母よ、父なる国に生きる母よ



     
    <演出家プロフィール>
    ヤン・クラタ Jan KLATA
    演出家、劇作家。少年期の1986年、青少年劇作コンテストに応募して入賞。ワルシャワの演劇学校で演出を学んだ後、クラクフの公立演劇専門学校に移る。2002年、ヴロツワフ・ポーランド劇場が主催するヴロツワフ現代演劇フォーラムに応募した『グレープフルーツ・スマイル』が入賞。同劇場での上演が決まり、演出家デビューを飾る。その後、ポーランド国内の劇場を中心に上演を重ねる。08年からは再びヴロツワフ・ポーランド劇場に戻り、『母よ、父なる国に生きる母よ』(11年)などを上演。13年1月からクラクフ・スターリー劇場の芸術総監督。
     



    ☆制作部が作品の魅力を語ります!
    <制作部よもやまブログ#38>

女たちの哀しみは、なぜ終わることなく続くのか――。
ポーランド演劇界の旗手、ヤン・クラタがおくる、心を貫くステージ!

私たちの言葉で「母国」にあたる概念は、ポーランド語では「父国」と表現する。父国に生きる母親たちの怒り、哀しみ、喜び、愛が国の歴史を支えてきた。女流作家ボジェナ・ケフが描いた女性たちの葛藤を、演出家ヤン・クラタは丁寧にすくい上げ、5人の女性と1人の男性からなる“女”優たちのしなやかで強い肉体を通じて舞台上に開花させた。歌、ダンス、叫び・・・スペクタクルの果てに訪れる「癒し」にも似た快感は、現代を生きる私たちにとって格好のリフレッシュになるかもしれない。

歌い、踊り、叫ぶ!感動と癒しのミュージカル――。
観る者すべての目と耳を捉えて離さない「圧巻の90分」。

これは今までになかったミュージカル。舞台上に展開されるシーンはどこを切り取っても印象的。“女”たちの歌とコミカルな踊りは、時にキッチュに、時に幻想的に変化する。繰り広げられる美術の素晴らしさ、鮮やかな照明や耳に残る音楽の絶妙なタイミング。私たちが良く知っているあの映画やこの物語から、あるいはギリシャ悲劇や聖書からの引用など、緻密に計算され、コラージュのように展開するテキスト。観る者すべての目と耳を捉えて離さない「圧巻の90分」を通して、自分の心の内にある「母」と「祖国」を想うのだ。

 公演情報

日本初演 演劇/ポーランド

■公演日時
6/22(土)14時開演、23(日) 13時開演

◎6月23日の終演後にクリッチトフ・ミエッチカウフスキ(ヴロツワフ・ポーランド劇場主任)と宮城聰によるアーティスト・トークを行います。

上演時間:90分
ポーランド語上演/日本語字幕

■会場
静岡芸術劇場

■チケット
一般大人4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金などがあります。詳しくはこちら

■劇場直行バス
渋谷発のバスを運行いたします。詳しくはこちら

 スタッフ/キャスト

演出・翻案・編曲:ヤン・クラタ 
原作:ボジェナ・ケフ
出演:パウリーナ・チャプコ、ドミニカ・フィグルスカ、アンナ・イルチュク、キンガ・プレイス、ハリナ・ラシャクヴナ、ヴォイチェフ・ジェミァンスキ
製作:ヴロツワフ・ポーランド劇場

美術・照明:ユスティナ・ワゴフスカ 
衣裳:ユスティナ・ワゴフスカ、マテウシュ・ステンプニャク 
振付:マチコ・プルーサク 
サウンドスケープ:マグダレーナ・シニァデツカ 
演出助手:イヴォナ・ルルチィンスカ 

通訳:平岩理恵

助成: ポーランド広報文化センター
     ドルヌィ・シロンスク県庁

 みどころ

変化の時期にさしかかるポーランドの演劇界、その最先端にはクラタがいる。
母と娘の対立という普遍的でどこにでもある光景に託して、女流作家ボジェナ・ケフが描いたのは、ホロコーストというポーランドの負った癒しがたい傷への憐憫、祖国を未だに強く束縛している排外主義と女性達を隷属物として扱い続ける家父長的な社会への静かな怒りだった。「隷属」はポーランド演劇界に通奏低音のように流れているテーマである。この苦難の歴史を背景に「重厚長大」な創作が国内外で評価を得てきた中で、ヤン・クラタの演出は異色で目を引く。華々しく垢抜けた舞台造形に目を奪われているうちに、感覚に毒を注ぎ込まれて文字通り、しびれる。本作はオリジナルテキストのスタイルを完全に踏襲しながら、その社会的テーマを見事に立体化し、俳優陣の高い身体性を立脚点に、戯画的かつ迫力のあるエンタテイメントに仕立ててある。2011年の初演以降、国内外で数多くの賞を獲得し、クラタの名前を世界に知らしめた意欲作の初来日である。
(大西彩香)

 あらすじ

「母」であり「娘」である6人の“女”たち――。ブロンドの髪を振り乱し、腰にスカーフを巻いてエネルギッシュに叫び、踊る。コーラスは時に扇情的に、時に叙情的に歌う。迫害を逃れたユダヤ人の母親がいる。その娘は母親のトラウマから逃れるために抵抗するが、成長した彼女は同様に母となり、自らの娘を束縛する・・・。古代から今に至る「母娘の不毛な姿」の中に浮かんでくるのは、ポーランドをはじめ多くの国家において繰り返された抑圧と抵抗の歴史、家父長的な社会の中で翻弄される女性たちの物語である。