2015年9月22日

【舞台は夢】コルネイユと『舞台は夢』(伊藤洋)

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 イギリスでシェイクスピアが劇作品を書いていた17世紀、フランスでは少し遅れてピエール・コルネイユ(1606年~84年)が多様な劇作品(喜劇、悲喜劇、悲劇、歴史劇、英雄喜劇、音楽悲劇など)を創作して人気を博していた。彼はのちに「フランス演劇の父」とも「大陸のシェイクスピア」とも呼称されている。後年活躍する喜劇のモリエール、悲劇のラシーヌとともに、「フランス17世紀三大劇作家」の最初の一人である。
 コルネイユの生まれたパリ北西の中都市ルーアンは当時文芸の一大中心地で、地方巡業の芝居も頻繁に行われていた。彼は自分の恋愛体験をもとに処女作喜劇『メリット』(29年)を書き劇団の主宰者に渡したところ、そのパリ公演が評判になって劇界にデビューした。その後に書いた初期喜劇『未亡人』『ロワイヤル広場』などとともに、この『メリット』には上流社会の青年男女だけが登場し恋を語り上品な会話を交わす。コルネイユは「滑稽な人物なしで笑わせる」ことを考え、それまでの喜劇にあった笑劇要素も下品さも下卑た滑稽さも描かない。だから大笑いする場面は少ないが、優雅で微笑ましい上品な喜劇になり貴族の子女たちも安心して観劇できた。劇場も演劇も浄化され、演劇の地位は確実に向上した。『舞台は夢』(35年)の最後に演劇が礼賛されるのはそのことである。 Read the rest of this entry »