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2014年7月29日

『室内』ヨーロッパ・ツアー レポート(7)

『室内』アヴィニョン公演制作兼字幕オペの米山です。

今回は字幕のことをご紹介します。

モンファヴェホール客席
↑客席は8列、全部で210人ほど座れます。
 
今回私はこの客席の一番後ろにある机に座って、
ここから字幕を出しています。
ちなみにプロジェクターを挟んで反対側には、
前々回のレポートで布施が紹介したピエールさんが
照明の操作をしています。

オペ席から舞台を眺めるとこんな感じです。
字幕オペ席からの眺め
↑稽古休憩中
 
そして、手許の様子。
 
字幕オペ席手許
↑操作用PC(左)と字幕オペ用テキスト(右)
  
海外でSPACの作品を上演する時、
また海外の作品を日本で上演する時、
いつも字幕は悩みどころです。

どこに、どのくらいの大きさの文字で表示させるのか、
そのためにどのような機材を使うのか、
しゃべっている台詞に対して
どれくらいの割合を字幕として表示するのか、
そして、コマ割りや表示のタイミングは、、、。
と考え出すときりがありません。

その作品の舞台美術や作品全体がつくりだす世界を
邪魔したり壊さないように、
それでありながら、お客さんが舞台を観つつ字幕も読めて、
ストレス無く、内容を追っていける落としどころを、
探さなくてはなりません。

演出家や舞台美術家をはじめ、様々なスタッフと相談しながら、
そういうことを考えるのも、お客さんと作品をつなぐ
制作担当の仕事のひとつです。
 
 
では、『室内』のような舞台全体が暗い闇と沈黙に包まれ、
俳優の台詞や動きもとてもゆっくりとしていて、
お客さんも息をひそめてそれを見守るような作品で、
字幕はどうなるのかというと、、、。
 
 
私はアヴィニョン公演で
ようやくそれを目の当たりにすることができたのですが、
レジ氏のとった方法は、見事でした。
 
まずは、字幕として表示させる文章は、
台詞の中でもその場面や作品全体のキーになる
センテンスだけに絞り込まれています。
 
字幕テキスト
 
この写真の中のオレンジの線で塗られた部分だけが、
字幕として表示されます。
 
そしてこれらのセンテンスが、舞台中央の壁の一番下の部分に、
(上の舞台の写真の白い舞台のすぐ上の黒い部分です。)
あたかも闇の中からじわじわと浮かび上がってくるかのように、
数秒かけて表れ、
また数秒かけてじわじわと闇の中に消えていきます。
演劇の字幕といえば、ぱっと消えてぱっと消えるものだと
思い込んでいた私には、
こんなふうに字幕を
あたかも作品の一部であるかのように、
作品世界を壊さずに取り込むことが可能なのかと、
驚きでした。

アヴィニョンでは、ウィーンとブリュッセル公演で既に調整された
字幕素材を元に操作しています。

海外初演となるウィーンで字幕オペをされた現地の方は、
劇場での稽古期間中、レジさんの要望にしたがって、
このフェード・イン/アウトのタイミングなども含め、
字幕素材の細かい調整をされたとお聞きしました。
本当に大変な作業をしてくださったのだと思います。

そんなバトンを引き継ぎ、
舞台空間やそこにいる俳優、そしてお客様や字幕まで含めて、
一つの空間ができあがるレジ氏の作品世界に
加わらせていただくという、
とても貴重な体験をさせていただいております。

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