イサーム・ブーハーレド
レバノンの俳優、作家、演出家。痛烈な喜劇と哀切な悲劇が隣り合うイサーム・ブーハーレドの作品群は、つねに相反する要素が共存し、複雑なダイナミズムを生んでいくレバノン社会の鏡のようでもある。戦争をグロテスクで不条理なユーモアで描いた三部作『列島』(1999年)、『行進!』(2004)、『バナフサジ(すみれ)』(09)などで知られる。また、聾唖者の劇団「デシベル」を創立し、『音のない世界』(07)を創作。ベイルート劇場の芸術監督を09年から12年まで務め、「デシベル」をその運営に参加させた。フランス、ドイツ、イタリア、エジプト、チュニジア、ヨルダンなど、国外公演多数。また映画俳優として、オリヴィエ・アサヤス監督『カルロス』(10)など、国内外の数々の作品に出演。
ファーディー・アビーサムラー
レバノンの俳優。1990年にレバノン大学で演劇学修士号を取得。87年から舞台、映画などで俳優として活躍。中東のテレビドラマでも人気を博している。イサームとはロジェ・アッサーフ演出による『ゴドーを待ちながら』の翻案(03年)、映画『カルロス』(10年)などで共演。
日本初演 演劇/レバノン
作・演出: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー
(サルマド・ルイの協力による)
出演: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー
公演情報
5/2(土) 17:00
5/3(日) 12:00
5/4(月・祝) 13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」(全席自由) アクセス
■上演時間: 50分 アラビア語上演/日本語字幕
◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎終演後にイサーム・ブーハーレドならびにファーディー・アビーサムラー(ともに作・演出・出演)と宮城聰(SPAC芸術総監督)によるアーティスト・トークを行います。
チケット
一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
各種割引がございます。詳しくはこちら
※背もたれのない客席になります。
※乳幼児を連れてのご入場はご遠慮ください。
作品紹介
中東の「今」を笑いで描く
これは新しい『ゴドー』?!
中東で大人気の名優による粋でシュールな二人芝居
一見無意味にも見える、過剰な饒舌の裏に表に、長い内戦と根強い宗教対立によって疲弊した国民の、絶望的な日常が見えてくる…。これはベケットの『ゴドーを待ちながら』のシチュエーションを借りつつ、俳優の個性と社会背景を軸に、即興を重ねて磨かれた舞台である。決して来ない誰かを待ちながら、話し続ける二人。会話のリズムと間が絶妙で、あっという間に荒唐無稽な言葉の世界に引き込まれていく。ベイルートでは、48時間前の告知でも必ず満席になるという伝説の舞台が、ついに静岡初上陸!中東のカルチャーシーンの現在を知る意味でも貴重な機会といえよう。
常に死と隣り合わせ
そんな状況下ではすべてが笑いに変わる
アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ、文化の十字路・ベイルート。中東有数のこの文化都市も、内戦の傷跡は深く、今でもシリアとイスラエルの間で翻弄され続けている。そして現在、内戦の時代に幼少期を過ごしたアーティストたちが、世界のさまざまなアートシーンで注目を浴びている。彼らの作品の特徴は、忘れ難き故郷への思いが、不条理な展開やブラックユーモアの形で盛り込まれ、作品を強靭にしていること。本作の演出家で俳優であるイサーム・ブーハレードとファーディー・アビーサムラーも、アラブ演劇人特有の手法で祖国の状況を風刺し、国内外から多くの共感と絶賛を得ている。
あらすじ
ベイルートの街頭、みすぼらしい姿の男が二人、新聞を広げている。食い入るように眺めているのは、なぜか訃報欄ばかり。「車で死んだ男がいるぞ!」「はねられたのか?」「事故に遭ったらしい」「車種は?年式は?」「知るもんか。でも食いものは出そうだぜ」「こっちの医者の葬式と、どっちがいいもの食えるかな?」どちらの葬式に顔を出すかで揉める二人の会話はエスカレートしていき、ことあるごとに複雑で激しい対立構造が再燃するレバノンの今日を映し出す。やがて二人は、あることに気がつくのだが…。