ほか、受賞多数。代表作に『マリアの首』(演出:田中千禾夫)、『三文オペラ』(演出:千田是也)、『蝶々夫人』(ミラノ・スカラ座)など。SPACでは『巨匠』(演出:宮城聰、2007年)、『オイディプス』(演出:小野寺修二、2011年)の舞台美術を手がけた。
 
 
< 時代の象徴「東京タワー」 鉄骨による空間構成>
――『黒蜥蜴』の舞台美術はどのように決まっていったのですか?
高田:
今回、宮城さんに2016年お正月早々の仕事を頼まれたことを非常に光栄に思っております。
依頼をいただいて、昨年の秋頃に宮城さんと最初の打ち合わせをしました。『黒蜥蜴』は江戸川乱歩が原作(1934年)ですが、三島由紀夫さんは1961年に戯曲にするにあたり、当時完成したばかりの東京タワー(1958年竣工)を舞台に取り入れました。そのこともあり、宮城さんから今回は「東京タワーの時代」を演出コンセプトの1つにしたいとお聞きしました。宮城さんは、俳優の肉体表現を重視する一方で、知的なセンスで戯曲を分析し、非常に面白いコンセプトの演出をずっと続けている演出家だと思っていました。その話を聞いて宮城さんの目の付けどころはさすがに違うなと感心しました。それで、僕の舞台美術のポイントも、そこに置くことにしました。
どういうことかと言いますと、三島さんがこの作品を書いた当時、日本は敗戦から立ち直っていく途上、高度経済成長期にあって、日本国民全員が非常にエネルギーに満ちた、張り切った時代だったんです。東京の街は、ビルの建設ラッシュで、どこもかしこもビルを建てるのに必要な鉄骨の足場が道路の両脇に建てられていました。ですから、東京の街を歩くということは、工事現場の中を歩くのに等しい状況だったんです。この頃は、ちょうどビルを建てる足場も、丸太から鉄骨に変わっていった時期にあたるので、鉄骨は当時の復興のエネルギーと時代の変化の2つを象徴的に表しているとも言えます。私は、もともと素材に鉄骨を使うことが多かったので、今回の宮城さんのコンセプトを聞いて、「よしきた!」という感じで、鉄骨の足場を主体にした舞台空間を作り上げるプランを提案しました。

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左手手前に客席から仕込みを見守る高田さん
 
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舞台装置仕込み中の劇場はまるで工事現場
 
――高田さんは、舞台美術家として最初に手がけられた舞台でも、鉄骨を使われたとお聞きしました。
高田:
はい、そうなんです。ちょうど三島さんの『黒蜥蜴』の舞台となる時代は、僕が舞台美術の仕事をし始めた時にあたります。私も材木から鉄材への変わり目を、舞台上でも表現してみたかったんです。
というのも、それまでの日本の舞台は歌舞伎の舞台装置が主流でした。主な素材は材木と紙、それから「泥絵の具」という水彩絵の具。歌舞伎はこのような日本的な材料と表現で、世界的にみれば非常にユニークな舞台空間を、それまでに作りあげていました。
そして、シェイクスピアやモリエールといった外国の芝居を日本人が上演するときも、当時の舞台美術は、歌舞伎の大道具を作る材料と技術で作り上げられていました。そうすると、やはりなんとなしに日本的な雰囲気が、シェイクスピアやモリエールには合わないということもおきてきました。そこで私は、素材を日本的な木材を主体にしたものから、鉄骨にかえていくことが、表現においても舞台空間の一つの変革になるのではないかと考えました。それで、ちょうどその考えと鉄の足場というのがうまく重なり合って、当時としてはあまり見られなかった舞台装置を作り上げていくことになりました。
歌舞伎の舞台美術の場合、自然主義的リアリズム、つまり自然は美しいものだという観念で、山や川、遠くの景色を描いて、そういうものを舞台の背景にしていったわけです。けれども、現代の演劇の舞台美術にも、従来の日本の伝統的な表現技術を使った場合、どうしても自然主義的な表現にふさわしいものになってしまい、現代の荒々しい状況を表現する舞台には、どうも馴染まないと皆が感じるようになっていた状況でもありました。

<1960年代 社会と呼応し、演劇にも変革が>
――三島由紀夫の『黒蜥蜴』が書かれた頃の社会で、演劇はどのような状況に置かれていたのですか。
高田:
1960年代の後半は、アメリカでもヨーロッパでも学生運動が非常に盛んになった時で、それと同調するように演劇も世界的に盛り上がりを見せた時代でした。日本でも小劇場運動が非常に高まりました。学生運動は、従来の社会意識に反発する傾向があったわけですけれども、それは舞台の上では、従来の劇場空間に反発するという形で現れていきました。
ヨーロッパでの新しい演劇運動は、従来の劇場ではなく学校の教室や体育館、プレハブの小屋といった場所で展開していきました。フランスでは、ジャン=ルイ・バローという世界的に知られる役者であり演出家でもある人が、パリのオデオン座の芸術監督をしていたんですけれども、当時の文化相のアンドレ・マルローと対立して免職となりました。そうすると、彼はモンマルトルのレスリング場に移って、そこで演劇活動をすることになりました。それは象徴的な事件でしたが、そういうことが世界中で起こって、従来は劇場で上演されるものだとされていた演劇が、ニューヨークでは倉庫、パリではカフェで行なわれるということが生じてきました。そういう傾向は日本でも起こり、鈴木忠志さんの早稲田小劇場ができたり、ほかにも様々な劇団がテントで公演を打ったりと、空間的にも従来の演劇思想に逆らっていくという傾向が見られた時代でした。社会と呼応して、演劇でも、舞台空間を始めとして、演技、演出、戯曲など、その全てにおいて変革のエネルギーが満ちていた時代でした。

<三島由紀夫との思い出>
新年の能楽堂で
――高田さんは、かつて三島由紀夫さんとも一緒に仕事をされたとお聞きしました。

高田:
三島由紀夫さんの作品は、『熱帯樹』の初演(1960年)の舞台美術をやらせていただきました。家がお互いに近くでしたので、それ以外にもいろいろとお付き合いさせていただきました。
印象的だったのはお正月、水道橋の能楽堂でたまたま三島さんと会った時のことです。私は能に興味があって、お正月には『翁』という作品を観に行く習慣でした。それでその年も能楽堂に『翁』を観に行ったら、そこで偶然三島さんとお会いして、休憩時間に、「やあ、高田君、やはり『翁』を観ないと年は明けませんなあ」と話しかけて来てくれました。三島さんも、お能に非常に関心を持っていて、自分と同じように、毎年新年に『翁』を観る習慣をもっていたのには、驚きました。
そんなこともありまして、私は、三島さんとお能をいつも結びつけて考えていましたので、『熱帯樹』の装置を依頼された時も、松を描くなどというように、能舞台を直接的に表現はしませんでしたが、材木の感じとかで能舞台の空間を意識した舞台美術を考えていきました。
そして、今回の『黒蜥蜴』の舞台美術も、一見すると今日の前衛的な表現に見えますけれども、その根底には、能舞台の伝統的な空間を自分としては意識しています。

舞台美術スケッチ1
舞台美術スケッチ2
舞台美術スケッチ3
舞台装置スケッチ

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実際に出来上がった1幕の舞台装置(撮影:日置真光)
舞台全面の張り出し部分は能舞台の間口と同じ広さ

『熱帯樹』の稽古場で
三島さんは、非常に芝居が好きで、気に入っているらしくて、台本が締め切りに遅れたということがないんですね。それから台本ができあがった時に、本読みをなさるんです。役者もスタッフも全員がそろった場で、台本の最初から最後まで全部自分一人で読み上げるわけです。女の登場人物の女言葉の部分は、もちろん女言葉で。作業としてはけっこう大変なので、「いやー、三島さん大変ですね」と話しかけたら、「いやー、もう私はこれをやりたくて戯曲を書いているんですよ」と言われました。本読みしている姿からだけでも、芝居が好きだということ、自分が書いた台詞に非常に愛着を持って大切にしていることは、感じられました。
作家によっては書き始める時に、最後がどうなるか分からない状態で書き始めて、書いているうちに、最後の部分ができあがるという作家もいるわけですが、三島さんの場合は最後の台詞が決まっていて、そこに向かってスタートを切っていく構成になっているんです。ですから非常に知的な構成で、それに加えて、自分の得意なきらびやかな台詞が延々と続くので、とてもユニークな戯曲になっているわけです。
『黒蜥蜴』の舞台も、俳優が出てきて、あまり動かないままで、延々と台詞を述べ立てることに表現の主体を置くような、舞台もあっていいのではないかなと思いながら、デザインしましたが、稽古の様子を見ると、宮城さんの演出ではそれを受け止めていただいたと思います。三島さんが観たら、自分の書いた台詞をとても大事にしてくれていると、非常に喜んでもらえる仕上がりになっているのではないかと感じました。

<舞台美術家となる決意 文学座の稽古場での感動的な発見>
――高田さんは、どのようにして舞台美術の道に進むことになったのですか?
高田:
小さい頃から絵を描いたり、ものを作るのが好きだったので、大学は美術学校の金工科に進みましたが、演劇も好きだったので演劇部に入ったんです。それで演劇部で『マリウス』(マルセル・パニョル作)という芝居をやった時に、僕は衣裳とポスターやパンフレットのデザインを担当しました。その時に、ちょうど文学座でも『マリウス』上演することになった。それで、たまたま僕の描いた宣伝パンフレットを文学座の宣伝部の人が見て、「これは面白い、こいつに文学座の宣伝物もやってもらおう」ということになったんです。それをきっかけに文学座との接点ができ、だんだん関係が深くなり、後々には舞台美術をやらせてもらえるようになりました。小学校の頃から、自分には素晴らしい先生方との出会いがあり、恵まれていたと思いますが、文学座との出会いも本当に運がよかったんだと思います。
それでこの『マリウス』という作品が、どういう話かといいますと… 南フランスの港町マルセイユが舞台なんですが、そこにマリウスという若い青年がいて、彼にはバーで働く恋人がいた。2 人は仲が良かったけれども、マリウス青年は、もっと広い世界に憧れて、船乗りになって世界中を回りたいと思ったわけですね。それで恋人の彼女を置いて、旅立つことになった。マルセイユのバーに留まらざるをえない彼女は、今日の12時に彼を乗せて船が出港するという時に、自分のバーのカウンターの中で片付けをしている。でも出発の時間はどんどん迫ってくる。バーには時計があって、その針がだんだん12時に向けて進んでいくんです。
でも、この時計の針は芝居にあわせて動かなくてはならないので、実際の時計そのものではないんです。文学座の芝居では、舞台の進行にあわせて、女性の裏方さんが壁の後ろで針を動かしていたんですが、僕はある日、その人が仕事しているところを、たまたま通りがかりに見て、とても驚いたんです。文学座の名女優、杉村春子さんが主役でスポットライトを浴びている時に、壁を一つ隔てたその裏側で、この時計の針を動かしている人がいる。世の中にはこういう仕事もあるのか!と気がついて、びっくりするくらい感動したんです。その時に、これこそ私の進むべき道だと思って、演劇の裏方、舞台美術を仕事にすることを決心しました。僕も当時は若かったからねぇ(笑)今だったら、また違った判断をしたと思うんですけれども。でも、まあそのくらいに、将来に希望を託すという空気が、最初にお話したように東京タワーができた時代にはあったんです。

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​1~2月 SPAC新作
『黒蜥蜴』
演出:宮城聰/原作:江戸川乱歩/作:三島由紀夫
音楽:棚川寛子/舞台美術:高田一郎/照明デザイン:沢田祐二
出演:SPAC
静岡芸術劇場
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