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2022年5月28日

★特別対談★ 柄本明× 宮城聰

今も昔も「空気をよまない」はおもしろい!

 ふじのくに⇄せかい演劇祭2015では、約50年前に「アングラ演劇」と呼ばれたオルタナティブな表現を指針に多様な表現者が集められた。日本随一の演劇の街・下北沢にアトリエを構える劇団東京乾電池は、2016年で創立40年を迎える。「アングラ演劇」の影響下で出発した同劇団をけん引し、映画やテレビでもなじみ深い俳優・柄本明は、独特の風貌と意表を突く演技により、演劇界においてひときわ異彩を放ってきた。SPAC芸術総監督・宮城聰が柄本明と語る、「空気を読む」の彼岸にある、演劇のほがらかな地平とは?

■アングラ演劇と政治の季節

宮城 アングラ演劇の第1世代には、鈴木忠志さん(※)、唐十郎さん(※)、寺山修司さん(※)、別役実さん(※)など、様々な演出家や劇作家がいますが、柄本さんはこういった人の芝居を観て演劇の道に入ったんですか?
柄本 ぼくは鈴木忠志さんの早稲田小劇場なんです。『どん底における民俗学的分析』(1968)ですか。あれを観てね。笑えたんですよねえ。ぼくにとって一番おもしろかった芝居は、最初に観たこの作品じゃないかな。いまだにね。歌謡曲がかかって、役者がすごい形相で出てくるんです。1時間ぐらいの芝居でした。まだ小野碩さんが生きてらして、鈴木両全さん、白石加代子さん、蔦森皓祐さん、高橋美智子さんらが出てましたね。笑えて笑えて…
宮城 柄本さんは、その時、おいくつでした?
柄本 20歳です。
宮城 芝居はされてたんですか?
柄本 いや、そんな場所がカッコよく見えて…「青春の誤解」ですね。当時、時代がそうだったでしょう。ベトナム戦争があって、全共闘(※)の運動があって、ぼくは高卒だったんでノンポリですけど、大学生の友達なんかはそういうものに関わっていて…時代ですね。演劇はアングラ、映画はATG(※)。カッコよく見えたんですよ、なんだかね。
宮城 鈴木さんは、早稲田の喫茶店「モンシェリ」の2階に劇場をつくりました。
柄本 早稲田小劇場はアカデミックでしたね。アカデミックだけど…どういう風に言っていいかわからないんだけど、アカデミックってやっぱりくだらないんだなあって。おもしろかったなあ。その後に唐さんの状況劇場を観ました。ぼくは自由劇場(※)はダメでした。天井桟敷はわかんなかった。とにかく観てはいましたね。早稲田小劇場も続けて観ました。『劇的なるものをめぐってⅠ』(1969)、『劇的なるものをめぐってⅡ』(1970)。最後が『夜と時計』(1975)かな。
宮城 ぼくは高校1年か2年の時、唐さんの『唐版・滝の白糸』や状況劇場を観に行きました。隙間を狙っていたんです。バンドや絵や小説だと、すでにぼくよりはるかに上手いやつがいる。まだ誰も手をつけていないのが演劇だった。状況劇場とか観に行くと、ちょっとエバレルでしょ、内心エバッテルだけだけど(笑)。とは言え、その頃の状況劇場は一世を風靡していましたね。不忍池の紅テントは週刊誌のグラビアにも出ていました。
柄本 そうそう。大変なものでしたね。ただ、なんだろうな、同時に、変な買いかぶり方もあったような気がするね。唐さんは「嫌いだ」って言ってたけど…例えば、全共闘の「異議なし!」とか掛け声がかかったりするのはね。そういうのは好きじゃなかったねえ。芝居をやっているんだから。東映のやくざ映画が盛り上がるにしても、全共闘の運動と結びつけて…。過剰に言葉が飛び交っていた時代。ぼくなんか、そういう話をしている人たちをじっと見ながら、ああいうのは止めようって思ったね(笑)。
宮城 状況劇場を観に行くと、テレビに出てくる役者と違って、こんなのありなんだ…という感じがありました。何を言っているかよくわからない人が出てきて、客席から声がかかったり…何を言っているのかわからないのに(笑)。
柄本 「唐!」とかね。今でもかかってるけど。
宮城 すごく単純に言うと、ぼくなんかは自由を感じたのかな。
柄本 ぼくはどうしても「くだらない」という言葉を使っちゃうんです。「くだらねえよなあ」って言葉になっちゃうんですよね。早稲小も、ある種、格調高くやるんだけど、それが度を越しているというか。アカデミックにつくっていくということが、アカデミックであるがゆえに逸脱していくというか…どうですかね?
宮城 たぶん鈴木さんは滑稽なものだと思っているでしょうね。あまりにも立派という先入見で、お客さんが笑わなくなったかもしれません。鈴木さん自身は、人間は滑稽なものだということを…
柄本 そうですよね。
宮城 鈴木さんの言い方をすれば、「無残な」ね。

■「空気を読まない」を応援する

宮城 今回の演劇祭では、アングラ小劇場の遺産をどう下の世代が受け継いでいるかということ。それにあの時代に海外でも起こっていた似たような表現を紹介します。ぼくの演出で唐さんの『ふたりの女』を再演しますし、太田省吾さんの戯曲を韓国の演出家イ・ユンテクさんが演出します。台湾の林麗珍(リン・リーチェン)さんは初来日公演。どこか土方巽さん(※)を思わせるものがあります。映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーが書いた戯曲の上演もあります。
柄本 へえ、ホドロフスキーさんが書いているんですか。
宮城 日本のアングラ小劇場ではないですが、寺山さんとシンクロニシティのようにして登場した映画監督ですよね。「アングラ演劇」と言うと日本の演劇の話になるので、ほかの演目も含むことができるように、今回の演劇祭では「オルタナティブ」という言葉を使っています。
柄本 「オルタナティブ」って調べたんですけど、何でしたっけ?
宮城 「これ以外のべつの」「これじゃないもうひとつの」という意味ですね。でも「何かべつの」という訳ではパッとしない。そこで「空気を読まない」と訳してみたんです。新劇がメインストリームであった時代、状況劇場が63年、早稲田小劇場が66年、天井桟敷が67年にできています。新劇に対して「これじゃねえだろう」という感じで出てきたわけですね。
柄本 それを「オルタナティブ」という言葉にしているんですね。
宮城 「空気を読む」というのは、「長い物には巻かれろ」というか、「90%がそうなら残りの10%をそれに合わせよう」とか、最近では「55%がそうなら残りの45%も向こうに合わせておこう」みたいなね。今とにかく若い人たちがそうなんですよ。浮かないようにしようって必死で。
柄本 その逆のことをおっしゃってるんですよね?
宮城 そうです。そうじゃないものってないの?って。
柄本 空気を読むのはやめようよってこと?
宮城 ぼくはそう思うんですけど、今の若い人たちはもっと熾烈というか、ちょっと空気を読まないでいると村八分みたいになったり、なんだか過酷らしい。
柄本 そうなんですか。
宮城 色んなやつがいていいという感じがなくなっちゃってるみたいで。ぼくらの頃はまだクラスの中で全然しゃべらないやつとかいたと思うんだけど…。
柄本 ぼくなんかが劇団の子に言うのは、要するに、見られるということです。見られると色々と感じるでしょう。見られる時に、自分の中のべつの自分と出会うことができる。それはあなたの演劇だというような生意気なことを言っています。それはあなたの演劇であって、あなたしか感じていないことだから、いいとか悪いとか言う筋合いもない。そうなっちゃったんだからって。そう言われると、勝手に考えるでしょう。そういう意味では各自各自。

■見る力が誘う笑いのほうへ

宮城 中高生は見られることを避けてるんだろうなと、今お話を聞いて思いました。彼らはあまり相手を見ないんですよ。ボールを投げる瞬間だけ相手を見てすぐに目をそらす感じで、覗きこまないようにしているみたいです。
柄本 1年に1回、中学校で読み聞かせをやっています。中学1年生かな。一昨日、3クラスやったんです。今言ったこと、たぶんそうだと思う。だからぼく見ないんです。中学生を。そうすると、こっちを見てるみたいですよ(笑)。「質問があります」と中学生が言って立ち上がるでしょう。でもぼくは見ない。そうするとやっぱり向こうは見てるみたいです。ぼくもそういうことを感じてるのかもしれないな…。
宮城 安心するんでしょうね。見られた時に何かが起っちゃって何かをしてしまう、その恥ずかしい感じを、極力味わわなくて済むように、体の中に波風が立たないようにしているのかなと思うことがあります。ナンバ歩き(※)になっちゃうこととか、ああいうことが起こらないでほしいと思っているのかな。でもそこから自由みたいなものが出てくるのかなと思うんですよ。ナンバで歩いちゃった、みたいなことからね。ぼくにとってのアングラ小劇場の芝居の魅力は、ものすごく恥ずかしいことになっちゃってる人が、ものすごく恥ずかしい状況の中で、なんだか自由に見えるってことだと思います。
柄本 そうですね。逸脱したというかね。アングラが飽和状態になっていくと、逸脱が目的になっちゃうんですよ。最初から変なことをすればいいということになると、これは違うんです。その人はその人でどうしてもそうなっちゃう…状況劇場なんかはそういうものを見せてくれましたね。
宮城 今の中高生に変なやつらが舞台の上にいるってことを見てもらいたいと思う。変なまんまでいいってね。誰でも変になったりするんだと思うし、それが笑えたりするんだと思うんだけど、今彼らはなるべくそれを隠す、変にならないようにしているようです。
柄本 観る力っていうのが、テレビなんかで画一化されているんじゃないですかね。わかりやすいものでないといけないって。わからないのにね。わかるもんじゃないのに。ある時からテレビにテロップが出始めたじゃないですか。ものすごくゾッとすることなんだけど。わりと大きな変化だったと思いますね。
宮城 ここで笑うところだよって教えてくれるんですよね。
柄本 人間って皆、変だからね。変であるし普通であるし。だってこうやって見ても(周囲のスタッフの中にオシャレなカメラマンを見つけて)ああいう髪型してるよ(笑)。そういうふうに「観る」目線でやっていきゃあ、どうしたって笑えるよね。すみません…ぼくがおかしいのかな(笑)。ぼくは学芸会が好きなんですよ。小学校の低学年だと、それぞれがそれぞれでしょう。本当に一生懸命やる子もいれば、言うことを聞かない子もいる。そういうことにぼくは泣けたりするし、感動したりするんだけどね。
宮城 柄本さんは、ちっちゃい子のような感じを上手になさいますよね。ぼくにとって柄本さんと唐さんの似ているところは、ちっちゃい子のような演技をするところです。ものすごく上手い。
柄本 どうなんでしょうね。ただ、そういうことができる状態の時は悪くはないんじゃないかなという気はします。自由になる端緒を見つけたという感じなのかもしれませんね。

■ただいるだけでおもしろい

柄本 鈴木忠志さんが早稲小の後に、利賀村や水戸(※)でやっていたでしょう。それから静岡も。でも一度も見たことがなかったんですよ。それで劇団の子たちと静岡に一緒に観に行ったんです。宮城さんの『ふたりの女』。舞台の床が、変わっていましたね。どうなっていたんですか?
宮城 野外劇場なので、舞台の床板がすぐに腐っちゃうんですね。そろそろ取り替えなきゃいけないという話になって、剥がしてみたら、根太(※)があった。そこで根太の上で演じた方がおもしろいんじゃないかということになりました。
柄本 そういう風にしようと思ってデザインしたわけでもないんですね?
宮城 劇場そのままです。唐さんの芝居をやる時に、セリフを言ってなくても、俳優の体を見ていられるようじゃなきゃダメだなと思いました。そこにただいるだけでおもしろい状態をどうつくればいいのかなと。
柄本 どのくらいの尺でしたか?
宮城 間が15センチくらいの格子状になっていたと思います。
柄本 じゃあ、かなり不安定ですよね。
宮城 そうなんです。皆やたら足を擦りむいていましたけど、いつも気をつけないといけないので、立っているだけで必死なんです。それでなんとか唐さんの本が見ていられるようになるんじゃないかなと思いまして…。
柄本 わかるわかる。確か『ふたりの女』の初演は、石橋蓮司さんと緑魔子さんの第七病棟(※)がやったんでしたね。
宮城 (第七病棟のアトリエがあった)町屋で見ました。
柄本 砂ですよね。
宮城 そうそう舞台に砂が敷かれていて…。
柄本 『砂に書いたラブレター』がかかるんですよね。
宮城 小さなアトリエでどうやったのかと思いますけど、最後は、砂の中に役者が埋もれていってね。
柄本 あれはラジオドラマだったんですよ。それを蓮司さんが見つけてきたみたい。
宮城 ただいるだけでおもしろいって話ですけど、前に麿赤兒さん(※)に聞いて笑っちゃいました。70年代の状況劇場、麿さんや四谷シモンさん(※)がいた頃って、麿さんが一番マトモだったそうですね。
柄本 そうそう、麿さんは学校の先生みたいな人だから。
宮城 麿さんが「新劇的なやつがいる」って批判されていたらしい(笑)。ともかくいるだけでおかしい、テンションというか、セリフを言わないうちからなんとなく…そういうのはなかなか、ぼくから考えると、俳優が練習して獲得できるものではないという感じがして、それでもそれをどうやったらやれるのかなあと思いましてね。
柄本 ぼくは大久保鷹さん(※)も知ってるけど、いい加減にしろですね。いや、いい意味でなんだけど。2人芝居やっててセリフを憶えないんだもん。本番これだよ(イヤホンを耳に入れるしぐさ)。都合のいいことに髪の毛長かったの。稽古はひと月くらいあったのに…。イヤホンを渡されて、大久保鷹がなんて言ったと思う? 普通さ、そういうものを渡されるって屈辱的なことだと思いませんか? 大久保鷹は違うもん。「なんだ、こんな便利なものがあったのか」だって。
宮城 (笑)。
柄本 でも、だからいいんだよね。そういう人間なんだもん。真面目にセリフを憶える人と、そういう人間と、どっち見たい? 真面目とか不真面目とか言うけどさ。まあ、セリフを憶えないのはいけないと思うよ。何かをやる以前の問題だという気がするけど(笑)。だけど、だけどだよ、そういう人間が出てくるんだよ。そういう人いないもん。おもしろいよ。

■共感も悪意も…演劇を続ける人間

柄本 歌舞伎というテーゼがあって、アンチテーゼとして新劇が出る。そのアンチとしてアングラ演劇が生まれて、アングラからお笑い劇団みたいなものが出てきて…アンチの方が勢いを持ちやすいわけでしょう。文句を言う方がさ(笑)。そこから学んでるんでしょう。同じことをやっても仕方がないわけだよね。自分が芝居を始めた頃は、バイトした金で小屋を借りてやるでしょう。それで友達を呼んでさ。だから何をどうやってもいいんだよ。東京乾電池が渋谷のジァン・ジァン(※)である種の勢いを持っていた。即興でつくっていたんですけどね。お客さんは来ていたけど、勢いがなくなっていきました。やたら観客が笑うんだよね。腹立ってくるんだよね。もう即興はダメだと。本をつくらなきゃダメだと。岩松了(※)に相談して2人で話し始めた。「お客さんって劇場に来たら帰らないよね。お客さんが帰ったらおもしろいよね」って話して…そういう風な言葉を使って、使ってって言うか…「緊張感のない芝居をつくろう」とかね。つまり、「おもしろい芝居をつくろう」と言うより勇気がわく。悪意の発揚…。最初に『お茶と説教』(※)をやった時、どんどんお客さんがシーンとしていきました。ものすごい嬉しかった。東京乾電池ってお笑い劇団だと思われてたから。だけどおもしろいのよ。岩松という人の書く本がね。芝居もおもしろかった。色んな演劇があると思うんだけど、やっている人とお客さんの感じが離れていくんだよね。お互い他人なんだということがハッキリする。そんな中でも、クスクスって…。たちの悪い人間もいるんだよ。そのことがわかる人もね。この悪意と言うか何と言うか…でも(共感を跳ね返す力は)誰でも持ってるものじゃない? 人間にはそういうものがついてるんだから。昔っから。新しくとも何ともない。善意だけで生きてるわけじゃねえからさ。そういうものができるっていうのは、アマチュアってのが好きなんでしょうね。
宮城 そうは言っても、なかなか柄本さんみたいに、観客の期待を裏切ることが、案外できないですね。
柄本 そうですね。
宮城 劇団にお客さんが来てきてますから。
柄本 だからまあ、そういう方法を使って、新たにこう行かないとダメだということで、やったんだと思う。観客への敵意だけじゃないよ、作戦も含めてね。
宮城 それができた劇団ってあんまり多くない。お客さんもあれが観たいという感じで来るでしょう。そのまま続けて、あるところまで行って解散。そういう人の方が多いですよね。
柄本 来年で40年になります。
宮城 劇団を続けるの簡単なことじゃないですよ。
柄本 うち、60人くらいいるんですよ。多いですよね。大変という意識はないね。いい加減だからかな、俺が。
宮城 実際、多くの劇団は解散してますね。
柄本 今、劇団ってものがなかなかない。プロデュース公演ばっかりになっている。(劇団は)好きだからやってんじゃない? て言うか、そういうことで始めちゃったわけでしょう。そういうことになっちゃったということじゃないのかな。ここで頑張ったからとか、何にもないもん。しょうがないよ、こういうことになっちゃったんだよ。他に可能性はあったかもしれないよ(笑)。ごめんね、そういう言い方で。でもね、こういうものって昔からなくならないわけでしょう。皆がわさわさ集まってきて、誰かが号令かけて、何かが始まるわけだけども…なんだろうね。芝居ってどれくらい? 紀元前?
宮城 紀元前ですね(笑)。
柄本 そういう頃からずっとやってるわけだから、これからも続くんじゃないの?
宮城 人間がいるところに必ず芝居があるから。
柄本 お祭りですよね。

2015年2月24日 下北沢の喫茶店「トロワ・シャンブル」にて
写真撮影は「アトリエ乾電池」「トロワ・シャンブル」にて

構成:西川泰功
写真撮影:有本真大


柄本明(えもと・あきら)
劇団東京乾電池座長・俳優・演出家。
1948年、東京生まれ。高校卒業後、商社に就職。劇団マールイ、電気亀・団(後のオンシアター自由劇場)を経て、1976年劇団東京乾電池を結成。映画『カンゾー先生』(今村昌平監督)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。



宮城聰(みやぎ・さとし)
SPAC芸術総監督・演出家



鈴木忠志/演出家。1939年生まれ。1966年早稲田小劇場(後のSCOT)結成。1995年から2007年まで初代SPAC芸術総監督。
唐十郎/劇作家、俳優、演出家。1940年生まれ。1963年シチュエーションの会(後の状況劇場)結成。
寺山修司/詩人、劇作家。1935年生まれ。1967年演劇実験室天井桟敷結成。1983年逝去。
別役実/劇作家。1937年生まれ。鈴木忠志らとともに早稲田小劇場結成。
全共闘/全学共闘会議の略称。1960年代後半の大学紛争を担う。
ATG/日本アート・シアター・ギルドの通称。映画製作・配給会社。60年代より非商業主義映画を普及。
自由劇場/串田和美、斎藤憐、佐藤信、吉田日出子らにより1966年に結成。
土方巽/舞踏家。1928年生まれ。暗黒舞踏を創始。60年代アングラ演劇に多大な影響を与える。1986年逝去。
ナンバ歩き/手をほとんど振らないか、振る際は同じ側の手足を同時に動かす歩き方。
利賀村や水戸/富山県南砺市利賀村には富山県利賀芸術公園が、茨城県水戸市には水戸芸術館ACM劇場があり、ともに鈴木忠志が創設に尽力。
根太/床板を支える横木。
第七病棟/石橋蓮司、緑魔子らにより1976年に結成。1979年唐十郎作『ふたりの女』初演。
麿赤兒/舞踏家、俳優。1943年生まれ。状況劇場参加の後、1972年舞踏集団大駱駝艦結成。
四谷シモン/人形作家。1944年生まれ。1967年より状況劇場に出演。
大久保鷹/俳優。1943年生まれ。1965年より状況劇場に出演。
ジァン・ジァン/東京・渋谷に1968年から2000年まで存在した小劇場。
岩松了/劇作家、演出家、俳優。1952年生まれ。オンシアター自由劇場を経て東京乾電池結成に参加。
『お茶と説教―無関心の道徳的価値をめぐって』/1986年初演、岩松了作。平凡な日常に潜む小さな悪意を淡々と描く。後の「静かな演劇」の先駆とも言える。


2021年1月16日

★特別対談★ 柄本明× 宮城聰


柄本明(えもと・あきら)
劇団東京乾電池座長・俳優・演出家。
1948年、東京生まれ。高校卒業後、商社に就職。劇団マールイ、電気亀・団(後のオンシアター自由劇場)を経て、1976年劇団東京乾電池を結成。映画『カンゾー先生』(今村昌平監督)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。



宮城聰(みやぎ・さとし)
SPAC芸術総監督・演出家



鈴木忠志/演出家。1939年生まれ。1966年早稲田小劇場(後のSCOT)結成。1995年から2007年まで初代SPAC芸術総監督。
唐十郎/劇作家、俳優、演出家。1940年生まれ。1963年シチュエーションの会(後の状況劇場)結成。
寺山修司/詩人、劇作家。1935年生まれ。1967年演劇実験室天井桟敷結成。1983年逝去。
別役実/劇作家。1937年生まれ。鈴木忠志らとともに早稲田小劇場結成。
全共闘/全学共闘会議の略称。1960年代後半の大学紛争を担う。
ATG/日本アート・シアター・ギルドの通称。映画製作・配給会社。60年代より非商業主義映画を普及。
自由劇場/串田和美、斎藤憐、佐藤信、吉田日出子らにより1966年に結成。
土方巽/舞踏家。1928年生まれ。暗黒舞踏を創始。60年代アングラ演劇に多大な影響を与える。1986年逝去。
ナンバ歩き/手をほとんど振らないか、振る際は同じ側の手足を同時に動かす歩き方。
利賀村や水戸/富山県南砺市利賀村には富山県利賀芸術公園が、茨城県水戸市には水戸芸術館ACM劇場があり、ともに鈴木忠志が創設に尽力。
根太/床板を支える横木。
第七病棟/石橋蓮司、緑魔子らにより1976年に結成。1979年唐十郎作『ふたりの女』初演。
麿赤兒/舞踏家、俳優。1943年生まれ。状況劇場参加の後、1972年舞踏集団大駱駝艦結成。
四谷シモン/人形作家。1944年生まれ。1967年より状況劇場に出演。
大久保鷹/俳優。1943年生まれ。1965年より状況劇場に出演。
ジァン・ジァン/東京・渋谷に1968年から2000年まで存在した小劇場。
岩松了/劇作家、演出家、俳優。1952年生まれ。オンシアター自由劇場を経て東京乾電池結成に参加。
『お茶と説教―無関心の道徳的価値をめぐって』/1986年初演、岩松了作。平凡な日常に潜む小さな悪意を淡々と描く。後の「静かな演劇」の先駆とも言える。


今も昔も「空気をよまない」はおもしろい!

 ふじのくに⇄せかい演劇祭2015では、約50年前に「アングラ演劇」と呼ばれたオルタナティブな表現を指針に多様な表現者が集められた。日本随一の演劇の街・下北沢にアトリエを構える劇団東京乾電池は、2016年で創立40年を迎える。「アングラ演劇」の影響下で出発した同劇団をけん引し、映画やテレビでもなじみ深い俳優・柄本明は、独特の風貌と意表を突く演技により、演劇界においてひときわ異彩を放ってきた。SPAC芸術総監督・宮城聰が柄本明と語る、「空気を読む」の彼岸にある、演劇のほがらかな地平とは?

■アングラ演劇と政治の季節

宮城 アングラ演劇の第1世代には、鈴木忠志さん(※)、唐十郎さん(※)、寺山修司さん(※)、別役実さん(※)など、様々な演出家や劇作家がいますが、柄本さんはこういった人の芝居を観て演劇の道に入ったんですか?
柄本 ぼくは鈴木忠志さんの早稲田小劇場なんです。『どん底における民俗学的分析』(1968)ですか。あれを観てね。笑えたんですよねえ。ぼくにとって一番おもしろかった芝居は、最初に観たこの作品じゃないかな。いまだにね。歌謡曲がかかって、役者がすごい形相で出てくるんです。1時間ぐらいの芝居でした。まだ小野碩さんが生きてらして、鈴木両全さん、白石加代子さん、蔦森皓祐さん、高橋美智子さんらが出てましたね。笑えて笑えて…
宮城 柄本さんは、その時、おいくつでした?
柄本 20歳です。
宮城 芝居はされてたんですか?
柄本 いや、そんな場所がカッコよく見えて…「青春の誤解」ですね。当時、時代がそうだったでしょう。ベトナム戦争があって、全共闘(※)の運動があって、ぼくは高卒だったんでノンポリですけど、大学生の友達なんかはそういうものに関わっていて…時代ですね。演劇はアングラ、映画はATG(※)。カッコよく見えたんですよ、なんだかね。
宮城 鈴木さんは、早稲田の喫茶店「モンシェリ」の2階に劇場をつくりました。
柄本 早稲田小劇場はアカデミックでしたね。アカデミックだけど…どういう風に言っていいかわからないんだけど、アカデミックってやっぱりくだらないんだなあって。おもしろかったなあ。その後に唐さんの状況劇場を観ました。ぼくは自由劇場(※)はダメでした。天井桟敷はわかんなかった。とにかく観てはいましたね。早稲田小劇場も続けて観ました。『劇的なるものをめぐってⅠ』(1969)、『劇的なるものをめぐってⅡ』(1970)。最後が『夜と時計』(1975)かな。
宮城 ぼくは高校1年か2年の時、唐さんの『唐版・滝の白糸』や状況劇場を観に行きました。隙間を狙っていたんです。バンドや絵や小説だと、すでにぼくよりはるかに上手いやつがいる。まだ誰も手をつけていないのが演劇だった。状況劇場とか観に行くと、ちょっとエバレルでしょ、内心エバッテルだけだけど(笑)。とは言え、その頃の状況劇場は一世を風靡していましたね。不忍池の紅テントは週刊誌のグラビアにも出ていました。
柄本 そうそう。大変なものでしたね。ただ、なんだろうな、同時に、変な買いかぶり方もあったような気がするね。唐さんは「嫌いだ」って言ってたけど…例えば、全共闘の「異議なし!」とか掛け声がかかったりするのはね。そういうのは好きじゃなかったねえ。芝居をやっているんだから。東映のやくざ映画が盛り上がるにしても、全共闘の運動と結びつけて…。過剰に言葉が飛び交っていた時代。ぼくなんか、そういう話をしている人たちをじっと見ながら、ああいうのは止めようって思ったね(笑)。
宮城 状況劇場を観に行くと、テレビに出てくる役者と違って、こんなのありなんだ…という感じがありました。何を言っているかよくわからない人が出てきて、客席から声がかかったり…何を言っているのかわからないのに(笑)。
柄本 「唐!」とかね。今でもかかってるけど。
宮城 すごく単純に言うと、ぼくなんかは自由を感じたのかな。
柄本 ぼくはどうしても「くだらない」という言葉を使っちゃうんです。「くだらねえよなあ」って言葉になっちゃうんですよね。早稲小も、ある種、格調高くやるんだけど、それが度を越しているというか。アカデミックにつくっていくということが、アカデミックであるがゆえに逸脱していくというか…どうですかね?
宮城 たぶん鈴木さんは滑稽なものだと思っているでしょうね。あまりにも立派という先入見で、お客さんが笑わなくなったかもしれません。鈴木さん自身は、人間は滑稽なものだということを…
柄本 そうですよね。
宮城 鈴木さんの言い方をすれば、「無残な」ね。

■「空気を読まない」を応援する

宮城 今回の演劇祭では、アングラ小劇場の遺産をどう下の世代が受け継いでいるかということ。それにあの時代に海外でも起こっていた似たような表現を紹介します。ぼくの演出で唐さんの『ふたりの女』を再演しますし、太田省吾さんの戯曲を韓国の演出家イ・ユンテクさんが演出します。台湾の林麗珍(リン・リーチェン)さんは初来日公演。どこか土方巽さん(※)を思わせるものがあります。映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーが書いた戯曲の上演もあります。
柄本 へえ、ホドロフスキーさんが書いているんですか。
宮城 日本のアングラ小劇場ではないですが、寺山さんとシンクロニシティのようにして登場した映画監督ですよね。「アングラ演劇」と言うと日本の演劇の話になるので、ほかの演目も含むことができるように、今回の演劇祭では「オルタナティブ」という言葉を使っています。
柄本 「オルタナティブ」って調べたんですけど、何でしたっけ?
宮城 「これ以外のべつの」「これじゃないもうひとつの」という意味ですね。でも「何かべつの」という訳ではパッとしない。そこで「空気を読まない」と訳してみたんです。新劇がメインストリームであった時代、状況劇場が63年、早稲田小劇場が66年、天井桟敷が67年にできています。新劇に対して「これじゃねえだろう」という感じで出てきたわけですね。
柄本 それを「オルタナティブ」という言葉にしているんですね。
宮城 「空気を読む」というのは、「長い物には巻かれろ」というか、「90%がそうなら残りの10%をそれに合わせよう」とか、最近では「55%がそうなら残りの45%も向こうに合わせておこう」みたいなね。今とにかく若い人たちがそうなんですよ。浮かないようにしようって必死で。
柄本 その逆のことをおっしゃってるんですよね?
宮城 そうです。そうじゃないものってないの?って。
柄本 空気を読むのはやめようよってこと?
宮城 ぼくはそう思うんですけど、今の若い人たちはもっと熾烈というか、ちょっと空気を読まないでいると村八分みたいになったり、なんだか過酷らしい。
柄本 そうなんですか。
宮城 色んなやつがいていいという感じがなくなっちゃってるみたいで。ぼくらの頃はまだクラスの中で全然しゃべらないやつとかいたと思うんだけど…。
柄本 ぼくなんかが劇団の子に言うのは、要するに、見られるということです。見られると色々と感じるでしょう。見られる時に、自分の中のべつの自分と出会うことができる。それはあなたの演劇だというような生意気なことを言っています。それはあなたの演劇であって、あなたしか感じていないことだから、いいとか悪いとか言う筋合いもない。そうなっちゃったんだからって。そう言われると、勝手に考えるでしょう。そういう意味では各自各自。

■見る力が誘う笑いのほうへ

宮城 中高生は見られることを避けてるんだろうなと、今お話を聞いて思いました。彼らはあまり相手を見ないんですよ。ボールを投げる瞬間だけ相手を見てすぐに目をそらす感じで、覗きこまないようにしているみたいです。
柄本 1年に1回、中学校で読み聞かせをやっています。中学1年生かな。一昨日、3クラスやったんです。今言ったこと、たぶんそうだと思う。だからぼく見ないんです。中学生を。そうすると、こっちを見てるみたいですよ(笑)。「質問があります」と中学生が言って立ち上がるでしょう。でもぼくは見ない。そうするとやっぱり向こうは見てるみたいです。ぼくもそういうことを感じてるのかもしれないな…。
宮城 安心するんでしょうね。見られた時に何かが起っちゃって何かをしてしまう、その恥ずかしい感じを、極力味わわなくて済むように、体の中に波風が立たないようにしているのかなと思うことがあります。ナンバ歩き(※)になっちゃうこととか、ああいうことが起こらないでほしいと思っているのかな。でもそこから自由みたいなものが出てくるのかなと思うんですよ。ナンバで歩いちゃった、みたいなことからね。ぼくにとってのアングラ小劇場の芝居の魅力は、ものすごく恥ずかしいことになっちゃってる人が、ものすごく恥ずかしい状況の中で、なんだか自由に見えるってことだと思います。
柄本 そうですね。逸脱したというかね。アングラが飽和状態になっていくと、逸脱が目的になっちゃうんですよ。最初から変なことをすればいいということになると、これは違うんです。その人はその人でどうしてもそうなっちゃう…状況劇場なんかはそういうものを見せてくれましたね。
宮城 今の中高生に変なやつらが舞台の上にいるってことを見てもらいたいと思う。変なまんまでいいってね。誰でも変になったりするんだと思うし、それが笑えたりするんだと思うんだけど、今彼らはなるべくそれを隠す、変にならないようにしているようです。
柄本 観る力っていうのが、テレビなんかで画一化されているんじゃないですかね。わかりやすいものでないといけないって。わからないのにね。わかるもんじゃないのに。ある時からテレビにテロップが出始めたじゃないですか。ものすごくゾッとすることなんだけど。わりと大きな変化だったと思いますね。
宮城 ここで笑うところだよって教えてくれるんですよね。
柄本 人間って皆、変だからね。変であるし普通であるし。だってこうやって見ても(周囲のスタッフの中にオシャレなカメラマンを見つけて)ああいう髪型してるよ(笑)。そういうふうに「観る」目線でやっていきゃあ、どうしたって笑えるよね。すみません…ぼくがおかしいのかな(笑)。ぼくは学芸会が好きなんですよ。小学校の低学年だと、それぞれがそれぞれでしょう。本当に一生懸命やる子もいれば、言うことを聞かない子もいる。そういうことにぼくは泣けたりするし、感動したりするんだけどね。
宮城 柄本さんは、ちっちゃい子のような感じを上手になさいますよね。ぼくにとって柄本さんと唐さんの似ているところは、ちっちゃい子のような演技をするところです。ものすごく上手い。
柄本 どうなんでしょうね。ただ、そういうことができる状態の時は悪くはないんじゃないかなという気はします。自由になる端緒を見つけたという感じなのかもしれませんね。

■ただいるだけでおもしろい

柄本 鈴木忠志さんが早稲小の後に、利賀村や水戸(※)でやっていたでしょう。それから静岡も。でも一度も見たことがなかったんですよ。それで劇団の子たちと静岡に一緒に観に行ったんです。宮城さんの『ふたりの女』。舞台の床が、変わっていましたね。どうなっていたんですか?
宮城 野外劇場なので、舞台の床板がすぐに腐っちゃうんですね。そろそろ取り替えなきゃいけないという話になって、剥がしてみたら、根太(※)があった。そこで根太の上で演じた方がおもしろいんじゃないかということになりました。
柄本 そういう風にしようと思ってデザインしたわけでもないんですね?
宮城 劇場そのままです。唐さんの芝居をやる時に、セリフを言ってなくても、俳優の体を見ていられるようじゃなきゃダメだなと思いました。そこにただいるだけでおもしろい状態をどうつくればいいのかなと。
柄本 どのくらいの尺でしたか?
宮城 間が15センチくらいの格子状になっていたと思います。
柄本 じゃあ、かなり不安定ですよね。
宮城 そうなんです。皆やたら足を擦りむいていましたけど、いつも気をつけないといけないので、立っているだけで必死なんです。それでなんとか唐さんの本が見ていられるようになるんじゃないかなと思いまして…。
柄本 わかるわかる。確か『ふたりの女』の初演は、石橋蓮司さんと緑魔子さんの第七病棟(※)がやったんでしたね。
宮城 (第七病棟のアトリエがあった)町屋で見ました。
柄本 砂ですよね。
宮城 そうそう舞台に砂が敷かれていて…。
柄本 『砂に書いたラブレター』がかかるんですよね。
宮城 小さなアトリエでどうやったのかと思いますけど、最後は、砂の中に役者が埋もれていってね。
柄本 あれはラジオドラマだったんですよ。それを蓮司さんが見つけてきたみたい。
宮城 ただいるだけでおもしろいって話ですけど、前に麿赤兒さん(※)に聞いて笑っちゃいました。70年代の状況劇場、麿さんや四谷シモンさん(※)がいた頃って、麿さんが一番マトモだったそうですね。
柄本 そうそう、麿さんは学校の先生みたいな人だから。
宮城 麿さんが「新劇的なやつがいる」って批判されていたらしい(笑)。ともかくいるだけでおかしい、テンションというか、セリフを言わないうちからなんとなく…そういうのはなかなか、ぼくから考えると、俳優が練習して獲得できるものではないという感じがして、それでもそれをどうやったらやれるのかなあと思いましてね。
柄本 ぼくは大久保鷹さん(※)も知ってるけど、いい加減にしろですね。いや、いい意味でなんだけど。2人芝居やっててセリフを憶えないんだもん。本番これだよ(イヤホンを耳に入れるしぐさ)。都合のいいことに髪の毛長かったの。稽古はひと月くらいあったのに…。イヤホンを渡されて、大久保鷹がなんて言ったと思う? 普通さ、そういうものを渡されるって屈辱的なことだと思いませんか? 大久保鷹は違うもん。「なんだ、こんな便利なものがあったのか」だって。
宮城 (笑)。
柄本 でも、だからいいんだよね。そういう人間なんだもん。真面目にセリフを憶える人と、そういう人間と、どっち見たい? 真面目とか不真面目とか言うけどさ。まあ、セリフを憶えないのはいけないと思うよ。何かをやる以前の問題だという気がするけど(笑)。だけど、だけどだよ、そういう人間が出てくるんだよ。そういう人いないもん。おもしろいよ。

■共感も悪意も…演劇を続ける人間

柄本 歌舞伎というテーゼがあって、アンチテーゼとして新劇が出る。そのアンチとしてアングラ演劇が生まれて、アングラからお笑い劇団みたいなものが出てきて…アンチの方が勢いを持ちやすいわけでしょう。文句を言う方がさ(笑)。そこから学んでるんでしょう。同じことをやっても仕方がないわけだよね。自分が芝居を始めた頃は、バイトした金で小屋を借りてやるでしょう。それで友達を呼んでさ。だから何をどうやってもいいんだよ。東京乾電池が渋谷のジァン・ジァン(※)である種の勢いを持っていた。即興でつくっていたんですけどね。お客さんは来ていたけど、勢いがなくなっていきました。やたら観客が笑うんだよね。腹立ってくるんだよね。もう即興はダメだと。本をつくらなきゃダメだと。岩松了(※)に相談して2人で話し始めた。「お客さんって劇場に来たら帰らないよね。お客さんが帰ったらおもしろいよね」って話して…そういう風な言葉を使って、使ってって言うか…「緊張感のない芝居をつくろう」とかね。つまり、「おもしろい芝居をつくろう」と言うより勇気がわく。悪意の発揚…。最初に『お茶と説教』(※)をやった時、どんどんお客さんがシーンとしていきました。ものすごい嬉しかった。東京乾電池ってお笑い劇団だと思われてたから。だけどおもしろいのよ。岩松という人の書く本がね。芝居もおもしろかった。色んな演劇があると思うんだけど、やっている人とお客さんの感じが離れていくんだよね。お互い他人なんだということがハッキリする。そんな中でも、クスクスって…。たちの悪い人間もいるんだよ。そのことがわかる人もね。この悪意と言うか何と言うか…でも(共感を跳ね返す力は)誰でも持ってるものじゃない? 人間にはそういうものがついてるんだから。昔っから。新しくとも何ともない。善意だけで生きてるわけじゃねえからさ。そういうものができるっていうのは、アマチュアってのが好きなんでしょうね。
宮城 そうは言っても、なかなか柄本さんみたいに、観客の期待を裏切ることが、案外できないですね。
柄本 そうですね。
宮城 劇団にお客さんが来てきてますから。
柄本 だからまあ、そういう方法を使って、新たにこう行かないとダメだということで、やったんだと思う。観客への敵意だけじゃないよ、作戦も含めてね。
宮城 それができた劇団ってあんまり多くない。お客さんもあれが観たいという感じで来るでしょう。そのまま続けて、あるところまで行って解散。そういう人の方が多いですよね。
柄本 来年で40年になります。
宮城 劇団を続けるの簡単なことじゃないですよ。
柄本 うち、60人くらいいるんですよ。多いですよね。大変という意識はないね。いい加減だからかな、俺が。
宮城 実際、多くの劇団は解散してますね。
柄本 今、劇団ってものがなかなかない。プロデュース公演ばっかりになっている。(劇団は)好きだからやってんじゃない? て言うか、そういうことで始めちゃったわけでしょう。そういうことになっちゃったということじゃないのかな。ここで頑張ったからとか、何にもないもん。しょうがないよ、こういうことになっちゃったんだよ。他に可能性はあったかもしれないよ(笑)。ごめんね、そういう言い方で。でもね、こういうものって昔からなくならないわけでしょう。皆がわさわさ集まってきて、誰かが号令かけて、何かが始まるわけだけども…なんだろうね。芝居ってどれくらい? 紀元前?
宮城 紀元前ですね(笑)。
柄本 そういう頃からずっとやってるわけだから、これからも続くんじゃないの?
宮城 人間がいるところに必ず芝居があるから。
柄本 お祭りですよね。

2015年2月24日 下北沢の喫茶店「トロワ・シャンブル」にて
写真撮影は「アトリエ乾電池」「トロワ・シャンブル」にて

構成:西川泰功
写真撮影:有本真大

2021年1月16日

連続シンポジウム

 
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片山杜秀 (かたやま・もりひで)
katayama1963年生まれ。近代日本思想史研究者。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。著書に『近代日本の右翼思想』(講談社)、『音盤考現学』(アルテス・パブリッシング)、『未完のファシズム』『国の死に方』(共に新潮社)など。
 
高田里惠子 (たかだ・りえこ)
takada1958年神奈川県生まれ。桃山学院大学経営学部教授。ドイツ文学研究者。著書に『文学部をめぐる病い』(松籟社・ちくま文庫)、『グロテスクな教養』(ちくま新書)、『学歴・階級・軍隊』(中公新書)、『失われたものを数えて』(河出書房)など。最近の関心は、大学の堕落の歴史に向けられている。
 
大澤真幸 (おおさわ・まさち)
oosawa1958年生。SPAC文芸部員。社会学者。千葉大学助教授、京都大学大学院教授などを歴任。主な著書に、『ナショナリズムの由来』(講談社、毎日出版文化賞)、『〈世界史〉の哲学』(講談社)、『自由という牢獄』(岩波書店)、『〈問い〉の読書術』(朝日新書)、『ふしぎなキリスト教』(橋爪大三郎と共著、講談社現代新書、中央公論新書大賞)等。個人思想誌『Thinking「O」』(左右社)主宰。
 
大岡淳 (おおおか・じゅん)
ooka演出家・劇作家・批評家。SPAC文芸部員、静岡文化芸術大学非常勤講師。演劇、ミュージカル、オペラ、コンサート、人形劇など幅広く手がけ、地域から発信する新しいエンタテインメントの創造に励む。共著に『21世紀のマダム・エドワルダ』(光文社より近刊)がある。http://ookajun.com/
 
横山義志 (よこやま・よしじ)
yokoyamaSPAC文芸部員。1977年千葉市生まれ。2007年からSPAC-静岡県舞台芸術センターで主に海外招聘プログラム(国際演劇祭のための調査・演目提案や海外のアーティストとのやりとりなど)を担当。演劇学博士(パリ第10大学)、学習院大学非常勤講師。専門は西洋演技理論史。論文に「アリストテレスの演技論」など。
 
ダニエル・ジャンヌトー
daniel演出家・舞台美術家。ストラスブール国立劇場付属学校で演劇を学ぶ。89年に演出家クロード・レジと出会い、彼の作品の舞台美術を15年に渡って引き受ける。SPACでは『ブラスティッド』(2009年)、『ガラスの動物園』(2011年)を演出。2008年よりステュディオ・テアトル・ド・ヴィトリー芸術監督。
 
今野喜和人 (こんの・きわひと)
DSC_0011東京大学大学院博士課程修了。現在、静岡大学人文社会科学部教授(比較文学文化)。著書に『啓蒙の世の神秘思想――サン=マルタンとその時代』(東京大学出版会)、訳書にサン=マルタン『クロコディル』(国書刊行会)他。
 
布施安寿香 (ふせ・あすか)
fuse「今までの自分らしくない事をはじめよう」と思い立ち、演劇活動を開始。2002年劇団「ク・ナウカ」入団。2006年よりSPAC在籍。その日本的顔立ちと清楚なたたずまいで、物語のヒロインにつくことが多い。座右の銘は「上善若水」(じょうぜんはみずのごとし)。主な出演作品『夜叉ヶ池』『ガラスの動物園』『ハムレット』など。
 
菅孝行 (かん・たかゆき)
kan1939年7月東京生まれ。東京大学文学部卒。評論家。60‐70年代までは劇作・演出も手がけたが、80年代からは演劇と思想に関する評論活動に専心。著作に『死せる「芸術」=「新劇」に奇す』(書肆深夜叢書)、『解体する演劇 正・続』(れんが書房新社)、『戦後演劇』(朝日新聞社、増補版社会評論社)、『戦う演劇人』(而立書房)など。
 
中島諒人 (なかしま・まこと)
nakashima演出家・鳥の劇場芸術監督。1966年鳥取市生まれ。東京大学法学部卒業。大学在学中より演劇活動を開始、卒業後東京を拠点に劇団を主宰。2003年利賀演出家コンクールで最優秀演出家賞受賞。2004年から1年半、静岡県舞台芸術センターに所属。2006年より鳥取に劇団の拠点を移し、“鳥の劇場”をスタート。http://www.birdtheatre.org/
 
石井達朗 (いしい・たつろう)
ishiiニューヨーク大学大学院演劇科・同パフォーマンス研究科研究員などを経て、慶大名誉教授、愛知県立芸大講師。関心領域として、サーカス、アジアの巫俗文化、ポスト・モダンダンス以降のダンス、パフォーマンスアート。著書に『異装のセクシュアリティ』『身体の臨界点』『男装論』『アクロバットとダンス』『サーカスのフィルモロジー』ほか
 
矢内原美邦 (やないはら・みくに)
yanaiharaダンスカンパニーニブロール主宰。国内外のフェスティバルなどに招聘される。劇作・演出も手がけ第56回岸田國士戯曲賞受賞。off-Nibroll名義で美術作品制作も行い上海ビエンナーレ、大原美術館、森美術館などの展覧会参加。日本ダンスフォーラム大賞、ラオコン(略)賞、横浜市文化芸術奨励賞受賞。近畿大学舞台芸術学科准教授。http://www.nibroll.com

オルタナティブ演劇大学
     ―再び巡り来る「政治の季節」のための5つの語り―

1960年代に出現したオルタナティブなアートシーン。
あの時なにが起きていたのか、そしてそれは今にどうつながっているのか、様々な角度から探る連続シンポジウムを開催いたします。
 

精神ノ運動ノススメ

大岡淳(SPAC文芸部)

1960年代は、学生叛乱や社会叛乱が世界中で巻き起こった〈政治の季節〉だった。叛乱は往々にして、冷戦体制における二極――アメリカを中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする共産主義陣営――のいずれにも与しない、第三の可能性を志向した。だがそれは実現を阻まれ、未だ形にならざる何かのまま、想像力によって追い求められた。その想像力の産物が、ロックンロール、フリージャズ、ポップアート、ハプニング、ヌーヴェルバーグ、アメリカン・ニューシネマ等々、前衛的60年代カルチャーであったと言えよう。そして日本の演劇シーンにおいても、アンダーグラウンド演劇運動が産声をあげた。このときから既に半世紀が経過したが、未だ形にならざる何かを形にしようとする、アングラ的な精神の運動は、今なお、私たちが向かうべきオルタナティブな社会の姿――互いに異なる者たちが共存する共同体――を予告している。半世紀前とは打って変わって、叛乱も反逆も抵抗も許されず「空気」への同調を強要される〈政治の季節〉が到来しつつある今、精神の運動を復興させるための、学びの場に参集していただきたい!

 

4/10(金) 19:30〜21:30
           会場:スノドカフェ七間町 (静岡市葵区) 【定員30名】
〈開催直前シンポジウム〉
抵抗と服従の狭間で ―「政治の季節」の演劇―
『メフィストと呼ばれた男』を中心に、今回上演される作品群を「政治の季節」という切り口から議論してゆきます。ゲストに加え、SPAC文芸部員3人が登壇。
 登壇者:片山杜秀(音楽評論家、思想史研究者)、高田里惠子(ドイツ文学研究者)、大澤真幸大岡淳横山義志 (以上、SPAC文芸部) ほか

⇒⇒⇒ レポート(要約版)はこちらからどうぞ![構成:西川泰功]

映像はこちら→ その1 その2 その3 その4

『メフィストと呼ばれた男』
  SPAC 『メフィストと呼ばれた男』 (演出:宮城聰)
 

4/26(日) 10:30〜15:45
           会場:サールナートホール (静岡市葵区) 【定員200名】
アングラ!カルト!アヴァンギャルド!!!
                     ―映画におけるオルタナティブ―
​アングラ演劇の旗手・寺山修司、そして『エル・トポ』『リアリティのダンス』等の代表作が話題を呼んだチリ出身の鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーの二大巨匠による映像作品の上映とトークを行います。
 10:30 上映『ホーリー・マウンテン』(1973年/メキシコ・アメリカ)
 12:45 ギャラリートーク:大岡淳横山義志
 14:00 上映『田園に死す』(1974年/日本)
 *詳細はこちら

⇒⇒⇒ レポート(要約版)はこちらからどうぞ![構成:西川泰功]


  『ホーリー・マウンテン』 (監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー)
 

4/28(火) 19:30〜21:30
           会場:スノドカフェ七間町 (静岡市葵区) 【定員30名】
目に見えぬ美をめぐって ―反自然主義の系譜―
アングラ小劇場運動といえば反リアリズム。神秘思想に傾倒し、同時代の自然主義演劇に敢然と叛旗を翻したメーテルリンクを出発点として、クロード・レジ、ダニエル・ジャンヌトーに至るまで、『盲点たち』を中心に近代劇のオルタナティブとしての反リアリズムの系譜を探っていきます。
 登壇者:ダニエル・ジャンヌトー(演出家)今野喜和人(静岡大学人文社会科学部教授[比較文学文化])布施安寿香(SPAC所属俳優)
 司会:横山義志

⇒⇒⇒ レポート(要約版)はこちらからどうぞ![構成:西川泰功]


  SPAC 『盲点たち』 (演出:ダニエル・ジャンヌトー)
 

4/29(水・祝) 15:00〜17:00
           会場:舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」 【定員80名】
アングラ演劇は死なず! ―小劇場運動の50年―
『ふたりの女』『天使バビロンに来たる』『小町風伝』を中心に、「アングラ・小劇場運動の遺産と拡がり」について語ります。
アングラ演劇の登場からおよそ半世紀を経過した現在から顧みて、アングラ演劇をどう総括するか。今日では、現代演劇における様々な流派・ジャンルの一つとみなされてしまっているが、アングラをそのように相対化するのは妥当なのか、あるいは、今なお歴史的画期を開いたオルタナティブな存在と位置づけるのが妥当なのか。そもそも、運動としてのアングラは何と戦い、何に挫折し、何を達成したのか。そして今、私たちはその運動をどう引き受ければいいのか。
 登壇者:菅孝行 (演劇評論家)中島諒人 (演出家・鳥の劇場主宰)
 司会:大岡淳
   ※無料チャーターバス
    【行き】14:15東静岡駅発→14:30舞台芸術公園着
    【帰り】17:30舞台芸術公園発→17:45東静岡駅着

⇒⇒⇒ レポート(要約版)はこちらからどうぞ![構成:西川泰功]


  SPAC 『ふたりの女』 (演出:宮城聰)
 

5/1(金) 21:00〜23:00
           会場:スノドカフェ七間町 (静岡市葵区) 【定員30名】
革新としての伝統 ―フォークロアとコンテンポラリーダンス―
土着性の復権・フォークロアへのリスペクトをその特徴のひとつとするアングラ小劇場運動には、土方巽に始まる「暗黒舞踏」と深い影響関係がありました。こんにち至高の完成度を見せる無垢舞蹈劇場の表現にも、かつて暗黒舞踏が高度な抽象性へと向かった軌跡との不思議な相似形が認められます。『觀 〜すべてのものに捧げるおどり〜』を中心に、秘められた創作の道程を探りつつ、コンテンポラリーダンスの可能性を語ります。
 登壇者:石井達朗 (舞踊評論・研究)矢内原美邦 (振付家・ニブロール主宰)
 司会:横山義志

⇒⇒⇒ レポート(要約版)はこちらからどうぞ![構成:西川泰功]


  無垢舞蹈劇場 『觀〜すべてのものに捧げるおどり〜』 (振付:林麗珍)
 

◆チケット:
1500円 (4/26サールナートホール、4/10・28・5/1スノドカフェ七間町)
1000円 (4/29BOXシアター)
 
◆ご予約:
 電話 SPACチケットセンター Tel.054-202-3399
                      (受付時間10:00〜18:00)
 ウェブでのご予約はこちら
 
 

2021年1月16日

聖★腹話術学園

 
 
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関連企画
◎4月26日(日) 上映会&トーク
〈アングラ!カルト!アヴァンギャルド!!!〉
ホドロフスキー『ホーリー・マウンテン』、寺山修司『田園に死す』を上映
大岡淳、横山義志によるギャライートークあり
詳細はこちら

 
ジャン=ミシェル・ドープ
ジャン=ミシェル・ドープ 撮ベルギーの演出家。ワロニー=ブリュッセル国立高等演劇学校(INSAS)を卒業後、俳優として活躍。ポワン・ゼロを立ち上げ、ブリュッセルの獣医学校跡に新たなパフォーミングスペース「レ・ヴェテ」を開設。1993年、初の演出作品『王女イヴォナ』(作:ゴンブロヴィッチ)が反響を呼び、フランス語圏委員会(COCOF)演劇大賞新人賞を受賞。その後、同市のラ・バルサミーヌ劇場に拠点を移す。その他の代表作に『狂人と尼僧』(作:ヴィトキエヴィッチ)、『三人の老女』(作:ホドロフスキー)など。人間の怪物的な部分を拡大して見せ、悲劇とグロテスクなユーモアを探る演出が高く評価されている。
 
アレハンドロ・ホドロフスキー
ジャン=ミシェル・ドープ(左1929年、チリ生まれ。53年に渡仏、人形遣いとして放浪生活を送る中でマルセル・マルソーと出会い、演劇活動を共にする。67年にアラバール原作で初の長編映画『ファンドとリス』を完成させる。70年には代表作『エル・トポ』を発表、73年の『ホーリー・マウンテン』はアメリカで一年半に及ぶロングランを記録した。バンド・デシネ原作、小説、エッセイ、詩集も手がける。2013年の『リアリティのダンス』に続き、16年にはチリ・フランス・日本の共同製作による新作『エンドレス・ポエトリー』が完成予定。
 
ポワン・ゼロ www.pointzero.be
Ventriloques-Place-Rouge演出家ジャン=ミシェル・ドープの周辺で形成されたアーティスト集団。ホドロフスキー、ヴィトキエヴィッチ、ファスビンダー、ヒューホ・クラウスなど、生々しいリアリティーと夢想の世界とをつなぐような、上演機会の少ない作家の作品を精力的に紹介してきた。テクストに合わせて作品の作り方を根底から問い直し、新たな方法を探る。


 
日本初演  演劇/ベルギー
演出: ジャン=ミシェル・ドープ
作: アレハンドロ・ホドロフスキー
出演: ポワン・ゼロ

公演情報

5/5(火・祝) 16:00
5/6(水・祝) 12:00
静岡芸術劇場(全席指定) アクセス
上演時間: 85分  フランス語上演/日本語字幕

◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎5月5日(火・祝)の終演後にジャン=ミシェル・ドープ(演出)と宮城聰(SPAC芸術総監督)によるアーティストトークを行います。

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
 各種割引がございます。詳しくはこちら

※未就学児との観劇をご希望の方は、お問い合わせください。
※【おとな向け】一部刺激の強い表現があります。

作品紹介

自分の人形なんて、気味が悪い。

あなたは「操る者」か「操られる者」なのか?
不思議の国の人形たち

これはコメディである。しかし、ただのコメディではない。暗く冷たい、疎外と抑圧に満ちた宇宙のような、形而上学的で、夢のような、等々の形容が似つかわしい摩訶不思議な作品だ。等身大の人形を操りながら、奇妙な「腹話術学園」の生徒を演じる俳優たち。人形の顔は、彼らにどこか似ている。どちらが「操る者」で、「操られる者」なのか?本作を演出するジャン・ミシェル・ドープは、「まず言語そのものを問うことが不可欠」と語る。公演ごとに異なる創作方法を提示し続けてきた彼だが、その哲学は、多面の鏡に映るかのように物語の各所に仕込まれ、現代人が持つ人格の、あらゆる側面を鮮やかに映し出す!

必見!人形劇?になったホドロフスキーの世界
哲学的空想系滑稽悲劇!

いま注目を集めるカンパニー「ポワン・ゼロ」(ベルギー)。これまでにゴンブロヴィッチ、キャロル・フレシェットなどを手がけてきた彼らが辿り着いたのは『エル・トポ』『リアリティのダンス』等の映画で話題を呼び、カルト的人気を誇る鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーであった。1929年にチリで生まれたこの映画監督は、パントマイムにのめりこみ、パリでマルセル・マルソーと出会い、百本以上の舞台を演出したという、実は筋金入りの「演劇人」なのだ。そのホドロフスキーが書き下ろした、リズミカルで、野蛮で、創意に溢れる台本と、その言葉を「問う」ポワン・ゼロの真っ向対決が実現した異色作!

あらすじ

主人公のセレストはある日、さびれた路地から「落下」してしまう。突然の出来事に混乱して逃げ惑う彼がたどり着いたのは、外部からの干渉を許さず、24時間生徒を監視する奇妙な「腹話術学園」だった。学園に入学し人形を操りながら、自分の進むべき道を探ろうとするセレスト。しかし「人形を操っていたはずの自分」は、次第に人形から操られるようになっていた…。

スタッフ/キャスト

演出: ジャン=ミシェル・ドープ
作: アレハンドロ・ホドロフスキー
演出補: コラリー・ヴァンデルリンデン
出演:
 シリル・ブリアン、セバスチャン・ショレ、
 ピエール・ジャックマン、エマニュエル・マチュー、
 ファブリス・ロドリゲス、エロイーズ・メール、イザベル・ヴェリ
製作: ポワン・ゼロ

衣裳・人形製作: ナターシャ・ベロヴァ
人形操作指導: ネヴィル・トランテール (Stuffed Puppet Theater)
衣裳・人形製作助手: サンドリーヌ・カルマン、オレリー・ボレマンス、エミリー・プラゾール、フランソワーズ・ヴァン・ティーネン
音楽: ピエール・ジャックマン
挿入映像: ミシェル・エベール
舞台美術: オレリー・ドロッシュ、ミシェル・エベール、ナターシャ・ベロヴァ、ジャン=ミシェル・ドープ
照明: グザヴィエ・ローウェルス
翻訳: ブロンティス・ホドロフスキー
制作: カトリーヌ・アンセー
後援: ベルギー大使館

2021年1月16日

小町風伝

 
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関連シンポジウム
◎4月29日(水・祝)
〈アングラ演劇は死なず!―小劇場運動の50年―〉
詳細はこちら

 
イ・ユンテク(李潤澤)
イ・ユンテク1952年、韓国・釜山生まれ。詩人、劇作家、演出家、シナリオ作家など全方位的な芸術活動を展開している。86年、劇団「演戯団コリぺ」を旗揚げ。数々の権威ある韓国の演劇賞を受賞している。現在は韓国・密陽に自ら造った演劇村を中心とする共同体を運営しながら、劇団員とともに演劇への実験および執筆活動を続けている。伝統を取り入れた独特な演技メソッドを用いた舞台表現は世界的にも評価が高い。SPACでは「Shizuoka春の芸術祭」に参加。2008年からは、SPACとの日韓共同制作作品『ロビンソンとクルーソー』を演出。
 


 
演劇/韓国
演出: イ・ユンテク(李潤澤)
作: 太田省吾
出演: 演戯団コリペ

公演情報

5/4(月・祝) 16:00
5/5(火・祝) 12:00
5/6(水・祝) 15:00
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」(全席自由) アクセス
上演時間: 120分  韓国語上演/日本語字幕

◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎5月4日(月・祝)と5日(火・祝)の終演後にイ・ユンテク(演出)と宮城聰(SPAC芸術総監督)によるアーティスト・トークを行います。
◎4月29日(水・祝)シンポジウム
 〈アングラ演劇は死なず!―小劇場運動の50年―〉 詳細はこちら

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
  各種割引がございます。詳しくはこちら

作品紹介

あたしはきれいだった

「崇高」か「俗悪」か!? 蘇る太田省吾の世界
饒舌な魂の叫びを聞け

日本のアングラ演劇界、その第一世代と称される個性的な一群の中で、独自の位置を占めていたのが太田省吾だ。彼に岸田戯曲賞をもたらした本作『小町風伝』の特徴は、主役である老婆がひと言も発しないことである。戯曲そのものには、様々な台詞が書かれているが、それらは「決して発せられない言葉」であり、同時に登場人物たちが「心の底から発したいと願っている言葉」である。観念に陥りやすい言葉に代わり、極端にゆっくりな動作を用いて、人間の生の営みを表現したその世界は「沈黙劇」という言葉で語られることが多く、アングラの時代を疾走した太田の真骨頂でもある。

遂に実現!日韓合作
文化と時代が錯綜し、アジアの新しい舞台が。

演戯団コリペは、「叙事的リアリズム」と称される、独特の様式性を持つ韓国の劇団である。その演出家・イ・ユンテク(李潤澤)といえば、再演を重ねている名作『ロビンソンとクルーソー』をはじめ、SPACでも数多くの作品を上演している、韓国演劇界の巨匠だ。本作では「トップェギ덧뵈기」(伝統的な動き)や「南道ソリ남도소리」(民謡の一種)、シャーマンの儀式である「クッ굿」など、韓国伝統芸能の多彩な要素が、太田省吾のテクストに新たな息吹を与え、語られなかった台詞を解き放つ。まさに文化の相互的な疎通と融合を示す、アジアの新しい舞台芸術の誕生と言えよう。

あらすじ

安アパートに独りきりで暮らす老婆。目覚めて朝食のインスタントラーメンを作る間に思い出すのは、若かりし頃の恋物語。かつて自分を激しく愛した軍服姿の少尉が目の前に現れると、彼女の記憶は蘇って来る。そして今度は、幻想の中で隣家の息子と無言で濃密な逢瀬を楽しむが、やがて現実は再び彼女の世界を侵食し始める。夢と現のはざまのように曖昧な時間が過ぎると、そこには孤独な老婆がただひとり残されているのであった。

スタッフ

演出 : イ・ユンテク(李潤澤)
作 : 太田省吾
出演 : キム・ミスク、イ・スンホン、チョン・ヨンジン
    キム・ハヨン、パク・インファ、カン・ホソク
    イ・ヘミン、キム・ヨンハク、ソ・ヘジュ
    クォン・スミン、ソン・ジュンヒョン
音楽家 : キム・アラナ、クォン・ジョンウン

音響 : イ・セイン
照明デザイナー : ゾ・インゴン
照明スタッフ : キム・ハンソル
装置デザイナー : キム・キョンス
メイクアップアーティスト : イ・ジウォン
翻訳 : シム・ヂヨン、キム・セイル
通訳・字幕操作 : シム・ヂヨン
プロダクション・マネージャー : イ・チェギョン
通訳 : イ・ジヨン

後援 : 駐日韓国大使館 韓国文化院

2021年1月16日

ベイルートでゴドーを待ちながら

 
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イサーム・ブーハーレド
レバノンの俳優、作家、演出家。痛烈な喜劇と哀切な悲劇が隣り合うイサーム・ブーハーレドの作品群は、つねに相反する要素が共存し、複雑なダイナミズムを生んでいくレバノン社会の鏡のようでもある。戦争をグロテスクで不条理なユーモアで描いた三部作『列島』(1999年)、『行進!』(2004)、『バナフサジ(すみれ)』(09)などで知られる。また、聾唖者の劇団「デシベル」を創立し、『音のない世界』(07)を創作。ベイルート劇場の芸術監督を09年から12年まで務め、「デシベル」をその運営に参加させた。フランス、ドイツ、イタリア、エジプト、チュニジア、ヨルダンなど、国外公演多数。また映画俳優として、オリヴィエ・アサヤス監督『カルロス』(10)など、国内外の数々の作品に出演。
 
ファーディー・アビーサムラー
レバノンの俳優。1990年にレバノン大学で演劇学修士号を取得。87年から舞台、映画などで俳優として活躍。中東のテレビドラマでも人気を博している。イサームとはロジェ・アッサーフ演出による『ゴドーを待ちながら』の翻案(03年)、映画『カルロス』(10年)などで共演。
 


 
日本初演  演劇/レバノン
作・演出: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー
       (サルマド・ルイの協力による)
出演: イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー

公演情報

5/2(土) 17:00
5/3(日) 12:00
5/4(月・祝) 13:30
舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」(全席自由) アクセス
■上演時間: 50分  アラビア語上演/日本語字幕

◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎終演後にイサーム・ブーハーレドならびにファーディー・アビーサムラー(ともに作・演出・出演)と宮城聰(SPAC芸術総監督)によるアーティスト・トークを行います。

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
 各種割引がございます。詳しくはこちら

※背もたれのない客席になります。
※乳幼児を連れてのご入場はご遠慮ください。

作品紹介

中東の「今」を笑いで描く
 
これは新しい『ゴドー』?!
中東で大人気の名優による粋でシュールな二人芝居

一見無意味にも見える、過剰な饒舌の裏に表に、長い内戦と根強い宗教対立によって疲弊した国民の、絶望的な日常が見えてくる…。これはベケットの『ゴドーを待ちながら』のシチュエーションを借りつつ、俳優の個性と社会背景を軸に、即興を重ねて磨かれた舞台である。決して来ない誰かを待ちながら、話し続ける二人。会話のリズムと間が絶妙で、あっという間に荒唐無稽な言葉の世界に引き込まれていく。ベイルートでは、48時間前の告知でも必ず満席になるという伝説の舞台が、ついに静岡初上陸!中東のカルチャーシーンの現在を知る意味でも貴重な機会といえよう。
 
常に死と隣り合わせ
そんな状況下ではすべてが笑いに変わる

アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ、文化の十字路・ベイルート。中東有数のこの文化都市も、内戦の傷跡は深く、今でもシリアとイスラエルの間で翻弄され続けている。そして現在、内戦の時代に幼少期を過ごしたアーティストたちが、世界のさまざまなアートシーンで注目を浴びている。彼らの作品の特徴は、忘れ難き故郷への思いが、不条理な展開やブラックユーモアの形で盛り込まれ、作品を強靭にしていること。本作の演出家で俳優であるイサーム・ブーハレードとファーディー・アビーサムラーも、アラブ演劇人特有の手法で祖国の状況を風刺し、国内外から多くの共感と絶賛を得ている。

あらすじ

ベイルートの街頭、みすぼらしい姿の男が二人、新聞を広げている。食い入るように眺めているのは、なぜか訃報欄ばかり。「車で死んだ男がいるぞ!」「はねられたのか?」「事故に遭ったらしい」「車種は?年式は?」「知るもんか。でも食いものは出そうだぜ」「こっちの医者の葬式と、どっちがいいもの食えるかな?」どちらの葬式に顔を出すかで揉める二人の会話はエスカレートしていき、ことあるごとに複雑で激しい対立構造が再燃するレバノンの今日を映し出す。やがて二人は、あることに気がつくのだが…。

2021年1月16日

例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする

 
西尾佳織
西尾さんプロフィール写真_撮作家、演出家、鳥公園主宰。1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を担当。『カンロ』にて、第58回岸田國士戯曲賞最終候補作品にノミネート。鳥公園以外の主な参加作品としては、カトリ企画『紙風船文様』(構成・演出)や、F/T14主催プログラム『透明な隣人〜-8 エイト-によせて〜』(作・演出)など。
 
鈴木一郎太
ichirota(株)大と小とレフ取締役。1977年生まれ。97年に渡英、アーティストとして活動。帰国後、浜松市を拠点に置くNPO法人クリエイティブサポートレッツにて、社会の多分野と連動し、様々な文化事業(場づくり・展覧会・トーク・人材育成事業・町歩き等)の企画を担当。2013年、(株)大と小とレフを大東翼とともに設立。主にプロジェクト企画、マネジメント、アートディレクションに携わる。Central St. Martins College of Art & Design, MAファインアート修了。
 
大東翼
ohigashi建築家。工務店勤務を経て、大阪にて建築設計事務所を設立。2011年拠点を浜松に移して大東翼建築設計事務所を運営し、建築設計や地域プロジェクトに携わる。13年、(株)大と小とレフを鈴木一郎太とともに共同設立。関西大学経済学部卒業。
 
鳥公園
2007年7月結成。作・演出の西尾佳織と俳優・デザインの森すみれによる演劇ユニット。「正しさ」から外れながらも確かに存在するものたちに、少しトボケた角度から、柔らかな光を当てようと試みている。生理的感覚やモノの質感をそのままに手渡す言葉と、空間の持つ必然性に寄り添い、「存在してしまっていること」にどこまでも付き合う演出が特徴。海沿いの元倉庫、日本家屋、商店街の空き店舗などでのサイトスペシフィックな作品制作や、鳥取、北九州、広島、大阪など、さまざまな土地での滞在制作も積極的に行っている。芸創CONNECT vol.5、広島市現代美術館主催「ゲンビどこでも企画」優秀賞、千代田芸術祭「おどりのば」スカラシップなど、受賞歴多数。
 
(株)大と小とレフ
プロジェクトやイベントの企画・マネジメント、建築設計を行う会社として2013年に設立。一見関係ないようなことでも簡単に切り分けず地続きなものと捉えるという姿勢を元に、様々な案件に対してクリエイティブなアウトプットを編み出している。分野の越境、異質なものの掛け合わせ、専門家との連携により、ものごとに新たな展開を提供。これまでの主な仕事はセミナールーム「黒板とキッチン」企画運営、複合トークイベント「楽×学2014」企画、花博2014花みどりアート回廊ディレクション。




鳥公園「緑子の部屋」2014年


㈱大と小とレフ「セミナールーム黒板とキッチン」2014年

世界初演  参加型演劇/日本(静岡)
演出: 大東翼[㈱大と小とレフ]、鈴木一郎太[㈱大と小とレフ]、西尾佳織[鳥公園]
製作: SPAC-静岡県舞台芸術センター
協力: 池田自治会
演出:大東翼[㈱大と小とレフ]、鈴木一郎太[㈱大と小とレフ]、西尾佳織[鳥公園]
出演:赤松直美、上蓑佳代、遠藤麻衣[二十二会]、尾國裕子、佐藤ゆず、高瀬弥生[KOTOBAKO]、立蔵葉子[青年団]、峰桜花、山崎皓司[快快]
<エキストラ>大間知賢哉、加東サユミ[ハイカラ/さゆみ企画]、早瀬花音、樫田那美紀、鈴木靖宏、利波友季子、登立和真、ピンク地底人5号[ピンク地底人]、宮嶋七彩、武藤月子、室伏珠美、山本寛子
<特別出演>片岡祐介

演出助手:伊藤知咲[BANANAディストピア]、大田景子、中込遊里[鮭スペアレ]
制作協力:萩谷早枝子[鳥公園]
ボランティアスタッフ:大石夢子、梶谷智、小宮山菜子、宮澤寛幸
制作ボランティアスタッフ:大村直子
制作:高林利衣

製作: SPAC-静岡県舞台芸術センター
協力: 池田自治会

公演情報

5/2(土) 11:00、14:30
5/3(日) 11:00、15:00
5/4(月・祝) 11:00、16:00
5/5(火・祝) 11:00、16:00
5/6(水・祝) 11:00、15:00
池田地区周辺〈集合場所:池田公民館〉
上演時間: 70分(予定)  日本語上演

集合場所へのアクセス

 
池田公民館 (静岡市駿河区池田983)
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※駐車場はございません。

東静岡駅、静岡芸術劇場との間で無料チャーターバスをご利用いただけます。「池田公民館」もしくは「畑守稲荷前停留所」が乗降場となります。

チケット

一般大人:2,000円/SPACの会会員割引:1,700円/大学生・専門学校生以下:1,000円
☆詳しくはこちら

作品紹介

演劇版RPG―小さな冒険の旅

駿河路や花橘も茶の香り
不思議なまち歩きで「参加」する演劇! 

「知らない街を歩いてみたい」と、人の心をかき立てるものは何だろう。旅をする理由は人様々だけれど、演劇を愛するみなさんなら、観劇のために旅をしたことがあるのでは?この舞台が観たいから、「今ここでしか観られないから」とか。昔から、大きな町には劇場があって、住む人たちの交流の場となるだけでなく、遠くからやって来た旅人にとっても、その土地の歴史や文化を知る手がかりとなっていた。けれども最近は交通機関の発達により、旅も随分と便利になった。でも、せっかく演劇祭に足を運びながら、静岡の街を知る暇もなく、帰ってしまう人は少なくない。そこで…?

異色のタッグが実現!
町が劇場に変わる 小さな冒険の旅へ

だからといって、演劇を観に来たのにフィールドワークをさせられても…とご心配のあなた、いえいえ、これはれっきとした「演劇」作品。様々な土地で滞在型製作を重ね、サイトスペシフィックな創作活動を続けてきた演劇ユニット「鳥公園」の西尾佳織と、建築・設計やイベント等を手がける静岡のユニークな会社「大と小とレフ」がタッグを組んで、かつてない、街そのものを舞台にした演劇作品に挑戦する。「ありのままの」街の姿にうっすらと被せられた、架空の街を旅することで「せかい」の姿が見えて来るかもしれない。それはまるで、演劇版ロールプレング・ゲーム!どんな冒険が待っているのか?

2021年1月16日

 
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関連シンポジウム
◎5月1日(金)
〈革新としての伝統―フォークロアとコンテンポラリーダンス―〉
詳細はこちら

 
林麗珍 (リン・リーチェン)
林麗珍プロフィール写真 Lin1950年、台湾生まれ。振付家、無垢舞蹈劇場芸術総監督。45年以上にわたり多くの舞踊作品を手がけ台湾舞踊界を牽引、95年の無垢舞蹈劇場結成後は主要な国際フェスティバルへ参加し、高い評価を得ている。2002年には、ヨーロッパの重要な文化系テレビ局ARTEで「世界を代表する振付家8人」の一人として選出されている。08年、北京五輪芸術祭に参加し、北京国家大劇院で台湾の劇団としてはじめて公式の招聘を受けて公演。『醮』『花神祭』に続く『觀』によって「天地人三部作」がついに完成。これまでにアヴィニョン演劇祭、シャイヨー国立劇場、リヨン・ダンス・ビエンナーレ、チェーホフ国際演劇祭、セルバンティーノ国際フェスティバル等で上演を重ねてきた。
 
無垢舞蹈劇場 www.legend-lin.org.tw
無垢舞蹈劇場の歴史は芸術総監督・振付家の林麗珍の歩みそのものである。中国文化大学を卒業した彼女は、台湾の精神と文化を反映させたスケールの大きな表現活動を求め、無垢舞蹈劇場を結成した。土着の宗教儀式や自然の恵みへ感謝を捧げる祭祀などを原点としつつ、鮮やかな美的感覚と「動きの詩」ともいえる独特の振付を融合させている。1998年にアヴィニョン演劇祭で上演した『醮』は、旧暦7月の盆の時期に行われる道教の祭祀「醮」の影響が色濃く表れている。何世紀もの間この祭祀が行われてきた基隆市の港町で育った彼女は、この鎮魂の祭祀の力強さと美しさにふれており、この土地への感謝の念を込めて『醮』を創った。無垢舞蹈劇場は多くの海外公演をとおして世界中で称賛されてきた。季節の移り変わり、陰と陽の共存に敬意を示した作品『花神祭』は、2000年のリヨン・ダンス・ビエンナーレで最優秀観客賞を獲得し、翌年はスペインのフェスティバル・デ・オトーニョにて観客動員記録を更新した。その作品はのちにイタリア、ドイツ、オーストリア、アメリカ、メキシコで上演され、無垢舞蹈劇場は世界へより展開していった。2009年、9年間の準備期間を経てシリーズ完結編『觀』を國家表演藝術中心‐國家兩廳院の年度代表演目として発表。林麗珍は故郷・基隆の港で見かけたタカに霊感を得て、思索の末に、人間の強欲が自然環境だけでなく人間そのものをも破壊するさまを映し出す独自の神話を織りなした。長い時を経て「天地人三部作」は完成し、再び世界を驚愕させた。2011年、コンテンポラリーダンス界で最も重要な劇場のひとつ、シャイヨー国立劇場にて『觀』の公演をおこない、その後、香港世界文化祭、ブラジルのテアトロ・アルファ、モスクワでのチェーホフ国際演劇祭、メキシコのセルバンティーノ国際フェスティバルでも大きな成功をおさめた。
 




日本初演  ダンス/台湾
芸術総監督・振付: 林麗珍 (リン・リーチェン)
製作: 無垢舞蹈劇場

公演情報

5/2(土) 13:30
5/3(日) 14:30
静岡芸術劇場 (全席指定) アクセス
■上演時間: 120分

◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎5月3日(日)の終演後に林麗珍(無垢舞蹈劇場芸術総監督)によるアーティストトークを行います。

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
 各種割引がございます。詳しくはこちら

※未就学児との観劇をご希望の方は、お問い合わせください。

作品紹介

アジアの至宝! 美しき身体の儀式。

これはダンスなのか?
大河の流れのように、大宇宙の真実のように

無垢舞蹈劇場は、1995年に活動を開始し、これまでにたったひとつのシリーズの中の三作品を生み育ててきた。それらは陽と陰を互いに刺激しあい、人・霊・神が共存する多元的な宇宙観を形成している。今回上演される『觀』は、その三部作最後の作品で、9年の歳月をかけて創られた。空を飛ぶタカの目を借り、慈悲の眼差しで霊魂、欲望の流転を俯瞰し、肉体の神話への旅路を完成させる。圧倒的で濃厚な身体の力強さと、洗練された美の配置。それは曼荼羅のように、対立と共存、歳月の中で循環するおごそかさと調和を描き、私たちの心に、解脱にも似た感動を呼び起こす。

泰然として自由!
台湾の文化を牽引する 世界的振付家・林麗珍

世界各国で絶賛される無垢舞蹈劇場を率いるのは林麗珍。服飾デザイナーでもある彼女の創る世界は、実に精巧だ。先人たちの残した工芸品の中にこそ彼らの魂が宿っていると考え、視覚的要素にその色彩や意匠を巧みに取り込む。郷土である台湾を原点としながら、地元意識にとどまることはなく、舞踊作品を創造しつつも、その世界は遥かに舞踊の枠を超える。長く濃密なクリエイションの果てに生まれる珠玉の舞台には、誰もが目を見張らずにいられない。それはきわめて伝統的であり、かつ高度に前衛的で、霊魂が大地に回帰し、生命の幸福を祈るさまを描いている。

キャスト・スタッフ

芸術総監督・振付: 林麗珍
ビジュアルコンセプト: 林麗珍
題字: 程延平
照明デザイン: 鄭國揚
衣裳デザイン: 葉錦添
舞台美術デザイン: 張忘、陳念舟
撮影: 金成財、陳點墨
リハーサルマスター: 蔡必珠
副リハーサルマスター: 鄭傑文
テキスト: 鄭傑文、羅毓嘉、陳緯翔

歌唱: 許景淳
演奏: 黃子翎、賀毅明
ダンサー:
 [白い鳥] 吳明璟
 [白い鳥の死] 王芊懿
 [Samo] 平彥寧
 [Yaki] 鄭傑文
女性ダンサー:
 林瑞瑜、馮凱倫、吳佳倩、陳懿儀、張雅涵、
 伍姵蒨、張匀甄、詹惠方、鄭羽書、賴思穎
男性ダンサー:
 黃耀廷、陳軒庭、高伯銓、郭丁瑋、朱政綱

プロデューサー: 陳念舟
技術監督: 鄭國揚
舞台監督: 程子瑋
音響: 捷韻實業有限公司-高弘家
技術助手: 尹皓
執行秘書: 鄭傑文
制作顧問: 廖又臻
制作: 劉姗姗、吳旻芳、陳緯翔
ワードローブ: 張嘉琦
小道具: 黃耀廷
メイク: 林瑞瑜
ヘアアクセサリー: 吳明璟
衣裳: 王芊懿
音楽: 鄭傑文

2009年 國家表演藝術中心-國家兩廳院の年度代表演目として製作

委託製作: 國家表演藝術中心-國家兩廳院
製作: 無垢舞蹈劇場
助成: 台灣文化部
     台北駐日經濟文化代表處台北文化中心
協力: 國家人權博物館籌備處

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2021年1月16日

天使バビロンに来たる

 

関連シンポジウム
◎4月29日(水・祝) シンポジウム
〈アングラ演劇は死なず!―小劇場運動の50年―〉
詳細はこちら

 
中島諒人
中島諒人(クレジットなしで演出家・鳥の劇場芸術監督。1966年鳥取市生まれ。東京大学法学部卒業。大学在学中より演劇活動を開始、卒業後東京を拠点に劇団を主宰。2003年利賀演出家コンクールで最優秀演出家賞受賞。04年から1年半、静岡県舞台芸術センターに所属。06年より鳥取に劇団の拠点を移し、“鳥の劇場”をスタート。二千年以上の歴史を持つ文化装置=演劇の本来の力を通じて、一般社会の中に演劇の居場所を作り、その素晴らしさ・必要性が広く認識されることを目指す。主な作品に、『老貴婦人の訪問』(作:F.デュレンマット)、『剣を鍛える話』(作:魯迅)、『白雪姫』(作:グリム)、『天使バビロンに来たる』(作:F.デュレンマット)がある。
 
鳥の劇場 www.birdtheatre.org
logo01-※参照データ※演出家・中島諒人を中心に、2006年に設立。鳥取県鳥取市鹿野町の廃校になった幼稚園と小学校の体育館を劇場につくり変えて活動。現代劇の創作・上演だけでなく、地域の文化拠点としての劇場作り、教育・普及活動にも力を注ぐ。同時に芸術活動を通した国際交流も積極的に進めており、08年より毎年秋に「鳥の演劇祭」を開催している。11年度国際交流基金地球市民賞受賞。
 
天使バビロンに来たる


 
演劇/日本(鳥取)
原作: フリードリヒ・デュレンマット
構成・演出: 中島諒人
制作: 鳥の劇場

公演情報

4/25(土) 18:00
4/26(日) 14:00
舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」 アクセス
上演時間: 135分(途中休憩含む)  日本語上演/英語字幕

◎各公演、開演20分前よりプレトークを行います。
◎4月25日(土)の終演後に中島諒人(演出)と宮城聰(SPAC芸術総監督)によるアーティストトークを行います。
◎4月29日(水・祝) シンポジウム
 〈アングラ演劇は死なず!―小劇場運動の50年―〉 詳細はこちら

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
 各種割引がございます。詳しくはこちら

※乳幼児を連れてのご入場はご遠慮ください。

作品紹介

神と王と乞食と大衆によるポップな政治劇

ポップに文明を批評
鳥の劇場の意欲作!犬島での公演も話題に

「制度と経済に支配された我々は人生を〈美〉によって再構築できるのか――?」という謎めいたキャッチフレーズで、スイスを代表する現代劇作家・デュレンマットの戯曲を取り上げた鳥の劇場。古代都市バビロンを舞台に、神と王と乞食と大衆が繰り広げる政治劇である。人間が、社会の中で「自由」に生きていくために必要なものは何なのか?決して軽くないテーマを「ポップな社会劇」として時にはコミカルで、スピーディーな展開で描く彼らの手腕には脱帽。話題を呼んだ瀬戸内海・犬島での初演の他、野外でも上演されてきた。今回の濃密な空気感を持つ会場でさらなる変貌を遂げる。

地域から世界へ――
常に国際的な視野で劇場づくりを目指す劇団

中島諒人は、2004年から一年半、SPACにも所属していたことのある演出家だ。06年より故郷・鳥取に劇団の拠点を移し、廃校になった小学校と幼稚園を劇場に変え「鳥の劇場」を始めた。年に一度、鳥取市鹿野町で開催されている「鳥の演劇祭」では、世界中から魅力あふれる舞台芸術作品を招聘し(11年にはSPACも『王女メデイア』で参加)、大人から子どもまで楽しめる演劇祭として、地元はもとより、国内外問わず多くの観客に親しまれている。あらゆる壁を越えて、地域資源としての演劇が、社会のために出来ることを問い直す「鳥の劇場」の今後からは目が離せない。

あらすじ

王が物乞いを禁止したその町に、天使に連れられ少女がやってくる。クルービと名付けられた少女は、神の手によってたった今作られたばかりなのだ。彼女は「地球上でいちばんとるに足らない男」である乞食アッキのもとに差し向けられるはずだったが、そのアッキとの乞食勝負に負けた別の乞食に恋をする。人々はクルービの美しさと無垢な心に驚き、彼女を王の妃にしようとするのだが…。

キャスト・スタッフ

原作 : フレードリヒ・デュレンマット
構成・演出 : 中島諒人
出演:
 島田曜蔵(青年団)、中川玲奈、高橋等、
 齊藤頼陽、中垣直久、橋口久男、村上里美、
 葛岡由衣、長田大史、赤羽三郎、安田茉耶、武中淳彦、島巻睦美

作詞 : 中島諒人
作曲・選曲 : 武中淳彦
歌唱 : 寺内智子
ピアノ演奏 : 石和田直子 

舞台美術 : 中島諒人
美術製作 : カミイケタクヤ
衣裳デザイン・製作 : KiЯi、朝倉夕加里、安田茉耶
大道具製作 : 山本朋幸
小道具製作 : 大下志穂
照明 : 生田正
音響 : 原伸弘(オハラ企画)
舞台監督 : 岩崎健一郎
演出助手 : 辻口実里
制作 : 鳥の劇場

2021年1月16日

盲点たち

 
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関連シンポジウム
◎4月28日(火)
〈目に見えぬ美をめぐって―反自然主義の系譜―〉
詳細はこちら


ダニエル・ジャンヌトー
d269739a440904640cda5bc7d91演出家・舞台美術家。1963年、フランス・モーゼル生まれ。ストラスブール装飾芸術学校を卒業後、ストラスブール国立劇場付属学校で演劇を学ぶ。89年に演出家クロード・レジと出会い、彼の作品の舞台美術を15年に渡って一手に引き受ける。2001年からマリー=クリスティーヌ・ソマと共同でストリンドベリ、ラシーヌ、キーンなどの作品を演出。05年、サラ・ケイン『ブラスティッド』をストラスブール国立劇場で上演。SPACでは『ブラスティッド』(09年)、『ガラスの動物園』(11年)を演出。08年よりステュディオ・テアトル・ド・ヴィトリー芸術監督。
 



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●ダニエル・ジャンヌトートーク出演
ル・ラボ vol.1
ダニエル・ジャンヌトー(演出家)×内藤礼(美術家)
日時:2015年4月16日(木)19〜21時
会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
詳細はこちら
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SPAC新作  演劇/日本(静岡)・フランス
演出: ダニエル・ジャンヌトー
作: モーリス・メーテルリンク(『群盲』より)
翻訳: 平野暁人
出演:
 大内米治、加藤幸夫、貴島豪、小長谷勝彦、
 寺内亜矢子、布施安寿香、横山央
(エキストラ)​​
 落合久信、小林清美、濱﨑邦子、増井典代、八十濱喜久子

公演情報

4/25(土) 19:00 ※予定枚数終了
4/27(月) 19:00 [追加公演] 4/13(月)10時より受付開始
5/1(金) 19:00 [追加公演] 4/13(月)10時より受付開始
5/2(土) 19:00 ※予定枚数終了
5/4(月・祝) 19:00 ※予定枚数終了
5/5(火・祝) 19:00 ※予定枚数終了
日本平の森 (全席自由) 〈集合場所:舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」〉
上演時間: 当初予定していた上演時間を超える120分(移動含む)を予定しています。 
*バスの時間が変更されています。21:15森入口発→21:45東静岡駅着に変更いたします。
 
日本語上演
 
■『盲点たち』追加公演決定!
4/27(月)19時集合
5/1(金)19時集合
2回が追加となりました。
※4/13(月)10時より受付開始です。

■ 追加公演時の無料チャーターバスのご案内
18:15 東静岡駅南口 発 → 18:30 舞台芸術公園 着
※お帰りの便は終演後に会場の森付近より発車いたします。

チケット

一般大人:4,100円/SPACの会会員割引:3,400円
☆ペア割引/グループ割引/ゆうゆう割引(満60歳以上対象)/学割など
 各種割引がございます。詳しくはこちら

・集合場所のBOXシアターには必ず19時までにお越しください。集合時間に遅れますとご観劇いただけませんので、ご注意・ご了承ください。
・演出の都合上、小学生以下の方はご観劇いただけません。
・会場となる森へはスタッフがご案内します。(徒歩で約15分)
・雨の際は傘が使用できませんので、レインコートをご用意ください。足元がぬかるみますので長靴のご使用をお勧めします。
・会場は森の中で冷え込みますので、防寒着をご用意ください。

★強い雨の場合、会場をご案内しておりました「日本平の森」ではなく、室内での上演に変更させていただくことになりました。集合場所は19時に舞台芸術公園「BOXシアター」前で変更ありません。
★室内での上演の際は、人工の霧を焚き込み真っ白になった空間で行われる予定です。この霧は水性で人体に害のないものですのでご安心ください。もし何かありましたら、事前にお申し出ください。
なお、強い雨により室内での上演となる際は、16時までにSPAC公式ツイッター(@_SPAC_)で発表します。

作品紹介

閉ざされた視界の中、アナタは何を見るだろう?

日本平、闇夜の森で
メーテルリンクの静謐な世界を体験!

日本では『青い鳥』など童話作家の印象が強いメーテルリンクだが、昨年のアヴィニョン演劇祭でSPACが上演した『室内』(クロード・レジ演出)をはじめ、人間の深い闇や絶望を描いた作品で、ヨーロッパ文壇に一時代を築いている。その戯曲の中では、沈黙や静寂が重要な意味を持つ。本作の上演エリアは、夜の闇に包まれた日本平の山中。冷えた空気が立ち込める中を、観客は森の奥へと案内される。漆黒の木々のなかで、芝居は静かに始まる。「声と気配」により立ち上がる、静謐で深遠な生と死。これは、観る者自身が盲点の群れの一人となる、文字通りの〝劇的体験”だ。

フランス初演から一新
ジャンヌトーが問う 心に潜む「盲点」とは

舞台美術家でもあるジャンヌトーは、これまで二作品をSPACで演出しており、静岡とは縁が深い。瀟洒(しょうしゃ)な部屋を一瞬で廃墟へと変えてしまう驚愕の舞台転換を実現した『ブラスティッド』や、透き通った薄布が繊細に揺れるさまで登場人物の心の襞を描写した『ガラスの動物園』など、その才能を遺憾なく発揮してきた。本作はパリで初演され、高濃度のスモークで視界ゼロの状態を作り出す演出が大きな話題を呼んだ。静岡版では舞台芸術公園を取り巻く日本平の自然の森を使い、原作そのままの世界で登場人物の心理に深く迫る。取り残された盲人たちの運命は?

あらすじ

そこは北方の島の森の中…。一人の老神父に連れられて、施療院から十二人の盲人たちがやってくる。生まれつき目の見えない者、年老いてから見えなくなった者、さまざまな理由で光を失った者たちが、古代の木々が生い茂る森の中で、誰かをじっと待っている。彼らを連れ出した老神父が姿を消したまま、帰る時間になっても戻って来ないのだ。互いに耳をそばだて、今いる場所や時間、辺りの様子を知ろうと試みるが、何もわからないまま不安だけが増幅していく。やがてそこに、誰かが近づいて来る足音が聞こえ始めるのだが…。

スタッフ・キャスト

演出: ダニエル・ジャンヌトー
作: モーリス・メーテルリンク(『群盲』より)
翻訳: 平野暁人
出演:
 大内米治、加藤幸夫、貴島豪、小長谷勝彦、
 寺内亜矢子、布施安寿香、横山央
(エキストラ)​​
 落合久信、小林清美、濱﨑邦子、増井典代、八十濱喜久子

技術監督: 村松厚志
舞台監督: 川上大二郎
音響デザイン: イザベル・シュエル 、シルヴァン・カダール、アラン・マエ、加藤久直
音響: 青木亮介
映像: ママール・ベンラヌー
演出部: 横田宇雄
ドラマトゥルギー: 横山義志
制作: 佐伯風土

製作: SPAC-静岡県舞台芸術センター
助成: アンスティチュ・フランセ
後援: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、ベルギー大使館
   
«Théâtre export »企画としてアンスティテュ・フランセからご支援いただいています。
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協力: エコエデュ(NPO法人しずおか環境教育研究会)