2018年7月30日

「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」製作発表会 レポート(前編)

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毎年10月から翌年3月にかけて古今東西の名作戯曲を中心に静岡芸術劇場で上演する「秋→春のシーズン」。今年は新作4本を発表するという超豪華なラインナップになりました♪
そこで、多くの皆様にこのラインナップを知っていただくべく、7月23日(月)、東京・飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京で、「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」製作発表会を開催。シーズン#1『授業』を演出する西悟志さん、#2『歯車』を演出する多田淳之介さん、そして芸術総監督の宮城聰が登壇し、自身の演出作について語りました。

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会見冒頭宮城は、「SPACの秋→春のシーズンは、「演劇の教科書」がもしこの世にあったならば、必ず掲載されるであろう“人類共通の財産”と言える作品を上演するのが基本的な考え方なんです。これは観客動員に左右されずに作品を選んでいくということでもあります」とコンセプトを説明。

そのうえで、「優れた芸術っていうのは、危機的瞬間に直面した人間の心の状態を瞬間冷凍してとどめているものだと僕は考えています。危機的瞬間って所謂ネガティブな意味ばかりでなく、喜怒哀楽どれに関しても度外れていて、今までの自分ではいられなくなってしまうような瞬間です。恋なんかもそうですね。それを見事に、瞬間冷凍のようにとどめているのが、多くの優れた芸術なんじゃないでしょうか。僕らは生きている中で時々そういう危機に直面し、うろたえてしまいます。しかし芸術を観ると、これまでにも案外似たような局面を人類は体験していて、そういう瞬間に人はどうしていたのかということを学ぶことができます。これは芸術の大きな遺産、人間が蓄えてきた知恵なんです。演出家は、生きている俳優の肉体を使って、瞬間冷凍されたものを解凍してみせるのが仕事。というわけで、演出家という人が僕は活躍して欲しいと思っているんです」と語りました。

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その一方で、日本の演劇界では「演出家」だけでやっていくのは難しいとも言及。野球になぞらえて、「高校野球では、ピッチャーで四番を打っている人はいますが、プロになるとどちらかに専念する場合が多いですよね。王貞治さんとか。ごくまれに大谷翔平みたいな人がいますが、やはりピッチャーか打者に専念する人が大半です。翻って日本の演劇界は、不思議なことにピッチャーで四番のままプロになっていく人が多い。それは世界の中でみるとユニークで良いことでもあるのですが、逆に言えば“人類の遺産”として折角残っている過去の優れた作品を上演する、その専門家がほとんどいないということなんです。だから僕は演出家にもうちょっと活躍して欲しいって思っていて、今年の「秋→春のシーズン」では、僕がまさに期待している西さん・多田さんに、演出の専門家として、過去の遺産を今を生きている俳優の身体で表現するという演劇の王道を展開していただきたいなと思っています」と述べました。

 宮城の概要説明に続き、各上演作品の紹介へ。
シーズン第一弾は、不条理劇の傑作、ウジェーヌ・イヨネスコの『授業』。内気な老教授のもとへ個人授業を受けに訪れた一人の快活な生徒。穏やかに始まった授業は徐々に変調をきたし、衝撃のラストへ…。
本作を演出する西悟志さんは、宮城の「危機的瞬間に直面した人間」という言葉を受けて「今危機的状況にある西悟志です」と発言。会場を一気に和ませました。

そして、「話し言葉は“おまじない”だと考えています」と述べ、実際に参加者の一人に「手を挙げていただけますか?」と挙手を促しました。手を挙げる参加者。それを受けて、「こうやって言葉をかけることで、私は労せずして人を動かすことができます。これを私は“おまじない”と言っています」とその意味するところを説明。続けて、「手を挙げてくれない可能性もあったわけですから、この“おまじない”はかかったり、かからなかったりします。自分は“おまじない”をかけるのが上手いと思っていますが、一方で結構かかりやすいです。だから、ここ2カ月くらい自分がまるで『授業』の中の教授を演じてしまうような、戯曲が自分の中に降りてきちゃうようなことがあって」と語りました。

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その中で「教えることって楽しいよね」というシンプルな言葉が生まれたとし、「何で楽しいかと言えば、力を持つから。力を持つということは多分すごく楽しいことなんですが、力を行使することは不愉快なこともあるんです。イヨネスコの『授業』は、“教える”という行為の中に暴力性をはらむことを描いた傑作戯曲だと思っています。でも、教えることを不愉快だからと言ってやめてしまったら、多分そこには何も起こらなくなってしまう。多分言葉も演劇も同様に力を持つことを恐れてはいけないし、一方で暴力にもなりえるということを常に頭に置いていなければならない、と考えています」と述べました。

また、「裏返って教えられる人もいるわけです。戯曲中、生徒は暴力を振るわれ、ひどい目に遭いますが、この生徒のことを覚えている人がどれだけいるんだろうと考えます」とし、「“教える-教えられる”という関係の中で否が応でも力を持ってしまう自分が、教えられて押しつぶされていく人たちを忘れないこと、それが自分の仕事なんじゃないか。押しひしがれていく、力を行使される女性たちを中心にこの戯曲に取り組んで行きたいと思っています」と抱負を語りました。

続くシーズン#2は芥川龍之介最晩年の小説の舞台化となる『歯車』です。
 知人の結婚披露式のために上京し、ホテルに滞在しながら執筆を行う、とある作家。破滅や死への不安に襲われながらも心を平静に保とうと執筆に向かう姿は、死の直前の芥川本人なのでしょうか…?
 本作の演出を手掛ける多田淳之介さんは、SPAC初登場。「SPACで作品を創らせていただけることや、何よりSPACの俳優と作業できるのをすごく楽しみにしている」と語り、また「中高生鑑賞事業公演もすごくモチベーションになっている」と喜びと期待をにじませました。

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 一方で「中高生に見せる作品が『歯車』という…。僕は戯曲だったり小説だったり、色々なものをもとに作品を創る中で、その題材をどうやって今の人たちに“我が事”として捉えてもらうか、を考えることが多い。だから『歯車』をそのように捉えてもらうのはなかなか大変だと感じています。小説自体、のりにくいというか、読み進めるのが難しい。所謂話のないお話でもありますし…」と苦笑い。
 ただ、「構造としてはすごく面白い小説」と述べたうえで、「間違いなく芥川本人である作家が、苦しみながら小説を書いている。でもこの作家は、小説を書くことはあまり辛くなさそうなんですよね。それ以外のことは辛そうなのに、筆はすごい勢いで進んでいたり(笑)作品自体は表現として強度があると言うか、文芸としてすごくレベルの高い作品だと思います。おそらく入れ子構造というか、書いている作家(芥川)が作中にいて、彼も苦しみながら書いているんだけれど、すごく面白い作品を書いているようにも見える。この入れ子構造は面白いなって思っています」と語りました。

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 さらに、「僕も昔は脚本を書いていて、「東京デスロック」という名前の劇団を今もやっていますが、人が死ぬ話ばかりを書いていたんです。正確に言えば、死なれた側の話などですが。なるべく「死ぬ」ということをポジティブに、「死」を描くことで、「生きること」をいかにポジティブに捉えられるかを考える。この『歯車』からも、「生きること」「生きるとは何か」ということや、「息苦しさとは何か」ということを考えていけたら良いなぁと思っております」と抱負を述べました。

宮城は、「多田さんに何で『歯車』をお願いしたか、一つは多田さんの名前が淳之介で如何にも文芸っぽいということもあって(笑)淳之介が龍之介を演出するって良いんじゃないかって(笑)」と冗談を言いつつも、「先程多田さんが“入れ子構造”っておっしゃいましたけれども、この構造そのものを上手く演劇にしてくれるんじゃないかっていう期待をしています。多田さんは、メタ構造的なものを立ち上げるのがとても上手で、最近劇作はされないけれども、かなり劇作家的な技術を演出に持ち込んでいる方だと僕は思っています。また、演出家としてカンパニーを率いているという非常に稀有な存在です」と期待を寄せました。

後編につづく

2018年7月28日

【シアタースクール通信2018 #3】劇場の下見を行いました!

いよいよ23日(月)より毎日稽古がスタートしました!
25日(水)は本番で使う静岡芸術劇場の舞台を下見することができました。
客席入口ではない役者・スタッフ用の出入り口から入場。
リハーサル室とはちがう雰囲気にみんなそわそわしていました。

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はじめに、舞台監督を務める、創作・技術部の降矢より舞台についての諸注意。
舞台上では、今年度の「SPAC秋→春のシーズン」で上演される、芸術総監督・宮城聰演出の新作『顕れ(あらわれ)』の稽古用にセットが組まれており、『十二夜』の本番とは、舞台の高さや大きさが変わっています。
紗幕(しゃまく、照明の当て方によって幕の内側を隠したり見せたりできる特殊な幕)を降ろしてもらい、みんなでどんな見え方になるのか体験してみました。

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その後、実際に舞台上に立って発声練習。さらに、今出来ているシーンまでを舞台上で練習しました。
静岡芸術劇場は2階客席もあるため、どこにフォーカスして声を届けるのかが重要になってきます。
演出の中野真希からは「客席真ん中に届くようイメージして」「2階にも届くように」「喉からではなくお腹から、息をたくさん吸ってそれを出し切ることを意識して」と、次々に指示が飛びました。

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その後もリハーサル室に戻って稽古を続けました!

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▲16世紀に書かれたお芝居のはずが、何やら現代的なリズムが聞こえてくる!?どんなシーンになるかお楽しみに!

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▲パートごとにわかれて練習。アシスタントが各パートを指導します。

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▲まもなく衣裳デザインも完成!
 
 
◆発表会のチラシが完成しました!

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おもて面のデザインや題字は、静岡デザイン専門学校の大古田怜奈さんによるものです。
大古田さんには、昨年の【SPAC秋→春のシーズン】の『病は気から』『オセロー』の鑑賞パンフレットの表紙をデザインいただいたご縁で、今回もお願いしました。
『十二夜』のドタバタ恋愛喜劇をイメージして、ポップで元気な感じに仕上げていただきました。
ぜひ劇場や、みなさんの学校で手に取ってみてくださいね♪

もうすぐ8月!本番に向けて稽古は続きます!

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SPACシアタースクール2018
『十二夜』
演出:中野真希
原作:ウィリアム・シェイクスピア
出演:静岡県内の中高生
8月17日(金)17時開演
18日(土)16時開演
会場:静岡芸術劇場
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2018年7月21日

<『顕れ』#002>作者レオノーラ・ミアノ氏来静!

Filed under: 『顕れ』2018

『顕れ』の作者、レオノーラ・ミアノ氏が静岡に来られました!
20日は丸一日、舞台芸術公園の楕円堂で行われている稽古に同席。
座組にとって作者の話を直接聞くという、大変有意義な時間になりました。

ミアノ氏は「自分の作品が皆さんによって上演していただけることがとっても嬉しい。」と挨拶。
「アフリカの大地を感じられるように」と、稽古場にアフリカからのお土産を持ってきてくださいました。

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宮城作品の稽古では毎日行っているトレーニングを見学していただいた後、いま出来ているところまでのシーンを見ていただき、質疑応答を行いました。
俳優たちが名前と役を紹介すると、「あなたは役の雰囲気にとてもよく合ってる」など笑顔でやり取り。上演言語は日本語ですが、各キャラクターが手に取るように分かったようです。
また音楽についても、「音楽を演奏したり止めたり、というのはアフリカにはない自由な発想でとても新鮮」「アフリカだからアフリカっぽい音楽という選択を取っておらず、音楽と言葉の調和があり、作品をきちんと昇華して作ってくださっているという感じがする」とコメント。

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続いて音楽監督を務める棚川さんが、「(ミアノ氏の出身地である)ドゥアラ語の好きな歌をうたってほしい」とお願いすると、ミアノ氏から「わたしが書いた曲でもいいかしら」と思いもよらぬ回答。
それはアフリカで奴隷貿易に関わった人についての作品を書くなかでそのテーマをより突き詰めていくために書いたという作品群で、曲がそれぞれ奴隷貿易を段階的に語っているそうです。
稽古場で披露されたのはそのうちの1編で、ある人物が捕まって舟で運ばれている最中、はじめて甲板に出たときに故郷のアフリカ大陸はもう見えず二度と戻れないということを知り、自殺して魂だけはアフリカ大陸に残れるようにと願う歌。
楕円堂内はミアノ氏の静かで、けれどとても力強い情感の込められた歌声に包まれました。聞き終えた棚川さんは目に涙を浮かべ「計り知れない悲しみが伝わってきた。自分が今回の作品につくる曲とは曲調などまるで違うけれども、どこかで繋がるような曲にしたい」と話しました。

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その後も、質疑応答は夜遅くまで続きました。
ミアノ氏は作品の背景となっている文化や風習についてや、キャラクター造形についてなど、一つ一つの質問に真摯に答えてくださいました。
『顕れ』は奴隷貿易を主題にしていますが、一般にイメージされるような白人と黒人の関係ではなく、アフリカ大陸にあった加害者と被害者の関係について扱う戯曲です。そのため作品の発表や日本の劇団による上演について、ヨーロッパにいるアフリカ人から批判を受けることもあるそうです。
ミアノ氏は「自分はこのテーマに取り憑かれている」と表現し、「私はアーティストだからこそこういう作品を発表するし、それは文学的なアプローチによる魂への弔いだと考えている」と力強く話しました。
またSPACが上演するということについて、「フランス人やアフリカ人がやるとあまりにも生々しくなってしまう。そこから離れた人たちが上演することで、上演される作品は観客にとって個人的な反応を引き起こすのではなく、普遍的・人間的なものとして受け取られるようになるのではと思っている」と話しました。

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加害者の告白を聞く、という新機軸に共鳴し作品の演出を引き受けた宮城が、作者本人との対話を経てどのように“演劇的な弔い”に編み上げていくのか。
9月・フランスでのワールドプレミアに向けて稽古は続きます!
*『顕れ』(フランス公演)詳細はこちら

★「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」の製作発表会と同時開催する、レオノーラ・ミアノ氏の講演会がいよいよ明後日に迫りました!
ミアノ氏のお話を皆さんにも直接聞いていただける貴重な機会です。ぜひお越しください。
詳細はこちらをご覧ください。


2018年7月16日

【シアタースクール通信2018 #2】アツい!!3連休の稽古場より

◆演奏稽古がはじまりました!

あっという間に梅雨が明け、シアタースクールの稽古も今日で6日目。段々と本格的になってきました。
稽古開始は、まずSPACの俳優たちも必ず行っているトレーニングから。
「スズキ・トレーニング・メソッド」と呼ばれる、SPAC初代芸術総監督の鈴木忠志が考案した俳優訓練法をもとにしています。
これによって「舞台に立つためのからだ」をつくっていきます。
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今回の『十二夜』では、演技だけでなく楽器の演奏も行います!
この週末からは演奏稽古もはじまりました。
自分のことだけに集中するのではなく、全体の音・テンポを聴きながらリズムを刻んでいかなければなりません。
今はまだバラバラですが、これからみんなでひとつの“空気”を作っていきます。
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アシスタント俳優のお手本を見て聞いて、リズム感を身につけます。

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これは冒頭の大事な“ある音”を演出するための手作りの楽器。
他にもいろんな楽器を組み合わせて演出を盛り上げていきます。

 

◆舞台美術に期待大!?

これまでのシアタースクールでは、大きな舞台美術を造ることがあまりありませんでしたが、今年は少し高さのある舞台になるようです!
舞台監督を務める降矢より、静岡芸術劇場の模型や、リハーサル室床面に貼られた“バミリ”(美術が置かれる位置が示されたテープのこと)を使って、完成後のイメージについて説明がありました。
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みんなワクワクした表情で模型をのぞきこんでいました!舞台に立って練習する日が待ち遠しい様子。

◆『十二夜』ってどんなお話?


<あらすじ>
双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラは、船旅の途中、嵐にあって生き別れてしまう。イリリアの街に流れ着いた妹ヴァイオラは身を守るために男になりすまし、シザーリオと名乗って公爵に仕える。
ヴァイオラはひそかに公爵に恋心を抱くが、公爵は求婚相手のオリヴィアに夢中になっている。公爵はオリヴィアのもとへシザーリオ(ヴァイオラ)を使いに出すが、オリヴィアは男装したヴァイオラに恋をしてしまう。
恋の三角関係がこじれていくなか、生き別れた兄セバスチャンがイリリアの街を訪れ……。


『十二夜』は、イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア作のドタバタ喜劇です。
1601年から1602年頃に書かれていて、日本で言えば江戸時代にあたります。
そのため台本に使われている言葉遣いは、現在使っているものよりも、古めかしい・難しいところが多くあります。
子どもたちは台本に読み方を書き込みながら、稽古に励んでいます。

まもなく発表会のチラシも出来上がります! お楽しみに!

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SPACシアタースクール2018
『十二夜』
演出:中野真希
原作:ウィリアム・シェイクスピア
出演:静岡県内の中高生
8月17日(金)17時開演
18日(土)16時開演
会場:静岡芸術劇場
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2018年7月15日

<『顕れ』#001>県大での公開授業レポート

Filed under: 『顕れ』2018

今月9日より、宮城聰の演出による新作『顕れ(仮題)』の稽古がスタートしました!
この作品は、フランス・パリにある現代作家の作品のみを上演するコリーヌ国立劇場の創作委嘱を受けた作品で、静岡では「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」の3作品目として年明け1月の上演が予定されています。

稽古がはじまったばかりの11日に、「ムセイオン静岡」*特別企画として、静岡県立大学にて宮城聰による公開授業「『顕れ(レヴェラシオン)』について」が行われました。
『顕れ』ブログ第1回目は、この公開授業のレポートをお届けします!(写真提供:静岡県立大学 広報・企画室)

大学でいう1限目、9時からのスタートにも関わらず、学生だけでなく職員や地域の方々が詰めかけ、220名定員の教室は満員に!
「僕が1限に出ていたのは、大学1年生のときくらい(笑)何年ぶりの1限だろうかなんて思って今日は来ました」という宮城の言葉から講義がはじまりました。

*「ムセイオン静岡」とは?
静岡市の草薙地域およびその周辺地域には、静岡県立大学、静岡県立美術館、静岡県立中央図書館、静岡県埋蔵文化財センター、静岡県舞台芸術センター(SPAC)、グランシップ(静岡県コンベンションアーツセンター)、ふじのくに地球環境史ミュージアムが位置し、若者や専門家が自由に行き交い、多くの文化を発信しています。
「ムセイオン静岡」は、この地域の文化関連機関が、自主協働プログラムとして文化・芸術・教育を学ぶ場を提供し、文化を発信する活動をしていきます。

 

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委嘱を受けた経緯

ことの始まりは、2016年のある日。
ワジディ・ムアワッド氏から「どうしても宮城と直接話したい」と連絡をしてきたそう。
ワジディ氏は、8歳のときに戦火のレバノンからフランスに渡り、15歳のとき再亡命を余儀なくされたという過去を持つ劇作家。
SPACは2016年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」に彼の作品を招聘し、『火傷するほど独り』(原題『Seuls』)が上演されました。

  <参考>
   ◎『火傷するほど独り』演目ページ
   ◎ワジディ・ムアワッドのこと(横山義志)

そんなワジディ氏からの話は
2017年にフランスのコリーヌ国立劇場の芸術監督に就任することが決まり、2018年のシーズンのオープニング作品を宮城に演出してほしい」というもの。
戯曲はカメルーン出身フランス在住の女性作家、レオノーラ・ミアノの『顕れ』原題:Révélationで、「演劇の魅力がぎっしり詰まったどうしても上演したい戯曲」「作者と誰に演出を頼むのがいいか検討したが、なかなかこれだという人が出てこず困り果てた。そこで、実現可能性を棚に上げて世界中の誰でもいいから演出してほしい人の名前を挙げようと話したとき、レオノーラ氏から挙がってきた名前が宮城だった」と伝えられたそう。

『顕れ(Révélation)』は奴隷貿易を扱った芝居で、宮城は依頼を聞いた当初、「日本の僕らにとっては最も知らない・遠い題材だと感じた」と言います。
なおかつワジディ氏のオーダーは、フランスの俳優に演出するのではなく、SPACの俳優たちで作ってそれをコリーヌで上演すること。
シーズンのオープニングを海外のカンパニーに、という驚天動地の依頼に最初は戸惑ったそうです。

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演出を引き受けるキッカケとなった、ある“偶然”

『顕れ(Révélation)』にはまず、最高神・イニイエが登場します。
アフリカでは輪廻転生、死ぬと魂は“魂の海”に還っていく、というのが基本的な死生観。
この戯曲では、人間の肉体が誕生するときに、最高神・イニイエの懐のなかから魂が飛び出して赤子の中に入るとされています。
この魂たちが「この世に生まれたくない」とストライキをはじめ、「かつてものすごく大きな、途方もない罪を犯したアフリカ人たちの告白を聞かなければ、この世はどんどんひどくなってしまう。」と言います。
その途方もない罪というのが、奴隷貿易への加担
アフリカの歴史のなかで、加担した人についてはほとんど語られることなく、そのうえ本人たちも口をつぐんだまま死んでいきました。
無念や怨念を抱え込んだまま死んでしまっているために、アフリカは幸せになれない、その魂たちを呼び出して告白してもらおう、というところからこの物語ははじまります。

宮城はこの「この世への恨みや自分への恨みを抱え込んだまま死んでしまった人が、そうした人生で最も辛い瞬間を語り直す、演じ直す、そしてみんな(観客)にシェアすることによって救われる」という構造・テーマが、自身が演出を手掛けた近作と通ずるところがあると感じ引き受けたそうです。

たとえば、2017年5月に静岡で、7月にはアヴィニョン演劇祭で上演した『アンティゴネ』は、原作通りだと全員が不幸になって終わるところを、冒頭のシーンで舞台上の人物をすべて亡者とし、劇中劇として亡者たちが記憶を回想するというしつらえにしました。
これには上演場所である、アヴィニョンの法王庁の中庭にたくさんいるだろう非業の死を遂げた浮かばれない魂を想い、その魂たちの慰めになるような芝居をしたい、その魂たちが救済され喜んでくれれば、おそらく上演は成功するという構想があったそうです。

また2017年1月に上演した『冬物語』は、嫉妬ゆえに最愛の人を自殺に追い込んでしまった人間を“赦す”芝居。
かつての人生の最も痛切なシーンを演じ直すことによる、魂の救済です。
さらに2018年1月に上演した能形式の『オセロー』は、まさにそうした霊的な存在が主人公となる「複式夢幻能」の形式を使ってシェイクスピアの『オセロー』をリライトし上演しました。

この3作品が上演されることを知らなかったワジディさんが『顕れ(Révélation)』の演出を依頼してきたという偶然、そしてアフリカの死生観と鎌倉仏教以後の日本的な死生観にとても似ているところがあることに驚いたと語りました。

稽古真っ最中だからこその熱量で、90分間ノンストップで話し続け授業は終了。
参加者からは、「すごくいいお話でした。授業で学んだ能「実盛」のお話とリンクして興奮しました」
「奴隷貿易なんて特に興味ないなと思っていたけれど、お話を聞いて、これはもう観にいかないわけにはいかない!と思いました」という声が届きました。

 

『顕れ』作者 レオノーラ・ミアノ氏による講演会開催決定!

授業で話があった、作品の演出に宮城を指名した『顕れ(Révélation)』作者のレオノーラ・ミアノ氏が急遽来日することが決定しました!
「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」の製作発表会とともにレオノーラ・ミアノ氏の講演会を開催いたします。
両プログラムとも一般の方にご参加いただけます。ぜひ足をお運びください!
詳細は「SPAC秋→春のシーズン2018-2019」製作発表会/レオノーラ・ミアノ氏講演会のお知らせをご覧ください。

*『顕れ』(フランス公演)詳細はこちら


2018年7月9日

【シアタースクール通信2018 #1】稽古スタート!

7月1日(日)からSPACシアタースクール2018の稽古がはじまりました!
学校では触れることのできない演劇の面白さ、奥深さを地域の子どもたちとその保護者の方々に知ってもらうことを目的として、2007年にスタートした「シアタースクール」。
12回目となる今年は38名のメンバーが集まりました!

今年取り組む作品はウィリアム・シェイクスピア原作の『十二夜』。
稽古初日はガイダンスを受けたあと、半円をつくって自己紹介。
班分けも発表され、身体をほぐすエクササイズや声出しの練習を行いました。
後半には台本が配られみんなで読みました。

稽古の様子を一部ご紹介します。

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どんどん難易度が上がるストレッチ!
見学に来ていた親御さんも一緒になって参加していました。

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床に寝っ転がって、お腹から声が出ていること、呼吸を意識しながらの声出し練習。
初日から力強い声がリハーサル室に響いていました。

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台本を読む前にアシスタント俳優・片岡より
登場人物の関係性についてのレクチャー。

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読むときは顔をあげてしっかり前を向いて。

◆スタッフのご紹介
本年も中野真希が演出を務め、5名のアシスタント俳優が作品づくりをお手伝いします!

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上段左から、佐藤ゆず、春日井一平、片岡佐知子
下段左から、ながいさやこ、中野真希、赤松直美

稽古初日には、演出・中野より「今年は例年よりハードルが高い」という言葉も。
みんなで頑張って作品を作り上げていきましょう!

シアタースクールでは、他にも沢山のスタッフが一緒に作品を創っていきます。
こちらのブログでもその様子を更新していきますのでぜひお楽しみに!

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SPACシアタースクール2018
『十二夜』
演出:中野真希
原作:ウィリアム・シェイクスピア
出演:静岡県内の中高生
8月17日(金)17時開演
18日(土)16時開演
会場:静岡芸術劇場
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