ライフ・アンド・タイムズ――エピソード1

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オフ・ブロードウェイの注目株が初来日!
世界を虜にしたミュージカルが静岡に

ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマは、演出家のパヴォル・リシュカとケリー・コッパーが主宰する、ニューヨークを活動拠点としたパフォーマンス・グループです。「ニューヨーク・タイムズ」紙のほか、代表的なカルチャー紙「ヴィレッジ・ボイス」からも注目の劇団として高い評価を受けており、2008年にはオビー賞(トニー賞に次ぐ権威ある賞)を受賞。まさに今風の、痛快なまでの身体性とウィットを感じさせる作品で、ヨーロッパ各地でも上演を重ねています。客席を活気で満たす彼らの、初の来日公演に、ご期待ください。

たった一つの質問から始まった壮大なプロジェクト

「あなたのライフストーリーを聞かせてもらえる?」というたった一つの質問に、延べ16時間にわたって答えた女性の言葉を、そのまま一語一句残さず歌詞にするという、壮大なミュージカル・プロジェクト、それが『ライフ・アンド・タイムズ』です。2009年にエピソード1を初演。12年1月にはエピソード3&4を上演しており、全エピソードが完成すると、上演時間は24時間に及ぶといいます。電話口で自身の人生を語った女性は、フルート奏者としてこの作品に出演。今回上演するエピソード1では、彼女の誕生から8歳までの記憶の断片がつづられます。

公演情報

日本初演  ミュージカル/アメリカ

■公演日時
6月16日(土)13時30分開演、17(日)13時開演
◎終演後にパヴォル・リシュカ、ケリー・コッパー(構成・演出)と宮城聰によるアーティスト・トークを行います。

上演時間:210分(途中休憩含む)
英語上演/日本語字幕

■会場
静岡芸術劇場

■チケット
一般大人:4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金があります。

STAFF / CAST

構成・演出:パヴォル・リシュカ、ケリー・コッパー
(クリスティン・ウォラルとの電話での会話をもとに)

出演:イラン・バカラック、ガベル・アイベン、アンヌ・グリッドレイ、
マシュー・コラヘ、ジュリー・ラメンドーラ、アリソン・ワイズガル

音楽:ロバート・M・ヨハンソン
美術:ピーター・ニグリーニ
演奏:ダニエル・ガワー、ロバート・M・ヨハンソン、クリスティン・ウォラル
プロンプター:エリザベス・コナー
ドラマターグ:フロリアン・マルツァッハー
プロダクション・マネージャー:ダニー・ナイアマン

製作:ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマ、ブルク劇場(ウィーン)
共同制作:Internationales Sommerfestival Hamburg, Kaaitheater Brussel, Théâtre de la Ville Paris, Internationale Keuze Festival Rotterdamse Schouwburg, and the Wexner Center for the Arts at The Ohio State University
支援:The MAP Fund, a program of Creative Capital, supported by the Rockefeller Foundation
後援:在名古屋米国領事館・名古屋アメリカンセンター

ライフ・アンド・タイムズ――エピソード1(ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマ公式サイト)

演出家プロフィール

1992年、ニューハンプシャー州・ハノーヴァーのダートマス大学で2人は出会う。95年よりニューヨークにて、パフォーマンス、映像、ヴィジュアルアート・インスタレーションの共同創作を始める。2005年より「ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマ」の名称を正式に用いて活動する。電話での会話をもとにした4時間半にわたるパフォーマンス『No Dice』で一躍脚光を浴び、2008年オビー賞受賞。同年、ザルツブルク音楽祭では『ロミオとジュリエット』で若手演出家賞受賞。劇団としての活動の他に、これまでに共同でアニメーション映画を創作し、現在は書籍を執筆中。ノルウェー・シアター・アカデミーなどでパフォーマンスの指導にもあたる。

劇団プロフィール

演出家のパヴォル・リシュカとケリー・コッパーの2人が率いる、ニューヨーク、ブルックリンのパフォーマンス・グループ。劇団名は、カフカの小説『失踪者(Der Verschollene)』(出版当初のタイトルは『アメリカ(Amerika)』)の主人公が向かう最後の地「オクラホマ野外劇場 (Nature theater)」に依拠している。2005年、『Poetics: a ballet brut』にて活動を開始。『ライフ・アンド・タイムズ』は「ベルリン・テアタートレッフェン2010」公式セレクションとされた。誰もが等身大に受け止められる状況を描き、舞台を飛び越えて私たちの日常への認識を変化させる作品を生み出している。

コラム

ネイチャー・シアター・オブ・オクラホマ
岩城京子

たいがい自分の想い出は他人にはさっぱりおもしろくない。ひとりよがりで、自己完結的で、こちらがまったく関与しない固有名詞が大量に使われるからだ。結果、話し手だけが「幼稚園時代の初恋」や「甲子園での武勇伝」に心地よく耽溺し聞き手は置いてきぼりをくらうはめになる。だからネイチャー・シアター・オブ・オクラホマという、カフカの未完小説『アメリカ』の最終章からグループ名を取る米国の演劇集団が、3時間半に及び、役者の子供時代の想い出を歌い踊ると聞いたときには、欧米圏の小劇場界で彼らが話題だという情報は耳にしていたものの、あまり、食指が動かなかった。
しかしなんであれ、食わず嫌いはやはりいけない。なぜなら、このひどく短見的で個人的な経験から生じた思い込みは、昨年5月にシンガポール・アーツ・フェスティバルで彼らの近作『ライフ・アンド・タイムズ――エピソード1』を目の当たりにして完全に覆されたからだ。実生活では夫婦である演出家のケリー・コッパーとパヴォル・リシュカの二人は、「演劇とは、人、時間、空間、を用いるとてもシンプルな表現だ」と語り、実際に余剰要素をいっさい排して、いくつかの楽器と何人かの役者となにもない空間を用いて、演劇体験においてもっとも大切である観客の想像力(と、ここでは記憶も)を見事に喚起してみせる。
成功の鍵は、主題となる役者が電話口でコッパーに語ったという16時間にわたる想い出を、一言一句そのままセリフとして語る、無駄が多く余談だらけで、本音と作りごとがまぜこぜで、だからこそ想像の余地が広がる圧巻の口伝技術にある。蟻まんじゅうを食わされた話、えらく無口な父親の話、学校のお泊まり教育で寝間着をバカにされた話。それらが「あのときの、あの話をしてるんだけど〜♪」「なくもないかもしれないっていうかさ〜♪」と言ったまるでチェルフィッチュの超口語演劇のごときセリフとして歌われ、その言葉の低温さとは裏腹に、必要以上に高揚感のあるブロードウェイ・ミュージカル直系のメロディが背後には流れる。
発話の余剰さと、音楽の効用、つまりは非言語なパワーが、こちらの想像を見事に膨らますネイチャー・シアター・オブ・オクラホマの傑作。観劇後、観客はみな、記憶の底に埋蔵されていた「自分」のバカ話を役者たちに見事に歌い上げてもらったような、演劇公演なのに超パーソナルな充実感を得ることになる。手のひらサイズの幸せを歌う超口語演劇ミュージカルに体がむずむずくすぐられる。

岩城京子(いわき・きょうこ)
在ロンドン。ジャーナリスト。1977年、東京生まれ。世界13カ国で取材をこなし年間100本以上の舞台芸術関連記事を執筆。2011年9月よりロンドン大学ゴールドスミスカレッジ修士課程演劇学科在籍。2011年11月、著書『東京演劇現在形 八人の新進作家たちとの対話』出版。今年5月、ベルリン・テアタートレッフェン演劇祭にゲストジャーナリストとして参加。