2018年12月14日

『マハーバーラタ』パリ・サウジ日記(15)仕込み二日目~リハーサル

SPAC文芸部 横山義志
2018年11月30日(金)

技術スタッフは朝9時劇場入り。イスラム圏では金曜日は休日で、道が空いている。

14時半過ぎ、俳優劇場入り。

俳優劇場入り

音響班は音響機材が届かず、昨日から作業ができていない。もう五日前からトラックが国境で止まっていて、昨夜のうちに届くといわれていたが、今日もまだ通関していないという。劇場機材はほとんど外国から輸入しているので、手配してもすぐに届かないことが多いらしい。どこの国境なのかもはっきりしないが、面積は日本の六倍あるので、どの国境にしてもそれなりの距離がある。今日は作業できるか見通しつかず。なんとか劇場にある機材を見繕って、楽器の音が出るようにする。

楽器設置

カンパニー担当のウィリーさんと世界文化センター内のミュージアムを訪問。現代美術、歴史的なイスラム美術の展示、自然史博物館という三つのパートでできている。ウィリーさんが中世イスラム美術の展示を指さして、「ほら、これは私たちの王国よりもずっと古いんですよ!」と、驚いたように話していて、ちょっと大げさだな、と思っていたら、よく聞くと、そもそもサウジにこのようなミュージアムができたのは初めてなのだという。よく見たら、このイスラム美術の展示も、ロサンジェルスの美術館から借りてきたものらしい。

今日はアラブ首長国連邦のナショナルデーで、今日から記念行事。

UAEナショナルデー

通訳のアナスさんによれば、アラブ首長国連邦はサウジアラビアにとっての最大の友好国なので、相互にナショナルデーを祝う習慣になっているという。センター内のあちこちでコンサートやダンスなど。かなりの人出。スマホで写真や動画を撮ってSNSで発信している方もよく見かける。自撮り棒を使う方も。

自撮り棒

ずいぶん熱心に撮っているな、と思ったら、カンパニー受け入れ担当のウィリーさんによると、そもそもサウジではコンサートやダンスといったものを公共の場で見ること自体、今でも比較的稀なことらしい。これらは全てアラブ首長国連邦ナショナルデーだからこそ、この三日間に限って、ここでしか見られないものなのだという。

サウジでは長年の間、公共空間でコンサートが行われることが否定的に見られてきたが、サウジ政府が2016年に発表した「ビジョン2030」で文化・娯楽の推進が打ち出された。2017年にはサウジを離れて米国で活動していたポップシンガーのロターナのライヴがはじめて故国で開かれている。
 *参考:中東のミュージシャンは何と闘っているのか? 中東音楽のポリティックス
この世界文化センターの建設は10年以上前から計画されていたが、いい時期に開館を迎えたのかもしれない。来週ここで上演される『マハーバーラタ』も、多くのサウジ人にとっては全く見当もつかないものなのだろう。

20時から舞台上で稽古。現地スタッフがたくさん興味津々で見に来てくれる。演奏がはじまると、突然劇場に血が通ったような感じがする。

稽古

22時半退館。

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『マハーバーラタ』(アブドゥルアジーズ王世界文化センターのウェブサイトへリンク)
https://www.ithra.com/en/eventshub/events/201812-mahabharata

『マハーバーラタ』サウジアラビア公演(SPACウェブサイト内)
http://spac.or.jp/mahabharata_saudiarabia2018.html
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SPAC海外ツアーブログ
アヴィニョン演劇祭参加の記:2014年『マハーバーラタ』『室内』上演記録
アヴィニョン法王庁日記  :2017年『アンティゴネ』上演記録
『顕れ』パリ日記2018 :宮城聰最新作『顕れ』上演記録
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