2018年12月27日

<『顕れ』#009>創作秘話 ~小道具編~

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前回のブログのおさらい~
『顕れ』に登場するのは、万物創造の女神と魂たち。大きく舞台写真を使った今作のチラシ・ポスターの中央いるのが「女神イニイエ」、取り囲むように跪いているのが魂たち「マイブイエ」です。戯曲では、人間の肉体が誕生するときに、最高神・イニイエの懐のなかから魂が飛び出して赤子の中に入るとされています。

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この「マイブイエ」と対照的な存在が「ウブントゥ」です。
ウブントゥは、奴隷として運ばれる途中で海の上で亡くなり、もはや輪廻転生することができなくなったさまよえる魂たち。マイブイエとウブントゥの出会いが、物語の大きな契機となっています。

この2つのキャラクターは、美術班が被り物の部分を、衣裳班がそれ以外を製作しています。
深沢さんは今作では小道具デザインを担当していますが、普段は舞台美術も手掛けています。
今回も舞台美術を一から考え始めるときと同じように、戯曲や俳優の考える演出プランに寄り添いながらそれぞれのデザインを考えていったそうです。

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▲パリ公演舞台写真。この2つのキャラクターはそれぞれ4人1役で演じます。
 左4体がマイブイエ、右4体がウブントゥです。

舞台創作が始まったばかりの頃、マイブイエは胎児の人形を俳優が操作するというプランでした。
しかし、マイブイエとウブントゥは先の説明でも書いた通り、人間の身体という造形に入ってくる魂。
そのため深沢さんは最初のプランに違和感を抱き、2つのキャラクターの造形は形がはっきりしないもののほうがいいと考えたそうです。
そこから発想したのが、かたちを持たないが、人が見ることのできる“現象”。例えば火や風などです。

 
ウブントゥは当初、火という現象を見せるためロウソクを身に着けるという案でした。
そこから、俳優とのディスカッションを繰り返し、演技の動きとの兼ね合いも考えて今の造形にたどり着きました。

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▲深沢さんによるウブントゥ(ヘッド部分)デザイン画

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▲パリ公演舞台写真、ウブントゥ近影

ウブントゥは、「マイブイエと同等の存在ではあるが、自由度が低く閉じ込められた存在」だと考え、マイブイエの被り物の玉が自由に動くようになっているのに対して、ウブントゥのものは玉が押し込められているような形になっています。
これは蛙の卵をモチーフに作られ、発泡スチロールの玉を黒いストッキングに入れて、さらに着色されて出来上がっています。

またマイブイエの被り物は、試作段階で造形として華奢だと演出の宮城から指摘を受け、SPACで創作した別の作品『ANGELS』を参考に造形を強めていったそうです。

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▲中高生のダンスかんぱにーSPAC-ENFANTS『ANGELS~空は翼によって測られる~』
 2018年東京芸術祭での公演より。(スパカンファンプロジェクト詳細はこちら

深沢さんにとって、かたちのない現象にトライしたのは初めてだったそうです。
「このプランにたどり着いたことによって、よりマイブイエやウブントゥというキャラクターがどういう存在であるかを深く理解することができたと思う。ただ一方で、現象をモチーフにしたアート作品を、そのまま演劇に持ち込むことの難しさを改めて感じた」と話していました。

たとえばいずれの小道具も、そうした美術でありながらも、俳優が動き回ることが可能なように被り物として成立させ、また耐久性も兼ね備えなければいけません。
パリでの1ヶ月のロングラン公演を経て、2つのキャラクターともたくさんのメンテナンスが必要だそうです。

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▲作り直し途中のマイブイエ(ヘッド部分)

マイブイエとウブントゥ役の俳優が身に着けるヘッド以外の部分は、衣裳班が製作しています。
こちらも美術班と同様、魂たちを表現するため、より元素的なかたちとして球体が全身にあしらわれています。
マイブイエ、ウブントゥともに、構造としては着物と同じになっていて、袖を通して着脱します。

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▲駒井さんによるマイブイエ、ウブントゥのデザイン画

通称「玉暖簾」と呼ばれていて、取材に伺ったときはパリ公演で伸びてしまった紐の長さを調節中でした。
着色した発泡スチロールの球とビーズを組み合わせて、俳優が動いても絡まらないように作られています。
発泡スチロールのため、実際に着てみると軽くて暖かく、意外な着心地だそうです。(笑)

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舞台には、イニイエやマイブイエ、ウブントゥのほかにも、イニイエに仕える第二の神「カルンガ」や、罪を告白する「一千年のつみびとたち」が登場します。
実際の衣裳や小道具が舞台上ではどんなふうに見えるのか、ぜひ劇場でお楽しみください!

また、このような創作のウラ話を聞くことができる大人気企画「バックステージツアー」
は、一般公演日のうち1月26日(土)・27日(日)・2月3日(日)に開催します!
創作・技術部の案内のもと、美術や衣裳などを間近でご覧いただくことができます。
興味のある方はこの3日間がおススメです!ご予約はお早めに。

 
◆これまでのブログ
2018.7.15更新 #001 県大での公開授業レポート
2018.7.21更新 #002 作者レオノーラ・ミアノ氏来静!
2018.8. 5更新 #003 レオノーラ・ミアノ氏講演会レポート
2018.8.30更新 #004 研修生ポールさんの振り返りレポート
2018.9.11更新 #005 世界初演まで間もなく!
2018.12.10更新 #006 『顕れ』の世界を読んで楽しむ
2018.12.16更新 #007 静岡県立大学図書館で特別展示開催中
2018.12.24更新 #008 創作秘話 ~衣裳編~

◆パリ公演期間中のブログ
『顕れ』パリ日記2018 by SPAC文芸部 横山義志

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SPAC秋→春のシーズン2018-2019 #3
顕れ ~女神イニイエの涙~
2019年1月14日(月祝)、19日(土)、20日(日)、26日(土)、27日(日)
2月2日(土)、3日(日) 各日14:00開演
日本語上演/英語字幕
会場:静岡芸術劇場

作:レオノーラ・ミアノ
翻訳:平野暁人
上演台本・演出:宮城聰
音楽:棚川寛子
*詳細はコチラ