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2018年12月4日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(9)公演五日目

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月24日(土)

 
静岡県の緑茶プロモーションの一環として、ショートパフォーマンス『喫茶去(きっさこ)』を上演。今年春の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」開幕式で、知事にも出演していただいた作品。「喫茶去」というのは、「まあお茶でも飲んで行きなさい」という意味で、中国のえらいお坊さんのお話。
*『喫茶去』の様子も紹介した演劇祭のブログはこちら:【シアタークルーレポート】開幕式

フランス語上演になるので、ラ・ヴィレットのラファエラさんにフランス語を聞いてもらって練習。

喫茶去仏語稽古

ラ・ヴィレットに「ちゃっきり節」が響き渡る。

ちゃっきり節

「リトル・ヴィレット」という子ども向けの施設の前で上演。

リトル・ヴィレット

小雨が降るなか、子ども連れの方もたくさん来てくださった。

喫茶去観客

静岡茶の呈茶サービスも。

呈茶サービス

「リトル・ヴィレット」では子ども向けの日本紹介企画も行われている。折り紙や鯉のぼりに加えて、クロード・レジ演出、SPAC俳優出演の『室内』で通訳をしてくださっていたパリ在住の俳優浅井宏美さんが紙芝居を披露。

紙芝居

『マハーバーラタ』はいよいよ超満員で、キャンセル待ちのお客さんも。今日は一席の空きもない状態に。

キャンセル待ち

熱い拍手、ブラヴォー。暖房が入って暖かくなったせいもあるかも。


 
終演後、ポストパフォーマンストーク。レンヌ大学演劇科のブリジット・プロさんの司会で、客席から宮城さんへの質問。

「日本の伝統演劇には死者の霊を慰める機能があるという話がありましたが、今宮城さんがやっていらっしゃる作品ではどんな死者を慰めるのでしょうか?場所と関係した死者でしょうか、それとも観客と関係した死者でしょうか?」と、パリ第三大学の学生さん。

「伝統演劇では、観客はひとつの共同体に属しているという前提があり、その特定の共同体を呪ったり護ったりする霊を慰めます。しかし現代の演劇ではお客さんがみんな同じ共同体に属しているわけではなく、それぞれ違う共同体に属し、それぞれ違う死者と関係をもっています。今の人たちだって、いろいろな形で死んだ方からも影響を受けていますよね。だから、そういった様々な死者全てに対応する必要があるのが、伝統演劇とは違うところです」と宮城さん。

帰り際のお客さんからも話しかけられた。「私の継母が悪い魔女のような女性で、画家である父親の相続問題で最近すごく辛い思いをしていました。この『マハーバーラタ』ではナラ王のほうが悪魔に取り憑かれているので、その反対のケースですね。でも、この作品を見たおかげで悪魔払いができたような気がします」とのこと。宮城さんによれば、この『マハーバーラタ』はスリランカの悪魔払いの儀礼に基づいている部分があるという。スリランカの農村では、「悪魔に取り憑かれた」という人がいると、村人が集まって円になり、バカバカしい小芝居をやったりして、どうにかしてその人を笑わせようとする。その人が笑うと、悪魔が落ちる。孤独に取り憑かれた人をふたたび共同体に繰り入れるための儀式だという。

アヴィニョン演劇祭で『マハーバーラタ』を見て、今回の上演を提案してくれた人の一人であるラ・ヴィレットのプログラム担当ラファエラさんは、ほぼ毎晩見てくださっていて、「この作品は私たちに本当に必要な作品だと思った。美しさ、そして宇宙を感じること。見るたびに幸せな気分になる。そんな作品はなかなかない」とおっしゃってくださった。

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『マハーバーラタ』(ラ・ヴィレットのウェブサイトへリンク)
https://lavillette.com/programmation/satoshi-miyagi_e20

『マハーバーラタ』フランス公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_japonismes2018.html

ジャポニスム2018参加企画 ふじのくに魅力発信事業(SPACウェブサイト内/日仏併記)
静岡県は、ジャポニスム2018公式企画に選定されたSPACの『マハーバーラタ』公演を活用し、公演期間である2018年11月19日から11月25日の間、「Mt. FUJI × TOKAIDO(富士山と東海道)」をテーマに、パリ市内で静岡県の魅力を世界に向けて発信するさまざまな事業を展開します。
http://spac.or.jp/news/?p=14636
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SPAC海外ツアーブログ
アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記  :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
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