ON-PAMシンポジウム
「これからの公共劇場で、私たちは本当のところ何を作りたいのか?」
登壇者:宮城聰(SPAC芸術総監督)、中島諒人(鳥の劇場芸術監督)、ダニエル・ジャンヌトー(ステュディオ・テアトル・ド・ヴィトリー芸術監督、フランス)
司会:横山義志(SPAC文芸部)
通訳:平野暁人
主催:ON-PAM 舞台制作者オープンネットワーク
共催:SPAC-静岡県舞台芸術センター
【開催日時】4月27日(月)11:00~13:00
【会場】舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
※舞台芸術公園までのアクセスについてはこちらをご覧ください。
https://spac.or.jp/access
【料金】無料、予約不要
【お問い合わせ】SPACチケットセンター 054-202-3399
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「これからの公共劇場で、私たちは本当のところ何を作りたいのか?」
SPAC-静岡県舞台芸術センターで行われる第1回企画委員会では、ナチス時代に国立劇場の芸術監督となった俳優の軌跡を描く『メフィストと呼ばれた男』(ふじのくに⇄せかい演劇祭開幕作品)を出発点として、今日の日本における公共劇場での創作が抱えている課題について、考えていきたいと思います。
ここ二十年ほどで、日本における舞台芸術作品の創作状況はまさに劇的な変貌を遂げています。創作における公立劇場の重要性が飛躍的に高まり、さらに「鳥の劇場」のように、NPO法人として公益性を掲げて活動する劇場も出現してきました。「公共性を掲げる非営利の劇場」も広義の「公共劇場」に含めるとすれば、今、日本における先鋭的な創作のかなりの部分が、これらの「公共劇場」のなかで行われているといえるでしょう。そして予算面でも、公共の資金が大きな役割を果たすようになってきています。
この状況はアーティストによる創作活動を社会へと開いていくための重要な契機ともなっています。そして制作者にとっては、作品の意義を「社会的」に説明するためのスキルが必要不可欠なものとなってきました。
一方で、公共体との関わりが密接になっていくなかで、その意図を忖度せざるを得ない状況も生じてきます。『メフィストと呼ばれた男』で描かれている状況は、その極端な例といえるでしょう。主人公クルトは、かつて反ナチス運動に参加してたにも関わらず、その名声を利用しようとするナチス政権からの提案を受諾し、「内側からの抵抗」を試みます。しかし結果的には、ナチス体制の維持に加担したようにも見えます。
これからの二十年では、日本における公共劇場が、真にその役割を果たしてるのかが問われていくでしょう。でも、その「本当の役割」はどこにあるのでしょうか? その答えは、きっと、この「公共劇場」と呼ばれるものを欲し、作り上げてきた、私たち自身のなかにあるはずです。私たちはどんな作品を作るために公共劇場を作り、そしてこれからの公共劇場で、私たちは何を作りたいのでしょうか? この問いを念頭に置きながら、それを実現するための方法を探っていきたいと思います。
シンポジウムでは、公共劇場を運営しながら、そこを拠点として作品を作っている三人の演出家をお招きして、本委員会のテーマについて語っていただきます。
宮城聰さんからは、私立劇団での創作と公共劇場での創作の違いや、『メフィストと呼ばれた男』を上演するに至った経緯などをうかがいます。中島諒人さんには、東京での劇団活動から、地方で創作の拠点となるような劇場を自ら作るに至った経緯や、現在抱えている課題についておうかがいします。ダニエル・ジャンヌトーさんには、フランスの公共劇場における創作の仕組みが、ご自身の創作活動をどう支えてきたかについて、話を伺いたいと思います。
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