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演劇 アンティゴネ(イスラエル)

11月9日(金)19:00開演
10日(土)・11日(日) 14:30開演
静岡芸術劇場
4,000円/同伴チケット(2枚)7,000円
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国のために倒れた者、国に抗って倒れた者、
悲劇に終わりはあるのだろうか
イスラエルの歴史を支えた老兵が歌う
痛切な鎮魂曲

神の掟か? 人の掟か?

『アンティゴネ』が突きつけるこの問いは今最もアクチュアルな問題になりつつある。そして今、この問いに最も激しく直面させられているのは、今年建国六〇年を迎えたイスラエルに住む人々なのかも知れない。このハビマ版『アンティゴネ』では、合唱隊が第一次大戦古参兵の勲章を身につけてあらわれる。この4人のヴェテラン俳優の顔には、イスラエル六〇年の歴史が深く刻まれている。

スニル演出の挑発的な『アンティゴネ』は、昨年イスラエルで最優秀作品賞、最優秀主演女優賞など、数々の賞に輝いた。栄光の歴史を背負う2劇場の初来日にふさわしい作品である。

ハナン・スニル

演出家。1943年テルアビブ生まれ。テルアビブ大学演劇科卒業。70年、RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)にてピーター・ブルックのもとで働き、70〜72年RADA(王立演劇アカデミー)で演出家と教師を務めたのち、74〜76年にはイスラエル・ベールシェバ市立劇場で滞在制作、84年にハビマ国立劇場の常任演出家となる。ソフォクレスやシェイクスピアといった古典から、イプセンやチェーホフといった近代劇、ピンター、オールビー、アレン・ギンズバーグや現代イスラエル作家の現代劇、さらにはオペラまで、幅広いレパートリーを持っている。国内外で受賞歴多数。

ハビマ国立劇場

「ハビマ」はヘブライ語で「舞台」を意味する。
20世紀初頭、約2000年ぶりに口語として復活したヘブライ語を使って演劇を行おうとする若者たちがいた。ボルシェヴィキ革命のただ中の1917年、その内の一人、ナフム・ゼマハがモスクワでハビマ劇場を設立した。スタニスラフスキーらの協力もあり、時代の最前衛を担ったこの劇場の活動は、ゴーリキー、マックス・ラインハルト、トーマス・マン、アインシュタインら多くの文化人によって高く評価された。26年にスターリン政権下のソ連を去り、各地を転々とした末、28年にテルアビブを本拠地と定める。モスクワ芸術座出身の著名な俳優・演出家アレクセイ・ディキーが芸術監督を務め、イスラエルを代表する劇団・劇場へと育て上げた。58年には正式に国立劇場の地位を得、ヘブライ語演劇界の中核を担いながらも、ハビマのレパートリーは時として国家の方針に対する先鋭的な批判を含む。国外の演劇人との交流も多く、現在パレスチナ自治区の劇団との共同制作も検討しているという。

カメリ劇場

イスラエルは700万に満たない人口で年間延べ400万人が劇場に足を運ぶという世界有数の演劇大国である。イスラエル最大の都市テルアビブは演劇シーンの中心でもある。テルアビブ市立カメリ劇場はハビマ国立劇場と並び、テルアビブを代表する劇場・劇団の一つ。海外公演も多い。60年以上の歴史を持ち、イスラエル賞受賞俳優を多数輩出する一方、「社会的責任を果たす劇場」を自任し、政治的な問題を提起する作品も多い。アウトリーチ活動として、イスラエル人とアラブ人との平和な共同生活を目ざすプロジェクトも行っている。

あらすじ

舞台はテーバイの町。先の王オイディプスは自らの出生の秘密を知り、国を追われる。その妻であり母でもあるイオカステは自死を遂げた。残された二人の息子ポリュネイケスとエテオクレスは王位を競って争い、ポリュネイケスはアルゴスに追放される。やがてポリュネイケスはアルゴス勢を率いてテーバイに攻め入り、エテオクレスとの一騎打ちとなるが、オイディプスの呪いを受けた兄弟は相討ちとなって共に果てる。そして王位はイヨカステの兄クレオンのものとなった。
クレオンは国を守ったエテオクレスを手厚く葬り、反逆者ポリュネイケスの死骸を野に晒して野鳥の餌にすることを命じ、これに反した者を死罪に処すことを決める。だがオイディプス王の娘アンティゴネは王令に従わず、いさめる妹イスメネにも抗して、兄ポリュネイケスに埋葬の礼を施すことを決意する・・・。

ソフォクレス(紀元前496/495-406)

古代ギリシア最大の悲劇詩人の一人。その端正な劇作法はアリストテレスに激賞された。軍人・政治家としても活躍し、アテナイの栄光がかげりゆく時代にあって社会調和に努めた。 『アンティゴネ』は紀元前441年頃に書かれ、『オイディプス王』、『コロノスのオイディプス』と三部作を成している。長大な悲劇の幕引きにあたって、この作品には古い葬送儀礼の名残りがかいま見られる。

劇評

挑発的で、魅惑的・・・深い余韻を残し、考えさせられる舞台。アンティゴネ役のオラ・ショル・セレクタルは近年で最高の演技を見せた。――『ハアレツ』紙

老兵のコロスが終わりのない戦いと血みどろの復讐を思い出させる。力強く、美しく、政治についての深い思索に満ちた舞台――『タイム・アウト』紙