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2016年6月2日

イナバとナバホの白兎/パリ日記(8)

2016年5月28日(土)
SPAC文芸部 横山義志

午前9時劇場入り。週末なので、だいぶ人通りが少ない。製油所のストライキでガソリンが不足しているせいもあるらしい。午前中、照明作業がつづく。

俳優は今日も午後1時からトレーニング。午後3時半から9時まで全体稽古。

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昨日に続き、公演前の常設展ガイドツアーのためのインタビューを掲載。仮面・衣裳デザインの高橋佳代さん。宮城聰演出『メデイア』の衣裳などもやってくださっていた衣裳家さんで、現在ハワイ在住。アメリカ先住民文化にも深い関心を持っていらして、かなりディープな話になったが、その一端を。

高橋佳代さんのお話。

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【仮面・衣裳のコンセプト】

10年前にここで『マハーバーラタ』をやったときに、美術館に展示されている仮面などをみて、異文化に対する真摯な気持ちが芽生えたんです。
それは「本物」に接してはじめてわかったことで、
同じアジアでも全然違う美意識があるということにも気づきました。
なので、今回の『イナバとナバホの白兎』の仮面・衣裳のデザインは、
ケ・ブランリー美術館へのお礼のつもりですし、この劇場のための衣裳プランと言えると思います。

そして観客席には、現代の観客だけでなく、古代の精霊たち・スピリットが来ているような気がしていまして、
例えば、「彼らがこの芝居を観たらどう思うか」とか、「レヴィ=ストロースが観たらどう思うか」というのも、今回の衣裳プランを練るときの大きな助けになったと思います。

今回は、仮面を引き立たせるために、衣裳はあえてニュートラルなものにしました。
そのベースには、劇場で象徴的に使われている「赤」を使ったんです。

第一幕は日本の(自分たちの)文化についてなので、
割と自由に自分なりのデザインを加えたりしていますが、
第二幕は、ネイティブ・アメリカンの文化を誠実に表現するようにしました。
第三幕は・・・・言葉で説明するのがかなり難しい世界ですね。1幕と2幕とはまったく違う世界であることは間違いないですね。

しいて言うなら、「この世界を創造する時のラフスケッチのようなもの」に近いと思います。

ベースになってる想いはさっき言った通りなんですけど、実は仮面や衣裳のコンセプトは、細かいところは俳優さんにもあまり話さないようにしてるんです。

その方が俳優さんの自由な発想が出てきやすいし、おもしろい化学反応が起きるんです。
仮面って不思議で、つけてる俳優さんの顔に似てくるんですよ!

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仮面も近づいて見てみると、ふつうのお客さんには気づかないような、細かいデザインがある。これも見に来てくれる精霊への気づかいなのかも知れない。

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フランス国立ケ・ブランリー美術館開館10周年記念委嘱作品
『イナバとナバホの白兎』
6/9(木)~19(日) ケ・ブランリー美術館クロード・レヴィ=ストロース劇場
◆公演の詳細はこちら
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