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2022年4月19日

「ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022」プレス発表会レポート〜本番編〜

「ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022」プレス発表会レポート〜準備編〜に続いて、こちらのブログではプレス発表会本番時の様子をご紹介します!

司会からのご挨拶や登壇者の紹介のあと、宮城より今年のテーマ「生きるための劇場」について説明がありました。【「生きるための劇場」全文はこちらからご覧いただけます。】

「これまで、“人間らしく”生きるためのプラスアルファとして、芸術は必要だと考えてきましたが、2年前からはそのプラスアルファが「不要不急」にくっつくようになってしまいました。ところが、劇場・芸術・演劇というものがないと、「ただ生きていくこと」さえ出来なくなるような、今の世の中で必要不可欠なものとして劇場を求めている方々の存在に直面しました。これは劇場に勤めている人間も含めてですが、自分自身が枯れてしまうような感覚、要するに社会から孤立してしまうということ。今の日本の社会で多くの方が「誰も本気で自分と向き合ってくれない」と感じているのではないでしょうか。劇場では、舞台に立つアーティストは目の前の観客全員と、全く分け隔てなく全力で向き合おうとします。客席に座れば、全身全霊で何かを伝えようとしているという実感を得ていただけると思います。そうやって、世界とのつながり、明日も生き続けようと思えるエネルギーを回復していただけるのではないでしょうか。」

まずは、3年ぶりの海外招聘作品となる2作品をトレーラーと宮城のコメントを交えながらご紹介。

今年の演劇祭のオープニングを飾る、ブルガリアのイヴァン・ヴァゾフ国立劇場の『カリギュラ』について、宮城からは、

「なぜ演劇が滅びないのか、必要とされ続けるのか、ということに触れられるような“演劇らしい演劇”を守り続けている国立劇場だと感じました。俳優出身のディアナ・ドブレヴァさんは最近、劇場のトップの演出家になられて、イヴァン・ヴァゾフ国立劇場を牽引されています。若い演出家のエネルギー含めて、ブルガリアの演劇の厚みを感じていただけたらと思います。」

とコメントがありました。
 
そして、2020年の演劇祭開催中止を経て、今回ようやく招聘が実現するオマール・ポラスさんの『私のコロンビーヌ』については、

「1999年のシアター・オリンピックスで当時の最高峰の演劇作品がならぶなか、オマールさんの『血の婚礼』に衝撃を受けて“最大のライバルあらわる”なんて思っていたんです。そのあと、オマールさんと話しをするなかで伺った、コロンビアの貧しい農村からパリに渡ったという実人生を、いま非常に人気の児童文学作家であるメルキオさんが戯曲化した一人芝居です。」

と宮城が出会ったころの話を交えながら、作品の説明がありました。
 
続いてご紹介したのは、SPACのテッパン野外劇!『ふたりの女 平成版 ふたりの面妖があなたに絡む』。毎公演大入りとなる大人気作品に対して宮城は、

「唐さんの芝居は高校生の頃から観ていて、その魅力の源は何なのかを知りたくてずっと興味を持っていた、ある種「謎のかたまり」のようなものなのですが、最近になって、その謎のひとつが解けたんです。唐さんは自分の知っていることを読み手や観客に教えようというスタンスではなく、書きながらその事件を体験している、読み手や観客と全く同じ立場なんです。もちろん頭のどこかでは話の先があるのでしょうが、“この先どうなるのかわからない”という読者の立場で書いているんです。観客は作者が体験するのと同じようにその出来事を体験していく。そんな作家は唐十郎のほかにはヴィクトル・ユゴーくらいしか思いつかないです。」

と、唐戯曲の魅力を語ってくれました。
 
そして、プレス発表会当日に情報解禁となった『星座へ』。
コロナ禍で構想され、南アフリカのワイン農園で初演された本作のコンセプトを手がけるブレッド・ベイリーさんの印象について宮城は、

「南アフリカのアーティストというと社会問題に対する発言に注目されがちですが、ベイリーさんは純粋な美を求めていて、それはとても共感できることでした。社会の大きな問題と関わりをもつ作品作りのなかでも、ベイリーさんは純粋な美を求めるベクトルをとても強く持っているので、南アフリカ共和国という嵐がなかなか止まない地域においても、芸術の価値を発信し続けているアーティストだと思います。」

とコメント。
 
以上、「ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022」のラインナップに続き、同時開催のストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡」をご紹介♪

まず最初に、フェスティバル・ディレクターのウォーリー木下さんから寄せられたメッセージ動画をご覧いただきました。

「普段暮らしている風景のなか、日常使っているような場所がステージとなり、街中を移動しながら楽しむダンス作品や、観客が俳優を見つけ出す演劇、アーティストと一緒に作ったり、お客さんが参加することで完成する作品などがあります。<まちは劇場>と呼んでいますが、街全体を使ったパフォーミングアーツのフェスティバルです。午前中は親子で楽しめる演劇やダンス、夕方には大掛かりなパフォーマンス作品など、一日中、静岡市街を巡回しながら、そして同時に静岡の食や建物、歴史なども楽しんでいただけます。こういう時だからこそ、人と人がなまで出会って、そこで起こる深い体験を提供できればと思います。」

 
そして、ストレンジシードの広報・草野冴月さんより開催概要の説明。
今年は、オフィシャルプログラムは15組、うち3組は静岡を拠点に活動する団体です。加えて、2月末まで募集していた「オープンシード」が4組決定し、計19組のアーティストが参加いたします。

 
そのうち、いくつかの作品の見どころについてご紹介がありました。

壱劇屋×サファリ・P×SPACストレンジチーム『Team Walk』には、今年もSPAC俳優の春日井一平・大内智美が出演!クリエーション3年目の今年は観客もみんなで一緒にテクテクする移動体験型パフォーマンスに。ままごと・ソロワークスは、ファッション・デザイナーとのコラボレーション作品です。


contact Gonzoは、枝で観客同士をつないでいき、その塊を美術作品とする『枝アンドピープル』で参加。ホナガヨウコさんは、駿府城公園をディスコに!親子で楽しめる作品です。


sundayは手持ちのスマホとイヤホンで、街中の物語を探し出す体験型作品。期間中の夕暮れ時には、少年王者館の新作が1日を締めくくります。
 
そして最後は、注目のSPAC新作『ギルガメシュ叙事詩』です。

『ギルガメシュ叙事詩』人形デザイナー・操演の沢則行さんにもご登壇いただき、今回初めてとなるSPACとのコラボレーションについて、そして劇中に登場する人形についてお話を伺いました。

「非常に恵まれた環境です。まずはじめに美術チームとして、舞台芸術公園の工房にいて、その後稽古に合流しましたが、宮城さんの『人間対自然』というコンセプトがクリアでとてもやりやすかったです。(森の守り手)フンババはとにかくデカくて、デカすぎて稽古場に入りきらず、いま(舞台芸術公園の)野外劇場で稽古してます。デザイン画は12〜13回描き直しましたが、いわゆる伝説や神話に出てくる怪物ではなく、粘菌やウイルスの写真を見て気持ち悪くなりながら描いていました(笑)。」

 
さて、この日は特別に、船頭ウルシャナビとヘビの人形が、操演・桑原博之さんとともに登場!
実演を踏まえながら紹介してくださいました。

「SPACではあまり見たことのない人形がたくさん出てきますので、新しいお客さんが来てくれるとすごく嬉しいです。」

とお客様へのメッセージも。
 
宮城さんは、沢さんとの協働作業について、

「『ギルガメシュ叙事詩』は“人間の限界”についてのお話です。なので、人間のちょっと外側、人間を超えた存在が必要で、沢さんのお力をお借りしたことにより作品のテーマが明瞭に浮かび上がっているのではないかと思っています。」

と本作に対する手応えを語ってくれました。

プレス発表会の最後には、ご参加いただいた記者の皆さんから宮城さんや沢さんへの質疑応答タイムがあり、3年ぶりとなる海外招聘についての質問に対して宮城さんは、

「コロナ禍で精神的にも閉鎖的になってしまったり、考え方が偏ってしまいがちな今、異なる文化が染み込んだ身体を目の当たりにすることで、コチコチに固まっていた部分が開いていくのではと思います。特に今回はブルガリア、コロンビア/スイス、南アフリカとあまり身近でない文化圏の方々と会えることにとてもワクワクしています。」

と回答。続いて、登壇者お二人へのお互いの印象についての質問では、

「沢さんはとにかくオープン!稽古初日から長年の友達のような感覚で、創作がはじまりました。」

と答えた宮城さんに対して、沢さんは

「馴れ馴れしいんですね、よく言えばフレンドリー。呼ばれたからには楽しくやりたいのと、その劇団のことを早く知りたいんですよね。バックグラウンドなくフリーでやっていて、このままの自分で入っていきたいので、どの国に行っても変わりません(笑)。」

とコメント。終始、和やかな雰囲気に包まれました。

以上をもちまして、「ふじのくに⇄せかい演劇祭2022」プレス発表会は終了。

本番中は、タイムキープや各セクションにきっかけを出したり、Zoomでの参加者へはチャットで対応したりと、広報チームは画面の外側でフル回転。毎年、プレス発表会は広報チームにとって大きな山場でもあるので、無事に終了してホッとすると同時に疲れもドッとでた1日だったのでした。


 

チケット好評販売中!

▼演劇祭 特設サイト
https://festival-shizuoka.jp/
演劇祭メインビジュアル(オマール・ポラス)

  
\同時開催/
ふじのくに野外芸術フェスタ
『ギルガメシュ叙事詩』

5月2日(月)、3日(火祝)、4日(水祝)、5日(木祝)
各日18:40開演[全席指定]/日本語上演・英語字幕
会場:駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場

https://spac.or.jp/2022/gilgamesh 
 
「ストレンジシード静岡2022」
5月2日(月)、3日(火祝)、4日(水祝)

https://strangeseed.info