覇王歌行
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演出:王暁鷹
作:潘軍
出演:中国国家話劇院
※背もたれのない客席になります
作品について
項羽のすさまじい一生を限りなく美しく・・・
1人13役!?の驚異的な演技は必見!
歴史好きが愛してやまない項羽の物語を、現代中国の演劇人がこれ以上ないほどドラマティックに蘇らせました!中国の古楽器・古琴の演奏ではじまるこの作品は、中国らしい情緒を全編に漂わせながらも、現代的な舞台美術や仕掛けによって、鮮烈な印象を観客の脳裏に刻むことになるでしょう。演じるのは中国国家話劇院の油ののった俳優たち。1人の俳優が演じきる項羽を中心に、そのまわりで1人13役を演じる俳優によって、多彩で劇的な世界が展開します。「時代もののテレビドラマじゃ物足りない!」という方にも、「歴史なんて興味ないけど…」という方にも、一度見れば目が離せない!そんな演劇のスリルが間違いなく体感できるでしょう。このあまりに劇的な新しい中国の演劇をお見逃しく・・・
BeSeTo演劇祭とは?
Beijing(北京)、Seoul(ソウル)、Tokyo(東京)の頭文字をとって命名されたBeSeTo演劇祭は、中国、韓国、日本、三ヵ国共同の国際演劇祭。今年で17回目をむかえ、東京、鳥取、静岡を会場に、日中韓3ヵ国語版作品を含む10団体40公演を予定している。
BeSeTo演劇祭公式ホームページ
あらすじ
約2200年前、楚王項羽と、漢王劉邦が覇権を争っていた。項羽と劉邦、そして項羽の最愛の女性・虞姫。彼らの愛と裏切りのなかで、ひときわ理想に燃える項羽の選んだ道とは…
コラム
血の赤、遠い過去と私をつなぐもの
中島諒人
この作品の演出家である王さんとは、07年12月に知り合った。日本、中国、韓国の演劇祭、BeSeTo演劇祭の日本開催の年で、魯迅の短編小説をもとに私が演出した『剣を鍛える話』を、ずいぶん気に入ってくださった。北京の国家話劇院で上演をという提案もしてくれた。それがきっかけで私も王さんの作品を知るようになった。
王さんは、中国における西洋演劇の第一の紹介者である。そして同時に中国演劇の伝統と西洋の演劇を出会わせるための多くの試みもされている。この『覇王歌行』もその一つであり、しかも大きな成果と言っていいだろう。
2000年の時を超えて人々が愛した中国の物語、伝統演劇の様式、そして現代演劇の文法が組み合わさって、愛に関する叙事詩が生まれた。白い幕を赤い液体が流れ落ちるシーンが繰り返される。この赤は、2000年のかなたと現在をつなぐ血の流れだろう。そういえば私が演出した魯迅の作品も、つながりや流れを背骨にした。中国古代に起源をもち、中国だけでなく日本でも愛された物語を魯迅が膨らませたのだが、みんなが好きだったその理由を上演を通じて探したいと考えた。王さんがこの作品を選んだのも、ただ愛の物語だからというだけではないだろう。国を超えて愛される項羽と虞姫の物語が、どうしてこれほどに人々の心をつかむのか、そのことへの深い興味があったはずだ。それは歴史の流れ、つながりを遡行する試みでもあるだろう。
西洋文化を受け入れる中で、アジアの我々は深い断絶を体験している。現在の生活が、遠い先祖のそれとは切り離されたものだと思ってしまう。けれど、この変化の時代に根が大切なことは言うまでもない。が、状況に対応することも必要だ。言葉にするとひどく当たり前のことだが、だんだんと血の赤に染まっていく舞台をみながら、実は未だに我々を悩ませる西洋と東洋の関係について、それを乗り越えて未来に向かう可能性の光を垣間見た気がした。
中島諒人(なかしま・まこと)
演出家。
鳥の劇場主宰。大学在学中より演劇活動を開始。2003年利賀演出家コンクールで最優秀演出家賞受賞。04年から1年半、静岡県舞台芸術センターに所属。06年より鳥取に劇団の拠点を移し、廃校を劇場に改造して、“鳥の劇場”を運営。
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潘軍と『重瞳』および『覇王歌行』について
飯塚容
演出家・王暁鷹——現代中国演劇のトップランナー
後藤典子