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2010年5月10日

舞台美術コンペ 最終審査を終えて

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最終審査を終えて

SPAC文芸部 大岡 淳

 

まず、このたびの『若き俳優への手紙』舞台美術コンペティションに力作の数々が寄せられたことに、審査員を代表して改めて感謝申し上げます。惜しくも選に洩れた方々も、またこのような機会を設けることができれば、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

 

一次審査に寄せられた舞台美術プランを見ていて感じたことですが、いずれも実際に製作すれば舞台美術としてそれなりに成立するであろう基礎的な構想力を備えていることに驚き、日本の劇場を支える文化の厚みに気づかされた次第です。ただそれでも審査の過程で、優劣を判断するポイントをいくつか見出すことができましたので、それを紹介しておきます。大きく分けて以下の4点です。

 

①戯曲をどれだけ読み込むことができているか。

②俳優の舞台上の動きをどれだけ想定することができているか。

③上演時間を耐え抜くだけの視覚的な魅力があるか。

④既存の舞台美術の文法にとらわれない独自の発想があるか。

 

 ①は、戯曲の内容を自分なりに解釈した上で、基本的なコンセプトを立てることができたかどうか、ということです。まして今回は演劇の存在意義を問い直すような戯曲ですので、美術家として「演劇」や「劇場」をどう捉えるか、という視点が不足しているものは、いささか物足りなく感じました。②は、私たちSPACは身体性を重視した芝居づくりを心がけていますので、リアリズムの演技を前提としているものは、魅力が乏しいと感じました。③は、上演時間内での視覚上の変化をどう考えるか、ということです。あまりに大仕掛けでは自己主張が強すぎるという印象を観客に与えるでしょうし、かといって、最初の数分間だけ目を惹くもののたちまち見飽きてしまうようでは、演出や演技の手助けになりません。

 

 以上のような審査基準で優れていると判断され、最終審査に進んだのが、青木祐輔さんと石原敬さんでした。最終審査は、まずおふたりに模型を製作していただき、御自身で審査員に対するプレゼンテーションをおこなっていただきました。次にこのプレゼンテーションの内容を受けて、宮城・村松・横山・大岡の4審査員で厳正な討議をおこない、採用する舞台美術プランを決定しました。

 

 ファイナリストとなったおふたりのプランは、いずれも視覚的なインパクトを備えており、同時に、戯曲の内容をしっかりと捉え返し、演出や演技をうまく手助けしてくれそうなクオリティを備えていました。模型を用いたプレゼンテーションによって、これらのプランが上演時間内に様々な表情を見せうることもわかり、その点でも互角であったと思います。それでもなお最終的な判断基準となったポイントは、上記④でした。いわゆる「大道具」的な文法にとらわれず、意外性を含んだオリジナリティを有しているという点で、僅差ではありますが、青木さんのプランが優っていると審査員一同は判断しました。我々SPACのスタッフとしても、このプランを用いることにより舞台上で何が起きるのか、良い意味で予想できないところがあり、その未知の可能性にわくわくさせられたというのが率直な感想です。

 

 以上のような討議の結果、4審査員の全員一致により、青木祐輔さんのプランを『若き俳優への手紙』の舞台美術に採用することが決定いたしました。