オリヴィエ・ピィの 『<完全版>ロミオとジュリエット』

photo


シェイクスピア戯曲の本質をえぐる、
生々しい言葉ときわどい場面の数々

本作では、オリヴィエ・ピィ自身が、原作の翻訳を行いました。韻文での翻訳において、シェイクスピアの原作に可能な限り忠実に従おうと試みています。原作は、そもそも、奔放なユーモア、猥談に溢れており、ピィによる新たな舞台化は、『ロミオとジュリエット』のこれまで知られることのなかった側面にまで光を当てました。<完全版>と銘打たれた本作では、ただ字句のみならず、この戯曲が本来持っていたエッセンスを余すことなく舞台上で表現しています。笑いと恐怖とが大胆に描かれ、あまりにも有名な恋の物語が極めて平明に表現されるため、いよいよ観客の心を打つものとなります。

気鋭の若手からベテランまで――魅力溢れる俳優陣の底力に酔う

主役の2人には、それぞれ若手俳優が起用されました。パリ国立高等演劇学校(コンセルヴァトワール)を卒業したばかりのカミーユ・コビ演じるジュリエットは、その美貌と対比的に、乙女の純真さとは無縁のヒロインとして登場します。ロミオ役のマチュー・デセルティーヌは、血気にはやる若者を鮮やかに演じ上げます。ピィ自身は、「ロマン主義的な解釈によって流布した、世間知らずのおめでたいカップルのイメージからは遠いもの」と主張します。また、脇を固めるのはエネルギッシュな演技で魅せるパリ・オデオン座のベテラン俳優陣。200分もの間、舞台中を縦横無尽に駆け回ります。
※ジュリエット役が、カミーユ・コビからセリーヌ・シェエンヌに変更となりました。

公演情報

日本初演  演劇/フランス

■公演日時
6月9日(土)18時15分開演・10日(日) 14時開演
◎6月9日の終演後に、2階カフェ・シンデレラにて「フェスティバルbar」を営業いたします。

上演時間:200分(途中休憩含む)
フランス語上演/日本語字幕

■会場
静岡芸術劇場

■チケット
一般大人:4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金があります。

STAFF / CAST

演出・翻訳:オリヴィエ・ピィ

原作:ウィリアム・シェイクスピア

出演:
マチュー・デセルティーヌ、セリーヌ・シェエンヌ、クリスティアン・エスネー、ミレイユ・エルプストメイエール、フレデリック・ジルートリュ、オリヴィエ・バラジューク、バルテレミー・メリジャン、カンタン・フォール、バンジャマン・ラヴェルヌ、ジェローム・ケロン[ピアノ]
※ジュリエット役が、カミーユ・コビからセリーヌ・シェエンヌに変更となりました。

美術・衣裳:ピエール=アンドレ・ヴェーツ
照明:ベルトラン・キリー
衣裳助手:ナタリー・ベグ
音楽アドバイザー:マチュー・エルファシ
音響:ティエリー・ジュッス

製作:パリ・オデオン座
協賛:エール・フランス航空  協力:東京日仏学院  後援:在日フランス大使館

ロミオとジュリエット(オデオン座公式サイト)

演出家プロフィール

オリヴィエ・ピィ Olivier PY

劇作家、演出家、俳優。1965年、南仏グラース生まれ。87年にパリ国立高等演劇学校(コンセルヴァトワール)に入学、並行してカトリック学院で神学と哲学を学ぶ。98年から2007年までオルレアン国立演劇センターを指揮、同年3月からオデオン座の芸術総監督に就任。「Shizuoka春の芸術祭」では08年に『イリュージョン・コミック―舞台は夢』と『若き俳優への手紙』の2作品を、09年に『オリヴィエ・ピィのグリム童話』3部作を上演した。2013年、フランス・アヴィニョン演劇祭のディレクターに就任予定。

劇団プロフィール

パリ・オデオン座 l’Odéon-Théâtre de l’Europe (Paris)
フランスの5つの国立劇場の内、二番目に古い劇場。1782年、パリ左岸にコメディ=フランセーズの新劇場として落成。1959年、コメディ=フランセーズから分離され、ルノー=バロー劇団の本拠地となる。96年から2007年までジョルジュ・ラヴォーダンが芸術総監督を務め、99年のシアター・オリンピックス以来3度にわたって来静。ピィが芸術総監督となってからは、今回が3度目の来静となる。

コラム

『ロミオとジュリエット』のことば —詩とユーモア
小田島 雄志

『ロミオとジュリエット』は、ヨーロッパ演劇史上初めて生まれたロマンチック・トラジディー、と言っていいだろう。それまでのクラシック・トラジディーは、一国一城の主の滅亡を描いて均整美を重んじていたのに、シェイクスピアは愛をテーマにして自由奔放な言動をさせたのである。そして彼は、涙と笑いを、聖なるものと俗なるものを、ぶつけ合わせる舞台を現出させた。そのような劇世界を一つにして支えたのは、論理や道徳ではなく、詩とユーモアだった。
ロミオとジュリエットの恋は、エネルギッシュな市民生活に根をおろしていた。ロミオは、両家の奉公人たちの卑猥な会話に始まるけんか騒ぎの余韻の中に登場する。ジュリエットが登場するときともなってきた乳母は、よちよち歩きの彼女がうつぶせにころんだとき、自分の亭主が「年ごろになったらあおむけにころぶんですよ」と淫らな冗談を飛ばすと、彼女が「ウン」と答えた、と思い出を語ってけたたましく笑い出す。その二人が舞踏会で初めて出会って交わした対話は、詩的と言うより詩そのもの、厳密にソネットの形式を踏んでいる。そのあと、ロミオの親友マーキューシオのしも下がかった冷やかしの冗談をはさんで、あの甘美なバルコニーシーンになる。
このように、主人公二人の美しい愛の詩は、身近な脇役たちの笑い声やジョークなど大らかな庶民的ユーモアに包まれている。彼らのことばはたしかに日常会話より過剰ではあるが、それはセリフ演劇語として観客の心を体温以上に熱くするためのものである。なにしろシェイクスピアは、人間を理想的な存在として真善美だけで見るのではなく、生き生きとしたものとしてダメなところやアホなところもふくめて人間ってなんて愛すべき存在なのだろう、と言い続けているのだから。

小田島雄志(おだしま・ゆうし)
1930年旧満州生まれ。東京大学英文科卒。現在、東京大学名誉教授、東京芸術劇場名誉館長。「シェイクスピア全集」により芸術選奨文部大臣賞。演劇の翻訳と評論により紫綬褒章。文化功労者。読売演劇大賞芸術栄誉賞。