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半人半獅子ヴィシュヌ神/シータ姫、大地に還る

 
 
演出:ゴーパル・ヴェヌ
出演:カピラ・ヴェヌ、ナタナカイラリ
<半人半獅子ヴィシュヌ神> 6月13日(土) 13:30開演
<シータ姫、大地に還る> 6月14日(日) 19:00開演
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
上演時間:90分
各演目 一般大人4,000円 / 同伴チケット(2枚)7,000円
大学生・専門学校生2,000円 / 高校生以下1,000円

演劇の始原=インディアングルーヴ最前線!
クーリヤッタムの若き至宝カピラ・ヴェヌ、
静岡に再降臨!!

 ゴーパル・ヴェヌがいなかったら、クーリヤッタムはもう滅びていたかも知れない。ゴーパルはヒンドゥー寺院の古びた舞台で細々と行われていた伝統芸能に心を奪われ、半生をかけてクーリヤッタムを「世界無形文化遺産」にまで育て上げた。その娘カピラ・ヴェヌは父の志と母の薫陶を受け、奇跡的な才能に恵まれ、20代にしてクーリヤッタムを背負って立つ舞踊家となった。
 ミラーヴの音が響き渡るなか、カピラは神々に祈りを捧げ、しずかに神話の英雄たちが降りてくるのを待つ・・・。
 
■あらすじ
<半人半獅子ヴィシュヌ神>
「人にも獣にも、どんな武器にも殺されない」不死身の肉体を持った傲慢な魔王ヒラニヤカシプは、息子がヴィシュヌ神を讃えるのを聞いて我慢がならず、狂象や毒蛇を差し向けて殺そうとする。ところがそこに頭は獅子、体は人間という異形の姿に変身したヴィシュヌ神が顕れる・・・。
 
<シータ姫、大地に還る>
ヴィシュヌ神の生まれ変わりであるラーマ王子(『ラーマヤーナ』の主人公)は、魔王ラーヴァナを破って世界に平和をもたらし、囚われの身となっていた妃、シータ姫を救い出す。しかし王子は、姫が魔王に身を任せたという噂に苦しみ、姫を森に追放してしまう。やがて王子は、姫が生んだ息子たちに導かれて姫に再会するが、姫に貞潔の証を求めると、姫は大地の女神に「貞潔ならば私を受け入れよ」と祈り、割れた大地の中に消えていった・・・。
「インドのシェイクスピア」とも呼ばれるカーリダーサの叙事詩『ラグ・ヴァンシャ』の一節より。

■クーリヤッタムとは、ナンギャール・クートゥーとは
 クーリヤッタムは現存する世界で最も古い演劇形態の一つ。ユネスコにより「世界無形文化遺産」にも指定されている。その歴史は少なくとも10世紀まで遡ることができ、カタカリの原型ともなった。元来はケララ州のヒンドゥー寺院内の専用の劇場で、特定のカーストに属する俳優と演奏家によって上演されていた。ミラーヴと呼ばれる壺など、打楽器の伴奏にあわせて、仏教の声明にも似た節回しで台詞を朗唱する。クーリヤッタムの最大の特徴は、ムドラと呼ばれる複雑なジェスチャーと多様な表情の使い分けにある。
 ナンギャール・クートゥーはクーリヤッタムから派生した劇形式で、同じくらい長い歴史を持つ。クーリヤッタムが複数の男優・女優によって演じられるのに対して、ナンギャール・クートゥーでは一人の女優(かつてはナンギャールというカーストに属した女性)がすべての役を演じる。クーリヤッタムの戯曲の一部を元にした作品が多いが、台詞はクーリヤッタムよりも音楽的。

■コラム
「カピラの踊りによせて」 田中泯

 
 「おどりはやはり解放と再生の為にある。」
 カピラのおどりの素晴しさを書き留めようと思い立って原稿用紙を取り出したものの、まるで作文が苦手だった少年の頃の気分さながら、僕は作意の働かない言葉知らずの人になってしまったようです。未見の人におどりのことを伝える、どんな踊りかを伝える、これはひどく苦労なことだ。踊りの分類と評価が中心となった来歴を述べ伝えることで多少はその輪郭を想像してもらえる、とは思うのだが。これでは空っぽの土鍋に等しい。
 おどりを見るとき踊るとき、そこで何が起きるのか、人々の身体の内側、おどる人のからだの内側で何が動いているのか。外側の話はここでは無用だ。おどる人の瞬間が言葉でも音楽でもなく、見る人、居あわせた人に伝わる時、おどりが産まれると言えるのではないだろうか。この瞬間に誘われて僕たちは自分という時間からそして空間からも解放される、忘れるのではなく懐け出しているのだ、はるかな過去と未来を。
 カピラは南インドの伝統が生き死にを繰り返す、その只中で育った。彼女の父も母も伝統を支え、その新鮮な現在を伝えるべく生命を燃やしている。おどりの歴史とはその時代折々の流行の記述と記憶だと言えるのだが、その点で言えば、ヴェヌ・ジイ一統が見せてくれるカピラのおどりは、まこと感動の奥の仕事とよべる。途上の人類の文化の伝統の型とは生命(いのち)がゆすり補うものであることは言うまでもない。完成し保存されるものに僕はおどりを感じなくなってしまっているのだ。
 カピラのおどりには瞬間の広さがある。そして瞬間の不連続を繋ぐ意志がある。カピラのおどりは素晴しい、風土と他者意識から育ったものをカラダに秘めているからだ。僕のデタラメ踊りもやや伝統に、個人的にではあるが近づいて来た。カピラ!踊りつづけましょう。鏡のいらないおどりを。

田中泯(たなか・みん)
photo_column_tanaka舞踊家。1945年、東京生まれ。前衛と伝統のつらなりを愛し、日本・世界各地で舞踊、オペラ、演劇、映画、美術に活躍。日本の風土の身体と重力を出発点として「おどり」の普遍的魂を世界に求める。85年、山梨県で農業と舞踊のくらしを開始。現在、劇場を離れて場を野に求める「場踊り」を日本国内に留まらず、世界各所で展開しはじめている。

後援 インド大使館

ゴーパル・ヴェヌ

photo_sita_1ナタナカイラリ伝統芸術研究研修センター所長。
 1945年、ケララ州(インド南部)生まれ。父が主宰した演劇学校でカタカリを学び、14歳で初舞台を踏む。70年代にクーリヤッタムの「最後の巨匠」と呼ばれたアマヌール・マダバ・チャキャール師に出会って、生涯をかけてクーリヤッタムを守っていくことを決意する。師たちを説得し、75年、一般人がクーリヤッタムを学ぶことができる初の研修所ナタナカイラリを設立、ヒンドゥー教寺院以外での公演を実現。89年、自らクーリヤッタムを学ぶことを決意し、2年後に俳優としてもデビュー。79年から海外公演を盛んに行い、世界20ヵ国に紹介してきた。2007年、クーリヤッタムの保存・普及活動における功績に対して日経アジア賞を受賞。

カピラ・ヴェヌ

photo_sita_2舞踊家。
 1982年、ケララ州生まれ。7歳からナタナカイラリでチャキャール師と父にクーリヤッタムを学び、9歳でデビュー。92年から毎年、ナタナカイラリ主催クーリヤッタム・フェスティバルに出演している。クーリヤッタム以外にも、女性舞踊モヒニヤッタムを母ニルマラ・パニカー(今回初来静!)から学び、国際交流基金アジアセンターの助成を得てカタカリのネトラビナヤ(眼による感情表現)を習得。武術カラリパヤットやヨガにも造詣が深く、近年は舞踊家田中泯の作品にも出演している。海外での公演も数多く、宮城聰とは2006年にケ・ブランリー国立博物館(パリ)付属劇場のこけら落とし公演で出会った。昨年の「Shizuoka春の芸術祭」では『クリシュナ七変化』と『半人半獅子ヴィシュヌ神』を上演、大きな反響を呼んだ。