作品について
若きカリスマ演出振付家・金森穣が「舞踊の物語性」を追究!
人形、娼婦、病人…過去の金森作品が凝縮したホフマン物語
Noism芸術監督で演出振付家の金森穣が、難解だと思われがちなコンテンポラリー・ダンスに、あえて「物語」を持ち込み、誰もが共感できるダンス作品を創り上げました。劇的舞踊『ホフマン物語』。作曲家オッフェンバックのオペラで有名な『ホフマン物語』をもとにした本作では、操り人形、男装の娼婦、病弱な娘と、次々に恋をするホフマンの姿が描かれます。「人形、娼婦、病人」、これらのキーワードは金森が振付において追究してきたテーマでもあり、本作は過去の金森作品が凝縮した集大成となりました。金森穣率いるNoismの新境地をお見逃しなく!
新潟限定公演がついに静岡で解禁!
本作は、メインカンパニーであるNoism1と研修生カンパニーであるNoism2の初の合同公演として、2010年7月に初演されました。総勢19名による壮大なコンテンポラリー・ダンスはそれだけでも注目を集めるのに充分なものでしたが、あえて「新潟限定公演」として上演され、多くの観客が劇場へ押し寄せました。そんなこだわり抜かれた作品が、いよいよ静岡に登場します。今回の静岡公演は新潟市外での初の上演となります。
Noism1(ノイズムワン)
Noismのメインカンパニー。りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館が、舞踊部門芸術監督に金森穣を迎えたことにより、劇場専属のダンスカンパニーとして2004年4月設立。日本初、ヨーロッパスタイルのプロフェッショナル・ダンス・カンパニーとして、次々に発表する独創的な企画、作品は、日本のコンテンポラリー・ダンス界を牽引している。2007年以降、海外7カ国10都市でも公演。2013年8月までの活動延長も決まり、新潟からの劇場文化発信の一翼を担う存在として、益々大きな期待と注目を集めている。第8回朝日舞台芸術賞舞踊賞受賞。
◆メンバー:井関佐和子(副芸術監督)、宮河愛一郎(バレエマスター)、藤井泉、櫛田祥光、中川賢、青木枝美、真下恵、藤澤拓也、後田恵、計見葵、宮原由紀夫
Noism2(ノイズムツー)
Noismの研修生カンパニー。りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館のレジデンシャル・ダンス・カンパニーNoism1付属の研修生カンパニーとして、2009年9月設立。Noism2メンバーによる初の単独公演を2010年3月に開催予定。現在8名が在籍し、日々研鑽を積んでいる。
◆ メンバー:篠原未起子(バレエミストレス)、亀井彩加、石垣文子、角田レオナルド仁、廣川沙恵、堀川美樹、山崎文香、池ヶ谷奏、加藤明志
「純粋」を貫く勇気
茂木健一郎
踊りは、強さと優しさを同時に表現することができる。だからこそ、私たちの生命と同じだけの深さと広がりを持つのだ。若くして一人、ヨーロッパに留学した金森穣。異国の地で、厳しさにまみれ、それでも立ち続ける強さを身につけたのだろう。芯がしっかりしているからこそ、やわらかくふるまうことができる。金森穣と、彼が率いるNoismの舞台に接する度に思うのは、もっと強くならなければということだ。そして、強さの真髄が何かということが、世間ではいかに誤解されているかということも。
金森穣は、斯界の紛れもない「プリンス」である。モーリス・ベジャールに師事し、ダンスという芸術の最良の伝統を受け継いだ。ヨーロッパを舞台に活躍し、かの地の流儀を身体の中に刻んだ。満を持して帰国する。その後の歩みに人には言えぬ苦労があったことは、想像するに難くない。
金森穣が推し進めている、独自のカンパニーを持ち、定まった拠点で仲間たちと切磋琢磨し、オリジナルの作品を上演しようという試み。日本の風土の中で、そんなやり方を貫くことがいかに難しいことか、容易に想像することができる。幸い、新潟市の理解と支援を得ることにより、金森穣の試みは「持続可能」なものとして続いている。それは、現代の日本における一つの奇跡だということができよう。
密度の濃いコミュニティで切磋琢磨することで、身体表現の細部に「魂」が宿る。それは、鉄を溶かして鍛える際に炎の中に垣間見える、純粋な「黄金」の色に似ている。ダンスの神に向けて所作を高め、観客のために手足に心を込める。やがて、舞台は白熱し、この世で最も輝かしいものの光が見える。忘れられない感動が残る。
混迷の時代だからこそ大切な、純粋を貫く勇気。そんな人の姿は力強く、しかも柔らかい。金森穣とNoismが類希なる舞踊の純度を保ち続けているという事実の中に、現代日本を生きる私たちにとっての、最良の希望がある。
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者。著書に『脳と仮想』(新潮社)等多数。『芸術の神様が降りてくる瞬間』(光文社)に金森穣との対談を収録。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』キャスター。
主催: | SPAC (財)静岡県舞台芸術センター |
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製作: | りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 |