広報班 クロストーク
チーフ 坂本彩子×佐藤美咲

制作部には、「縦軸」と呼ばれる年間を通してSPACの運営全体に関わる仕事があります。その中でも、外部からの取材の対応やチラシの作成を行う、SPACの「顔」とも呼べる広報班から、チーフの坂本さん、1年目の佐藤さんに話を聞きました。

 

それぞれ今年で何年目ですか?
また、担当している仕事を教えてください。


 現在、8年目で広報班のチーフをしています。チーフとして、年間のプロジェクトにおける広報スケジュールの組み立てや予算作成、プレスへの対応をメインに行っています。また、今年度から始まった「すぱっくおやこ小学校」の担当や、舞台芸術公園活性化の担当として公園の休憩所であるカチカチ山のミニミュージアム化プロジェクトにも関わっています。

 今年の3月に大学を卒業し、新卒でSPACに入ったので、1年目です。縦軸は、広報・チケット・会員に入っています。広報班では、Web担当としてWebページの更新、SNSの投稿を行っています。横軸(演目担当)では、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」『星座へ』、そして坂本さんと「すぱっくおやこ小学校」の担当をしました。また、静岡県内の舞台芸術団体がSPACの劇場を会場として作品を上演する「県民月間」も担当しています。

演劇との出会い、SPACに入るまでの経歴、
SPACに入った理由を教えてください。


 東京での大学時代に、学生演劇を観たのが演劇との出会いです。また、大学の友人に誘われて舞踏を観に行って、見たことのない身体に衝撃を受けました。特に笠井叡さんが世田谷パブリックシアターで上演された『花粉革命』を観たときに、滝に打たれたような衝撃を受け、「こういう衝撃を人生に1回は皆体験できたらいいのに」と思ったことが今の仕事に繋がっています。
 最初に就職したのは、音楽マネジメント会社でした。そこは半分芸能事務所みたいなところで、コンサートの企画をしたり、テレビ局にマネージャーとして同行したりもしていました。マネージャー的要素が強かったので、それだとつまらないなと思って1年でその仕事は辞めました。
 一念発起して、衝撃を受けた舞踏の世界に飛び込もうと思い、プロデューサーの方に「舞台制作の仕事がしたい」と伝えて、その方のアシスタントとして5年働かせていただきました。プロデューサーと私とで、チケットから広報、現場まで作品に関することはすべて行っていました。その後、別の事務所に移って5年、コンテンポラリーダンスの制作の仕事をしました。
 それまでずっと東京にいたのですが、子育ての環境など考え、地元の静岡に戻ることを決めました。そして、SPACがスタッフ募集しているのを見て、応募して今に至ります。SPACに入るまでの仕事の中で、広報が一番苦手だったので、まさか今広報をしているとはと驚いています。

 演劇との出会いは小学校の鑑賞事業だった気がします。正直、演劇はあまり観たことがないのですが、大学生になってからアートマネジメントの授業で観劇のレポートを書く課題があり、その時に初めてSPACの作品を観ました。その時に観た作品は『歯車』だったのですが、レポートがうまく書けなくて、再びSPACに行って、今度は『顕れ ~女神イニイエの涙~』を観ました。その時は、SPACの作品は少し難しいなと思いました。
 学生時代は吹奏楽団に所属していました。コロナ禍になり、活動が制限される中で開催したコンサートで、その場でお客様と時間、空間を共有できることが好きだと気づきました。そんな時にSPACの求人を見つけ、吹奏楽を通して感じた「舞台を作る楽しさ」をまた感じることができるのかなと思い、SPACに応募しました。

 

広報班に入った経緯を教えてください。


 SPACに入った当初はチケット班と会員班に所属していましたが、その後、広報班に配属されました。当初は「広報なんてできるかな」と不安でしたが、先輩に教わりながら仕事を覚えていきました。当時、劇場の入口が知らない人には分かりづらい印象があって、制作部の先輩にもそのことを話していたんです。そうしたら、宮城さん(SPAC芸術総監督)に「劇場の入口が分かりやすくなる外壁の見せ方を考えて」と言われて、「劇場へ行こう!」というバナーを出したり、のぼりやフラグを使って明るく見えるように工夫しました。このことが、「どう見せるか」考える転機になりました。それまでのキャリアでは、演目担当のような仕事が主な仕事でした。しかし、子育てもある中でできる仕事は何だろうと考えたときに、広報の仕事をやってみようと思いました。

 採用の面接で広報担当としてSNSの運営を積極的にしていきたいという話をしたので、その希望が通ったのかなと思っています。チケット班は希望して入った班ではないですが、チケット班に入ったことで、お客様と直接かかわる機会が増え、広報の仕方についてより具体的に考えられるようになりました。

広報班は、どのような仕事をしていますか?


 活動をどう見せていくか、「コミュニケーション」そのものをいろんな形で考える部署が「広報班」です。目の前のお客様から、海外の方のように目に見えない相手まで様々な対象がいる中で、SPACをどう見せていくか、どう発信していくかを考えていく仕事です。東京では演劇好きの人が一定数いて劇を観に来てくれるイメージですが、SPACの公演は近くに住んでいる街の人も来てくれるので、そのような方にもうまく情報を発信していきたいです。「そこに劇場があるから、ふらっと劇場に来られる」というように、いろんな方に向けて間口を広げる仕事をしていけたらと思っています。
 公演時に営業しているカフェにも関わっていますが、それも広報の一環だと思っています。地元のお店とコラボしてSNSで紹介したりしています。SPACのお客様にも来場の楽しみが増えたらいいなと思いますし、そのお店のお客様にもSPACに興味を持っていただけたら嬉しい。多くの方が劇場に来るきっかけを作りたいんです。

 私はWebやSNSの投稿を主に担当しているので、どう工夫したらSPACの魅力をお客様に届けることができるのかを考えています。まだSPACを知らない方に、SNSをきっかけにSPACを知ってもらいたいですし、SPACが好きでSNSをフォローしていただいているお客様には、よりSPACを好きになってもらえるような投稿を届けたいと考えています。

【広報班の主な仕事】
プレスリリース(プレス向けの文書)の作成/チラシ・ボスター・Webのバナーの制作/SNS運営/
交通広告/記者発表の運営

 

佐藤さんはSNSの投稿を主に担当しているとのことでしたが、自身で発案し、実行した企画があるとお聞きしました。


 はい。この秋上演した『ペール・ギュント』は、「SPAC 秋→春のシーズン 2022 – 2023」の中で唯一の再演作品で、前回の舞台写真がたくさんありました。インスタグラムでその写真を使った企画をしたいと思い、提案しました。SPACをまだ知らない人にこの作品へ興味をもってもらえるように、舞台写真を使った投稿、出演者へのインタビュー動画の投稿をしてみました。私はまだ1年目ですが、自分が考えた企画を提案すると先輩たちがいつも好意的な意見をくれて、よりよくなるアドバイスがもらえます。

 

広報班の1年間のスケジュールを教えてください。


 5月に「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が開催されるので、その準備を前年の11月から開始し、半年ほどかけて広報しています。そして、10月から3月まで「SPAC 秋→春のシーズン」の公演があるので、その準備を演劇祭終了後の5月下旬から開始しています。つまり、「SPAC秋→春のシーズン」に向けた半年と、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」に向けた半年を軸にスケジュールを立てながら仕事をしています。

広報の面白さ、広報担当をしていてよかったことは何ですか?


 作品創作で1番最初に形になり外に出ていくものが実はチラシで、チラシは作品にも影響を与えるものだと思うので、それを広報班としてイチから考えていくことが面白いなと思っています。

 広報班は、SPAC全体を見ながら仕事をするので、すべての舞台作品に関わることができ、いろんな人と一緒に活動することができる点が広報の面白さだと思います。

広報班の大変なところは何ですか?
また、チーフとして今後どのような環境にしていきたいと考えていますか?


 プロジェクトを立ち上げる段階から、作品をどう見せていくか、誰に届けるかを考えていくことが重要だと感じていますが、それを具体化するのは難しいです。また、常に新しい情報を出していかなくてはいけない一方で、静岡県が作った劇団なので、情報の扱いもしっかりしなければいけないところが大変な部分です。
 5人いる広報のメンバーの中でいろんな意見を出して、協力しながら広報の仕事を行っていきたいです。20~40代までと年齢も幅広いので、そのことを活かしながら広報班として活動していけたらと思っています。

 

仕事をする上で大事にしていることは何ですか?


 子どもがいるので、生活とのバランスを考えて仕事をしていますし、周りにたくさん助けてもらっています。一般の方が「観劇」という体験をどう捉えているのか意識する上でも、ワークライフバランスは大事だと思っています。

 スケジューリングをしっかりして、締切を守ることを大事にしています。タイトなスケジュールで動いていると、つい締切を過ぎてしまいそうになるのですが、マイペースになりすぎず、周りに流されすぎず、その公演における話題を リアルタイムで提供できるよう心がけています。

お二人が今後挑戦していきたいことを教えてください。


 チーフとして、広報班の中でもバランスを考えながら、広報班のメンバーが仕事をしやすい環境になるように全体をみて仕事をしていきたいです。ライフステージが変化していく中での「演劇との関わり」も考えていきたいと思っています。ダンスの公演をSPACで上演する機会も増やしたいですね。

 今は新人だからできないと思ってしまう部分もあるのですが、早くひとりで仕事をこなせるようになりたいです。制作の仕事は、マルチタスクで取りこぼしてしまうこともあるので、一つ一つ丁寧に仕事ができるように心がけていきたいです。
 また、SPACは国際色豊かなので、様々な国の人とコミュニケーションをとるためにも、語学力を身に付けたいです。最近は韓国語に興味を持っています!

 

制作部の良いところはどんなところですか?


 制作部の良いところは「仲間が多くいる」ということだと思います。分業や組織作りの難しさはありますが、制作部には20人以上の人が在籍しているので悩んだときは気軽に相談もできるし、協力もできるところが良いなと思います。

 チケット管理から営業、渉外まで公演に関わる全部の仕事を担当することができるところが制作部の良いところだと思います。SPACは自主事業が中心だからこそ、スタッフ1人1人が「自分たちの作品」だと思って仕事を行うことができます。また、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」のような大きなプロジェクトに携わることができ、いろんな経験ができるところが良いと思います。

制作部に挑戦してみてほしい人はどのような人ですか?


 個人的には「何かにのめりこんだ」経験がある人がいいと思います。あるいは、「何かにのめりこんだ」経験はあるが、社会でその経験の活かし方が分からない人に挑戦してほしいですね。私も企業の面接を受けに行くことがあまりピンとこなかったので(笑)。制作部の仕事の中にはいろんな要素があるので、舞台に興味がない人にもぜひ制作部に来てほしいと思っています。

 「アイデアを多く持っていて実行できる人」に挑戦してほしいです。やってみたいことを実現できる環境なので、思いついたアイデアを周りの人を巻き込みながら実行できる人が良いですね。

公開:2022年11月27日/インタビュー収録:10月