シアター・オリンピックス『天守物語』


▲舞台写真「ふじのくに⇄せかい演劇祭2011」より(撮影:三浦興一)

 

宮城聰演出『天守物語』

 みなさんもご存じの通り、明治時代の日本は、ものすごい勢いで欧米のものや仕組みを輸入しました。なんとか欧米に追いつこうとして、法律や産業だけでなく文化・芸術もしゃかりきに輸入しました。ほんとうは、「西洋文化」ときちんと出会うためにはまず「自分はなにものか」を知る必要があったはずなのですが、そのころは輸入することに必死で、自分たちの文化を見つめる作業はないがしろにされてしまったようです。
 自分はなにものかを知る、つまり自分たちの文化を見つめるということは、単に「むかしからあるものを守る」ということではありません。
 アジアのはしっこに位置する島国日本には、二千年以上にわたって中国大陸、朝鮮半島、そして海の道を通って南の国々から文化が流れこみ、そしてこの土地の言語や気候風土になじむようにすこしずつアレンジが加えられて、消化されてきました。長い時間をかけたこのいとなみをていねいにたどれば、そこには「他者との出会い」によっていまの日本文化がつくられてきた過程が発見できるはずです。
 「自分とはちがうもの」と出くわしたときにはだれでも、心と体の動揺を体験します。この動揺をなるべく早く解決しようとすれば、マネするか、あるいは征服するか、という選択になります。しかし自分はなにものであるかを注意深くのぞきこめば、すでに自分自身が「異なるものどうしの出会いによってつくられた合金」であることが明らかになるでしょう。そしてそのことを知っていれば、異なるものどうしは相手を「恐るべきもの」とは見なくなるはずです。つまりいま自分をはげしくゆさぶるこの動揺が、ただ恐怖の感情だけでなく、「自分が変わる喜び」に通じるものであると感じられてくるでしょう。
 自分が変わる喜び——。
 23年前、利賀と黒部ではじめて上演したこの『天守物語』を持って、僕とスタッフと俳優たちはいろいろな場所へと旅をしました。韓国、中国、インド、パキスタン、チベット、エジプト、台湾、そしてアメリカ、フランス——。それは「自分が変わること」を強いられる旅であり、そして「変わること」に、しんどさを超える喜びがあるということを、たえず発見させてくれる旅でもあったのです。(宮城聰)
 
*宮城聰演出『天守物語』上演記録はこちら

あらすじ

戦国時代。「白鷲城」の異名をとる姫路城第五重は、「人間は生きて帰れぬ」といわれる、魔界の者たちの棲家。居並ぶ妖怪たちをつかさどる天守夫人・富姫は、猪苗代に帰る妹分の亀姫に、城主・武田播磨守寵愛の鷹を土産として持たせる。播磨守に鷹探しを命じられた若き鷹匠・姫川図書之助は、生きて帰れぬことを覚悟で第五重に現れる。富姫は妖怪に臆さぬ図書之助のいさぎよさに心をひかれ、命を奪わず地上に帰すが、主君の元にもどった図書之助はあらぬ誤解を受け、やむなく再び富姫の前にあらわれるのだった…。

公演情報

8月28日(水)19:30
8月29日(木)19:30

上演時間:65分
会場:<黒部会場> 前沢ガーデン 野外ステージ
   (富山県黒部市前沢3418番地)

スタッフ / キャスト

演出:宮城聰
作:泉鏡花
音楽:棚川寛子

[出演]
美加理、阿部一徳、大高浩一、本多麻紀、石井萠水、片岡佐知子、木内琴子、貴島豪、榊原有美、桜内結う、大道無門優也、舘野百代、永井健二、布施安寿香、吉植荘一郎

[スタッフ]
衣裳デザイン:高橋佳代
照明デザイン:大迫浩二
小道具デザイン:深沢襟

舞台監督:山田貴大
演出部:山﨑馨、吉見亮
照明:樋口正幸、小早川洋也
音響:右田聡一郎、澤田百希乃
ワードローブ:高橋佳也子
ヘアメイク:梶田キョウコ
字幕操作:大石多佳子

技術監督:村松厚志
芸術局長:成島洋子
制作:大石多佳子
 
チケットやアクセスなど「シアター・オリンピックス」の詳しい情報は公式サイトをご確認ください。
https://www.theatre-oly.org/

 

上演記録

宮城聰演出『天守物語』

1996年5月
 利賀芸術公園野外劇場(利賀・新緑フェスティバル)
1996年5月
 黒部市国際文化センター コラーレ大ホール
1996年10月
 湯島聖堂 中庭
1997年12月
 インド・ケララ州 カリカット大学演劇校
 インド・ケララ州 ケララ音楽演劇アカデミーホール
 パキスタン・ラワルピンディー リアカット・メモリアルホール
1998年1月
 札幌・道新ホール
1998年3月
 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
1998年10月
 芝・増上寺本堂前野外特設ステージ
 (第5回BeSeTo演劇祭)
1998年11月
 小倉城本丸広場野外特設ステージ
 (第6回北九州演劇祭)
1999年2月
 三重県文化会館小ホール
1999年8月
 中国・遼寧省・瀋陽市 和平影劇院
 中国・雲南省・昆明市 昆明市第十五中学小講堂
 中国・チベット自治区・ラサ ノルブリンカ宮
 中国・チベット自治区・ツェタン 人民影劇院前広場
2000年9月
 エジプト・カイロ オペラハウス野外劇場
 (第12回カイロ国際実験演劇祭)
2001年7月
 高知県立美術館中庭
2001年7月(新演出版)
 お台場・都立潮風公園噴水広場
2001年9月
 早稲田大学演劇博物館正面舞台
2002年6月
 韓国・水原 長安公園
 (第6回水原華城国際演劇祭)
2002年9月
 鳥取・久松山御表門石段仮設舞台
 (とっとりパフォーミングアーツ2002)
2003年3月
 めぐろパーシモンホール
2003年3月
 アメリカ・ニューヨーク ジャパン・ソサエティ
 アメリカ・ニューハンプシャー ダートマス大学ムーアシアター
 アメリカ・ピッツバーグ ピッツバーグ大学エディシアター
2004年1月
 フランス・パリ カフェドラダンス
2004年8月
 埼玉・市民会館おおみや
2004年3月
 中国・敦煌 太陽大酒店・天楽宮
2004年4月
 台湾・台北 国立中正文化中心・国家戯劇院
2011年6-7月
 静岡県舞台芸術公園・野外劇場「有度」
 (ふじのくに⇄せかい演劇祭2011)
2014年4月
 静岡芸術劇場
2014年6月
 浜松ガーデンパーク屋外ステージ
 (ふじのくに野外芸術フェスタ2014)

【演出家プロフィール】
宮城聰(みやぎ・さとし)
1959年東京生まれ。東京大学で演劇論を学び、90年ク・ナウカ旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で国内外から高い評価を得る。2007年4月SPAC芸術総監督に就任。14年アヴィニョン演劇祭から招聘された『マハーバーラタ』の成功を受け、17年『アンティゴネ』を同演劇祭のオープニング作品として法王庁中庭で上演。アジアの演劇がオープニングに選ばれたのは同演劇祭史上初めてのことであり、その作品世界は大きな反響を呼んだ。平成29年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。19年4月フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。

 
シアター・オリンピックス
鈴木忠志、テオドロス・テルゾプロス、ロバート・ウィルソン、ユーリ・リュビーモフ、ハイナー・ミュラーら、世界各国で活躍する演出家・劇作家により、1993年にギリシアのデルフォイにおいて創設された国際的な舞台芸術の祭典。芸術家同士の共同作業によって企画されることを特徴としていて、世界の優れた舞台芸術作品の上演のほか、次世代への教育プログラムも実施される。1995年のギリシア(デルフォイ、アテネ、エピダウロス)を皮切りに、日本(静岡)、ロシア(モスクワ)、トルコ(イスタンブール)、韓国(ソウル)、中国(北京)、ポーランド(ヴロツワフ)、インド(ニューデリーなど)と8カ国で開催されてきたが、2つの国で共同開催されるのは今回が初めてとなる。
https://www.theatre-oly.org/

 
第9回シアター・オリンピックス
日本/ロシア共同開催
テーマ Creating Bridges

日本開催:2019年8月23日(金) ― 9月23日(月)
芸術監督:鈴木忠志
会場:<利賀>富山県利賀芸術公園
   <黒部>宇奈月国際会館「セレネ」、前沢ガーデン野外ステージ(YKK)

ロシア開催:2019年6月15日(土) ― 12月15日(日)
芸術監督:ヴァレリー・フォーキン
会場:サンクトペテルブルク
国立アレクサンドリンスキー劇場 他