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オリヴィエ・ピィのグリム童話

作・演出:オリヴィエ・ピィ
原作:グリム兄弟
音楽:ステファヌ・リーチ
出演:パリ・オデオン座
<少女と悪魔と風車小屋> 6月27日(土) 13:00開演
<いのちの水> 6月27日(土) 18:00開演
<本物のフィアンセ> 6月28日(日) 13:00/19:00開演
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
上演時間 <少女と悪魔と風車小屋>:65分、
<いのちの水>:75分、<本物のフィアンセ>:90分
各演目 一般大人4,000円 / 同伴チケット(2枚)7,000円
大学生・専門学校生2,000円 / 高校生以下1,000円
※背もたれのない客席となります。

フランス演劇界の風雲児オリヴィエ・ピィがパリ・オデオン座芸術総監督に就任してはじめて書いた作品は、なんと『グリム童話』だった!
昨年につづいて待望の再来日!
 
天使に導かれ、生の神秘に出会う特別な体験
―『グリム童話』三部作にはピィ演劇の魔術がぎっしりと詰まっている。

 王子様とお姫様、いじわるな継母、そして悪魔と天使。おそろしい森、やさしい森。童話の世界では、人の「いのち」はいつも、もろく儚いものだった。
 今、ここに生きていることが奇蹟だということを、私たちはいつ忘れてしまったんだろう?
 オデオン座の若き芸術総監督、オリヴィエ・ピィは1993年に『グリム童話』第一作、<少女と悪魔と風車小屋>を書き下ろした。この作品はすでに傑作として名高く、その後加わった第二作<いのちの水>とともに、世界各地でツアーを重ねている。第三作<本物のフィアンセ>は昨年12月に初演されたばかりで、一昨年オデオン座芸術総監督となってからはじめての書き下ろし作品である。めくるめく劇中劇構造をもつこの作品によって、『グリム童話』三部作が一篇の壮大なドラマとして完結することとなった。

■あらすじ
<少女と悪魔と風車小屋>
風車小屋に住む粉屋が森で見知らぬ男に出会い、「3年後に風車の裏にあるものをくれるなら金持ちにしてやろう」といわれる。粉屋は男の提案を受け入れ、瞬く間に金持ちになる。だが約束の日、風車小屋の裏にいたのは、粉屋の一人娘だった。男は悪魔だったのだ。悪魔は粉屋に命じて娘の腕を切り落とさせる。娘は悲しみのあまり放浪の旅に出ていく・・・。
 
<いのちの水>
死にゆく王の枕元に、三人の息子が集められた。王が助かる道はただ一つ、氷の宮殿にある「いのちの水」を飲むこと。まずは長男が、次に次男が「いのちの水」を求めて旅立つが、途中で出会った物乞いが天使であることに気づかず、動物の姿に変えられてしまう。そしてついに最後に残った末っ子が氷の宮殿へと旅立つ・・・。
 
<本物のフィアンセ>
娘は継母に毎日無理難題を押しつけられていた。森に逃れた娘は王子と出会い、恋に落ちた王子は再会を約束して森を去る。だが、継母が王子に「忘却の水」を飲ませたために、王子は娘を忘れ、人形に恋をしてしまう。娘は牢獄に囚われ、やはり囚われの身となっていた俳優たちとともに、王子の記憶を取り戻すための舞台を準備する・・・。

■パリ・オデオン座
フランスの5つの国立劇場の内、二番目に古い劇場。1782年、パリ左岸にコメディ=フランセーズの新劇場として落成。1959年、コメディ=フランセーズから分離され、ルノー=バロー劇団の本拠地となる。96年から2007年までジョルジュ・ラヴォーダンが芸術総監督を務め、99年のシアター・オリンピックス以来三度にわたって来静。ピィが芸術総監督となってからは今回が二度目の来静となる。

■コラム
「21世紀のグリム」 池内紀

 
 グリム童話がドラマになった。舞台にあらわれる。それも幼い者たちのための童話劇などではない。レッキとしたオトナの芝居であって、世界で知られたパリ・オデオン座がグリムをひっさげてやってくる。
 「どういうこと?」と首をかしげる人がいるかもしれない。むしろ待ち望んでいたことなのだ。グリム童話ほど劇の要素のつまったおはなしはないからである。ほんのちょっぴり思い浮かべてみても、「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「白雪姫」・・・。ごくおなじみのもの。そこでは親が子を捨てる。小娘を丸のみする兇悪なやつがいる。毒入りリンゴによる毒殺。兄弟殺し、子殺し、目をえぐる、生きながら茹でる、まっ赤に焼けた鉄の靴をはかせて死ぬまでおどらせるというしめくくり。
 グリム童話は、もともとグリム兄弟の創作ではなく、古くから口づたえでドイツに伝わってきたおはなしを集めたものだ。何代何十代にもわたって願いや夢や恐れや悲しみをこめて語りつがれてきた。それは岩から切り出された鉱石のように尖っていた。グリム兄弟は土を払って、尖りをやわらげ、色合いに磨きをかけた。
 おなじみの童話以外にも、すてきなはなしがどっさりある。ここでは動物と鉱物と植物が対等に生きている。カエルは人間以上に複雑なこころをもっているし、カラスは意味深い予言をする。河原の石が歌をうたう。
 実をいうと、これはとびきり21世紀的な現象なのだ。いまや人は鉱石の粉末で病気を治したり、植物のエキスで若返ったりする。体内にセラミックをそなえていたり、口の中に金鉱をもつ人だっているだろう。
 いまこそ昔ばなしがよみがえって、ハッとするような新しさを教えてくれる。パリの才人たちは、巧みに変形し、読みかえて、たのしいグリムを持ってきた。

池内紀(いけうち・おさむ)
photo_column_ikeuchiドイツ文学者・エッセイスト。1940年、兵庫県姫路市生まれ。主な著訳書、『ウィーンの世紀末』(白水社)、『森の紳士録』(岩波新書)、『世の中にひとこと』(NTT出版)、『日本風景論』(角川学芸出版)、『カフカ短篇集』(岩波文庫)ほか。山と温泉が好きで旅の本も多い。

製作 パリ・オデオン座
オルレアン=ロワレ=サントル国立演劇センター
シャロン=アン=シャンパーニュ国立舞台「ラ・コメット」
協賛 エールフランス航空
キュルチュールフランス
フランス大使館
協力 東京日仏学院

オリヴィエ・ピィ

photo_grimm劇作家、演出家、俳優。オデオン座芸術総監督。
 1965年、南仏グラース生まれ。87年にパリ国立高等演劇学校(コンセルヴァトワール)に入学、並行してカトリック学院で神学と哲学を学ぶ。95年、アヴィニヨン演劇祭で上演時間24時間の自作『常夜灯―果てしない物語』7日間連続公演を敢行し、一躍脚光を浴びる。98年から2007年までオルレアン国立演劇センターを指揮、同年3月にオデオン座の芸術総監督に就任。03年にはクローデル『繻子の靴』(ジャンヌ・バリバール主演)の数十年ぶりの通し上演(11時間)を成し遂げた(今年3月に再演)。昨年はギリシア悲劇『オレステイア』三部作を自らの新訳で通し上演。昨年の「Shizuoka春の芸術祭」では『イリュージョン・コミック―舞台は夢』と『若き俳優への手紙』の2作品を上演した。
 ピィは熱烈なカトリック信者として知られているが、彼自身はいつも「信仰よりも神秘が大事なんだ」と話している。今、ここにある世界を奇蹟として生きること。これはピィの『グリム童話』を貫くテーマでもある。

グリム兄弟
(ヤーコプ・グリム1785-1863、ヴィルヘルム・グリム1786-1859)

ドイツの言語学者、民話収集家。ロマン主義運動の影響を受けてドイツ各地の民間伝承を収拾し、1812年に『グリム童話』初版を刊行した。