THE BEE Japanese version

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日常に潜む恐怖と狂気を描いた筒井康隆の短編小説を題材に
9.11の衝撃から誕生した作品

本作は、2001年9月11日アメリカで発生した同時多発テロ事件に野田秀樹が触発され、生み出されました。筒井康隆の小説『毟りあい』を題材に、平凡なサラリーマンが妻子を人質にとられたことで、自らも犯人の妻と子を人質にとって応酬する心理戦が繰り広げられます。日常と非日常の危うい境界線、平凡な人間が隠し持つ怒りと憎悪、恐怖にさえも適応してしまう人間の強靭さ……今、もっとも見逃せないテーマが散りばめられた作品です。

各賞を総なめにした話題の作品
5年の歳月を経て、日本版新キャストによる再演

2012年1月から行われたワールドツアーは、ニューヨーク、ロンドン、香港とも連日満席となる大盛況となりました。「人間の持つ暴力性」や「報復の連鎖」といった普遍性のあるテーマを持つ本作が、欧米、アジアの多様な文化や歴史を持つ観客に、大きな衝撃を持って受け入れられました。この英語版ワールドツアーを経て、4月からは日本人キャストによる日本語版のジャパンツアーが敢行されます。NODA・MAPとして初めての国内ツアーとなる今回は、東京、大阪、北九州、松本を経て、静岡でファイナルステージを迎えます。

公演情報

静岡初演  演劇/日本

■公演日時
2012年6月22日(金)19時開演・23日(土)16時開演・24日(日)14時開演
※本作には、刺激の強い表現があります。ご了承のうえ、ご観劇ください。

上演時間:70分(予定)
日本語上演/英語字幕
※英語字幕の投影はありません。ご希望の方には当日受付にて英語のシノプシス(あらすじ)を配布いたします。

■会場
静岡芸術劇場

■チケット
・追加販売決定!詳細はこちらをご覧ください。(2012年5月15日)
追加席は完売となりました。
・各公演、当日券を販売いたします。
(開演の1時間前より静岡芸術劇場窓口にて販売・電話予約不可・若干枚数)

『THE BEE』限定スペシャルシート 7,500円
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、ペア/グループ割引料金があります。

STAFF / CAST

演出:野田秀樹
原作:筒井康隆 〜「毟りあい」(新潮社)より〜
共同脚本:野田秀樹&Colin Teevan
出演:宮沢りえ、池田成志、近藤良平、野田秀樹

美術:堀尾幸男
照明:小川幾雄
音響・効果:高都幸男
映像:奥秀太郎

企画・製作:NODA・MAP

演出

野田秀樹 NODA Hideki

1955年、長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。東京芸術劇場芸術監督、多摩美術大学教授。東京大学在学中に劇団「夢の遊眠社」を結成し、数々の名作を生み出す。92年、夢の遊眠社解散後、ロンドンに留学。帰国後の93年に企画製作会社NODA・MAPを設立。以後も『キル』『パンドラの鐘』『オイル』『赤鬼』『THE BEE』『THE DIVER』『ザ・キャラクター』『南へ』など次々と話題作を発表。演劇界の旗手として国内外を問わず、精力的な活動を展開。2009年10月、名誉大英勲章OBE受勲。09 年度朝日賞受賞。11年6月、紫綬褒章受章。12年1月より『THE BEE』ワールドツアーをニューヨーク、ロンドン、香港、東京で、ジャパンツアーは東京、大阪、北九州、松本、静岡で敢行。

コラム

誰が味方で誰が敵なのか、誰が私で誰が他者なのか
大澤真幸

どこにでもいそうな会社員のいつものような帰宅の様が、突如として悪夢へと、グロテスクな凶悪犯罪の渦中へと反転する。NODA・MAPの『THE BEE』は、日常の平穏と恐怖の悪夢の間には、簡単に手で突き破ることができる薄紙のごとき膜しかなかったことを、観るわれわれに直截に思い知らせる。とうていありそうもない悲惨で破局的な出来事が、いかにもありそうなことに見えてくる。
その男は、貞淑な妻と六歳のかわいい息子をもち、郊外の分譲住宅に住む、まさに「平凡」というものをそのまま具体化したような会社員だった。だが、気が付いたときには、彼は、凶悪な脱獄囚による人質立て籠もり事件の被害者になっていた。と、ここまでであれば、未だ人はさして驚くまい。真に戦慄すべき転回展開は、その先に待っている。哀れな被害者であるその男自身が、加害者に――、女とその幼い息子を人質にとって家屋に立て籠もる、同様の凶悪犯罪の加害者になってしまうのだ!
どうしてこんな反転が生ずるのか?  ここにこそ、この作品がわれわれの思考を刺激する肝心なポイントがある。暗示的なことだけを述べておく。人が他者に対して好意を表現する最も基本的な方法は何であるかを考えてみよ。その他者を「愛している」ということを示す基本的な行為は何か。贈り物を与えること、プレゼントをすることであろう。贈与は、何であれ広義の愛情を表現する、最高度に直接的で確実な方法だ。だが、その贈与が、同時に敵意の表現、最も強い憎悪の表現でもあったとしたら、どうであろうか。贈与に、このような圧倒的な二重性が宿っているとしたら、どうであろうか。
贈与の連鎖は終わらない。プレゼントの贈り合いの中に巻き込まれたら、そこから抜け出すことができないことを、われわれは体験的に知っている。その上で、贈与に両極的な二重性があるとしたら、被害者=加害者というありそうもない反転こそが、人間的な必然であったことになる。だから、この劇を見ていると目まいを覚える。誰が私の味方で誰が敵なのか、そもそも誰が私で誰が他者なのか。最も敵対していた他者に奇妙な友情を覚え、味方であるべき者に敵意を感じる。
この劇は、1975年に書かれた筒井康隆の短編小説を原作にもつ。9.11同時多発テロが起きたとき(2001年)、この小説が野田秀樹に霊感を吹き込み、出来上がった。蜂(THE BEE)という表象は、野田が付加した要素である。2011年の3.11が、この劇にさらなる迫真性を加えるのはどうしてであろうか。

大澤真幸(おおさわ・まさち)
SPAC文芸部員。社会学者。千葉大学教授、京都大学大学院教授を歴任。著書に『社会は絶えず夢を見ている』、『〈世界史〉の哲学』古代篇・中世篇、『夢よりも深い覚醒へ――3.11後の哲学』等。思想誌『Thinking「O」』主宰。