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2022年4月26日

『県大×おまちゼミ』聴講レポート~演劇祭って何?ふじのくに⇄せかい演劇祭をより楽しむために~

4月21日に静岡県立大学にて開催された公開講座、「県大×おまちゼミ 比べて学ぶことばと文化」に制作部スタッフ丹治陽がゲスト講師として登壇しました。

今回のテーマが
【演劇祭は私たちに何をもたらすのか?ーSPAC制作スタッフと考える「ふじのくに⇄せかい演劇祭」】
ということで、SPAC制作部入りたて!新人の佐藤が聴講してきました。SPACの作品を観劇したことはあるものの、演劇のことには詳しくなく、この授業を機にもっと詳しくなりたい!と思い参加しました。
私のように、演劇にちょっと興味がある!でも知識がない!演劇って何だろう?と思っている方!!
「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が開幕してしまう前に、私と少し学びましょう!

 
授業は、丹治の自己紹介をまじえながらスタート。

学生時代、「人はどうしたら楽しく生きられるのか?」ということを考えているうちに、劇場に興味を持ち始めました。舞台を観ているとき、俳優やほかの観客と直接会話をするわけではないんだけど、人と出会ってる感じがしたのが面白かったんです。日常生活では“みんなの輪に入る”ことが苦手だった僕にとって、劇場は安心して人とつながれる場所なのではと考えました。

 
演劇を見に行くこと=人と繋がる。とはどういうことなのでしょうか??

まずは「歴史」から。
演劇祭の起源は、古代ギリシア・アテナイの大ディオニュシア祭。ここでは観劇は市民の権利であり、上演に参加することは義務でした。(当時の市民は成人男性を指してはいましたが)。そこで上演されていたのは親や子を殺したりするお話などで、観劇する時間は市民にとって「人間ってなんだろうということを考える時間」になりました。

そのときの劇場は17,000席!!SPACの野外劇場は約400席というキャパシティでも広く感じるのに…!その広さでも、コインが落ちる音でさえしっかりと聞こえる音響となっていました。


▲SPACの拠点の一つ、舞台芸術公園にある野外劇場「有度」

 
そして歴史は進み、1947年にはフランスで「アヴィニョン演劇祭」が始まります。

ところで皆さん!フランスといえば、パリを思い浮かべませんか?私もいつかシャンゼリゼ通りを、マカロンを食べながら歩いてみたいです。
そう、アヴィニョンってどこ??

なんと、日本で例えると、東京から青森とか、東京から岡山とかの距離感なのですね!!とても遠い。。。
なぜ、パリではなくアヴィニョンで?首都からものすごく離れた場所でやる意味とは?

当時、開催を決めたジャン・ヴィラールは、ブルジョア(富裕層)に向けた演劇ではなく、労働者層をはじめ、あらゆる人々に演劇をと目指したのです。パリでは見られない、アヴィニョンでしか見られない演劇を。
ジャン・ヴィラールのことばについて興味を持った方は過去のSPACブログへ!
(アヴィニョン法王庁日記(7) 2017年7月3日 法王庁中庭での上演の歴史)
★SPACは2017年のアヴィニョン演劇祭にて、公式プログラムとして招聘され、『アンティゴネ』を上演しています。気になった方はこちら

この「アヴィニョン演劇祭」は、70年以上経った今でも続いています。多くの会場は、学校や教会や家などを劇場化したもので、あちこちで路上パフォーマンスがあったり、広場ではシンポジウムが開かれていたりと、常にメイン通りは人で溢れかえっている!

あれ?こんな話を聞いていると、なんだか「ふじのくに⇄せかい演劇祭」に通じるものがたくさん!

4月29日開幕の「ふじのくに⇄せかい演劇祭2022」では、
東静岡にある静岡芸術劇場、日本平にある舞台芸術公園内野外劇場「有度」などで4作品を上演。
街ナカにある駿府城公園では野外芸術フェスタ『ギルガメシュ叙事詩』、さらに公園とその周辺でパフォーミングアーツフェス「ストレンジシード静岡」が同時開催されます。

静岡のあちこちに演劇があふれ、「広場トーク」や「フェスティバルgarden」など、歩いている足を止めたくなるような関連企画も盛り沢山です。なんと舞台芸術公園では、静岡ならではのお茶摘みを体験できるイベントがあったりもします。

「アヴィニョン演劇祭」のように、首都ではなく地方である静岡で、街を、人を巻き込む演劇祭を開催しているのです。

そして、何よりもこの演劇祭は人と人が繋がる演劇祭です。
例えば、メルラン・ニヤカムさんは、フランスを拠点に活動するダンサーさんなのですが、この演劇祭を機にSPACと繋がりました。2010年より「世界中の子どもたちが未来への希望を取り戻すことができるダンス」をコンセプトに、国際共同制作事業「SPAC-ENFANTS(スパカンファン)」プロジェクトをスタート。現在も静岡の中高生と55歳以上のメンバーでダンスを作る「SPAC-ENFANTS-PLUS(スパカンファン-プラス)」として継続しています。
★スパカンファン-プラスについてはこちら

そう!だから!たった一度で終わらず広がっていくこの演劇祭は、ふじのくに→せかい でもなく、 ふじのくに←せかい でもなく、 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」というわけなのですね!!東京という大都会を経由せずに、国と国ではなく地域と地域が双方向的に繋がり、コミュニケーションが生まれることが大切なのです。

今回の演目の一つにある『カリギュラ』は、悪い皇帝:カリギュラを倒していくという、単純に善と悪を分ける話ではありません。カリギュラの言葉を読んでみると、ものすごく考えさせられます。演劇の力は、俳優の身体や言葉、音、光、美術、空間を楽しみながら、”考える” “違いを受け入れる”ことができるところにあると思います。そして、色んな人や作品が共存していることを楽しむことができる”祝祭の力”もあります。ぜひこの演劇祭でこれらの力を浴びていただけるとうれしいです。そして、そこで”私”は何を感じ考えたのか?を言葉にしてみてください。次回はそれをみんなでシェアしましょう。また違った世界がみえてくるかもしれませんよ。


▲授業後、どの演目を観劇するか相談している学生さん達

確かに演劇は何だか難しそうで、とっつきにくい印象もあります。でも、その難しさも受け入れて、なんでだろうと思うこと・考えることが大切なのですね。私自身もSPACのスタッフになり初めての演劇祭。何が待ち受けているのか、「私」は何を考えるのか、とてもワクワクしています。

あと3日に迫った「ふじのくに⇄せかい演劇祭」
より多くの方に体験していただきたいです!!当日、会場であなたをお待ちしております!

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この日の「おまちゼミ」の様子はテレビ放送・新聞掲載されました。
◎静岡新聞 2022.4.23
演劇祭の魅力伝える県立大公開講座 学びや交流機会紹介

◎NHKニュース「たっぷり静岡」 2022.4.21放送
劇団SPACの制作スタッフが静岡県立大学の公開講座に登壇・静岡県内で開かれる国際演劇祭の魅力を学生らに語る
 

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↓「ふじのくに⇄せかい演劇祭」特設サイトはこちらから
https://festival-shizuoka.jp/

↓「県大×おまちゼミ」をもっと知りたい方はこちらから
https://ir.u-shizuoka-ken.ac.jp/omachiseminar/
2021年度にはSPAC俳優の永井健二もゲスト講師として登壇しており、その様子がこちらのウェブサイトから閲覧することができます。
また、今回の丹治陽が登場した回も後日アップされる予定です!
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