精神科医から演劇人へ、奇才タニノクロウ、静岡初登場!
タニノクロウは、「庭劇団ペニノ」を主宰し、東京で活動する劇作家・演出家です。元精神科医であり、自宅マンションを改装して劇場にするなど、話題性に富んだアーティストとして知られ、奇抜な作風が人気を集めています。2000年に劇団を創立して以来、わずか4年で海外から招聘されるようになり、活動の幅を広げています。『エクスターズ』はタニノ初の静岡公演となります。
日本平で山ごもり、野外劇場に奇怪な城がそびえ立つ…?
本作は、タニノが日本平中腹の舞台芸術公園に滞在し、3ヶ月間の製作期間を経て上演する新作です。タニノ作品の特徴として、仕掛けのある凝った舞台美術を挙げることができます。これまでの作品では、現実そっくりの空間を幻想的な世界に変化させたり、空間そのものを奇想天外な虚構の世界として創りこんだり、「魔術的」とも言える舞台を表現してきました。果たして野外劇場に何が現れるのか……。
<欲望丸出し>の人間たちがくりひろげる滑稽な妄想世界
これまでのタニノ作品は、現実と虚構が摩訶不思議に混じり合う、妄想のような世界を立ち上げてきました。そこには強い欲望を持った登場人物が現れ、馬鹿らしい戯れを繰り広げます。この<欲望丸出し>の人間たちが妄想の中に耽溺する世界こそが、まさに私たちが生きている世界のことかもしれません。今回の新作『エクスターズ』では、一体どんな世界が立ち現れるのでしょうか。タニノの類い稀な想像力が生み出す奇想天外な妄想世界にご期待ください。
タニノクロウさんとは。
篠井英介 Eisuke Sasai
演出家って、エライ人、コワイ人、絶対的な作品の支配ってイメージですかね。ところが実際は、自分が演じるわけではないし、照明だって舞台の転換だってみんな専門の人がいるわけです。演出家は何一つ自分がみずから舞台で何かやるわけじゃないんです。
タニノさんのお芝居は普通のお芝居じゃありません。パフォーマンス? アート? とにかく視覚と聴覚本位の前衛ともとらえられる創作です。難解といえば難解といえるけど、感覚だけで接すれば面白いし楽しいのです。作品の源はタニノさんの内側にあって俳優やスタッフはそれを何とか理解し想像し形にして具体化させねばなりません。自分は手をくださず自分の創りたい世界を実現させてしまおうとする演出という仕事の何と他力本願なこと! ぜいたくなこと! そしてズルイこと!
創造に関わる人達が「この演出家はキライだ」と思ったらどうなるでしょう。とんでもないことに作品はハチャメチャに。お客様はとんだメイワクとなります。タニノさんはエライわけでも、コワイわけでも、支配者でもありません。
みんな、タニノさんの創りたい世界を知りたくて、それを舞台に実現させるために自分が一つ役に立てたらなあと思ってしまうのです。こう思わせる力こそ、演出家の最大の才能なのです。
びっくりすることにタニノさんは人見知りでテレ屋で口ベタです。自分の伝えたい言葉をうまくさがせないで「あー」とか「まあー」とか云っています。その時、仲間は「この人何を云いたいんだろう」とものすごく集中してタニノさんに食いつきます。その人とのエネルギーが作品を支えています。大した才能です。おせっかいな私は勝手にタニノさんの思いをかわりに口に出して「こうなのね、こうでしょ」と公言します。「そうです」とタニノさんは云ってくれますが、果たして本心かはわかりません。これって私もタニノさんの魔法にかかっている一人に違いありませんね。
篠井英介(ささい・えいすけ)
石川県金沢市出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。劇団・花組芝居に旗揚げより参加。1990年退団後は、「現代劇の女方」として、独自の世界を確立し、唯一無二の存在として、活躍を続けている。舞台の代表作品に、一人芝居『女賊』、演出家・鈴木勝秀とのタッグによる女方シリーズ三作品『欲望という名の電車』(主演・ブランチ役)、『サド侯爵夫人』(主演・ルネ役)、翻案劇『サロメ』(主演)、そして『トーチソング・トリロジー』(主演・アーノルド役)などがある。タニノクロウとは、2011年1〜2月に東京芸術劇場にて上演された『チェーホフ?!』にて初タッグを組み、好評を得た。日本舞踊・宗家藤間流師範名取。
製作: | SPAC (財)静岡県舞台芸術センター |
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協力: | 庭劇団ペニノ |