2008年7月13日

守番日記3 椎と孟宗竹~時間と空間の景色~

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 樹木は乾燥に耐えられなくなると枝枯れを起こす。それは、枯れてしまうのではなく、生きる術として自ら枝を枯らすのだそうだ。そのようにして全体の乾燥を抑え、一方では、水気を探して根を伸ばしていくというのである。 

 同じ生きる術にしても、大木と孟宗竹の地上での争いは凄まじい。

 里山が孟宗竹席捲の脅威に晒されているのは知っている。丈が高く密集する習性もあって、他の樹木への陽光を遮り、枯らしてしまうのだと考えていたが、内実はそんな方程式通りではなさそうだ。 

 大木は嵐の猛威を一身に受け止め、その力をもって纏わりつく軍団を叩きのめす武器にしているように思えてならない。

 というのは、侵入者の孟宗竹が勢いに任せ木々を飲み込みながら、梢の周囲の直径が二十メートルを優に超える椎や樫の大木に迫っている。この段階で大抵の自生の樹木は絶えてしまっているが、大木の周りでは、自身の傷つき枯れ落ちた太枝とともに、芯を止められ、葉をそぎ落とされ、根元もぐらぐらの無残な姿の孟宗竹が散乱している光景が一箇所や二箇所ではない。両者の攻め合いがいかほどのものであったか、あまりにも痛ましく唖然とさせられる。戦いは何としても未然に防ごう。 

 もう一つ大切なことを教えられた。椎や樫は強いだけで生き延び君臨しているのではない。自らも弱り枝葉を振るった分、陽光を地表に導き、根元に眠る種子の発芽を促している。

 既に、わが子だけでなく、アオキやヤブコウジ、隠れ蓑などの一族も芽生え、彼らも新しい集団をつくり始めている。  

 舞台芸術公園での話である。  


2008年6月22日

『ハルッの物語』(韓国)職場体験

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5月31日、6月1日の公演の劇団ティダ(韓国)による『ハルッの物語』に、静岡市立末広中学校の渡邊清楓さんが職場体験でスタッフとして参加しました。

5月28日(水)は、韓国から到着するティダのみなさんの宿舎などの受け入れ準備、29日、30日は舞台の仕込みの手伝い。本来は3日間の職場体験プログラムですが、31日、6月1日の本番日もスタッフとしてお客様を迎え、一緒に働くことができました。以下、渡邊さんの言葉です。

★★★★

職場体験をさせていただいて、もう毎日が夢のようでした。

私にとって演劇は「夢の世界」というイメージだったので、お客さんを一時だけ、現実からひっぱり出して、嫌なこともすべて忘れさせてくれるような夢を作ることにかかわることができて、本当に楽しかったです。

今回はTuida(ティダ)のみなさんにもかわいがってもらい、仕事も見学も沢山させてもらったのでじゅうじつした貴重な時間をすごすことができました。

役者の体験はできても、制作の体験ができることはありません。なので、この貴重な3日間は何よりも大切な経験で宝だと私は思います。

★★★★

渡邊さんは昨年の親と子の演劇教室プログラムの参加者で、今回学校の職場体験プログラムにSPACで、と申し込んでくれました。ちょうど子ども向けのファミリー劇場『ハルッの物語』の公演の週に、スタッフとして渡邊さんを受け入れることができたのは、私たちにとってもとても貴重な体験でした。


2008年5月24日

消された官僚を探して (2)

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公演日当日、時差は6時間、レバノンの朝9時、日本時間の15時からネットの3回線をつかってのリハーサルが始まりました。結局リハーサルは開演の1時間前までかかり、最後の最後まで技術の調整しながらの開演となりました。上演中は何回か回線が途切れることもありましたが、ラビァの肉声をつなげ続けることを目指し作品を上演しました。1度、ベイルートで停電が起こり、3回線すべてが落ちてしまうこともありましたが、この状況下でも必死にメッセージを伝えようとするラビァの執念に近い熱意に必死で耳を傾ける観客と、2時間にわたるパフォーマンスを遠いレバノンからPCの画面に向かってしゃべり続けるラビァの集中力が公演を成功に導きました。「不在」を扱ったこの作品で、私たちはその瞬間確かにラビァの「存在」を感じることができたのです。

終演後、ラビァからメールが来ました。「あなたがたのおかげで、私たちは、戦争というものに負けずにすみました。あなたがたのおかげで私たちは外に出ることができたのです、兵隊たちが私たちを檻の中に閉じ込めようとしているにもかかわらず。」
 
芸術を伝える魂は自由だと、ラビァが伝えてくれた特別な公演でした。  


世界とつながる窓 『消された官僚を探して』

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「Shizuoka春の芸術祭」2作品目となるレバノンのアーティスト・ラビァ・ムルエの『消された官僚を探して』。 

そのラビァから衝撃的なメールが入ったのは8日のことでした。

「お元気ですか?ビザは取れたのですが、状況は全くよくありません。内戦が始まったようです。すぐには終わらなそうな雰囲気です。空港はヒズボラのメンバーに占拠されて閉まっています。レバノン全体がヒズボラの捕虜になってしまいました。街で戦闘が始まりました。ベイルートは燃えています。」慌ててニュースを探してみたところ、確かに、反政府勢力ヒズボラが空港やそこに至る道を封鎖していて、ベイルートの街で戦闘が起き、死者が出ている、という報道がありました。18年前に終わった内戦以来、はじめての状況だそうです。

翌日には、ラビァが仕事をしている与党系のテレビ局もヒズボラに占拠され、放送が停止になった、というメールが来ました。ラビァと私たちスタッフとで連絡を取り合い、何度も現地の航空会社に問い合わせたりして、一時は飛行機が出そうだ、という話もあり、リスクは自分で負うので、道路が分断されてても空港まで歩いていく、とまで言ってくれたのですが、結局飛行機は飛ばないことがわかりました。今にして思うと、無理をしないでいてくれて本当によかった、と思います。ご存じのように、ベイルートでは激しい銃撃戦が繰り広げられ、今でもレバノン各地で小規模な戦闘が続いています。50人以上の方が命を落としたそうです。

ラビァは、そんな状況だからこそこの作品を上演する意義がある、といってくれたので、わたしたちも一緒に公演が実現できる道を探り、「インターネットのライブ映像通信による公演」という形にたどり着きました。(つづく)


2008年5月21日

守番日記 2千両(センリョウ)~手づくりの庭~

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守番の冬は忙しい。何せ厄介者の虫も、にょろにょろとしたものもいないのだから、勝って放題に伸びる蔓や藪の整理も気にならない。
 そう思って残してきたといえば手前勝手とお叱りもあろうが、園地作業は四季を通しそういう場所での自然との競争だ。
 根止めを施した茶畑際の竹林も、何年も手入れを怠ったので、孟宗も細竹に化してぎっしりと茂り、立ち枯れも出始めている。
 この一月は、兎に角傷んだものから取り除こうと夢中であった。作業が進む中で少しずつ竹林に空間も生じてくる。その瞬間の自然の対応は早い、暗い藪の中へさっと陽が差し込んできた。落葉も息づいているかのように、一枚いちまいが輪郭を見せてくる。“森は生きている”と思わず感動が走る。
 しかし、これだけで終わらなかったのが憎い。さすが舞台芸術公園というべきか。
 つやつやの青い葉の間に輝くような小さな紅色の実をつけた小木。葉は細く披針形で、丈が三十センチ程、紛れもなく百両(カラタチバナ)である。慎重に周囲の小枝を取り除くともう一本。園内に十両(ヤブコウジ)は珍しくないが百両には初めて出会った。嬉しい限りである。
 少し離れた箇所に万両も見つけた。全て鳥たちからの贈り物であろう。
 飴も鞭も、汗も涙も糧にしてほしい。やがてセンリョウも、いや千両役者も続々と出てくるに違いない。感謝。


2008年4月30日

タガンカ劇場俳優来日!

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「Shizuoka春の芸術祭2008」のオープニングを飾る鈴木忠志演出の『エレクトラ』、これは昨年秋、ロシア・タガンカ劇場から鈴木忠志が演出を委嘱された作品でレパートリー作品としてこの4月にもモスクワで上演されているものです。今回はタガンカ劇場から5人の女優が来日、SPACの俳優との日露二ヶ国語版になります。
ロシアから4月25日に来日した俳優たちの、旅の疲れも感じさせないような迫力の演技に、SPACの俳優も刺激され負けじと白熱の稽古が繰り広げられています。
いよいよ開幕が近づいてきました!劇場でお待ちしています!


2008年4月29日

守番日記 1山茶花~現場からの報告~

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舞台芸術公園ロータリーからの富士の眺めは見事である。殊に雲上の富士は幻想的だ。
 それにしても、背後の山茶花の植え込みは貧弱極まりない。日本平パークウエイ(市道池田日本平線)に接する面の生垣にしているのだが、長細いコンクリート枡の中で乾燥気味になるのか、葉はいつも黄ばんだ色、丈も一メートルほどで十年前の植栽時と変わらない。枝枯れとともに支柱の竹も朽ちかけ、ススキや蔓も絡み、見すぼらしさだけが目についてしまう。
自然の中で人工的な植栽は馴染み憎い面もあるが、せめて自生の植種を選択すべきであったろう。
 何れ模様替えするにしてもと思いながら、昨年の秋、はじめて枯れ枝、朽ちた支柱、枯れ草を取り除いた。気まぐれの手入れであったが、長年放置した後ろめたさも幾分取れた気になった。
 年が明けて一月半ばの夕暮れ、ロータリーの片隅に赤い花が点々と浮かぶ光景に目を見張った。輝いている。生垣越えの沿道の林が黒の背景になってその木立の間から、射すような光がピンポイントで山茶花の花を当てている。
 陽が低い冬の、そのまた一瞬を捉え山茶花は、“ここに居るよ”と呼び止めたのか。いや違う。今まで何を見ていたのさ!
この地が舞台芸術の世界だけに尚更のことかも知れない。
 よく見ると竹の支柱がまだ残っている。取り払って自由にさせてみよう。

 


2008年4月19日

チケット好評発売中!

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現在、「Shizuoka春の芸術祭」のチケットを販売しておりますが、大変好評のため、売り切れの公演が続出しております。

現在、売り切れとなっているのは以下の公演です。

5月24日(土)25日(日)『夜叉ヶ池』

6月7日(土)『クリシュナ九変化』、8日(日)『半人半獅子ヴィシュヌ神』

6月21日(土)『Nameless Hands~人形の家』

売り切れの公演については、「キャンセル待ち」を承っております。詳しくはSPACチケットセンター(Tel.054-202-3399)までお問い合わせください。

その他の公演もお早めにご予約いただきますようお願い申し上げます。


2008年4月12日

有度サロン開講!

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今年度の新たな事業としてスタートした「有度サロン」。芸術・思想・社会科学など、さまざまな領域で活躍する芸術家・批評家・研究者などが集い、討議を行う場「有度サロン」のスタートです。
初日の5日にまず鈴木忠志演出、三島由紀夫作の『サド侯爵夫人(第2幕)』を、舞台芸術公園「楕円堂」で観劇したあと、レクチャー、討議、翌6日には五十嵐武士氏と苅部直氏による公開講座が開催されました。苅部氏からは前日に観劇した『サド侯爵夫人』に絡めての三島由紀夫論と戦後日本論が展開され、客席からも質問、意見が飛び交いました。世代や専門分野の異なる人々が同じ舞台を観て議論をする、劇場ならではの熱い場となりました。
 
この「有度サロン」がこれからどんな場を創っていくのか、とても楽しみなスタートでした。


2008年3月23日

稽古見学会2日目

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大好評の稽古見学会の2日目が開催されました。

リハーサル室での『夜叉ヶ池』の稽古風景公開では、前回(20日)の稽古見学会から3日しか経っていないのですが、同じ場面の稽古をおこなっても、衣裳や演技など決まってきたところもあり、2日続けてご覧いただいた方にも、この数日での稽古の進捗を楽しんでいただけました。今日はSPACが高校演劇支援事業の中で関わった高校演劇部の生徒も参加。稽古の進め方、演出家の指摘など「プロ」の舞台はこんな風に出来上がってくるのだということがとても刺激的だったようです。リハーサル室での稽古では間近に見ることができる楽器の演奏風景も、舞台では紗幕の中での演奏になります。本当にこの稽古見学会ならではの体験をすることができました。

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劇場でプロジェクターを使って「Shizuoka春の芸術祭」の演目紹介

 

 

 

[2] [3]

リハーサル室での『夜叉ヶ池』稽古風景

 

 

 

これから2ヵ月後、どんな舞台になっているのでしょうか。乞うご期待!

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[2] http://otsukimi.net/spac/blog/wp-content/uploads/2008/03/IMG_8376.JPG
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