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王女メデイア

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台本・演出:宮城聰
原作:エウリピデス 音楽:棚川寛子
出演:美加理、阿部一徳、赤松直美、池田真紀子、石井萠水、大高浩一、片岡佐知子、木内琴子、榊原有美、桜内結う、鈴木陽代、大道無門優也、高澤理恵、たきいみき、永井健二、仲谷智邦、本多麻紀、三島景太、吉植荘一郎、若宮羊市
6月19日(土)、26日(土) 19時30分開演
舞台芸術公園 野外劇場「有度」
上演時間:80分 日本語上演・英語字幕
※背もたれのない客席になります。※雨天時でも上演いたします。

作品について

10ヵ国19都市で喝采の嵐!圧巻のパフォーマンスが再び野外劇場に!
4月にはイベロアメリカ国際演劇祭(コロンビア)で上演

『王女メデイア』は、99年に初演され、翌年の第一回「Shizuoka春の芸術祭」で上演されて以来、韓国、ロシア、イタリア、フランス、インドなど10カ国19都市で上演を重ねてきた宮城聰の代表作のひとつです。 古代ギリシアの英雄イアソンとその妻メデイアをめぐって繰り広げられる壮大な「子殺し」の悲劇を、明治時代の日本に舞台を移し、歓楽街の座興で演じられる劇中劇として再現します。セリフを語るのはすべて男。その言葉に操られるように動く女たち。宮城聰が長年にわたって追求してきた語りと動きを分ける‘二人一役’の手法がストーリーと密接にからみ合い、 やがて言葉の支配をくつがえすかのように女たちの反乱が始まります――。 「語り」「動き」「生演奏」の三位一体によるこの<祝祭としての悲劇>は、宮城の方法論の最良の成果のひとつとして、国と文化圏とを超えて高い評価を獲得しています。メデイアの華麗なる復讐劇が、10年ぶりに日本平の森を燃え立たせます!

あらすじ

ギリシアの王子イアソンはアジアへの遠征を課され、巨大な軍艦を仕立ててコルキスに向かった。コルキス王の娘メデイアはイアソンに心を奪われ、みずから父を裏切ってイアソンを勝利に導く。そして彼の軍艦に乗り込み、イアソンとともにギリシアに凱旋した。しかし叔父の悪意から故郷に住めなくなったイアソンとメデイアは、別の国に落ちのびる。二人のあいだには息子も生まれ、メデイアはここで平凡な一人の妻として貧しくも幸せに暮らしていた。
だがイアソンのほうは、一介の落人として人生を終えてゆくことに耐えられず、土地の王クレオンの娘との婚姻を図る。男の跡取りのいなかったクレオンは、イアソンとの縁談を喜び、前妻メデイアが害をなさぬようにとメデイアの追放を決定する。
夫に捨てられて泣き暮らしていたメデイアは、その上に所払いを命じられて絶望の淵に追い詰められる。しかしその究極の逆境で、彼女の体内に眠っていたアジアの血=巫女のパワーが目を覚ます。そしてこの上なく激しいメデイアの復讐が始まる。
メデイアはクレオンとその娘を殺害する。さらにイアソンを敢えて殺さず、彼を苦しめるために自分の産んだイアソンの息子を殺す。たった1日のうちにすべてを失ったイアソンは呆然と立ち尽くすのみ。メデイアは息子の死体を抱えて悠然とこの地を去る。・・・・

コラム
『王女メデイア』と宮城聰の奇妙な情熱
サエキけんぞう

宮城聰の代表作『王女メデイア』を見たのは、嵐吹きすさぶ、東京国立博物館本館であった。不穏な天候の中、展示閉館後の閉ざされた門を開けて入るという、奇妙なシチュエーションは、本作の内容と合いまって、非常に味わい深いものだった。
古代ギリシアの「子殺し」の悲劇を、明治時代の日本に舞台を移して行われる。1872年(明治5年)に創設された日本最古の博物館とは、出来すぎた舞台だ。
石材中心でヒンヤリと天井の高い本物の明治発空間に、しつらえられた異様な明治異空間。歓楽街という設定の舞台には、ホームレス風の老婆が座っていた。
歴史を隔絶したその空間に、思わず、平成の僕らは、今どこに向かっているのだろう?と考えてしまった。携帯に、ネットに、すっかりメディアナイズされた肉体は空洞になったよう。草食男子という言葉も一般化するこの頃は、性欲さえも相対化されている。
『王女メデイア』舞台は、極めて原理的に、ギリシャが日本、メデイアの出身国コルキスが朝鮮半島に置き換えられていた。
観衆の心は漂流をし始める。
舞台を囲んだついたてが払われ、仲居の女性達が現れ、黒い法服に身を包んだ男優たちも登場。劇中、女性の台詞はすべてこの男性が代弁するという趣向。
扇情的で圧倒的な男達の声。それは戦前、大陸に向けてひたすら拡大志向だった荒くれた魂の残響だ。それが影アナのようになって吠え渡る。現在の大人しい男子達の声は、誰の影アナなのだろうか?アメリカの意志?それとも?
ラスト、女優は誘惑的な衣装に変わり、メデイアを先頭に、男達を次々と虐殺するという衝撃。
現在の女性はとっくに上位になっている。この宮城聰の描く女性の反逆は、さらにその先の世界を想起させる。戦争的境界を超えて、女は男を殺し続けるのか?
たかだか、たった100年以内に繰り広げられた、日本の、大陸との壮大な因果。そして戦争をはさんで激変する男女バランス。その中で迷子のようにつったっている僕ら現代人を、宮城聰の『王女メデイア』は、不思議な引力で浮游させる。
宮城聰と最初に出会った時の、あの時空を旅する妖怪のような奇妙な笑顔は忘れられない。男女の境界も、超えているようだった。同じ頃、全く別の場所『聖ミカエラ学園漂流記』で出会った美加理は、驚くべき美貌とジェンダー性を濃厚に漂わせ、はなはだ痛快に男と社会を撃っていた。
その二人の作りだしたこの壮大なカラクリ装置で、我々はもう一度、自分達の見知らぬ渡航先を占ってみようではないか?

サエキけんぞう

ミュージシャン・作詞家・プロデューサー
1980年「ハルメンズの近代体操」でデビュー、86年パール兄弟「未来はパール」(ポリドール)。作詞家として沢田研二、小泉今日子、モーニング娘。サディスティック・ミカ・バンド他、多数に提供。著書「歯科医のロック」「スパムメール大賞」(09年文春文庫)

←左のアイコンをクリックすると、SPAC発行のパンフレット「劇場文化」掲載のエッセイをお読みいただけます。

だから女というやつは
小二田誠二

明解「王女メデイア」
北野雅弘

宮城聰(みやぎさとし)

演出家、静岡県舞台芸術センター(SPAC)芸術総監督。
1959年、東京生まれ。90年、劇団「ク・ナウカ」を結成。日本の伝統演劇の様式とヨーロッパのテクストを融合させた演出には定評がある。 2004年、第3回朝日舞台芸術賞受賞。2005年、第2回アサヒビール芸術賞受賞。海外公演も頻繁に行っており、06年10月にはパリのケ・ブランリー国立博物館クロード・レヴィストロース劇場のこけら落としとして『マハーバーラタ』を上演。代表作に『王女メデイア』(エウリピデス)など。07年4月より静岡県舞台芸術センター芸術総監督を務める。SPACでは07年11月に木下順二『巨匠』、08年5月に泉鏡花『夜叉ヶ池』、11月にシェイクスピア『ハムレット』、 09年6月に唐十郎『ふたりの女』、10年3月にイプセン『ペール・ギュント』を上演。
自作の上演と並行して、国際舞台芸術祭「Shizuoka春の芸術祭」では世界各地から現代の世界を鋭く切り取った作品を次々と招聘し、また「シアター・スクール」や「小さいおとなと大きなこどものための夏休みシアター」「中高生鑑賞事業」など静岡の青少年に向けた新たな事業を展開、「世界を見る窓」としての劇場づくりに力を注いでいる。