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2014年1月13日

真夜2014【5】 衣裳デザイン・駒井友美子ロングインタビュー

中高生鑑賞事業「SPACeSHIPげきとも!」 パンフレット連動企画◆

中高生鑑賞事業公演では、中高生向けの公演パンフレットをみなさんにお渡ししています。パンフレット裏表紙のインタビューのロングバージョンを連動企画として、ブログに掲載します。

衣裳デザイン:駒井友美子
衣裳デザイン 駒井友美子(こまい・ゆみこ)
静岡市出身。2010年よりSPAC在籍。『ガラスの動物園』(ダニエル・ジャンヌトー演出)『病は気から』(ノゾエ征爾演出)『サーカス物語』(ユディ・タジュディン演出)等の衣裳デザインをてがける。

<物心つくと縫い物をしていた>

――なぜ舞台衣裳の仕事をするようになったのですか?
 小学生の頃から縫い物が好きでした。なぜ舞台衣裳に興味があるかと考えると、小さい頃からずっと母に絵本の読み聞かせをされていました。小学校低学年まで毎晩のように続けてもらっていたんです。そのおかげで昔話や空想の世界が好きになったんですね。舞台衣裳が好きなのも、おそらくその影響だと思います。

――小学生から服をつくっていたんですか?
 小学生の頃はフェルトなどを使ってぬいぐるみをつくっていました。中学生から服をつくり始めます。雑誌を参考に、好きな布を買って、手縫いでつくりました。まだミシンも使えませんでした。つくり方を踏まえてつくると案外できるので楽しくなるんです。つくった服を自分で着ていましたし、人にあげていました。

――その頃はまだ舞台衣裳が念頭にあったわけではないですよね?
 なかったですね。ゆくゆく服飾のデザイナーになれたらなとは思っていました。ファッションショーやオートクチュールに憧れていました。一点物を手づくりできる人になりたいという気持ちが強かったです。

<舞台衣裳に興味を持つまで>

――いつ舞台衣裳に出会ったのですか?
 高校卒業後は1年間、留学のための専門学校に通っていました。その後、ロンドンの大学へ留学します。服飾に携わりたいという気持ちで留学しましたが、舞台衣裳に出会うのは大学でのことです。ファッションの大学だったのですが、1年目に服飾の色々な分野を知ることができたんです。そこで舞台衣裳に興味を持ち、2年目には舞台衣裳のコースに進みました。

――大学でコースを選ぶ時に、服飾の中でも色々な選択肢があったと思うのですが、なぜ舞台衣裳を選んだのですか?
 学校の衣裳デザインの授業では、一つの戯曲を渡されてテーマを決めてデザインをします。その中で、舞台ならば普段着られないような服をつくることができると気づきました。それで舞台衣裳のコースを選びました。中学生の頃から特殊メイクに興味があったのですが、特殊メイクでは人間なのに人間じゃないものに変身できますよね。それが面白いと思っていました。たぶんそのことと舞台衣裳のイメージが繋がったんです。

<留学への期待>

――舞台衣裳のコースではどういう勉強をするんですか?
 一つは服飾の基礎の勉強です。基本的な服のつくり方を勉強します。もう一つは戯曲を読み解いてテーマを決め衣裳をつくる勉強です。その他、デッサンの授業など美術の基礎技術の勉強がありました。

――高校からいきなり留学する人はそんなに多くないと思うのですが、なぜ留学を選んだのですか?
 高校の時に、私が行った留学のための専門学校のワークショップに参加したのがきっかけです。ちょうど進路を決める時でした。それが特殊メイクのワークショップだったんです。最初は興味本位で、留学のことは考えていませんでした。ワークショップの参加がきっかけとなり、高校卒業後、日本の服飾の専門学校に行くか、留学のための専門学校に行くか、という選択肢が見えてきたんです。留学すれば未知の体験ができるかもしれないという期待もあり、留学を選びました。

<地元静岡でSPACに出会う>

――大学卒業後はどういうことをしていましたか?
 大学を卒業し、出身地の静岡市に戻りました。舞台衣裳を学んだのはいいものの仕事はどうしようと悩んでいる期間が2年くらいありました。その後にSPACへ関わることになりました。

――SPACに関わるきっかけは何だったのですか?
 静岡でも服飾を続けたいと思い、お直しのアルバイトをしていました。少し時間が経った頃に、落ち着いて自分のやりたいことを考えると、やっぱり舞台衣裳をやろうという気持ちがありました。そこで舞台にこだわらずウェディングの衣裳をつくる仕事なども視野に入れて就職活動をしていました。それでも舞台に関わっていられればいいなと思い、SPACの県民劇団事業に参加しました。劇団静火で『真夏の夜の夢』の衣裳を担当しました。そこからSPACの衣裳制作にアルバイトで参加するようになり、そのまま衣裳部へ。2009年にアルバイトで参加し、2010年からSPACに在籍しています。

<衣裳デザイナーの仕事とは?>

――衣裳スタッフは、どのような仕事をするのですか。
 舞台の衣裳に関わること全般をしています。具体的には、まず担当する作品の衣裳全体の方向性を考え、それから個々の服をデザインし、実際に切ったり縫ったりしてつくります。衣裳が出来上がってからは、稽古や本番で舞台の袖に控えていて、俳優が早替えするのを手伝うこともあります。それから日々のメンテナンスでは、破れたり痛んだりした衣裳の直しや洗濯もします。

――衣裳制作の仕事の流れを聞いてもいいですか?
 演出家の話を聞き、台本のコンセプトや作品の雰囲気を決めます。そのテイストに合ったデザインをしていきます。デザイン画を描く前に、演出家や創作技術部のメンバーとイメージを共有するために、衣裳と関係のない写真などを集めて、方向性を探ります。おおまかな色や雰囲気の方向性をまず決めていくんです。そこから音響、照明、舞台美術、衣裳にわかれて各セクションの作業に入ります。

――衣裳の具体案を決めるのはどの段階ですか?
 作品の世界観の中で役がどういう役割かを考えなくてはいけませんし、役者がどういう演技をするかも重要なポイントです。これらを踏まえた上で、具体的に衣裳のイメージを固めていきます。SPACの稽古は第1期と第2期というふうに2回に分けることが多いのですが、2013年の秋のシーズンで言えば、第1期の初めの頃はずっと稽古を見ていました。役者さんが作品をどう捉えているかをじっくり見るんです。第1期の途中から具体的な衣裳のイメージを、演出家に提案し始めました。第1期と第2期の間に1ヶ月ほどありますが、この間に衣裳を形にします。第2期では衣裳を着て稽古ができるようになっています。そこから修正を加えていきます。

<人の好みやクセを見つける>

――稽古の中で役者の動きを見るというのは、どういう感じですか?
 人には動きのクセがありますよね。稽古を通して役者のクセのようなものを見つけていきます。役者の普段着がどういうものかということも注意しています。

――役者の私服を見ているんですか?
 はい。この人はどういう服を好んでいるのかなと。役者の人は、舞台の世界と普段の生活を完全に切り離しているわけではないと思うんです。服をつくる側としては、やはり似合う服を考えたい。そこで私服の好みが参考になります。

――劇世界の衣裳と私服を分けて考えるわけではないということ?
 そう思います。舞台の上では演じているという違いはありますが、役者の魅力はその人の魅力でもあると思います。私服と同じように、衣裳が人の魅力を引き立てられればと思っています。

<思いがけず舞台衣裳が輝く時>

――舞台衣裳の仕事の面白さは、どんなところですか。
 舞台の衣裳制作は、他の服とは違って、まず着る人ありきです。着る人の外見はもちろんのこと、作品の背景や登場人物の置かれた状況なども踏まえてデザインを考えていきます。舞台の上では、自分が頭の中でイメージした衣裳が、俳優や舞台装置、照明、音響といった、いろいろな要素と混ざることによって、予想できない効果を発揮します。たくさんの要素の中で、衣裳をどのようにしたらバランスがとれて、舞台が全体として魅力的に見えるのか、それを考えるのが難しいですが、同時に面白いところでもあります。

――当初狙った効果と違うことが出てくるということ?
 一人でつくっているときは自分の想像の範囲内なのですが、他の要素と組合わさったときに、全然違うイメージが出てきたりしますね。

――具体的にどういうことに気をつけるのですか?
 一生懸命つくり込めばいいというわけでもないんです。普段着が一番いいこともあれば、それでは物足りないこともあります。舞台の上の関係性から出てくる意味と合わなければチグハグになってしまいます。極端な話、何でもないシャツが一番しっくりくるということもあります。悪めだちしてもいけません。

<『真夏の夜の夢』の衣裳について>

――『真夏の夜の夢』の衣裳はどういうふうに決まったのですか?
 SPACで初のプランニングだったので、コンセプトをまとめるのに苦労した記憶があります。2011年初演の衣裳は新聞紙でできていたのですが、それは装置の深沢襟さんとの話し合いで決まりました。野田秀樹さん潤色の『真夏の夜の夢』は言葉をテーマにしていると思います。言葉遊びや言葉を壊すという要素があります。実体はないけど言葉によって表されることが主題になっていると考えたときに、これをビジュアルでも表したいという方向性になりました。身近にある文字の媒体が新聞紙だったため、新聞紙を使おうということになりました。

――新聞で服をつくることができるのですか?
 つくると決めた時は、あまり問題は見えていなくて、素材の一つとして使うつもりでした。弱い布くらいの気持ちで考えていたのですが、実際には大変で、新聞紙を貼り付けた布を裁断して服をつくりました。役者の動きを考慮しきれていない面があり、普通の布でつくるようにつくったために問題が色々とありました。洗濯もできないんですよ…。

――照明の下は熱いし汗をかきますよね…。
 運動量も多いですから…。2014年の今回の再演では、素材を変えました。布に新聞紙柄をプリントしましたので、洗濯できます。

――貴島豪さんが演じているオーベロンの衣裳は装置みたいに見えますね。
 オーベロンの衣裳は、木の根っこのようになっています。大きい木のイメージです。役者に高いところに立ってもらって、足元へ向かって根っこが出ているような衣裳にしました。演出家や装置担当者と話して出てきたプランです。あの衣裳を着ると歩くことができないんです。貴島さんがおもしろがってくれたのが救いでした。

――舞台衣裳は普通の服ではないですよね。これを役者さんに着せてしまうのか…と思うこともあります。
 できるだけ動きを邪魔しないデザインを心がけますが、着ているところを見てみたいという気持ちがつい強くなってしまいます。
 『真夏の夜の夢』では動きにくい衣裳も多いです。

――最後に『真夏の夜の夢』の見どころを教えてください。
 この作品では舞台全体で新聞紙が使われているので、そのインパクトは大きいと思います。衣裳だけでなく、装置や音楽にも新聞紙が使われています。普段の生活の中で見慣れているものが、いつもと違う表情を見せてくれるでしょう。違和感があって楽しめるのではないかと思います。

(2013年12月1日 静岡芸術劇場にて)

鑑賞事業パンフレットは、一般公演でも物販コーナーにて販売しています。

写真:『真夏の夜の夢』パンフレット表紙写真