作品について
フランスの国民的名女優、静岡へ
――ドミニク・ブランの一人芝居
『苦悩』は、フランスの国民的名女優ドミニク・ブランの一人芝居です。フランスでは知名度・実力ともに最も優れた女優の一人として知られ、数々の名作映画で活躍した後、2008年ヴェネツィア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞し、国際的にもその類い稀な演技力にますます注目が集まっています。そのブランが自ら「静岡で!」と希望し、本公演が実現しました。ブランは本作の演技により2010年モリエール最優秀女優賞を受賞しています。
女流作家マルグリット・デュラスの<戦争の記憶>
『苦悩』は、フランスの作家マルグリット・デュラスの戦時中の日記をもとに構成された作品です。ドミニク・ブラン演じるデュラスはナチスにより強制収容所に送られた夫の帰りを待ち続けます。本作は、そんな一人の女性を通して、戦争によって深い苦悩へ追い込まれる人間の姿を浮き彫りにしています。もはや殺されてしまったかも分からない夫の帰りを待つという残酷な状況の中、精神錯乱に陥るほどの困難な心境を繊細に演じ切るブランの演技力は必見です。
大女優ドミニク・ブランは静岡の舞台に立つことを夢見ていた
横山義志
大変な顔ぶれが揃ったものである。パトリス・シェロー、ドミニク・ブラン、マルグリット・デュラス――。パトリス・シェローは若くして演劇シーンを震撼させたフランス演劇界の奇才であり、オペラの演出でも知られ、映画監督としても数々の栄冠を手にしている。ドミニク・ブランは、2008年にヴェネツィア映画祭最優秀女優賞を受賞、演劇ではこの『苦悩』で2010年モリエール賞最優秀女優賞を獲得している。演劇と映画を通じて、フランスで今一番脂がのっている女優といってもいい。日本でのツアー先を探している、という話が来たとき「Shizuoka春の芸術祭」には時期が合わず、一端お断りの連絡を入れた。すると、関係者から意外なメッセージが届いた。「ドミニク・ブランさんは、静岡の舞台に立つことを夢見て(!)いらっしゃいます。俳優のご友人達が何人も静岡の舞台に立っていて、すばらしかったと聞いている、とのこと。どうか再検討いただけませんでしょうか。」これには驚かされた。私事になるが、フランスで演劇を勉強した後2007年にSPACに来て、常にヨーロッパの最良の舞台を日本に紹介したいと思って働いてきた。毎年アヴィニヨン演劇祭に行くたびに、ヨーロッパの演劇人の間でSPACの認知度が少しずつ上がってきているのを感じてはいたが、これほどの大女優から言われると感無量である。しかも日程の都合で今回はベトナム公演とニューカレドニア公演の間に静岡に立ち寄ることになるという。そこまでして来てくれるのにも驚いた。デュラスの『苦悩』は『愛人/ラマン』につづいて発表された自伝的作品である。原題 ≪ La Douleur ≫の第一義は肉体的な苦痛のことで、「作品」という言葉が不似合いなほどに生々しい思いが綴られている。シェローはかつて大がかりな装置で知られたが、この作品には全くの裸舞台で挑んでいる。日本平の森のなかにひっそりと建てられた劇場で、世界の演劇を知る静岡の観客たちに、ドミニク・ブランが裸で対峙するのを見るのが、今から楽しみである。
横山義志(よこやま・よしじ)
SPAC文芸部。2008年パリ第10大学演劇科博士号取得。SPACで招聘公演の選定などに携わる。
京都公演
2月19日(土)16時開演
会場:京都芸術劇場春秋座(京都造形芸術大学内)
主催:京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター
お問い合わせ:TEL.075-791-9207
東京公演
2月21日(月)、22日(火)19時開演
会場:シアターXカイ
主催:東京日仏学院
提携:シアターXカイ
お問い合わせ:東京日仏学院 TEL.03-5206-2500
主催: | SPAC (財)静岡県舞台芸術センター |
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