芸術総監督

日本で初めて、事業に関する人事権と予算の執行権を持つ芸術総監督。文化の東京一極集中ではなく、地方から、創造し、発信するヨーロッパ型劇場の芸術総監督として、SPACの先進性を示す象徴的存在でもあります。静岡県の文化政策の一環として1995年に発足したSPACは、1997年より初代芸術総監督鈴木忠志のもとで本格的な活動を開始。2007年より宮城聰が芸術総監督に就任し、事業をさらに発展させています。

 プロフィール


MIYAGI Satoshi
宮城 聰(みやぎ・さとし)
演出家
SPAC‐静岡県舞台芸術センター芸術総監督
 

1959年東京生まれ。演出家。SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督。東京大学で小田島雄志・渡邊守章・日高八郎各師から演劇論を学び、90年ク・ナウカ旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で国内外から高い評価を得る。2007年4月SPAC芸術総監督に就任。自作の上演と並行して世界各地から現代社会を鋭く切り取った作品を次々と招聘、「世界を見る窓」としての劇場づくりに力を注いでいる。14年7月アヴィニョン演劇祭から招聘された『マハーバーラタ』の成功を受け、17年『アンティゴネ』を同演劇祭のオープニング作品として法王庁中庭で上演、アジアの演劇がオープニングに選ばれたのは同演劇祭史上初めてのことであり、その作品世界は大きな反響を呼んだ。他の代表作に『王女メデイア』『ペール・ギュント』など。04年第3回朝日舞台芸術賞受賞。05年第2回アサヒビール芸術賞受賞。平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞(演劇部門)受賞。

 
 
<SPACでの活動> (芸術総監督就任まで)

  • 1997年 静岡県舞台芸術センターの第1回県民参加体験創作劇場『シンデレラ』(野外劇場)を演出。以後、2001年まで毎年、県民参加体験創作劇場の演出を行う。
  • 1999年 第2回シアター・オリンピックスで県民100名が参加した『忠臣蔵』(作:平田オリザ/清水港イベント広場)を演出
  • 2000年 「Shizuoka 春の芸術祭」で『王女メデイア』(出演:ク・ナウカ)を上演(野外劇場)
  • 2003年 『トリスタンとイゾルデ』(出演:ク・ナウカ)を上演(静岡芸術劇場)
  • 2004年 グランシップ5周年記念公演として県民76名が参加した『忠臣蔵2004』(グランシップ大ホール)を演出
  • 2005年 「Shizuoka 春の芸術祭」で日韓共同制作『トロイアの女』を上演(野外劇場)
  • 2006年9月 県民参加体験創作劇場『東海道四谷怪談』を演出(野外劇場)
  • 2007年4月 SPAC芸術総監督に就任。

  •  

     SPACへようこそ


    1997年にSPAC-静岡県舞台芸術センターがスタートしたことは、日本の文化行政における大きな事件でした。
    それは、静岡県によって設立されたこのSPACが、自治体の「文化政策として」つくられた日本で初めての公立劇場だったからです。
    SPACは“ハコ”ではありません。「THEATRE」という言葉が劇場を指すだけでなく演劇を生み出す人間集団(劇団)をも同時に指すように、日本でもかつて「○○座」といえば、演劇を生み出す人間集団とその拠点となる劇場の両方を不可分のものとして指していました。その当たり前の姿から遠ざかっていた日本の公立ホールのありかたから、劇団と劇場が一体となる「真の公立劇場」の姿へと舵を切ったのが静岡のSPACだったのです。いわゆる「ハコモノ行政」批判のブームより前、90年代の前半にこうしたビジョンを打ち出した静岡県と初代芸術総監督鈴木忠志さんの先見性には驚きを禁じ得ません。
    日本が活気をとりもどすには地域が元気にならなければいけないと誰もが言うようになりました。しかし現実には、いまだ、地域の生んだユニークな若者が次々と首都圏へ流出し続けています。地域が元気になるには、地域におもしろい若者たちが住んでいなければなりません。そして公立劇場がからっぽのハコではなく人間集団であるということは、劇場に行けばアーティストたちがいるということです。アーティストが住んでいる地域とは、価値観が画一化されていない、多様性の許容される地域を意味します。これまでなら東京に流出してしまったユニークな発想をする若者たちも、地元に「ひととはちがったことを考える」人間たちがたくさん住んでいるという状況になれば、地域にとどまるようになるでしょう。さらには、志のある人材が流入してくることにもつながるでしょう。
    静岡にSPACがあるということは、静岡にけっこうおもしろくて志のある人たちが住んでいるということです。そう皆さんに認識していただけるよう、頑張っていきたいと思います。