2014年9月26日

『室内』ヨーロッパ・ツアー レポート(9)

今回は、『室内』パリ公演の当日配付パンフレットに掲載の、
作品紹介ノートをお届けします。

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クロード・レジ
『室内』 モーリス・メーテルリンク作

 静岡県舞台芸術センターに『海の讃歌(オード)』で招待された際、クロード・レジは日本人俳優たちとの仕事依頼を受けた。彼はこの初のコラボレーションにモーリス・メーテルリンク作の『室内』を選択。1985年にすでに演出した戯曲だ。薄暗がりの領域を扱った『神の霧』や『小舟、夜』に引き続き、彼の演劇は我々を意識の向こう側へといざない、知覚不可能なライン上で演劇公演は別のものにとってかわる。沈黙の果てにある戸口で生と死、言葉と無言、恐怖と恩恵が反響しあい交錯し、理性的な観点からみると疑いの余地のなかった事柄を混乱させるに至る。
 その戸口で、少人数の一団が待っている、全てを一瞬にして覆してしまう知らせを持って。そして、その向こう側には―室内には―近くで起きてしまった悲劇に気付かず普段通りの生活をしている家族がいる。戯曲は室外のカオスと室内という避難所の間にある壊れそうなバランス関係を揺り動かす。疑念と登場人物たちの本能が後のばしにされているその瞬間に集結している。それはまるで、意識の中で正反対に位置する2点が接触を図っているかのようだ。繊細な照明で、クロード・レジは空間に沈黙を刻み込み、俳優たちが発する単語の中に沈黙を植え付け、言葉にはできないものの境界に最も重要な言葉をかいまみせる。
 「魂は人間の周りをどこまで広がっていくか分からない。」と、メーテルリンクは書いている。舞台は、クロード・レジによって、その広がりを果てまで徘徊し、探索する地となる。

(翻訳・浅井宏美)
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