2016年12月21日

【ポールのSPAC探検】海外の視線、『サーカス物語』の耳と目につながる魅力(後編)

皆さんこんにちは!

SPACインターン生のポールです!

paul

今は、12月23日まで静岡芸術劇場で上演されている『サーカス物語』について、字幕の操作を行っています。

前編では衣裳と照明についてお話ししましたが、後編は「音」にまつわるお話です。
(前編はこちら

まずは音響に関してなのですが、今回の芝居はミュージカルなので、歌と音楽もついていますし、マイクを使っています。マイクは音楽と俳優達の声を合わせる便利な道具です。マイクを使うことによって、俳優達の立ち位置に関わらず、音楽の音量はいくら強くても俳優達の歌う言葉がちゃんと聴き取れます。ただ、大変なところもあります。マイクの音量を俳優達が自分自身で調節する訳ではないので、正しいタイミングで音量を上げたり落としたりするのは音響のスタッフの役割です。

音響では、音のバランスを探す必要があります。先ほどもお話したように、俳優達は舞台の上で動きながら台詞を話すのでマイクの音量が変わったりします。

一番大変なのは、歌うときのバランスです。
なぜかと言うと、3つの要素を同時に考えてバランスを探さないといけないからです。
明瞭さ、与えたい印象と音量。言い換えると、音楽の音量が低いと歌が聞こえますが、印象的ではありません。音量を上げ過ぎるとうるさくなります。また音楽の音量が高すぎると歌詞が聞き取れなくなります。最も印象強くしたい場面では、音楽と歌の音量を合わせて、両方がうるさくならない程度にとどめなければなりません。俳優達も自分の声を音楽の音量に合わせて高くしたり低くしたりする必要もあります。このプロセスで、演出家の役割は「導体」に近いと思いました。

最後に、音楽と歌のこともお話ししたいと思います。

照明、音響、音楽を合わせると、様々なおとぎ話の風景を描き出すことが可能になります。
その風景を一番具体化するものは歌なのだと思います。歌詞の内容についても少しお話したいと思います。

一つ目は、芝居の最初に出てくる歌です。「ガラスの城」に引き込んでいる王女の話です。

空想のイメージを完璧・完全に表現している歌だと思います。日本語の勉強を始めて何年も経ち、ある程度に理解できるようになりましたが、このような歌を聴くと「やっぱり日本語は美しい言語だな」と思います。意味を問わず、まだ聞き取れなかった時と同じように音の美しさを聴くことができます。歌は澄んだ水の音素のように耳まで流れてくれるようです。それは勿論、歌い手の才能にもよります。音楽自体はクリスタルのピアノが優しく弾かれている感じで、歌詞もその雰囲気を強めます。

mariko

その内容は「洞窟の比喩」にとても似ています。「洞窟の比喩」というのは、人間の状態をイメージで表そうとしていることです。洞窟の中では、人間が奥の壁を見ています。その壁に、犬、人、多様なものの影が火の光で映っています。その影は勿論ただの影ですが、それしか見たことがない人は、現実の存在に気付かず洞窟を出て太陽の光で歩こうとしていません。その王女も影に囲まれていて同じような状態になっています。ただ、彼女は夢の中で生きているということを認識しています。しかし、ずっと空想の中で生き続けると確かに夢のようで、苦しむことも死ぬこともないかも知れませんが、その山も、谷もない道は「生きる」と言えますか?つまり、苦しみ得ない幸せは本当に幸せなのですか?勇気を手に入れ、今いる不自由のない部屋の扉を開けて出るかどうか気になりました。その扉を押すと、苦しい現実に入るとともに、幸せが現れるかも??

二つ目にご紹介する歌は、シンプルな要素で出来ています。音楽はほとんどなく、小さいアコーディオンで、ピエロは幼い友達の為に歌っています。

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フランスのシャンソンの形ととても似ています。今でも素敵なアコーディオンの奏者はフランスにいて、そういう歌が日本でも聴けてとても嬉しかったです。
この歌は物語の流れで大切なポイントなのですが、そこから少し離れた見方をすると、この歌は誰もがある日感じた孤独の比喩としても見られるのではないかと思います。

先の歌と違って、別の世界へ案内するわけではありません。実は、私達の世界についてだと思えます。自分が人生で迷ったときについて感じさせられます。想像力。自分の顔が映っている鏡を見ると、確かに自分だと認識しているのですが、違うとも言えませんか?鏡で見ている顔は「その人は誰?」とも考えられます。その歌を聴くと、忘れていた記憶も出てくるかもしれません。昔失ったものの大切さ、今から探す尊さ。

『サーカス物語』の内容に関してはこれ以上話しませんが、もしこの記事を読んで「観てみたい」と思っていただければ嬉しいです。まだ、ご覧になっていない方も、是非ご覧いただければと思います。

★★★公演情報はこちら★★★★★
SPAC秋→春のシーズン2016 ♯3
『サーカス物語』
一般公演:12月3日(土)、10日(土)、18日(日)、23日(金・祝)
演出: ユディ・タジュディン (俳優・スタッフ一同の構想に基づく)
作: ミヒャエル・エンデ
訳: 矢川澄子 (岩波書店刊『サーカス物語』より)
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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