芸術局創作・技術部には「衣裳班」があります。今回座談会形式で、衣裳の仕事についてインタビューしました。
—今年で何年目ですか?また担当しているお仕事を教えてください。
清:10年目です。衣裳スタッフです。衣裳のデザインから製作、ワードローブや管理を行っています。
—演劇との出会い、SPACに入るまでの経歴、SPACに入った理由を教えてください。
清:幼少期にリカちゃん人形の洋服を母と作ったり、元々ファッションや何かを作ったりすることに興味がありました。
とはいえ学生時代は運動部だったこともあり体格が良く、自分に似合う服がわからなかったり、自分のお小遣いで服を購入できなかったんです。そんなこともあり、もし自分で作ることができたら、自分の出せるお金の範囲で好きなデザインの洋服が着れると思い、静岡デザイン専門学校のファッションデザイン科に進学しました。専門学校1年生だったときに、静岡デザイン専門学校、通称 静デ卒業生で当時SPAC衣裳班チーフだった故 竹田徹さんと、もうひとり静デの先輩が衣裳班にいて、そのおふたりにSPACの施設を案内してもらったんです。そこではじめてSPACのことを知りました。
舞台芸術公園の稽古場棟で『夜叉ヶ池』の衣裳や、『ドン・ファン』のかつら・仮面製作現場、俳優さんのトレーニングを見学したのですが、普段では着ることのないデザインの衣裳や、かつらや仮面を土台から作る「テアトロ・マランドロ」の海外スタッフさんの技術、トレーニングの迫力に圧倒されました。
この見学で文化祭準備のようなワクワク感や、日常とは違う世界にいけるような演劇や舞台衣裳の世界に面白さを感じ、自分もこんな衣裳を作ってみたい、毎日ワクワクするような世界に入りたいと思いました。
— 衣裳班では、どのような仕事をしていますか?
清:再演だったら、ストックしている衣裳を出して、ほつれを直したり、アイロンをかけてメンテナンスをします。稽古が始まってからはサイズ調整をしたり、演出家やデザイナーとやりとりをして、変更に対応したりします。新作だと、衣裳をデザインして、制作します。
ただそこで終わりではなく、ワードローブといって、本番中の着替えを手伝ったり、本番前、本番後のメンテナンス、管理をおこなったりしています。
—平均で何着ほど作成されているんでしょうか。
清:平均ですか。うーん・・・。そうですね。演目によって違いますね。型紙から作る場合もあれば、既製服を加工して作る場合もあります。
ワンスタイルでカウントするか、靴下1個でもカウントするかでも違ってきます。
—1着をおおよそどのくらいの期間で縫い仕上げているのでしょうか?
清:最低1日1着つくれるくらいのスピードは求められていると思います。『イナバとナバホの白兎』では大量の袴、着物を分担して、完成の予定を立てて作業してました。縫製工場みたいな感じでしたね。
—制作部目線ですと、どれが美術班なのか、衣裳班なのか、演出部なのか、分担をどうしているのかな、と思うことがありますが、どうしているんですか。
清:そうですね(笑)最終的に演出部も込みで皆で直したものもありました。あと作業状況によって手が回らない時もあって。そんな時にこれお願いできますか?これこっちでやりましょうか?とか助け合いですね。

SPAC『ラーマーヤナ物語』(2025)より©︎SPAC photo by 三浦興一
—とある1日のスケジュールを教えてください。
清:ワードローブの1日スケジュールは、基本的に楽屋入りまでに、たとえば開演1時間半前までにアイロンがけを終わらせてセットを完成させられるように、開演時間から逆算して、朝9時スタートまたは10時スタートにしようか、それぞれ担当スタッフが考えて決めています。楽屋入りしてからは、ヘアメイクの梶田さんが来れないときは、ヘアセットの代役で入ったりするときもあります。休憩して、本番して、本番終了後は、洗濯して、アイロンがけして帰ります。
『ばらの騎士』はふたり体制だったので、朝10時にきて、夜19時には帰ることができていたかなと思います。『白狐伝』とか駿府城公園での公演だと、また変わってきますけど。
新作の場合の稽古期間は、美術班と同じように顔を出しますけど、今作業を進めないと!ってときは、稽古にはあえて顔を出さないで、作り続けるときもありますね。
稽古後に俳優さんとのやり取りもあり、そこの時間は作業が進められないので、いかに稽古中に集中して作業をするかが大事ですね。
そうかといって、今日なにもないなっていうときもあります。1日かけての掃除の日も、あります。1年間かけて、荒れていくので(笑)衣裳は基本的には年度末に大掃除をやっています。おもに残布の整理ですね。
—ものが増えていく一方だと思うのですが、どうしているんですか?
清:スペースはないですね。衣裳の場合は流用をするので、何かで使えるんじゃないかってなって、捨てられないんですよね。

—衣裳班での1年間のスケジュールを教えてください。
清:担当する演目によりますが、5月の演劇祭までが忙しくて、6月・7月はだいたいお休みできます。夏の「シアタースクール」「スパカンファン」がはじまって、その担当者は忙しくなって。「秋のシーズン」は、本番から逆算して、「何日までに仕上げないといけないか」を逆算して作業を開始すると段々忙しくなり、「秋のシーズン」1作品目の初日を迎えると、2作品目の作業で忙しくなっていきます。春と秋が忙しいです。2〜3月には落ち着きます。
—外部のお仕事をもらうこともあるんですか?
清:受ける時もありますね。衣裳の他のスタッフにも、個人の仕事があれば、言ってね。それ込みでシフトを考えるからねって伝えていますね。
—面白さ、やっていてよかったことを教えてください。
清:作ることはもちろんですが、作品をとおして自分の感覚や知識だったり視野が広がっていくのも面白いです。
用意した衣裳を俳優さんが想像とは違った使い方をしたり、お客様の感想で、この衣裳が好き、この衣裳はこういったように見えた、とか聞くのも新たな発見になりますね。
ワードローブで舞台袖にいると俳優さんの緊張感や表情の変化を感じる時があります。
モードが変わる時がかっこいいな、と思いますし臨場感が味わえて、とても楽しいです。


『Reborn~灰から芽吹く~』衣裳・衣裳デザイン
—大変なところは何ですか?今後どのような環境にしていきたいと考えていますか?
清:屋内での作品としてつくったものが、屋外で公演するときもあって、そのときに濡れちゃいけない素材で使っているときのメンテナンスが困りますね。あと、ストックする保管場所がなくなってきていて、大変さを感じますね。
宮城さん演出の作品ではヘアメイクでよく梶田さんがいらっしゃいます。でも他の作品でヘアメイク担当自体いないときに、ヘアをやらないといけないときがあって最初は分からないことだらけで大変ですね。ヘアメイクを基礎から学んできたわけでもないので。ただ新しい知識を得る機会でもあるので、やれるのはとても良かったです。『ロミオとジュリエット』のウィッグ担当をした経験は、今に活かされています。
俳優さんが衣裳室に来て、要望を伝えにいらっしゃるときも、それに応えないといけないのが大変ですけど参考になることも沢山あって勉強になります。
人に教える難しさはあります。縫い方でも、それぞれ価値観のちがいを感じます。どういうことを学んできたかにもよりますし。ゴールは同じでも、ひとによって、ゴールまでの行き方がちがうんですよね。
—仕事をする上で大事にしていることは何ですか。
清:意見を聞く、イメージの共有をするということをむずかしいですが大事にしています。なにかを作る上で、重いかな、動きにくいかな、とか考えて、想像することも。
—今後挑戦していきたいことを教えてください。
清:個人的には、すぱっくおやこ小学校とか、アウトリーチ活動にも関わっていきたいなとは思っています。「てあとるてをとる」学校公演に同行したときにSPACの外でやること、小学生たちの素直な反応を感じるのが面白いなと思ったのがきっかけだったんですけど。
2024年度のおやこ小学校では、春日井さんから「蝶ネクタイ」を作ってほしいというリクエストをきっかけに、おやこ小学校でYORIKOさんと接点がとれて、うれしかったです。
おやこ小学校自体、今まで関わってみたいな、、と影からこっそり見ていたので、蝶ネクタイ以外にも準備の段階にも手伝わせていただけたのも良かったです。
—創作・技術部の良いところはどんなところですか?
清:いろんなバックグランドのある人がいるところですね。衣裳でもお面をつくるのが得意、染めが得意とか、ありますね。
あと、困っている班がいたら助け合うのも良い点だと思います。
—創作・技術部に挑戦してみてほしい人はどのような人ですか?
清:ちょっとでもSPACを知っている人がいいのかな。なんでここに入りたいか、理由を話せる人であればいいのかなと思います。
漠然と、やりたい!という気持ちがあれば。ある程度の技術は必要だけれど、最初からしっかりした技術がなきゃ!とは思わなくてもいいのかも。
どの職業もそうですけど、経験していく中で得る技術や知識は多くありますし、日々吸収しようとする気持ちさえしっかりあれば、良いのではと私は思います。