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2016年2月11日

【SPAC県民劇団】劇団壊れていくこの世界で『血の婚礼』ブログ#4

木田博貴インタビュー【後編】 *前編はこちら

――Z・Aでは俳優としてほぼ全作品に出演している木田さんですが、昨年の『オレステス』では演出に徹していましたよね。それが一転今回レオナルド役で出演する理由を教えてください。

 昨年出演しなかったのは、今までの県民劇団の演出家が出演していなかったから。僕が演出してさらに出演すると、何か言われるだろうなって思っていました(笑)。それに、『オレステス』だったら、オレステス役がやりたいじゃないですか。オレステス役をやらないのだったら、絶対に出演しないほうが良いな、と思ってやめました。それに昨年は演出に専念したい気持ちが強かった。それが一番大きな理由ですね。でも、『オレステス』が終わった後、お客様が「今回出なかったね、観たかったのに」と言ってくれたんです。「俳優・木田博貴」待っているお客様がいるんだなってその時改めて実感したので、じゃあ今年は出て良いですか?みたいな。今回の『血の婚礼』は人数的にもちょうど良かったし(笑)。
 あとは、役者を育てるのに、実際に自分が役者をやった方が早いって思うからです。実際に自分の演技を見せられるし、空気を感じてもらうことができる。それが大事だと考えているので。若い子たちには、「こんなセリフでもここまで真剣にやらなきゃいけないんだ」っていう空気感を舞台に立ちながら教えていきたい。口で言ってもなかなかわかってもらえないけれど、一緒に舞台に立っていると感じてくれたりするので。
 さらに言ってしまえば、昨年出演しなかったら、ストレスが溜まってしまって(笑)。

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――俳優と演出だったら、俳優の方がやっぱり好きなんですか?

 難しいんですよね、それが。全部やりたいんですよ、本当は。自分の時間とか意欲とかMAXならば、本当に全部やりたい。演出、脚本、俳優から音響、照明、衣裳やセット、チラシも実際に作るのは別にして、デザインからプランから考えたい。フルプロデュースとかやりたいです。でも、それは現実問題できないし、やったらつまらないのもわかっているので、プランというか方向性だけ定めて、やってもらうところは他の人にやってもらって、というスタイルで今はいます。それでも、脚本・演出は、Z・Aではやりたい。俳優は別にそんなでもないです。
俳優は、鏡のある密室でずっと一人で演じている、それだけで結構満足できます。ストレス発散したいだけなんです。カラオケみたいなものです(笑)。「こんな演技もできるようになったんだ」とか、「今こんな気持ちになれたんだ」とか。人に褒められたいとかあまりないですし、俳優は自己満足です、本当は。
でも、俳優として舞台に立つからには、お客様に伝えたいことが伝わるように頑張る。それはそれですごく好きなことだし。でも欲を言うなら、俳優としては好き放題やりたい。誰にも怒られず。それが多分自分がソロでやっている「独行」っていうプロジェクトになるのかなって思っています。

――木田さんは、ご自分の劇団Z・Aの他、ソロでの活動やキッズ劇団を立ち上げるなど、幅広く活動していますよね。昨年は、Z・Aの『八月のシャハラザード』がふじのくに芸術祭の演劇コンクール部門で「静岡県芸術祭賞」を受賞し、『隻眼の紅蓮丸』は「はままつ演劇・人形劇フェスティバル演劇部門」で最優秀賞を受賞、木田さんご自身も同フェスティバルで最優秀男優賞を受賞するなど、活動に対して一定の評価がなされてきた実感があるのではないでしょうか。その中で、県民劇団「劇団壊れていくこの世界で」は、SPACの助成としては2年が経過するので、この公演をもって卒業ということになりますが、今後この劇団をこうしていきたい、といったプランはありますか?

 ありますよ。年一回は小さな場所で良いので公演をやりたいなって思っています。やりたいことはいっぱいあるので。
劇団壊れていくこの世界でってまだ自由だと思っているんです。若い劇団だからこそ、色々なことに挑戦できる。僕の中での定義付けですが、Z・Aはエンターテイメントを押し出していく、でも壊れていくこの世界では、Z・Aではできない、演劇っぽいことや、僕とは縁のない言葉ですけれど、僕の中にもかすかにある「芸術性」とか(笑)、アーティスティックな部分とか、僕なりのそういった部分にチャレンジしたいと思っています。だから続けてはいきたいですね、ずっと。
 ほら、和食好きな人も、ラーメンを食べたりもするし、パスタも食べるじゃないですか。食べたいから食べるわけでしょ。最近こればっかりだったから、たまにはパスタでも食べてみようかな、みたいな感じです、僕にとって劇団って。最近観たものからインスピレーションを得て、「僕もああいうのをやりたいな」って思ったらチャレンジする、その一環として「劇団壊れていくこの世界で」を続けたいですね、僕個人としては。

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 あとは、海外の戯曲を自分なりの解釈で自由にやってみたいなっていうのはすごくありますね。またギリシャ神話をやってみたいっていうのもあるし、ガルシア・ロルカの他の作品もやってみたい。僕基本的には今まで観たことがある作品をやっているんですよ。『オレステス』も蜷川幸雄さん演出のものを観ていますし、『血の婚礼』も森山未來さんが出演していた舞台を観ています。他人が何らか解釈をして演出した作品を観て、理解して、影響を受けつつ、自分でもやってみる、みたいな。だから今まで他の誰かが上演しているのを観たことがない作品に挑戦してみたいですね。どうなるのかなっていう楽しみもあるし、先入観なく創れそう。
 さらに、今回もそうですけれど、例えば舞台美術を作ってみたいっていう人が集まって、僕ではなくその人たちがプランして作った舞台美術の中でお芝居をやってみたり…、そういった色々なチャレンジができる団体として続けていきたいと思っています。演出家ありきではなくて、劇団員ありきの劇団になっていけたらなぁ、って。集まった人たちによって変わっていく、というか、劇団員がやりたいって思うことにチャレンジしてみて、僕はそこにスパイスを加える、というか。例えば「和のビジュアルで今回やってみたいけど、どう?」って言ったときに、「じゃあこういうことをやってみましょうよ」とか、僕の発想にない、「和」というキーワードを与えただけで、何か創り出してくれる、そういう人たちが集まって、ずっと活動していけたら嬉しいです。今年集まったメンバーはまさにそういう人たちだと思う。だからこの公演が終わっても、一緒にやっていきたいし、また新たにクリエイティブなメンバーが加わってくれると、とってもありがたいですね。

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『血の婚礼』にかける想い、俳優としての自分、その後の劇団の展望など、熱く語ってくれた木田さん。
レオナルド役での出演も楽しみですね。
若いからこそ、色々なことに挑戦できる――
結成2年目の今、このメンバーだからこそできる、
劇団壊れていくこの世界での挑戦に、どうぞご期待ください!

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SPAC県民劇団 劇団壊れていくこの世界で
『血の婚礼』
2016年2月20日(土)13:30/19:00、21日(日)13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」
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