創作・技術部 衣裳班×美術班 クロストーク

創作・技術部には、「衣裳班」「美術班」があります。今回座談会形式で、美術と衣裳の仕事についてインタビューしました。

—今年で何年目ですか?また担当しているお仕事を教えてください。

清:10年目です。衣裳スタッフです。衣裳のデザインから製作、ワードローブや管理を行っています。

吉田:6年目です。美術班スタッフです。再演作の装置・小道具メンテナンスや作り直し、新作の美術担当やデザインも担当しています。

—演劇との出会い、SPACに入るまでの経歴、SPACに入った理由を教えてください。

吉田:SPACに入る前は美術館のシアター事業やイベントの制作アシスタントをしていました。学生時代には実技をやっていたので、一度製作側としても舞台創作に関わってみたいと思い、転職を考えて、SPACの美術班に来ました。演劇との出会いは、前職の美術館でした。大学の先輩が前述のシアター・イベント事業の仕事をしていて、展覧会のオープニングで久しぶりにお会いした時に、「うちでアルバイトしない?今度こんな作品をやるんだけど。」と誘っていただいて。お客様とめぐるツアー演劇みたいな作品でした。
お客様がある部屋に到着する前にお正月のお膳を盛っておくという、SPACでいうところの”ステージハンズ”的な作業もあり、面白いなぁと思ったのがきっかけです。

—大学では何を学ばれていたんですか?

吉田:大学では彫刻専攻でした。前職の美術館には彫刻専攻の卒業生も多かったです。立体をやる人は体力もあるし、イベント運営に向いているのかもしれません。

清:幼少期にリカちゃん人形の洋服を母と作ったり、元々ファッションや何かを作ったりすることに興味がありました。
とはいえ学生時代は運動部だったこともあり体格が良く、自分に似合う服がわからなかったり、自分のお小遣いで服を購入できなかったんです。そんなこともあり、もし自分で作ることができたら、自分の出せるお金の範囲で好きなデザインの洋服が着れると思い、静岡デザイン専門学校のファッションデザイン科に進学しました。専門学校1年生だったときに、静岡デザイン専門学校、通称 静デ卒業生で当時SPAC衣裳班チーフだった故 竹田徹さんと、もうひとり静デの先輩が衣裳班にいて、そのおふたりにSPACの施設を案内してもらったんです。そこではじめてSPACのことを知りました。
舞台芸術公園の稽古場棟で『夜叉ヶ池』の衣裳や、『ドン・ファン』のかつら・仮面製作現場、俳優さんのトレーニングを見学したのですが、普段では着ることのないデザインの衣裳や、かつらや仮面を土台から作る「テアトロ・マランドロ」の海外スタッフさんの技術、トレーニングの迫力に圧倒されました。
この見学で文化祭準備のようなワクワク感や、日常とは違う世界にいけるような演劇や舞台衣裳の世界に面白さを感じ、自分もこんな衣裳を作ってみたい、毎日ワクワクするような世界に入りたいと思いました。

吉田:文化祭で思い出したんですけど、大学では2年に1度、野外彫刻展をやっていました。
川沿いとか公園とかに、作品展示をするんです。トラックで芝生の上を走ると芝生が枯れてしまうから、保護のためにコンパネを敷くんですけど、コンパネの枚数も限られているから、コンパネを敷いて、トラックを進めて、またコンパネを運んで敷いて・・・を繰り返しました。装置製作のために板を運ぶ時なんかは、この時のことをよく思い出します。
野営テントを張ったりもしてました。なのでSPACの駿府城公演のときとかは特に、「大学のときとやっていることが変わってないな」って思います。
また、私の大学の文化祭では1年生は仮装して街中でパレード→学校に戻ったら舞台でパフォーマンスをしないといけなくて。どの専攻も。当時は、「美術の勉強しに来たのに何をやらされているんだろう」って思ったんですけど、でも、あの時やったことが意外と勉強になっているなぁって思います。

清:在籍時の静岡デザイン専門学校にも全学科が参加する球技大会とボーリング大会があったのですが、それぞれこだわりのユニフォームで参加するんです。仮装大会みたいな感じでした。どの学科にもセンスのあるユニフォームの生徒がいて、勉強になったし凄く刺激になりました。

—各班では、どのような仕事をしていますか?

清:再演だったら、ストックしている衣裳を出して、ほつれを直したり、アイロンをかけてメンテナンスをします。稽古が始まってからはサイズ調整をしたり、演出家やデザイナーとやりとりをして、変更に対応したりします。新作だと、衣裳をデザインして、制作します。
ただそこで終わりではなく、ワードローブといって、本番中の着替えを手伝ったり、本番前、本番後のメンテナンス、管理をおこなったりしています。

—平均で何着ほど作成されているんでしょうか。

清:平均ですか。うーん・・・。

吉田:俳優さんおひとりにつき1着のときもあれば、1人5着のときもありますよね。

清:そうですね。演目によって違いますね。型紙から作る場合もあれば、既製服を加工して作る場合もあります。

—これまでの最高記録があれば、教えてください。

清:自分が関わった作品だと『タカセの夢』『ペール・ギュント』『妖怪の国の与太郎』は多かったですね。いい勝負だと思います。ワンスタイルでカウントするか、靴下1個でもカウントするかで違ってくるんですが、スタイル数でいうと『妖怪の国の与太郎』かなと。場面数も多く開演から終演までずっと着せ替えの連続、だったので。小道具も多かったですし。

吉田:小道具は100個くらいありましたね。1個30秒しか見えないよ、っていうのもありましたし(笑)

—1着をおおよそどのくらいの期間で縫い仕上げているのでしょうか? 

清:最低1日1着つくれるくらいのスピードは求められていると思います。

吉田:一人がひたすら裁断して、一人がひたすら縫製して、まわして仕上げていくパターンもありますよね。10日間で10着とか。

清:そうですね。『イナバとナバホの白兎』では大量の袴、着物を分担して、完成の予定を立てて作業してました。縫製工場みたいな感じでしたね。

吉田:小道具・中道具は、演出部が仮道具を出してくれたり、俳優さんが私物を貸してくださったりしたのを、追って本道具に変えていく、という順番で進めることが多いです。
時には演出部にも買い物や製作をお願いします。
俳優さんが作ってくださった仮道具をもとに美術班が作り直す、ということもあります。
演出家や舞台美術デザイナーがこうしてほしい、っていうことだけではなく、俳優さんがこれをしたいっていうのを手助けすることも結構多いかなって。

清:同じことありますね。あと俳優さんの作品や役に対してのイメージを聞いて取り入れるということもありますね。

—制作部目線ですと、どれが美術班で、どれが衣裳班で、どれが演出部なんだろう、分担をどうしているんだろう?って思うありますが、どうしているんですか。

吉田:それ、わたしたちも不思議ですよね(笑)

清:(笑)

吉田:なんとなく、身に着けるものは衣裳さんに、というのはありますね。いつも話題になるのは、腕時計とメガネ。俳優さんから「腕時計したいんだけど」って言われて、美術か衣裳かわからないときがあるんです。俳優さんが美術スタッフに言う時もあるし。「お金は美術班で支出するんですけど、衣裳との相性があるので、これとこれどっちがいいですか、候補を見繕ったので選んでください」って衣裳さんにお伺いしたり。カバンもそうですね。
それこそ、『妖怪の国の与太郎』だと、どっちの管理かわからないものだらけで、メンテナンスのときに困りましたね。あれ?どっちだっけ??って。

清:そうですね、最終的に演出部も込みで皆で直したものもありましたよね。あと作業状況によって手が回らない時もあって。そんな時にこれお願いできますか?これこっちでやりましょうか?とか助け合いですね。

吉田:『イナバとナバホの白兎』のクモ女は、衣裳さんがつくったんだけど、その後の管理は美術班になりましたね。
先ほども言いましたが、美術班では、作業を演出部に手伝ってもらうこともとても多いです。装置製作も、演出部に作業に入ってもらっているし。小道具で、演出家の希望がはっきりしていて「こういうものがほしい」と具体的な情報があるときは、演出部が購入してくれたり、つくってくれたり。演出部なしでは、なにも出来ないかもしれません。
でも、『グリム童話』の再演のときは、ちょっとちがって、装置には演出部に入ってもらっていますけど、まわりの小物(木とか)は美術班だけでやってますね。

—『グリム童話』は美術班の負担が大きいんですね。

吉田:そうですね。小道具も、装置の世界観に合わせて細かにデザインされていました。

清:けっこう繊細なものは美術班ですね。そうそう、『グリム童話』の赤ちゃん(人形)は、どっちの管理なんだ?ってなりましたね。

吉田:そうそう、『グリム童話』の赤ちゃんは、あきらかに小道具だから、これは美術班でしょって思っていたんですけど、実は衣裳さんの製作で、しかも管理も衣裳さんになっているんです。おんぶ紐がついていて、こう、カチャって身につけられるようになっているから、衣裳さん管理になっているのかな、と。

清:そうですね。あと、早替えだから衣裳班がまとめて赤ちゃんの大きさとか方法を俳優さんと相談しながら作っていったのかもしれないですね。

『グリム童話』左下:装置立て込み 左上・右下:公演 Photo:Y.Inokuma
『妖怪の国の与太郎』右上:公演 Photo: K.Miura

—とある1日のスケジュールを教えてください。

吉田:1日中、藁(わら)をさいて、『イナバとナバホの白兎』のワニのヒレをつくっている日もありましたし、1日中、古いリノリウムテープのテープ跡をトル、という掃除をしているだけの日もあります。

清:美術班って、演出部と一緒に仕込んでいたりしますよね。その過程で、リノテープの掃除とか、そういったことも仕事に入ってきますよね。

—おおよそのタイムスケジュールだと、どんな流れですか。

吉田:朝10時に劇場に来て、13時くらいにお昼ごはん休憩をして、夜19時までに帰る感じで、作業が間に合わない場合は、夜22時までやる感じです。稽古次第でもありますけど。美術班は割と、稽古の前に作業して、稽古で新しいものを使う場合は、たとえば13時稽古開始までに、稽古場に用意して「新しい小道具です。こうで、こうで」って俳優さんに説明をします。で、稽古中も作業をしたいので、美術室に戻るんですけど、小道具を使っていて、なにか言っている声がモニターから聞こえてきたら、稽古場に行きます。作業が落ち着いていても、稽古が終わるまでは待っていますし、何か新しい作業がでても、稽古が終わらないと修正作業ができないこともあるので、稽古が終わるのを待って作業します。
もちろん、芸術劇場で稽古していても舞台芸術公園で終日作業している日というのもあります。装置つくるときとか。『ギルガメシュ叙事詩』のときは、ずっと公園で人形制作をしていましたね。

清:ワードローブの1日スケジュールは、基本的に楽屋入りまでに、たとえば開演1時間半前までにアイロンがけを終わらせてセットを完成させられるように、開演時間から逆算して、朝9時スタートまたは10時スタートにしようか、それぞれ担当スタッフが考えて決めています。楽屋入りしてからは、ヘアメイクの梶田さんが来れないときは、ヘアセットの代役で入ったりするときもあります。休憩して、本番して、本番終了後は、洗濯して、アイロンがけして帰ります。
ばらの騎士』はふたり体制だったので、朝10時にきて、夜19時には帰ることができていたかなと思います。『白狐伝』とか駿府城公園での公演だと、また変わってきますけど。
新作の場合の稽古期間は、美術班と同じように顔を出しますけど、今作業を進めないと!ってときは、稽古にはあえて顔を出さないで、作り続けるときもありますね。

稽古後に俳優さんとのやり取りもありそこの時間は作業が進められないので、いかに稽古中に集中して作業をするかが大事ですね。
吉田:1日スケジュール、1年間のスケジュールもありますけど、1演目でのスケジュールもありますよね。何日までに衣裳や美術が仕上がってないと稽古が出来ないからっていう。演目にもよりますけど。

清:今日なにもないなっていうときもありますよね。

吉田:そうそう。今日作業はなにもないけど、居ることが仕事っていう日もありますね。再演のときで、直しがでるかもしれないから、稽古時間には美術室に居て、稽古が終わるまで待っている日とか、待ちながら掃除をするだけの日とか。モノが多すぎて。

清:1日かけての掃除、ありますよね。1年間かけて、荒れていくので(笑)

—年末の大掃除とか、あるんですか?

吉田:やってましたけど。去年、一昨年は忙しくてできなかったです。

清:衣裳は基本的には年度末にやっています。

吉田:年度末の方が余裕、ありますね。美術班は、演目の初日があいたら、基本仕事が落ち着くんですよ。「じゃああとはお任せました。よろしくお願いします。」と離れることが多いです、ツアーがないかぎりは。本当は、新年度の作業をはじめたいんですけど、お金を使い始めることができないので。

清:だいたい年度末に、残布の整理をやっていますね。

—衣裳さんと美術さんは、ものが増えていく一方だと思うのですが、どうしているんですか?

吉田:他の演目でも使えそうな小道具は、美術室の棚に戻して備品扱いにすることも多いです。あとは、過去の演目から道具を借りてくることも。借り物があった時は、終演後に元の保管場所に戻します。既存の家具の布を張り替えたり、色を塗り替えたりして、再利用することも多いです。使いまわせるものはなるべく使いまわしています。
ただ、紙製品など、摩耗しやすい素材を使うことも多いので、処分せざるを得ない場合もあります。その場合は、再演の際に新しく作り直します。衣裳はどうしているんですか。

清:スペースはないですね。衣裳の場合は流用をするので、何かで使えるんじゃないかってなって、捨てられないんですよね。

吉田:同じ生地があるとは限らないから、作り直しもむずかしいですよね。

—それぞれ班での1年間のスケジュールを教えてください。

吉田:5月の演劇祭までが忙しくて、6月にその分少し長めにお休みして、7月に入ると「シアタースクール」「スパカンファン」がはじまって、その担当者は忙しくなって。
で「秋→春のシーズン」の稽古もはじまってくるんですけど、夏の1期稽古ではそこまで作品が出来上がってきていないので、夏はそこまで忙しくなく。「秋→春のシーズン」の本番から逆算して、「何日までに仕上げないといけないか」を逆算して作業を開始すると段々忙しくなっていき、「秋→春のシーズン」#1の初日を迎えると、#2のつくりもので忙しくなって、みたいな感じです。春と秋が忙しいって感じですね。で2〜3月に落ち着くって感じです。

清:そうそう。衣裳班も同じです。6月7月はだいたいお休みできます。担当する演目によります。

吉田:自分はめっちゃ忙しくても、班の他の人は長めに休んでるとかもありますね。海外ツアーに行くか、行かないかとかで変わってきたりもします。

—衣裳さんと美術さんは、外部のお仕事をもらうこともあるんですか?

清:受ける時もありますね。衣裳の他のスタッフにも、個人の仕事があれば、言ってね。それ込みでシフトを考えるからねって伝えていますね。

吉田:美術も「外部の仕事をうけてもいいよ。シフト調整するよ」ってなっています。

—各班の面白さ、やっていてよかったことを教えてください。

吉田:SPACって、つくりものが多いんです。ほかの劇場や劇団だと、装置会社さんや小道具会社さんに製作を依頼することも多いと思いますが、SPACは技術スタッフを抱えているので、自分たちで作る機会がたくさんあります。
招聘作品のお手伝いをすることもあります。招聘だけど装置は持って来ずに、SPACで装置を用意しておく、ということもあって、海外カンパニーの作品にそういった関わり方ができるのはとても楽しいです。

清:作ることはもちろんですが、作品をとおして自分の感覚や知識だったり視野が広がっていくのも面白いです。
用意した衣裳を俳優さんが想像とは違った使い方をしたり、お客様の感想で、この衣裳が好き、この衣裳はこういったように見えた、とか聞くのも新たな発見になりますね。
ワードローブで舞台袖にいると俳優さんの緊張感や表情の変化を感じる時があります。
モードが変わる時がかっこいいな、と思いますし臨場感が味わえて、とても楽しいです。

『Reborn~灰から芽吹く~』左下:公演 Photo:松本和幸

—各班の大変なところは何ですか?今後どのような環境にしていきたいと考えていますか?

吉田:つくるときに、正解がないのがつらいですね。毎回同じことをしているわけではないので。リハ室に入れるために装置を分解できるように作るとか。吊るために軽く作るとか。「これをやりたい、やってほしい」となったときに必要になって来る知識とかって、べらぼうにあって、だから技術監督がいるんだと思うんですけど。専門書がないので。もちろん舞台美術とはっていう本はあるんですけど、「これをやって満点取れれば出来るようになりました」っていうのとは別かなと。芸術全般に言えることかもしれませんけど。努力しているけど、努力の仕方がわからないとむずかしい。

—新しく入ってきたスタッフさんに教えることも大変ですか。

吉田:教えるというより、お互いの技術や知識を持ち寄るという印象が強いです。
SPACではこうしています、と教えることももちろんありますが、教える前に、こういうのがほしんですけどっていって、その人のやり方で作ってみてもらうということもあります。「こういうパネルを作りたかったらこういう風につくると強い」とか、「仕込みに必要な資料はこれ」とか、私も丁寧に教えてもらったんですけど、小道具の作り方とかは、「出来る?やってみて」と言われることもありました。もちろん、汚し(よごし)の入れ方とか舞台の仕事独特な部分はちゃんと教えてもらいましたけど。つくってみて「どうですか?」と聞くことの繰り返しだったりもします。

最初、SPACに入った時の担当作品は『マダム・ボルジア』だったんですけど、「絵どのくらい描ける?高校生の時のものでも良いからデッサンがあったら見せて」と言われてデッサンを見せたら「じゃあ、この下絵をアレンジしてコピーして、描いてみて。塗りは金色っぽく」って言われて、金色の絵の具は使わずに、「金色ってこうかな?」って考えながら屏風絵を描きました。

私は、たまたま絵を少し描ける方なんですけど、絵が苦手な人もいると思うんです。構造物は得意だけど絵の具は苦手、とか。わたしは鉄の溶接は苦手です。学校で習ったけど、出来ないですね。仕事ではなんでもやらなきゃいけないけど、各々が独自で培ってきたスキル頼みでもあります。イラレ、フォトショとか、使い方を教えるというより、こうしたいなっていうのを各々調べながら作っていく感じも多いです。

—今までイラレ、フォトショでどんなものを作成されたんですか。

吉田:『忠臣蔵2021』では、のぼり旗を作りました(笑)

—ああ、天守物語にも、アランヤ演劇祭にも出張して大活躍している旗ですね!

吉田:『白狐伝』では、装置デザインは深沢さんなんですけど、幕に仕上げるために深沢さんが描いた絵をスキャンして編集して、金色っぽくするためにカラーコントロールをしたり、葉っぱだけレイヤーかえて青くするとか、結構な時間をかけてデータを作成しました。で印刷会社に入稿したんですけど、やり方は誰かに教わったわけではないですね。

清:どうにかしなきゃ!って思って、自分で得る知識って割とありますね。人に教える難しさは衣裳にもありますね。縫い方でも、それぞれ価値観のちがいを感じます。どういうことを学んできたかにもよりますし。ゴールは同じでも、ひとによって、ゴールまでの行き方がちがうんですよね。

吉田:そうそう。どの筆を使うか、とかもちがうんですよね。

清:バランスって人それぞれですよね。

吉田:個別スキルで、成り立っているときがありますよね。それが良さなんだけど、自分がここにいないといけない、体調くずさないようにしなきゃ!っていうプレッシャーが結構ありますね。演出部もそうかもしれませんけど。美術は、あとで巻き返せるところもあるんですけど、自分がリーダーだと、自分が指示を出さないと制作が進まないし、確認したいことが出来たときに「どういう意図で作っているものなんですか」とか聞かれることが多いので、その場にいた方がよくて、むずかしいなと感じるときがあります。だれそれがいないから、今日はやれることがないね、帰ろうか、という日も実際ありますね。
あと、木工の作業をするときは、野外劇場や新稽古場を使っているのですが、もともと工房として建てられたわけではないので、広さや高さが足りない時もあります。
掃除がしやすい環境でもないですし。広い洗い場がほしいですね。筆やバケツを洗ったりしやすい環境になって欲しいです。

清:屋内での作品としてつくったものが、屋外で公演するときもあって、そのときに濡れちゃいけない素材で使っているときのメンテナンスが困りますね。あと、ストックする保管場所がなくなってきていて、大変さを感じますね。宮城さん演出の作品ではヘアメイクでよく梶田さんがいらっしゃるじゃないですか。でも他の作品でヘアメイク担当自体いないときに、ヘアをやらないといけないときがあって最初は分からないことだらけで大変ですね。ヘアメイクを基礎から学んできたわけでもないので。ただ新しい知識を得る機会でもあるので、やれるのはとても良かったです。『ロミオとジュリエット』のウィッグ担当をした経験は、今に活かされていますね。
俳優さんが衣裳室に来て、要望を伝えにいらっしゃるときも、それに応えないといけないのが大変ですけど参考になることも沢山あって勉強になります。

清:屋内での作品としてつくったものが、屋外で公演するときもあって、そのときに濡れちゃいけない素材で使っているときのメンテナンスが困りますね。あと、ストックする保管場所がなくなってきていて、大変さを感じますね。宮城さん演出の作品ではヘアメイクでよく梶田さんがいらっしゃるじゃないですか。でも他の作品でヘアメイク担当自体いないときに、ヘアをやらないといけないときがあって最初は分からないことだらけで大変ですね。ヘアメイクを基礎から学んできたわけでもないので。ただ新しい知識を得る機会でもあるので、やれるのはとても良かったです。『ロミオとジュリエット』のウィッグ担当をした経験は、今に活かされていますね。
俳優さんが衣裳室に来て、要望を伝えにいらっしゃるときも、それに応えないといけないのが大変ですけど参考になることも沢山あって勉強になります。

—仕事をする上で大事にしていることは何ですか。

吉田:デザイン担当やメイン担当であっても、自分で考えて組み立てた予定をそのまますすめてしまうとあまり良くなくて、とにかくいろんな人に相談しなくてはいけない、とは思っています。薄い平台を作ろうと思って、相談したら、「野外劇場にあるよ」って言われて作らなくても良くなったり、これ俺が取りにいくよって言ってもらえたり。美術チーフ、創作・技術部主任に話すことはもちろん、何気ないおしゃべりも大事なんだなって思ってます。
制作部って、「メールしておいて」ってことがあるじゃないですか。創作・技術部だと、メールだと上手く伝わらない話が多いので、ラインと電話が多いですね。「ライブ・コミュニケーション」が、大事ですね。

清:コミュニケーションに通じるのですが、意見を聞く、イメージの共有をするということもむずかしいですが大事にしています。なにかを作る上で、重いかな、動きにくいかな、とか考えて、想像することも。

—それぞれ今後挑戦していきたいことを教えてください。

清:個人的には、すぱっくおやこ小学校とか、アウトリーチ活動にも関わっていきたいなとは思っています。「てあとるてをとる」学校公演に同行したときにSPACの外でやること、小学生たちの素直な反応を感じるのが面白いなと思ったのがきっかけだったんですけど。

吉田:「てあとるてをとる」が出来て、仕事の幅がより広がってきましたね。技術スタッフももっとアウトリーチに関わりたい気持ちはありますよね。

清:2024年度のおやこ小学校では、春日井さんから「蝶ネクタイ」を作ってほしいというリクエストをきっかけに、おやこ小学校でYORIKOさんと接点がとれて、うれしかったです。
おやこ小学校自体、今まで関わってみたいな、、と影からこっそり見ていたので、蝶ネクタイ以外にも準備の段階にも手伝わせていただけたのも良かったです。

吉田:私は、劇場じゃないところでやる演劇やパフォーマンスが好きなので、そういったことをSPACに限らず挑戦していきたいと思います。

清:駿府城公園での公演が好きですね。人がにぎわっているお祭り感や、屋外の開けた雰囲気が好きです。衣裳室、窓がないのでツライんですよね。

吉田:美術室も窓がないので、つらいんですよ。空調をつければ湿度はなんとかなっているのですが。舞台芸術公園での作業は気持ちいいですね。

—創作・技術部の良いところはどんなところですか?

吉田:いろんなバックグランドがある人がいるのは、いいところですね。学生時代の専攻も問わないところがいい所だと思います。

清:衣裳でもお面をつくるのが得意、染めが得意とか、ありますね。
あと、困っている班がいたら助け合うのも良い点だと思います。

—創作・技術部に挑戦してみてほしい人はどのような人ですか?

吉田:なにかこれをやってみたい、というものがある人に来てもらうのがいいのかな、と。得意なことと苦手なことがトータルで見たら凸凹でも、なにかひとつでも得意がある人なら、楽しいと思います。あとはお芝居が好きな人。

清:ちょっとでもSPACを知っている人がいいのかなと。なんでここに入りたいか、理由を話せる人であればいいのかなと思います。

吉田:やりたいことがはっきりしている人にはいい環境だと思います。やらせてくれる機会(チャンス)って案外すぐ来るから。シアタースクールのデザインとか。

清:漠然と、やりたい!という気持ちがあればいいのかも。ある程度の技術は必要だけれど、最初からしっかりした技術がなきゃ!とは思わなくてもいいのかも。
どの職業もそうですけど、経験していく中で得る技術や知識は多くありますし、日々吸収しようとする気持ちさえしっかりあれば、良いのではと私は思います。

公開:2025年2月3日/インタビュー収録:7月