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2019年10月22日

『ペール・ギュントたち』稽古場ブログ#1

静岡での稽古がはじまった『ペール・ギュントたち~わくらばの夢~』

この作品は、インドネシアの演出家ユディ・タジュディさんによる指揮のもと、インドネシアをはじめスリランカ、ベトナム、そして日本から様々な分野で活躍するアーティストたちが集まり、インドネシア〜東京〜静岡と旅をしながら創作されています。
旅先で出会った人々やその土地の文化、歴史的背景などからインスピレーションを受け、共同創作アーティストたちの個人的な経験や、彼らが住む国や地域が抱える社会的問題なども盛り込みながら、イプセンの『ペール・ギュント』を読み解いていきます。


▲ユディ・タジュディンさん(左)

ということで、まずはこの作品の原作『ペール・ギュント』と、作者のヘンリック・イプセンについて簡単にご紹介していきましょう!

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『ペール・ギュント』は、1867年にノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンによって書かれた戯曲で、グリーク作曲のクラシック音楽も有名です。

自由奔放な主人公ペール・ギュントは、田舎の落ちぶれた豪農の息子で、母オーセと暮らしています。日頃から「皇帝になる!」と大口を叩き、人々からは変な目で見られているペールは、元恋人のイングリが結婚すると聞いて、結婚式に乗り込み花嫁を連れ出します。が、すぐにイングリを捨ててしまいます。
そのあと、村を飛び出したペールが出会ったのはトロルの一族。トロルとはノルウェーの伝承に登場する妖精で、ペールはトロルの王ドヴレの娘と結婚寸前まで行くのですが、逃げ出してしまいます。そして、ソールヴェイという移住民の娘と出会い恋に落ちるのですが、彼女をおいて放浪の旅へと出かけてしまいます。

そんなペールが辿り着いたのはモロッコの西海岸。立派な装いで数人の紳士とテーブルを囲んで議論を交わしています。そのあとも、砂漠でアラブ部族の首長の娘アニトラと出会ったり、エジプト・カイロの精神病院で「皇帝」と呼ばれたりと、次から次へと冒険は展開していきます。

年老いて死を意識しはじめたペールは、故郷へと戻りボタン職人と出会います。ボタン職人は、天国に行くような大の善人でも、地獄に行くような大悪党でもない、平凡な人間をボタンに溶かし込む職人で、ペールは「ボタンになるなんてゴメンだ!」と善悪問わず、自分が行ってきたことを証明しようとしますが、誰も証人になってくれません。そしてペールは、自身の帰りを待ち続けたソールヴェイの子守唄を聴きながら、最期を迎えます。
 
この戯曲が書かれた1867年当時、ノルウェーはスウェーデン王の支配下にあり発展途上の農業国でした。
ヴァイキングを祖先に持つ彼らは、ペールのように成功を夢見て祖国を出た人たちもたくさんいたようで、イプセン自身もノルウェーを嫌い、長く外国で生活していました。
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▲ヘンリック・イプセン

イプセンは、シェイクスピア以降、世界で最も上演されている劇作家と言われ、「近代演劇の父」とも呼ばれています。代表作は他に、『人形の家』『ヘッダ・ガブラー』、2018年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」でも上演された『民衆の敵』があり、当時の社会や国家に対する批判や、新たな時代の女性像を提示するなど、問題作をたくさん世に送り出してきました。ちなみに『ペール・ギュント』は、SPACでも2010年と2012年に宮城聰による演出で上演されています。
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▲宮城聰演出『ペール・ギュント』(写真:橋本武彦)

そして、『ペール・ギュントたち~わくらばの夢~』では19世紀ヨーロッパから現代アジア、ひいては世界各地で起こっている様々な問題へと文脈を置き換えていきます。

次のブログでは、演出のユディさんがなぜこの作品を構想したのか、創作の旅がはじまったインドネシアの島、ララントゥカでどのような出会いがあったのかを紹介していきます。お楽しみに!

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SPAC秋→春のシーズン2019-2020 #2
『ペール・ギュントたち〜わくらばの夢〜』
2019年11月9日(土)、10日(日)、16日(土)、17日(日)
各日14:00開演
会場:静岡芸術劇場

原作: ヘンリック・イプセン
訳:毛利三彌

上演台本・演出: ユディ・タジュディン

共同創作:
ウゴラン・プラサド(ドラマトゥルク)
川口隆夫(パフォーマー/ダンサー/振付家)
ヴェヌーリ・ペレラ(振付家/ダンサー)
美加理(俳優)
ムハマッド・ヌル・コマルディン(俳優/ダンサー)
森永泰弘(サウンドアーティスト/作曲家)
グエン・マン・フン(ヴィジュアル・アーティスト)
アルシタ・イスワルダニ(俳優/パフォーマー)
グナワン・マルヤント(俳優/作家)

大内米治、佐藤ゆず、舘野百代、牧山祐大、
宮城嶋遥加、若宮羊市(俳優〔SPAC〕)

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