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演劇 エリザベス2世(オーストリア)

11月9日(金)19:00開演
10日(土)・11日(日) 14:30開演
静岡芸術劇場
4,000円/同伴チケット(2枚)7,000円
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全身これ悪意!
ヨーロッパ最大の毒舌家が放つ「世間」への逆襲

エリザベス女王がウィーンを訪問する日。極度の人嫌いで知られるルドルフ・ヘッレンシュタインの家は、不幸なことに女王の行列の通り道にあった。かつて武器の売買で巨万の富を築き、今は召使いと二人、車椅子で暮らす老人のもとに、自称知り合いたちが次から次へと詰めかける。老人が「最も憎んでいる」人々は、エリザベス2世を見下ろそうと必死にヘッレンシュタインのバルコニーを目指す・・・。

『エリザベス2世』は1987年に執筆され、89年、作者トーマス・ベルンハルトの死後にベルリンで初演された。ベルンハルトは遺言によって自作を母国オーストリアで上演することを禁じたが、フォスは2002年にウィーンのブルク劇場でオーストリア初演を強行した。今回の上演ではフォスが全ての登場人物をただ一人で演じる。

「僕は昔から年をとった男性に魅了されてきた。頭がはっきりしている人物に限るが。── 驚くべき好奇心と明晰な思考が、朽ち果てていく身体に宿っているのだ。僕にとって老人とは分厚い本のようなものだ。」
ゲルト・フォス

ゲルト・フォス Georg Soulek

ヨーロッパで最も高名な舞台俳優の一人。1941年、上海に生まれ、6歳で母国ドイツに戻る。チューヴィンゲン大学・ミュンヘン大学で独・英文学を学び、64年から演技の個人指導を受けて66年にデビュー。フォスによれば、ここで「あえて自分のものではない声と体を身につけた」という。若くして主役に抜擢され、ベルリナー・アンサンブル(ベルリン)などで観客を圧倒。ブルク劇場での『リチャード3世』の名演技でウィーンの人々の心をつかむ。今でもブルク劇場でフォスの『リア王』が上演されるとすぐに売れ切れになるという。『テアターホイテ』誌主催の「今年の俳優」に7度にわたって選ばれたように、ドイツ語圏全体で絶大な人気を誇っている。クライスト、イプセン、チェーホフ、ベケットなど、古典から現代劇まで幅広いレパートリーで活躍。ぺーター・ザデク、クラウス・パイマン、ジョージ・タボリなど、ドイツ語圏で最も重要な演出家の作品で主役を務めるほか、映画・テレビにも多数出演。

トーマス・ベルンハルト(1931〜1989)

作家、劇作家。カフカとも並び称される、20世紀後半のドイツ語圏で最も重要な作家の一人。1931年に非嫡出子として生まれ、幼少期を祖父母のもとウィーンで過ごす。祖父は作家で、孫の教育に力を注いだ。戦時下にナチスの全寮制ギムナジウムで過ごした日々はトラウマ的な体験となる。ギムナジウムを中退し、食料品店で見習いをしながら詩を書き始め、徐々に散文や戯曲で独自のスタイルを築いていくが、18歳で結核に感染し、長い闘病生活を経験。この世に在ることへの呪詛が渦巻く作品は、ユーモアをまじえながら既存の価値観を転覆していく。自国への辛辣な批評のため、作品はオーストリアで度々スキャンダルを呼んだ。ベルンハルトはフォスの演技力を高く買っていて、彼の名前を取った『リッター・デーネ・フォス』という戯曲もある。ベルンハルトの戯曲の多くはクラウス・パイマンによって初演された。89年、ベルンハルトは自分の戯曲は今後一切オーストリアで上演してはならない、という衝撃的な遺言を残す。だが、99年以降、遺族の許可を得て、いくつかの作品はオーストリア国内でも上演されている。強烈なオーストリア批判を含む『エリザベス2世』もその一つである。邦訳に『ヴィトゲンシュタインの甥』、『破滅者』、『消去』など。

劇評

ゲルト・フォスのヘッレンシュタインは忘れがたい。身動きできないのに生気に溢れ、冴えた頭脳で次々と気分を切り替え、それでいて決して表面的にならない。まさに火花が飛ぶような演技である。(『ミュンヒナー・アーベントツァイトゥング』紙)