2018年12月11日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(14)アブドゥルアジーズ王世界文化センターのこと、仕込み初日

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月29日(木)

アブドゥルアジーズ王世界文化センターについて、改めて。

夜の「世界文化センター」、制作大石さん撮影(CG合成ではありません)。

夜の世界文化センター

ダーランは世界最大の原油生産量を誇る国営石油会社サウジアラムコが本社を構える石油の町。20世紀初頭には砂漠の片隅に過ぎなかった。だが、ここで1931年に発見された油田が、サウジアラビアの歴史を大きく変えることとなった。

サウジアラムコによって建てられたアブドゥルアジーズ王世界文化センターは、TIME誌による「今すぐ体験したい場所100選」特集の中で「世界で最も素晴らしい場所2018」として選出されている。2008年着工、2016年落成、2017年12月に正式オープン。劇場の他、博物館や図書館もある。オスロとノルウェーに拠点を置く設計事務所スノヘッタが設計を手がけ、10万平米の敷地に4億米ドルをかけて建設された。

上記リンクのサウジアラムコの日本語サイトによると、「知的探求、創造性、異文化交流を担い、国と地域の架け橋となることを目指し、サウジアラムコによる企業の社会的責任イニシアチブの一環として建設され」たとのこと。このイニシアチブは、今から85年前の1933年にサウジアラビアの初代国王で現国王の父にあたるアブドゥルアジーズ王がソーカル(現シェブロン)との原油採掘権契約交渉で、採掘がサウジ市民の利益となるものにするための条項を強く要求したことに由来する。このためもあって、このセンターには初代国王アブドゥルアジーズの名が冠されている。

世界文化センター公式サイトには、このように紹介されている。「世界は、発展し、変革し、変化しています。そしてサウジアラビアはさらに急速なスピードで変化しています。アブドゥルアジーズ王世界文化センター(Ithra)では、人間の可能性こそが変化の最も重要な源泉だと考えています。だから私たちは創造性を支援し、人の心にインスピレーションを与え、才能が開花できるようにすることを使命としています」としている。つまり、この世界文化センターは「急速に変化しつつあるサウジアラビア」の象徴として、その変化をさらに加速するべく作られたようだ。センターのアラビア語の通称「イスラー(إثراء, Ithra)」には「さらに豊かにする、知見や意識をさらに深める」という意味があるという。上演会場となる劇場は「イスラー劇場」と呼ばれている。

芸術監督のエリー・カラムさんは英語もフランス語も堪能なレバノン出身の演出家で、ヨーロッパの演劇事情にも詳しい。そのエリーさんが、ここで初めての本格的な演劇作品として、ヨーロッパの作品などではなく、あえてSPACの『マハーバーラタ』を選んだのは、この作品こそがサウジアラビア文化を「世界文化」とつないで変化を促し、さらに豊かにするのにふさわしいと思ってくれたためだろう。

技術スタッフと俳優の一部は午前8時半ホテルロビー集合、午前9時前に劇場入り。各セクションに別れて仕込みがはじまる。

舞台スタッフチーフの多くはヨーロッパ人。ベルギー人やフランス人が多くて、ここでもけっこうフランス語が通じる。不思議な感じ。

仕込み
仕込み2

一歩外に出てみると、少し曇っている様子だが、すごく眩しい。アブドゥルアジーズ王世界文化センターはちょっとストーンヘンジのようにも見える。

世界文化センターと大石さん

劇場前のウチワサボテンにイチジクのような実がなっている。

ウチワサボテン

サウンドチェックのためにスピーカーから大音量で音楽をかけていたら、突然ガイドツアーが劇場に入ってくる。アバヤを来てマイクをつけた女性のガイドさんが音響スタッフに声をかけて音楽を止めさせ、解説をはじめる。「この劇場ではロシアのマリインスキー劇場のオーケストラによるコンサートがあり、次回は『マハーバーラタ』の公演です!」等々(と言っているらしい)。たまたま劇場に入ってきた制作の方が「あー入って来ないでって言ったのに・・・」とあわてて確認に行く。

ガイドツアー

午後22時退館。

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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