キリング・フィールドを越えて

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大量虐殺からの生存者が、自らの言葉と身体で語る真実

「キリング・フィールド」 とは、ポル・ポト政権下のカンボジアで、大量虐殺が行われた刑場跡の俗称です。本作は、当時を生き延びた宮廷舞踊の踊り手を主人公に、複数の経験談を綴りながら、苦難の記憶を舞台化します。出演者は、全員がポル・ポト時代の生存者です。彼女らの生き証人としての語りや舞踊に加え、伝統的影絵での描写や、虐殺博物館を訪問する映像を交えながら、不条理かつ過酷な時代の現実に迫ります。2001年の初演以来、ヨーロッパを中心に世界各国を巡り、アジアの悲劇的歴史の現実とその生々しさを伝えてきた作品が、この夏ようやく日本初演を迎えます。

ドキュメンタリー・スタイルでみせる、
注目の演出家オン・ケンセン

オン・ケンセンは、シンガポール人としての自らのアイデンティティーを問い続け、「今、アジアで芸術家として生きるとはどういうことか」というテーマのもと、緻密なフィールドワークで出演者達の記憶を辿りながら本作を構成しました。自身が提唱する「ドキュ・パフォーマンス」(ドキュメンタリー+パフォーマンスという意の造語)の手法に基づき、現代的な映像表現やカンボジアの伝統舞踊や影絵を取り入れ、アジアの地域史と芸術の見事な融合を果たしました。永く閉ざされ、当事者が語ることは殆どなかったポル・ポト時代の記憶と真実に、外国人演出家が果敢にも向き合い、そして紐解いた、新しい形の舞台芸術です。

公演情報

日本初演  ドキュメンタリー・パフォーマンス/カンボジア、シンガポール

■公演日時
6月23日(土)12時30分開演・24日(日)17時開演
◎24日終演後にオン・ケンセン(構成・演出)と宮城聰によるアーティスト・トークを行います。
ゲストに、山中ひとみ氏(カンボジア古典舞踊家)をお招きし、宮城聰とのアーティスト・トークに変更となりました。

上演時間:135分(途中休憩含む)
クメール語・英語上演/日本語資料

■会場
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

■チケット
一般大人:4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金があります。

STAFF / CAST

構成・演出:オン・ケンセン

翻訳:カン・リティサ

出演:エン・ティアイ、トン・キム・アン、キム・ブン・トム、マン・コサル 、福岡ユタカ(エン・チャン)

ボーカル・作曲:福岡ユタカ(エン・チャン)

照明デザイン:トマス・ドゥン
映像:ヌーリナー・モッド

製作:シアターワークス(シンガポール)
助成: National Arts Council (Singapore)(予定), Singapore International Foundation(予定)
後援: シンガポール共和国大使館、カンボジア王国大使館

キリング・フィールドを越えて(プロモーション映像)

演出家プロフィール

オン・ケンセン ONG Keng Sen / 王景生

演出家。1963年シンガポール生まれ。大学在学中の88年「シアター・ワークス」に参加。95年、アメリカ合衆国ニューヨーク大学大学院修士号(パフォーマンス研究)を取得。留学と前後して、演出作品が日本や欧米でも上演され、その名が世界的に知られるようになる。94年から取り組み始めた「フライング・サーカス・プロジェクト」では、アジアと欧米から古典芸能と現代芸術、また舞台芸術にとどまらない多様なアーティストを招いて画期的な交流事業を活発に行う。99年にはアジアとヨーロッパ間の芸術交流を促進するアーツ・ネットワーク・アジア(ANA)を創設。03年、シンガポール政府より文化勲章(演劇部門)を受章。10年、福岡アジア文化賞(芸術・文化賞)を受賞。

出演者プロフィール

エン・ティアイ EM Theay

カンボジアの古典舞踊家。7歳で王立古典舞踊団の研修生となる。その後15歳で主席ダンサーとなり、20年その職を務める。1975年の政変により強制移住と過酷な重労働を課せられ、活動中止を余儀なくさせる。ポル・ポト政権の崩壊により79年から活動を再開。荒廃した伝統の復興に携わるべく、国立舞踊団や王立文化芸術大学で指導にあたり、現在もなお、舞踊家や歌い手としてアジア、ヨーロッパ、アメリカで幅広く活躍中。新しい世代へ技を伝え、発展させるべく今もなお意欲的に活動を続けている。

コラム

『キリング・フィールドを越えて』上演に寄せて
紺野美沙子

はじめてカンボジアを訪問した1999年、トゥール・スレン虐殺博物館へ行きました。罪もない人々、国造りを担う知識層や芸術家が殺されたと知りました。特にショッキングだったのが、母親の手から奪われた赤ちゃんが目の前で殺される絵。見学を終えた時は衝撃で打ちのめされ、本当に歩けませんでした。地面の赤い土さえも、無実のまま殺された人々の叫びに見えた程です。ポル・ポト政権下の時代は、私が大学に入った頃でした。国際情勢には全く目を向けず、お気楽な女子大生でキャンパスライフを謳歌していたことには、今思うと愕然とします。
この作品は出演者の証言一つ一つが、あまりにも重い。事実の重みというか、百万人以上の方が亡くなっているということですから、辛くても、目をそむけることができない歴史なのだと感じました。主演の踊り手さんが、カンボジアの大地や自然、伝統といった重みを全部背負って表現しているようでした。舞踊団の仲間も大多数が殺されたそうですが、そういった人たちの分まで踊り続けているように見えました。日本では、ポル・ポト政権下で何が行われたかご存知ない方も多いでしょう。彼女が多くの困難を乗り越えてアプサラ(天女)の舞いを静岡で踊り、ドキュメンタリー演劇という形で表現するというのは稀有な機会だと思います。
この話は、今日の平和なカンボジアからは想像もできません。世界どこでもそうですが、戦争があり、悲しみや苦しみがある中を人は生きています。カンボジアの人も痛みを抱えながら、でも普段はそれを出さずに額に汗して働く。それは日本もカンボジアも同じではないでしょうか。誰かの痛みを本当に理解することはできませんが、理解しようと努めたり、事実を知って思いやりを持つだけでも違います。観光ツアーは今でこそ沢山ありますが、今日の経済発展の裏にはこういう歴史があるということを知れば、アンコール遺跡もまた違って見えてくるかもしれません。カンボジアへ行ったことがなくても、演劇を通じて想像力を働かせて見てほしいです。これは想像力を働かせざるをえない作品だと思います。明るく楽しい物語もいいですが、たまにはこういうピリっとしたものを、気合を入れてご覧いただくのもよいと思います。(談)

紺野美沙子(こんの・みさこ)
俳優、国連開発計画(UNDP)親善大使。テレビ・映画・舞台に活躍。UNDP親善大使として国際協力の分野でも活動。「紺野美沙子の朗読座」主宰。音楽や映像など様々なジャンルのアートと朗読を組み合わせた公演を定期的に続けている。本年7月、俳優座劇場にて「日本の面影」(作:山田太一)に出演する。