プ・レ・ス
(カンパニー・デルニエール・ミニュート)
音楽:ニール・ボルデュール
静岡芸術劇場
上演時間:60分
大学生・専門学校生2,000円 / 高校生以下1,000円
★静岡県内の中学生は、30名まで招待あり。
(お問い合わせ、お申し込みはSPACチケットセンター Tel:054-202-3399まで)
ホントに人間? もしかしてロボット?
驚異の肉体が繰りひろげるブラック・コメディ
パイプ椅子に座るスーツ姿の男。灰色の壁と蛍光灯。この殺風景な部屋も、男にとっては住み慣れた空間であるらしい。意志を持った部屋と、機械仕掛けの身体との奇妙な共生。しかし、やがてこの「生活」にも不吉な影が差し込んでくる。プレスされてゆく肉体 ―― この恐怖と恍惚を、目の前で生きるピエール・リガル。“ダンスとは絵空事ではなく、目撃するためのアフェアだ。”
「コンテンポラリー・ダンスと体を張ったコメディを混合させたスーパーパフォーマンス。おかしく哀しく、そして息を飲む瞬間の連続!」―「Time Out」誌(ロンドン)
「身体はどこまで飼い慣らすことが可能なのか?」アスリート、フィルムメイカー、そしてダンサーと異色の経歴を持つピエール・リガルは、コンテンポラリー・ダンス界でも、このことに今、最も敏感な振付家の一人だろう。
アクロバット、サッカー、ヒップホップと、様々な領域を軽々と越えてきたリガルの代表作となったソロ・パフォーマンス『プ・レ・ス』は、昨年ロンドンのゲイトシアターで初演されて絶賛を浴び、その後ランコントル・アンテルナシヨナル・ドゥ・セーヌ=サン=ドゥニ(旧バニョレ国際振付コンクール)やシドニー・オペラ・ハウスなどでも上演され、一躍ピエール・リガルの名を知らしめた。
ダンス史に新たな身体イメージを刻み込む振付家、日本初登場である。
■コラム
康本雅子
踊らされている人を見るのが好きです。自分の意志がどっかに消えて、何かによってひたすらに踊らされている人を見るとキュンときます。その何かというのが例えば装置だとどうなんでしょうか?
私の場合、踊る時に美術等を使う事はめったにない故、その場所そのものがどんな空間なのかがとても気になります。屋内か野外か、広いか狭いか柔らかいのか固いのか、はたまた匂いはどんなのか。その空間によって踊りが左右され支配され助けられるので、まずは空間ありきなのです。そんな他力(空間)本願を如何なく発揮するために私はせめて、体を空間に馴染ませようとします。サンドイッチの具が、挟みたてよりも少し時間がたってからの方がパンに馴染んで美味しくなるように、私の体も空間に似合う具になりたいのです。そんな訳で本番前には舞台上のあちこちでウネウネとマーキングをする事になります。もちろん空間との相性もあって、しっくりくる時こない時はあれども、それもひっくるめてその空間に引き起こされた踊りがその都度立ち現れるように思います。この空間だからこういう体になる事、それがダンスの醍醐味にもなったり。なのでダンス公演での美術の役割というのはきっと視覚的効果だけでなく、ダンサーの体を感応させるためにもあるのかもしれません。その美術がある事によって初めて反応する事、体の感覚が変容される事はダンサーにとっては願ったりです。
さて、PRESSとは。踊らされるための装置を自ら作り出す計算と、そこに身を置く事によって駆り出される感覚の無計算さの狭間。と勝手に言ってみましたが、プレスは押すって意味ですから只事ならない感じも致します。空間自体が動くのでしょうか?魔宮の扉みたいな感じでしょうか?わかりませんが、もしもそんな生きてるように動く装置なら、ダンスを見ながらにしてこちらの感覚にまで何かが迫ってきそうでじわじわと。そわそわと。いきおい、確かめに行って来ます。
康本雅子(やすもと・まさこ)
ダンサー。これまでに自作品を国内12都市とイタリア、韓国、タイ、マレーシア、インドネシアにて公演。2008年には単独公演「チビルダミチルダ」を行った。ダンス公演の他、コンサートやミュージックビデオ、演劇の公演の振付など色々なジャンルにて活動している。
http://yasumotomasako.net
製作 | カンパニー・デルニエール・ミニュート |
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ゲイト・シアター(ロンドン) | |
共同製作 | ランコントル・アンテルナシヨナル・ドゥ・セーヌ=サン=ドゥニ |
テアトル・ガロンヌ(トゥールーズ) | |
助成 | DRACミディ=ピレネー |
トゥールーズ市 | |
オート=ガロンヌ県議会 | |
キュルチュールフランス=トゥールーズ市助成協定 | |
協賛 | キュルチュールフランス |
フランス大使館 | |
エールフランス航空 | |
協力 | 東京日仏学院 |
ピエール・リガル
振付家、ダンサー。
1973年、南仏トゥールーズ近郊に生まれる。陸上競技界で400m走、ならびに400mハードルのスペシャリストとして活躍したのち、数理経済学と映画製作を学ぶ。学生時代からコンテンポラリー・ダンスに興味を持ち、ヴィム・ヴァンデケイビュス、ベルナルド・モンテなどのワークショップに参加。卒業後、ビデオクリップやドキュメンタリーフィルム製作のかたわら、ジル・ジョバンやオーレリアン・ボリーのもとでダンサーとして活動し、モロッコの軽業師や京劇の俳優とも共演。
2003年に「カンパニー・デルニエール・ミニュート」を立ち上げ、ソロ作品『エレクション』を発表。その他の作品に、82年ワールドカップ準決勝フランス・西ドイツ戦を題材にした『遊びの終わり』(06)、パリ郊外のヒップホップダンサーたちとのコラボレーション『アスファルト』(09)など。